どうも。巨塔ツアー(笑)の案内を務めさせて頂いてますエリノラです。
「おーい、エリノラちゃん木の実取ってきてー」
エリノラ「うん、わかったー!」
これも案内という業務の一部だから…新緑の候、塔の周囲に生い茂っている木々たちも美味しそうな果実を実らせる頃です。実際に美味しいんだから。
「ねぇエリノラ、ちょっと街行きたいから道教えて」
エリノラ「えっとね~、まずここからあっちに真っ直ぐ進んで―――」
いや案内だけど。巨塔の案内人なんだけど。ま、まあ、下手をすれば迷っちゃうからね。結構森の奥地にあるから、塔。
「お風呂はー?エリノラー?」
エリノラ「お風呂?あそこにドラム缶あるから川の水沸かして入ってー!」
あ、案内……いや、こんなところにお風呂とかあると思ってるの?
「トイレどこだっけ、つかあったっけ」
エリノラ「はいはーい!お手洗いはそっち!いやそっちじゃなくてあっちだよ!!」(手作り)
疑問に思うくらいなら聞かないで!まぁあるけど!ていうか案内させて!
「男と一緒に寝たくないんだけどどこか個別の寝室とかないの?」
エリノラ「え、えっとね!今作った!ちょっと木材と布使って即席で作ったから!隔てるやつ!!これで我慢してね!!!」
知るか!中学生じゃあるまいしそのくらい気にしないでよ!ていうかお家に帰りなさい!!
「エリノラー」
「エリノラ」
「エリノ―――――。」
エリノラ「はぁ……(ゲッソリ)」
みんな、アレだ。
私のことを便利な使用人か何かと勘違いしているのかもしれない。
夜になると街へ帰っていく人もいるけれど、最近はここの生活も快適になっていってるから(主に私のおかげ)混沌の巨塔で寝泊まりする人も少なくない。
一度本当に全滅でもしてお灸を据えてやりたいところだね。
エリノラ「ふう、こんな皆を100層までエスコートしなきゃダメなのか~……」
声に出して悪態をついてみたがそれも虚しいもので、私は両膝を抱いて床に視線を落とした。
エリノラ「でもまあ、実力はそこそこあるわけだし……」
皆となら天辺からの景色を見てもいい気も、する。…のは確かだ。
それもこれも全部、5層の様子を見てから決めても遅くはないかもね。
私、エリノラの受難はまだまだ始まったばかり。これから待ち受ける"異変"なんて知る由もなかったのだから。
最終更新:2019年05月12日 18:29