EVOKE -舞- ニシル編第2話

――キュラリア・カフェ「プッチ」――


ニシル「(静かな潮風が流れるテラスで、アッサムを飲んで一息ついている)…ふぅ…(キュラリアって、とっても広い街なんだな…。カガリさんの地図がなかったら私、今頃絶対迷子になってただろうなー…)すすす…(多少項垂れた表情で紅茶を啜る)…ん、おいし… 疲れとか、吹き飛びそう。(一人嬉しそうに、紅茶の水面(みなも)に映る自分の顔を見つめる)」

玲華「コツ…コツ…(店内から、紅茶とケーキを乗せたトレーを持ってテラスに現れる)…あら、こんばんは。お隣、よろしいですか?(妖艶な雰囲気を醸し出しながら、のんびりくつろいでいるニシルに優しく声をかけ)」

ニシル「ほわっ…!(テラスには自分以外誰もいなかったため、急に声を掛けられて驚いた)あ…こ、こんばんは。(わぁ…とっても綺麗な人…。)(玲華から滲み出るその美につい見とれてしまう)」

玲華「くすくす…では失礼します。(ニシルの向かい側に座る)はじめてお会いする顔ですわ…もしかして、観光でいらした方ですか?(トレーから紅茶とケーキを取ってテーブルの上に置く)」

ニシル「え、あ…えと… 観光…というよりは、ちょっと…。(「人探し」とは言いずらそうで口籠ってしまう)」

玲華「あら、そうでしたか。(ニシルの様子を見て特に不審に抱くような顔をせずにこりと微笑む)…どうです、この街は。とても広かったでしょう?」

ニシル「あ、はい…!こんなに大きな街…私、見たことがなくって…。初めての大都会の世界に、いろいろと目がいっちゃって…(たははと苦笑し)…でも…とても、素敵な街だと思います。初めて訪れたこの場所が、好きになりました。」

玲華「くす…それはよかった。この街には他にもさまざまな名所がありますので、是非そちらの方もご覧になってください。(そう言ってティーカップに手を伸ばし、アールグレイを一口)」

ニシル「はい…!(やっぱり大きいんだな…他にもいろんな所があるなんて。…やらなくちゃいけないこともあるけれど、ちょっと…気になる、かな…。)(玲華に続いて自分もアッサムを一口)」

玲華「……それにしましても…(ニシルの容姿を舐めるように見つめ)とても可愛い洋服でございますね。貴女のそのふんわりとした水色の髪にとてもよく似合っております。(ふふふと笑いながら)」

ニシル「ふぇ…!?//…あ、や…そ、そんな…(恥ずかしそうに顔を赤らめる)……この服は、大切な方からいただいたもので…自分も気に入っているのですが… …わぁ…可愛いと言われたのは初めて…うぅ…///(両手で顔を覆い)」

玲華「まあ!(ニシルの反応を面白そうに見つめて笑みを零す)そうでしたの… とても良いものをいただきましたね。それに、貴女自身がそれをとても大切にしているようにも見えます。私、実はこう見えて相手のことをよく見ているのですが、身嗜みもきちんとしていているところを見ると…とても清廉潔白な方なんだと思います。」

ニシル「……!や、そんな……私、いろいろとおっちょこちょいで… …この前も、転んで服を破いてしまったこともありますし……そ、それに、清廉潔白と呼ばれるような……(わたわた)」

玲華「貴女がものを大切にしていることに、変わりはありませんよ。(微笑む)……そのペンダントも、大層大切にされてるようですしね。」

ニシル「…わ… ……。(そう言われて首にかけてある蒼いペンダントをそっと見下ろす)……そう、ですね… ……これは、私にとって、一番大切なもの…。(掛け替えのない、大切な…)(何かを懐かしむようにそれを見つめ続けて)」

玲華「…そう……(ニシルとそのペンダントを交互に見合わせアールグレイをまた一口)……あ、申し遅れました。(ティーカップを下し、ゆっくりと席を立つ)私の名前は西園寺玲華…以後、お見知りおきを。(両手でスカートの端を軽く摘み上げ、会釈する。僅かに揺れた艶のある美髪から香る甘い匂いが、ニシルの鼻をくすぐった)」

ニシル「あ…!(玲華に合わせ自分も席から立ち上がる)に、ニシル・ノウハーンと申します…!(わっ…な、なんだろう… …とってもいい香りがする…)(鼻腔の奥が甘いもので満たされると、目の前の玲華に突然緊張し始める)」

玲華「くすくす…そんなに緊張しなくてもいいのですよ。ここはカフェテリア、肩の力を抜いてリラックスして、楽しい談話をしましょう。(両手を広げてニシルに微笑み、ゆっくりと座る)」

ニシル「(はわわ…ま、またやっちゃった…)は、はい…(合わせて席に座る)」


そうして、二人は夜の静かなテラスで紅茶や焼き菓子を持って語らい、楽しい一時を過ごした。


ニシル「わはは、すごくおもしろいです…♪(いつの間にか玲華と馴染み合っている)

玲華「くすくす…そうでしょう?(ティーカップを片手に愉快そうに笑っている。ふと、テラスから店内の掛け時計を見る)…あら、もうこんなに時間が進んでいらしたのね。ニシルさん、お時間大丈夫でしたか?」

ニシル「ふぇ…?(掛け時計の方に目をやり、「あっ」と声を上げる)わわっ…い、いけない…!私この後行かなくちゃいけないところがありました…!(わたわた)」

玲華「あらあら、それは困りましたね…。…申し訳ございません、楽しかったものですからつい話を長引かせてしまって…。(困った表情でありながらも、とりあえずニシルを落ち着かそうと手を動かす)」

ニシル「(ふえぇん…またカガリさんに怒られるぅ…。)(陰で涙目)わっ…玲華さんのせいじゃないですよ!私の方こそ、ついうっかりしてました…。(苦笑)じ、じゃあ…私はこの辺で…!…あの、今日は付き合ってくれてありがとうございました。もしもまた会いましたら、今度はゆっくりとお話ししましょう!では、おやすみなさい。(席を立ち、玲華に深々と会釈した後、店内の方へ去っていく)」

玲華「はい、私も楽しみにしていますよニシルさん。おやすみなさい。(優しく微笑み、軽く手を振りながら彼女を見送る)……ニシルさん、か…。とっても面白い方でしたわ。(そう呟き、傍らに置いてあった本を手に取り、栞の挟んだページを開き一人、静かに読書を始める)」



ニシル「あうぅ…(よ、夜は少し冷え込むなぁ~…。)(人気のない路上を、寒さで震えながら歩いている)」

ニット帽の少女「ピッ ガシャン(路上の傍らにある自販機で飲み物を購入する)……。(出てきたペットボトルを急いで取り上げ、周囲を警戒するかのように見渡す)」

ニシル「なにか温かいもの飲みた…あ… よかったぁ…な、なにか買おう…。(自販機の後ろ姿を見つけて安堵し、歩み寄っていく)」

ニット帽の少女「……。(誰もいないな…)(ペットボトルのふたを開け)」

ニシル「(お茶がいいかな…ココアがあればもっといいかな…)……!(自販機前に出た時に少女が目の前にいたのでぴょっくと驚く)……。(「すみません」と申し訳なさそうに少女に軽く頭を下げ)」

ニット帽の少女「……!! バッ…!!(視界にニシルが入った途端に大げさに退く)……ッ…!(そして睨みつける)」

ニシル「ふぇ…?(わわっ…ど、どうしたんだろう…。…驚かせちゃったのかな…。)…ぁ、あの…(恐る恐る声をかけようとするが…)」

ニット帽の少女「―――――あたいに近づくなッ!!! ブワッ!!(ペットボトルでニシルを薙ぎ払う)」

ニシル「きゃっ!?(間一髪右へ反って避ける)わ…ぁ…ご、ごめんなさい。驚かせてしまったようで―――――」

ニット帽の少女「……また性懲りもなく…あたいを殺しに来たのか…ッ!!?(震え声をあげながらニシルにペットボトルを突きつける)」

ニシル「ふぇ…!!?ちょ、な、なんのことですか…??わ、私は何も…!(驚きながらも首を傾げて)」

ニット帽の少女「――――――――――殺す…!」

ニシル「……え…?」

ニット帽の少女→ジルコー「(恐怖と怒号に満ちた表情でニシルと向かい合う)…殺される前に……殺してやるッ…!!! ガタガタガタガタ(ペットボトルを握った手が大きく震えだす)」




コプッ…ゴプゴプ…ニュルンッ!(ペットボトル容器内の液体が生ける生命のようにうねりを上げながら飲み口から出てきて、剣状の形となって個体化した)


ニシル「……!?(ペットボトルの飲み物が動いた…!?ど、どうなっているの……いやそれよりも、何か誤解している…!?)(ただただ驚きを隠せずにいる)」

ジルコー「ズシャアンッ!!(ペットボトルを柄とし剣状の液体で自販機を切り裂き、中にある大量のペットボトルや缶を無造作に取り出す)はぁ…はぁ……来るな…来るんじゃない…!!…来るなあああぁッ!!!(ペットボトルや缶をニシルの方へいくつも投げつける)」


グニュニュ… グニュ… …ブパァッ!!!パァンッ!!!パァン、パァンッ!!!!(投げつけられた缶やペットボトルは空中を漂う最中で膨張し、爆発した)


ニシル「(これ…まさか、カガリさんが以前言ってた…!)(「覚醒能力者」というワードが脳裏に横切る)(いけない、避けなきゃ―――――)―――!!?(投げられた缶やペットボトルに当たらないよう逃げようとした時、それらが爆発したのを見て驚愕してしまう)…な、なにが――――――」

ジルコー「ぇせいっ!!(爆発によって視界を遮られたニシルの前に現れて斬りかかる)」

ニシル「きゃっ…!!(すかさず後退して回避する)や、やめてください…!私は本当に、貴女には何も…!!」

ジルコー「そう言って『奴ら』はあたいを殺しにかかってきやがった!もう二度とその手には乗らないさ、死ね!消えろ!! ブンッ、ブンッ!!(怯え声をあげながら、剣状の液体を荒々しく振り続ける)」

ニシル「(そんな… ……こうなったら、できることなら傷つけずに…。)…たあっ!(着実に攻撃を避けながら、荒々しい動作の隙を突きジルコーのペットボトルを手で弾いた)」

ジルコー「―――――ッ!?(ペットボトルが弾かれたことで完全に無防備となるが…)…チラ…(足元に転がっている缶を一瞥)…ふんっ! ブシャアァッ!!(缶を踏みつけると中の液体が勢いよくニシルの顔に噴射した)」

ニシル「(やった…)まずは落ち着いて…話は聞きますから―――――きゃんっ!?(顔に液体が飛び散り視界を奪われてしまう)」

ジルコー「――――ニヤリ… (落ちてあったもう一つの缶を拾い上げニシルの腹部に突き付ける)吹き飛べっ!! ブッバアァッ!!!(その口上と共に缶が爆発し、自らも巻き添えにニシルを吹き飛ばす)…ズザァー!!……ぐっ…!(路上の上に倒れ込む)」

ニシル「あんっ…!!(爆発で吹き飛び芝生の上にうつ伏せに倒れ込む)…うっ…ぅ……(あぅ…今の、すごかっ… …痛い……!)」

ジルコー「ぜぇ…はぁ… ぜぇ……くっ…(よろよろと立ち上がる)…こいつらでとどめさしてやんよ……!(足元に転がってあった大量のペットボトルを拾い上げ、ニシルの頭上に向けて高くほうり投げた)」

ニシル「(いけない…このままじゃ私が…)…ん…っ………!(上半身を起こした途端、頭上のペットボトルを感知する)」

ジルコー「今度こそ―――――消えろッ!!!!(ニシルに掌を向ける)」


ブァンッ、ブァンッ、ブァンッ!!!ブパァッ!!!(空中に投げ出された大量のペットボトルの飲み口から剣状の液体が噴射され、今にもニシルを串刺しにしようと襲いかかった)


ニシル「―――――――!!!(急いで起き上がり天から降り注ぐ棘から一目散に逃げる)」


ザキンッ! ザキンッ! ザキンッ! ザキンッ! ザキンッ! ザキンッ!(ニシルという獲物を追うように液体は次々と襲いかかる)


ジルコー「は、ははは… ……いつまで逃げられるかな…。(逃げゆくニシルを見ながら、何故か体が小刻みに震えている。闘争心に火がついたわけでもなく、何かに怯えているかのように…)」

ニシル「くっ………?(液体から逃げる最中でジルコーの異変に気づく)……。(あの方…さっきの怯え方と何か違う…?……ま、まさか……)……ズザザァー…タンッ!!(何を思ったのか逃げるのを止めて、自ら攻撃の中へ飛び込んだ)」

ジルコー「んな…っ!!(ニシルの取った行動に驚く)…めろ…… ……やめろ、死ぬぞ…?? ……『逃げろ』おぉッ!!!(殺すべき相手に向けて、そう叫んだ)」


ザキンッ! ザキンッ! ザキンッ! ザキンッ! (尚もニシルに殺戮の雨が降り注ぐ)


ニシル「くっ…う…っ…!!(駆け出しながら迫りくる液体をしっかりと回避)…やあああぁぁーーっ!!! ダンッ!!(目の前の地面に突き刺さった液体に足を乗せて駆け上がり、ジルコーのもとへ飛び降りた)」

ジルコー「はっ……!!…ぁ……あ…!(向かってくるニシルに次の攻撃態勢に入るが、何故か手の動きを止めてしまう)」

ニシル「スタンッ(着地すると同時にジルコーに接近し、そして…)―――――――ガバッ…(正面からぎゅうとジルコーに抱きついた)」

ジルコー「………!!?な…なっ……!(反撃を予知していたため咄嗟に目を瞑ってしまうが、抱きつかれたという状況を上手く飲みこず、しばらく硬直してしまう)…おま…ぇ… …なにを……?!」

ニシル「……怖かったんですよね…?(徐々に抱きしめる強さを弱め、ジルコーに囁く)」

ジルコー「なっ…何を…! あんたのことなんて怖くなんか―――――」

ニシル「私のことではなく、"私を殺すことが怖かった"…そうなんじゃないですか…?」

ジルコー「…え………。」

ニシル「気づいたんです。はじめ、貴女が私を見た時の恐怖…あれは自分自身が殺されると感知したからですよね。…でも、さっき貴女が私に攻撃した時…貴女の顔が、初めに会った時と違っているように見えました。(そういって優しく抱きしめる)」

ジルコー「なにを…言って―――――はっ…!(逃げるニシルに『逃げろ』と言ったあの場面が思い出される)」

ニシル「その予感の通り…貴女は私に『逃げろ』と言いました…。そこでやっと気づいたんです…貴女は自己防衛の為に私を追い払おうとした、けれど、殺す気なんて本当はなかったということを…。人を殺したことのない人間が、平気で人間を殺せるはずがない…。」

ジルコー「…あ…… …ぁ…ぁ……(視界がじわりと歪む)」

ニシル「…ちゃんとこうして向き合いたかった…――――私は、貴女を傷つけません。(そう言ってジルコーから離れ、面と向き合って微笑みかける)」

ジルコー「……ぁぁ…あ… ……ストン…(その微笑みを目の当たりにした時、力無くその場に座り込む)…ぅ、あ……すまねぇ……すまねえ…っ… ……うああああんっ…!!(溢れ出るものを抑えきれず、両手でそれを覆った)」

ニシル「(ジルコーをもう一度、そっと抱きしめる)…大丈夫ですよ… もう、大丈夫ですよ…(優しく肩を摩る)」



ジルコー「ぐすっ… ……へっ、なんか、すまなかったな。(真っ赤な目を隠すように目を瞑りながら笑う)」

ニシル「い、いえ…もういいんですよ。(苦笑)貴女を襲った犯人は決して許されない…でも、貴女と向き合った方が、必ずしもそんな人だとは限りません。…まずは挨拶から、ですよ…!(励ますように微笑みかける)」

ジルコー「へへ…そ、そうだな…。次から気ぃつけるよ…。(微笑みにつられる様に笑う数が増えていく)」

ニシル「……あの、その…警察には言ったんですか?そんな物騒な方がこの街にいるなんて…大騒ぎになりますよ。」

ジルコー「いや、言ったんだけどよー…あいつら、半信半疑であたいの話聞いてたから、嫌んなって途中で投げ出しちまったよ。確かにこの街は平和かもしれねーけどよ…危機感くらいもってほしいわポリの奴。(舌打ち)」

ニシル「あはは… そ、そうなんだ…。(苦笑)でも、凄いですね!あんな力があったら…護身も心配ないですね。」

ジルコー「…褒められるのは悪い気はしねえ… …んけどよ、『奴ら』を甘く見ちゃいけねえよ。(表情が一変し)」

ニシル「…へ……?(ジルコーの表情を見て若干恐縮する)」

ジルコー「『奴ら』は……『ネメシス』は…駄目なんだ…。…あたいみたいな能力者じゃないのにも関わらず…強い、強すぎて…怖いんだ…。」

ニシル「(…ネメシス…??)…!はわ、ご、ごめんなさい… …私のせいで、嫌(や)なことを思い出させてしまって…(申し訳なさそうに)」

ジルコー「いや、もう、大丈夫さ。…いや、そうは言いきれないけど…あんたみたいな人に出会って、ちょっと落ち着けたよ。重苦しかった感じがすっかり吹き飛んだ気分だし、もう…何も怯えることなんてない…。…むしろ、ありがとう。あんたに出会えて本当によかったよ。」

ニシル「わぁ…(よかった…)(嬉しそうに笑みを浮かべ)」

ジルコー「…あ、そだ…あんたの名前を教えてよ。あたいはジルコー、ジルコー・ラッセー。ちょっとへんてこな能力を持っているだけの、ただのぐーたら女子さ。(にししと笑う)」

ニシル「私は、ニシルと申します。ジルコーさん…ですね!あの能力は…すごかったですね。私驚きました…!」

ジルコー「んあぁ…自分でもびっくりしたんだけどな。朝目が覚めたら、いきなりこんなことができるようになってて…そりゃあもう!」

ニシル「ふぇ…??(目が覚めたら…?…自分で編み出したものじゃないんだ…。……ま、まさか…いや、今こんな状況であの話を聞くのも…)」

ジルコー「んあ…?どったの?(ニシルの顔を伺い)」

ニシル「……!い、いえ!なんでもないですよ。そ、それは驚きますよね…あはは…。(苦笑)」

ジルコー「ああ、そう?…ん、まあねー…。お陰で裏街のチンピラどもなんか怖くなくなったし…っと、なんか冷えてきたな…。」

ニシル「ぁ…そ、そうですね…。(寒がりのためか、少し体が震えている)」

ジルコー「……。(ニシルの様子を見て、先程破壊した自販機のもとへ歩み寄り、中から缶を取り出す)…ほれ。(ぽいっとニシルにホットコーヒーの缶を投げ渡す)」

ニシル「わわっ…!(上手くキャッチする)あ…あ、ありがとうございます…。」

ジルコー「ニシルって言ったな。……ありがとな。この恩はきっちり返すぜ。(笑って手を振りながら街の方へと去っていった)」

ニシル「…はい…っ!(ジルコーを見送る)……ぁ…。…ゴソゴソ……チャリン…(自販機前にちゃんと百円玉を置いて、温かい缶コーヒーを両手に握りしめてジルコーとは反対の方向へと歩き去った)」




ニシル「はふぅー…あったかぁい…(ジルコーから貰った温かい缶コーヒーを手の内でころころ転がしながら裏通りを歩いている)」

芥川 龍之介似の男「ぶあ゛あ゛ああァァー…(全く人のいない殺風景な裏通りに、水晶玉の置かれた机に伏せて項垂れている)……あ゛ー…喉が…乾いできた…ぞ、ぞ…(ゾンビのような真っ青な顔を露わにし独り言を呟く)」

ニシル「ビクゥ!!(男の断末魔のような叫びに驚愕する)…わわっ……(あ、あの人の声…だよね?)(周囲に自分と男以外の人間がいないことを確認し、再び男の方を見つめる)…な、なにか呟いてる…(性格故に男を若干警戒し、その場から退こうとするが…)」

芥川 龍之介似の男「んー…ん…… …んんっ?(ぼやけた視界にニシルの姿を捉える)お゛おっ!ひざびさの人だ…!お゛ぅーい…ごふっ、ごふっ…!!(枯れた喉でニシルを呼び止め)」

ニシル「ぴゅーん∑(=゚ω゚=;) (ドラ○もんの漫画みたいに驚き飛び上がる)…わ、わたし…ですか……??(汗(恐る恐る振り返って自分の顔を指す)」

芥川 龍之介似の男「ぞうだ松田ァ!!…ごほん、ではなく… ぞうだ、そごのお嬢さんだ。というか、ここにはお嬢さんと私しかいないのだがね…ごふっ、ごふっ…!」

ニシル「(咳をしてる…いや、声が枯れているだけ…?)……あ…(持ってる缶コーヒーと男を交互に見てから、男のもとへ近寄る)……あ、あの… ……もし、よろしければ…(恐る恐る男に缶コーヒーを差し出す)」

芥川 龍之介似の男「(久々に訪れてきた人… 私の力の見せしめに為に、ここはなんとか釘つけておかねば…!)……んんっ…??(凄まじく血走った眼で缶コーヒーを見る)……よ、よいのが…?この私に…?(上半身を起こし)」

ニシル「は…はい…。…なんだか、声が枯れているようですので…。」

芥川 龍之介似の男「お…お……ぬ゛おおおォォーーー!!ありがたや!ありがたや!!こんなにもありがたいことはありゃしませんぞォー!!…ごっほごふっ…!見てみなさい!活気溢れる私の声に驚き、足元のアリたちも硬直してしまったぞ!まさにアリ硬い!ぬぁははははは!!!げっほげほっおえっほ!!……いだだきます。(缶コーヒーを受け取ってぐいと飲み干す)」

ニシル「(形容しがたい表情を浮かべながら男を見ている)あ…はは… ど、どうぞ。(苦笑)」

芥川 龍之介似の男「んぐんぐ… ぷはーっ!!香ばしィ!!いいっ、これ!!缶のコーヒーも悪くないぞ!!…はっ、私としたことが…つい取り乱してしまった。失礼、お嬢さん。(こほんと咳をたて、改まった表情でニシルを見る)」

ニシル「あ、いえ… 喉の方も良くなられて、よかったです。(安堵の色を浮かべ)」

芥川 龍之介似の男→翠宰「とにもかくにも、ありがとうございます。お陰で私の喉も潤い、そして暖かくなったよ。…ああ、これは失礼。私は「芥山翠宰」(あくたやま すいさい)と言う。見ての通り、ここで占い師をしている。」

ニシル「ははは… う、占い師さんなんですか…?(少しびっくりした表情で)あ、私はニシルと申します。(頭を下げて挨拶)」

翠宰「ふむニシル…それがお嬢さんの名か。いい名だな。(にっと笑みを浮かべ)ああ、そうだ。だがひょんなきっかけではじめたものだから、当然私には人の未来を見通すほどの特殊な力なんてものはなかったのだがな。お陰で客には「ペテン師」と呼ばれる始末…だがそれも仕方あるまい。勢いでなろうとした占い師だったが…これを止めようとした時に、ある"力"が芽生えてな。」

ニシル「ほわわ…そ、そうですか…?//(恥ずかしげに)そ、そうだったんですか…(汗) ち、力…とは…?」

翠宰「うむ。ある日、店じまいをする際…ある客人が私の写真を撮りはじめてな。満更でもなかったのだが…撮影した後は「良い事が訪れる」と占い師の私にまるで本物の占い師であるような言葉を言い残し帰っていったのだ。その翌日、どういうことだろうか…!!なんとだな、私に"見えたのだ"!自分の未来が…そして行き交う人々の未来が!

ニシル「えっ… 未来が…見えたんですか…!?(まさか…この人も、例の能力者なんじゃ…?うーんー…どうなんだろう…??)」

翠宰「ああ、そうとも!あの日の翌日…私は本物の未来予知の力を手に入れたのだ。…んだが!…私は既にペテン師として顔が馴染まれている為に…誰も、私の言葉に耳を傾けようとはしなかった…。その為、今日まで、占った客の数はあまりにも少ない。だが、その客人たちをあっと驚かしたのは…紛れもない事実なんだよ。」

ニシル「すごいですね…!未来予知…かぁ…。(すっかり感心している)」

翠宰「ああ!…いやしかしなんと親切なお嬢さんだ。この私の与太話にまで付き合ってくれるとは… どうだろう?先程のお礼と言っては何だが、ここは一つ、貴女の未来を占って差し上げましょう。ああ、料金などはご心配なく。今回は特別にタダで占ってあげようではないか。」

ニシル「ふぇ…?み、未来を…ですか…??(驚)わぁ…あ、ありがとうございます…!(今月ピンチだったから助かった…)」

翠宰「うむ。(頷く)これから貴女に起こる出来事の…その中でも、貴女が一番に望んでいることを予知しよう。…よろしいですかな?」

ニシル「…はっ、はい!お願いします…!」

翠宰「分かりました。ならばこの芥山翠宰、貴女の未来をズビシと当ててやろうではありませんか。心配ご無用です。私の占いは120%、いいや!!!――――――『200%』当たります。(自信満々に誇ってドヤ顔)」

ニシル「はは…そ、それは期待できそうです…。(苦笑)」

翠宰「ふっふっふっ… では、行きますぞ…。(水晶に両の手を向け、意識を集中させる)……はあああぁぁぁぁー……っ……!」

ニシル「…ごくり……(汗)」

翠宰「――――ライライライ ミライライライ コイコイコイ イコウヨウラマチキャバクライ ナイナイナイ カリタオカネデイッテコイ セイセイセイ アイノコクハクツタワラナイ オイオイオイ ナミダトマラヌダレノセイ ライライライ ミライライライ ライライライ ミライライライ んんんん…っ…んんんんん…っ……!!!!っはあああああああああああぁぁぁぁぁーーーーー!(奇妙中奇妙な謎呪文を唱え、水晶に映るニシルの未来を読み取る)」

ニシル「Σ(゜□゜;)(翠宰の占いに驚愕)」

翠宰「……はぁー…はぁー…はぁー……―――――――――『読み取りました』。(汗を布で拭いながら)」

ニシル「……!(ぴょくりと体が跳ね、緊迫した表情へと一変する)」

翠宰「貴女は…人を捜しているようだね?それも、『男性』…か…?」

ニシル「……!は、はい…!!(当たってる…!?)」

翠宰「ふむ… 安心なされ。近い未来、その『男』は必ず―――――――――貴女の前に姿を現す。(はっきりとした口調で)」

ニシル「――――――!!!(目を大きく見開き)……本当…なんですか…!?」

翠宰「私の予知は絶対なのです。どうぞ、ご心配なく…私を信じてください。そして貴女も、貴女自身を信じて…この先の未来を歩み続けてください。」

ニシル「……(緊迫していた表情が一気に和らぐ反面、心の中では更なる重圧感がこみ上げてくる)……はい!(翠宰の言葉に応じ、力強く頷いた)」

翠宰「(ニシルを見て微笑む)…さあ、お行きなさい。夜はもう冷え込んできている、風邪をひいてはなりませんぞ。」

ニシル「ぁ、はい…。(うぅ…緊張してたから気付かなかったけど、た…確かに寒い…)(肩を摩る)あの……本当に、ありがとうございました…!(ぺこりと頭を下げ) 」

翠宰「いえいえ。私はただ、占い師…いえ、人間として当然のことをしたまで…。(ニシルからもらった温かい缶コーヒーを見せながら) 」

ニシル「わぁ。(缶コーヒーを見て笑みを零す)…では、もう行きます。さようなら、翠宰さん。(深くお辞儀をして小走りで去っていった)」

翠宰「ええ、さようなら。(細い目でニシルの背を見送る)……ゆっくりでいい、しっかりと歩きなされ。たとえその未来が…貴女に"幸福"を齎そうとも、"絶望"を齎そうとも…――――――」



――世界政府本部・某一室――


政府軍兵士「ガサガサ…(横長のテーブル一面を覆い尽すほどの大量の書類を、一枚一枚丁寧にあさっている)これぜんぶ…例の覚醒能力者(イヴォーカー)に関する資料ですか…?(驚愕)」

オルガー「ングング… …ぷふぁー! ダンッ(缶ビールを一気飲みし、自分の机に無造作に置く)でなきゃ「こっち」に回ってこねーだろ、アホが。っかぁー!!上層部も面倒くせえもん送りつけてきやがる!こーゆーのは俺らより働き手の多い1班、0班に処理させろっつーの。(ぐだぐだ不満を垂れながらぐてーとしている)」

政府軍兵士「いえ、実はそれが… …これらの資料を預かった者から、「上層部から0班へ、0班から1班へ、1班から我が2班へ」と回ってきたとのことで…(大汗)」

オルガー「ただの盥回しじゃねえかオルァッ!!!!(╬ಠ益ಠ) ふざけんなビチクソ共ガァ!!人を雑用扱いするのも大概にしろよなぁ!!!……おい、それ、もう、3班へ回してこい。(ぉ」

政府軍兵士「た、大尉… 対策係に3班は存在しないのでは…?(唖然)」

オルガー「……おー、そーだったそーだった♪怒りに駆られるあまり、ついありもしないことを言って―――――ってんなことはどーでもいいんだよ!!!!(激怒)」

政府軍兵士「(あんたが言ったんじゃ…)(大汗)」

オルガー「…んま…"その為"に俺達がいるんだけどな。(気を沈め、改まった表情で大量の資料を一瞥する)…今は手がかりをつかむために、地道に、虱潰しに、やってくしかねぇ。…つっても、もう範囲は絞り込めたがな。(懐から煙草を取り出しそうとする)」

政府軍兵士「大尉、ここは禁煙です。 …!早くも何か手掛かりを…?」

オルガー「…チッ…(煙草をしまう)…『覚醒能力者』(イヴォーカー)…最近この名前が公になってきているっつー街がある。南にある街だが名前は何っつーたかな…(後頭部を掻き毟る)」

政府軍兵士「南の国にある街と言えば、ベルフェーノやカトソフが有名ですね。他にもレデギオールにユペタフ…キュラリアに、ギトーに、それからー…―――――」

オルガー「あー、それそれ!『キュラリア』だ、確か。うん、それだ。(兵士を指して)」

政府軍兵士「キュラリア…ですか?あそこは観光地として人気のあるところですね…。確か、その名が記された資料をいくつか目にしたような…ガサガサ…(再び資料をあさる)」

オルガー「そのキュラリアっていうところで覚醒能力者の目撃情報が多々ある。覚醒能力共はいたる国、いたる街に一個人として点在しているが…とくに、そのキュラリアというところには多くの輩が密集しているようだ。理由は解らねぇが、寄せられた資料も合わせると、不思議とほとんどの覚醒能力者とその街には何か関係があると伺えてくる。」

政府軍兵士「……!(オルガーの言葉を聞きながら、資料の幾つかを見て目を見張った)…ほ、本当だ… …ほとんどが、そのキュラリアで目撃されたものばかりです…!いったい何故… …ん、確かここは…政府非加盟国の中にある街ですよね?だから…ですか…?」

オルガー「どぁーほー。んな理由で一つの街に集まるかボケ。隣接する街にいてもおかしくねーのに、"ピンポイントでそのキュラリアだけに密集している"んだよ。」

政府軍兵士「なっ…!!…た、確かに……」

オルガー「きな臭ェぜ… …だけどよォ!そんな街だってのに、未だ大事件が滅多に起こっていないことの方が、俺としては驚きなんだけどなぁ?」

政府軍兵士「えっ…!!?(驚愕)」

オルガー「そいつらは、その街で悠々自適に生活している。報告書で知ったことだが、奴らは街の一般住人と慣れ親しんでいる。というか、そもそも、奴らも住人らしいんだけどなぁ。(立ち上がって、いくつかの資料に添付された写真を順々に見つめていく)」


未来を予知する【-the Previse-】の覚醒能力者―――――「芥山翠宰」


言葉を実体化させる【-the Ward-】の覚醒能力者―――――「瀬時結香」


高速移動を物にする【-the Speed-】の覚醒能力者―――――「佐々木山一樹」


液体を自在に操る【-the Liquid-】の覚醒能力者―――――「ジルコー・ラッセー」


オルガー「その他にも、キュラリアで多くの覚醒能力者が確認されてやがる… だがこいつらは、未だ目立った事件を起こしていない…言うなれば"白"…! …当然、そいつらの中にも"黒"だって存在すらぁ…(項垂れた態勢のまま天井の一角を見上げる)」

政府軍兵士「オルガー大尉…まさか、その"黒"というのは……!!」

オルガー「(そして視線を変え、ホワイトボードに張られた一枚の写真を睨みつける)…覚醒能力者の中でも凶暴凶悪、故に政府でも手が負えない狂気のバケモン… …炎を操る【-the Fire-】の覚醒能力者―――――――」



――――「金坂円神」だ―――――





AM11:15  ――South・M・Land 燃え盛る某国――




××××「(炎炎と燃え盛る街並みを、灰色になった二階建ての家の屋上から一望している)…くっそ、火が強すぎて一服も出来やしねえ…。まだ上手くコントロール出来ねえな…ちきしょう…。ペッ…(ゴールドのジッポーライターを手で弾ませ、その辺に唾を吐く)」


うわっ!唾が落ちてきた!汚え!!(下方で少年の声が聞こえる)


××××「あ゛?皆殺しにしたはずだが…まだ運良く生き残ってた餓鬼がいたみてェだな。(しかし今のうっとおしい声、どっかで聞き覚えがあんな…)(下方へひょいと顔を覗かせる)」

××××(男子)→光太「もー、誰だよーこんなの飛ばしたのー。(棒読み)…あっ!おっ♪久しぶりだね~!僕だよ、和田光太。覚えてる?(屋上の××××に気づいて大きく手を振る)」

××××「…ああ、『あん時』のクソやかましい餓鬼か。俺様の許可なくテリトリーに入って来てるんじゃねえよ焼き殺されてェのか?あ゛ァん!?」

光太「まあまあそう熱くなるなって。今だって熱いけどさ。(燃え盛る街の熱気により尋常ではない量の汗が垂れている)相変わらず暇そうにしているね。(呑気そうに)」

××××「目の前で国が丸々焼けてんのに「暇そう」だとか呑気なこと言いやがる。ちょうど沈めてやったところで今から昼寝しようと思ってたんだよ暇じゃねえんだよ。」

光太「あらそー…まー、これだけ能力を使ったんだ、休息しないと今度は君の身体も燃えちゃうかもしれないからねー。(周囲の、業火に包まれ朽ち果てていく建物を一望しながら)お昼寝時に邪魔して悪かったよ。でもどうせ起きた後は暇なんだろ?壊し甲斐のある街を見つけたんだけど――――――」

××××「――――あの"キュラリア"とかゆーとこか?(不愉快そうに眉を顰める) 」

光太「わぁ!どーしてわかったんだい?すごい偶然ー♪」

××××「とぼけんなクソ餓鬼。テメェ今『街』っつっただろ。俺様は今まで『国』そのものだけを潰してきたんだよ。だいたい街なんてのは規模が小せェから足りねェんだ… 用がそれだけならとっとと失せ―――」

光太「―――――――――でも君は、その"小さな街"だけは崩せなかった…よね?」

××××「ピキ…(ニィっと口角をあげるがその表情は怒りへと変わり始める)」

光太「ここ最近君が行ってきた国崩しを地図で調べさせてもらったらね…某国から一直線に、少しずつ、少しずつ…キュラリアのある国へと進行していることが解ったんだ。…君が初めて手にかけようとしたのがキュラリア、でも残念ながらそれは失敗に終わって、君は国を追われる羽目となった… だから君がいずれあの街を本気で潰しにかかることは十分に予測できていた。…あと一国潰せば、ようやくキュラリアのある国に到達。ねえ、正直武者ぶるいしているんじゃない?くぷぷ…♪ 」

××××「ピキビキビキィ…(額に青筋が立つ) 」

光太「あ、そういえばねぇ!ねえねえ聞いて聞いて!今のキュラリア…かつて君が訪れた時よりも能力者の数はだんだん増えてきているんだよ。もしかしたらさあ、その中にまだいるかもしれないね!どっかの誰かさんをズタズタにした最強の能力s――――― 」


ボアアアアアアァッ!!!!!(男子の頭上から大きな火球がどぷんっと落下する)


光太「うっひゃあ!!(ひょいと火球から逃げるように遠ざかる)」

××××「パキンッ… その減らず口を溶かしてやってもいいんだぞクソ餓鬼ェ…!(火を噴くジッポーライターの蓋を閉め、光太を見下すように睨みつける)…俺様は『お前たち』の頼みでわざわざ協力してやってんだ、利害が一致した上でな。つまりテメェーらが俺様の機嫌を損ねるような真似をすれば、今からでも協定を破って―――― 殺 し て や っ て も い い ん だ ぞ ? ―――――」

光太「(ケッ…相変わらず危なっかしい野郎だなー…)あははー、めんごめんご。次からは気をつけるよー…。(苦笑しているが目は笑っていない)(こいつは敵に回すといろいろと厄介だ… ったく、獣は扱いが難しいな。)」

××××「んで…テメェは俺の動向をきっちりチェックしていたんだと?気色悪ぃ…だが、テメェの言うとおり、俺様の目的地はキュラリアにある。 」

光太「もちろん、ぶっつぶすんだよね?(額の汗を腕で拭い)」

××××「当たり前だクソ餓鬼いちいち聞くんじゃねえよ胸糞悪ぃ…!何もかもブッ潰して、皆殺しにしてやる。(ニタリと狡猾そうに嗤う)」

光太「そんなことをしたら、『あいつ』も黙っちゃいないと思うよ?」

××××「ハッ!『奴』に会った時、次は能力を使われる前に確実に仕留めてやる。『奴』さえ消えれば俺様が"最強"だァ!!!もう誰も、俺様に刃向かうゴミカスどもはいなくなるんだぜ…!!」

光太「…ふーんー…そっ、思い通りになるといいね。(小声で呟く)」

××××「今度はぜってェ容赦しねえ…ッ!!骨の髄まで微塵も残さず、全部焼き払ってやるぜェッ!!!(その眼に殺気の炎が滾る)」

―――『金坂円神』(かねざか えんじん)さんよ。(そう言って炎を避けながら何処かへ歩いて行った)」
光太「とにかく君の目的がこちらの予想通りだと話が早い。僕は先に行って待ってるから、次の国を崩したらあとはよろしくね。それじゃあ頑張って――――

××××→円神「最強は二人もいらねえ… 頂点に座するのはこの俺様だァ!!ヒャッヒャヒャ…ウッヒャハハハハハハハッ!!!!!」

円神「ヒャハハハハ…… ……はぁ…んじゃ、やかましいのも消えたし、一先ず寝るか。(消えることを知らぬ業火の中で横になる)」



――世界政府本部・某一室――


政府軍兵士「…『金坂円神』…!先日、将校率いる部隊を壊滅させた、あの恐るべき重犯罪者ですか…!(ホワイトボードに張られた、歪な笑みを浮かべた男の写真を見て戦慄が迸る)

オルガー「政府の人間なら誰もが知っているように、コイツは南一帯で無差別の殺戮と亡国を繰り返している。(いつの間にか火を付けた煙草を口に銜えながら資料に目を通している)「金坂円神」 20歳。高校1年生の時に度を越えた暴力で退学処分を言い渡され、以来実家暮らしをしていたが突然家出をした。両親に捜索願を出され警察が動き出したが、円神が後に暴走族の一員となっている事実を知り、家庭側は捜索依頼を破棄。両親に見捨てられたあいつはその後も暴走族として各町を転々としながら生き長らえ、キュラリアに移住したんだとよ…(書類に記されている情報を淡々と気だるそうに読み)

政府軍兵士「(さっき禁煙だって言ったのに…)(汗) なんという…(知られざる円神の過去に驚きながら、静かにオルガーの口から出る情報を聞いている)」

オルガー「その後円神はグループから脱退、自ら新しいグループをつくりキュラリアの裏街(ブラックゾーン)というところを中心に活動していたが… 『アリゲーター』っつー別の暴走族と何度も小競り合いをし、結果、街を追われる羽目になった。(一服し、白一色の天井に煙を吐いた)グループの壊滅後円神は街に姿を現さなかったらしいが、一か月前に再び裏街に現れた―――今度は『覚醒能力者』になってな。」

政府軍兵士「で、では…街から姿を消して再び現れたその間に、金坂は覚醒能力者になっていたということですか…?一体何が…」

オルガー「能力に覚醒した根本的な理由はこの際どうでもいいんだよ。問題は、手にした能力をもってキュラリアの住宅街を襲った事件にあるんだ。」

政府軍兵士「なっ…え、円神は一度キュラリアを襲撃したことがあるんですか…!?」

オルガー「テメー資料読んでなかったのかよ。(呆れたような口調で)覚醒能力者になった円神は西側を中心に暴走した。手にしたばかりか、ありぃーは本人の性のせいかは知らねえが、奴の爆発的な能力はみるみると住宅街を焼き尽くし、駆けつけてきた政府の一団もことごとく返り討ちにしたんだとよ。(ぴらりと一枚の資料をめくると、もう一枚のものに書かれていた詳細に目を見張った)…が、ここで思いもしねえ出来事が起きたみてえだ。」

政府軍兵士「…それはいったい…?(食いつくように机から身を乗り出し)」

オルガー「あの街には"『英雄』っていう謎の存在が、人々の安寧を守っている"っつー都市伝説があるんだが… 住民たちの証言から、円神はその英雄にこてんぱんにやられてしまって、んで街から逃げ出したらしい。つまり、"あの化けもんから街を救ったとんでもなく勇敢で強い奴"が、あの街にいたってことだ。」

政府軍兵士「なん…だと……!?(軍の戦力をもってしても討てなかったあの金坂円神から街を守ったなんて… )…し、信じられん……(力抜けたようにすとんと椅子に腰を下ろす)」

オルガー「それから数日が経って、4日前に、円神は再び破壊活動を再開した。今度はキュラリアのある国から遠く離れた国…その街「ベルフェーノ」からな。(その時回転椅子ごと背後へ回り、ホワイトボードの右側に広げられた大きな地図に目をやる。地図には赤いペンで何かのルートや文字が記されていた)…金坂は正真正銘の快楽殺人者だ。快楽殺人者は殺戮そのものが目的だ。だったら、人も場所も問わないから、その行動は"不特定"なものになるはずだ。だけどよう… ここ最近のあいつの活動範囲を見てみろよ。…何か気になったことがあるんじゃねえのか。(兵士の方へは振り返らず地図に視線を向けたまま)」

政府軍兵士「え…?(言われるままに目を細め地図を眺める)……言われてみれば… 円神はガトゥン(ベルフェーノのある国)から東の方向へ進行していますね。それも、ん…っ…??(片手で顎元を摩りながら地図を凝視していると、何かに気づいたかのように目を見張る)」

オルガー「気づいたか。奴の進行ルートは、東に向けて一直線…つまりは"特定"されたものになってらぁ。そして、その直線状にあるものは―――――――」

政府軍兵士「――――「キュラリア」か…!!(がたりと音を立てながら勢いよく立ちあがる) じ、じゃあ… 金坂円神の目的は…!!」

オルガー「ふぅー…(一服し再びデスクに向かう) 円神の目的はただの殺戮行為じゃねえってのは分かるが、だからと言って本当の目的が分かったわけじゃねえ。ただ、あいつには"確固とした目的"がある。それがキュラリアに"ある"ってことは、ほぼ間違いないと見ていいだろうよ…」

政府軍兵士「復讐…でしょうか… (苦い表情を浮かべ)」

オルガー「さァな。理由がどうであれ、このままあいつを野放しにするわけないかねーだろ。あいつはな、今に至るまで2ヶ国を滅ぼしているんだよ。幸い被害国は政府の加盟国にあるとこだったから、住民たちの避難は迅速に行われた。予想された死傷者は思ってた以上に少ない。まあ―――― 今 の こ と ろ は な 。(煙草を口から離し、淡々としていながらも何処か協調を帯びたように言い放つ)」

政府軍兵士「…大尉……?(オルガーの口調の変化を察知したのか、いぶかしむ様に顔を覗き込み)」

オルガー「あいつがキュラリアに向かって進んでいるのは間違いない、けどよ…さっき言ったこと覚えてっか?キュラリアはキネストリン(国名)の最西端にあるとこだ。が、キネストリンは世界政府"非"加盟国だ。」

政府軍兵士「それがなにか問題でも…?(きょとんとして)」

オルガー「…… ……おめぇほんっっっと新米なんだな。精米してやろうか。(半ばキレ気味に) いいか、腑に落ちないかもしれねえがよーく聞いとけ。俺たち政府はな…世界政府非加盟国内での活動は禁じられているんだ。つまり、そこでどんな残酷な事件が起きていようと、政府は絶対に手出しができないよう法律で決まってんだ。(煙草を灰皿に殴りつけるかのように勢いよく押し付ける)」

政府軍兵士「え…えええっ…!!??(仰天)そんな…じゃあ、我々は何のための世界政府なんですか…!!?そんなのって、いくらなんでもおかしいのでは…!?」

オルガー「がなるなよ、るせえ。…俺だって気持ちは同じだがよ。(一瞬怒りの炎を滾らせてた瞳が、瞬きで鎮まった) そうなると政府以外の治安組織が働く訳だが、はっきり言って、今回の事件みてえに首謀者が強大な力を持つ能力者だったら、太刀打ちできる戦力をもっているのは政府しか存在しない。(その後しばらく沈黙が走る)……俺達のところに回ってきた事件も当然、非加盟国内で解決させることはできねえ。」

政府軍兵士「そんな… (悔しそうな顔を浮かべ、握り拳をつくり机を叩いた)……そんなの…おかしいですよ……」

オルガー「……(意気消沈した兵士を横目にいつもの表情に戻る) ばーか。ちったー頭を回せ。確かに非加盟国内では俺たち政府は一切の活動ができねえ…だが、加盟国内ならそれができる。もっと砕けて言ってやろうか?――――――"金坂の野郎がキュラリアに到達する前に決着をつけりゃいい"だけの話だ。」

政府軍兵士「―――――!!(頭を上げてオルガーを見つめる)…そうか…それなら…!」

オルガー「今俺達が置かれている状況を嘆いていても仕方がねえ。くそったれた法律はいづれこの俺が何とかしてやらぁ。だがまずは手柄を取らねえとなぁ… そのためにも事件解決にはあらゆる方向から見つめる必要がある。基本的なことだ、よーく覚えておけ。……あ…(まあいいや。)(手にした資料をデスクに置こうと滑らせるように投げるが、そのまま机上を過ぎて落としてしまう)」

政府軍兵士「大尉……!(いつも腑抜けな一面しか見せない上司の鋭い一面を垣間見、改めて彼の存在を認知する)」

オルガー「話を戻すっぞ。円神の奴はキュラリアに向かいながら破壊活動を行っている。だが俺達はキュラリアで待ち構えてあいつを止めることはできない。だから、あいつがガトゥンとキネストリンの境界を越える前に方を付ける必要がある。ここまではいいな?だが更に問題が一つだけある。円神(能力者)への対抗策だ…!(人差し指で強調し)」

政府軍兵士「はい。将校率いる部隊をもってしても討てなかった相手ですからね… もはや兵器を使わざるを得ないのでは…?あるいはー…円神を倒したという、例の英雄という人物にコンタクトを取って、協力願いを出すのはどうでしょうか?」

オルガー「あまり賢明とは言えねーな。そーなると戦争と何ら変わりねえよ。それに相手は炎を操る覚醒能力者だ。核兵器をブチ込んだところで相殺されちまうのが目に見えてる… あと後者はダメだ。その英雄ってのがどんな奴か知らねえが、得体の知れねえ輩と手を組むなんてお前それ、俺達の存在意義は何処にあるってんだ。やっぱここは、俺が身体を張ってだな~…(冗談半分で腕を回しながら)」

政府軍兵士「いやいやいやいや…いくらオルガー大尉とはいえ、それはあまりにも無茶ですって!(大汗)…うーんー…何か名案があればいいのですが… あ、そうだ。他の班は何か対抗策を考えているのでしょうか?」


――――ガシャアァン…ッ…!!!(その時、壁に設置された棚そのものが落下し、その中でも棚の上にあったガラス状の置物が大きな音を立てて破裂した)


オルガー「ちぇ。……さァ、知らねえな。お頭(つむ)が良くてもお固い連中が多いから、どうせ悩んでいることだろうよ―――――――ぬおわあっ?!?!(大きな音に仰天し飛び上がる)な、な、な… なんだってお゛い゛ぃ゛ッ!!?びっくりしたじゃねえか!!(棚や置物、ガラスの破片などが散乱した床に向かって怒鳴る)」

政府軍兵士「うわっ!!?(オルガー同様に仰天する)あちゃー…どうやら棚受けの金物を固定してあったネジが外れたみたいですね。これもう長いこと使われていたみたいですから。」

オルガー「ちっ、前の連中(※以前部屋を管理していた者たち)か…!後で文句言っといてやる!!(ぬがーと憤怒を散らし)」

政府軍兵士「まったくびっくりしましたよ。いきなりあんな音がしたら誰でも――――――――!(その時何かを閃いたらしく、口を開けたままオルガーと見つめ合う)」

オルガー「ぬぁ…?(会話を止めた兵士の様子を窺い目が合う)…なんだよ、キモいな…(ぇ」

政府軍兵士「き、キモいは関係ないです!(汗) 大尉、閃きました…」

オルガー「ヒラメが閃いただと?(すっとぼけ)………(その後「言ってみろ」と無言する)」

政府軍兵士「ギャグぬかしてる時じゃありませんよ!(汗)……―――――――金坂円神への対抗策です。(初々しくも凛々しい表情でオルガーに応える)」

オルガー「…… …… ……勝てる見込みはあるのか?(ずいと身を乗り出し、兵士を睨みつけるように見つめる)」

政府軍兵士「……!(オルガーの眼光に動揺するも、自ら絞り出した答えを言わんとこちらも身を乗り出す)――――――――"あるかないかじゃありません。やるかやらないかです!"」

オルガー「(兵士のその言葉に大胆不敵な笑みを浮かべる)  よく言った!!それでこそ俺の部下だ。てめぇは新米だがスゴ味がある!今日からてめぇはコシヒカリだ!いいな!?(謎) よっしゃぁッ!これで会議にプランを提出できる。まずは準備だ。行くぞコシヒカリ、名誉挽回だオルァ!!(どたどたと慌ただしく部屋を出ていく)」

政府軍兵士→コシヒカリ「ええええぇぇ!?!?!?(ギャグ漫画並みにびっくり仰天)いや私にはちゃんと名前があってですnって聞いてねえし!!(大汗)ちょ、あ…待って下さいよオルガーさん~~~!!!(急いで資料をかき集め、彼の後を追うように部屋を出る)」





PM17:20  ――キュラリア・街――


結香「るんるんるーん♪(両腕をぶんぶん振り回しながら街中を歩いている)もう夕方だな~。」

ヒロ「…散歩したらもう夕方かー…起きるの遅かったしなぁ(結香の後ろから歩いてくる)……ん?(…あの後ろ姿はー…)おーい、結香ちゃん!(声をかける)」

結香「うーんー…今日はどこ行こうかなー。商店街もいいかも…ふゃ?(声のした方へ振り替える)あっ、ヒロお兄ちゃん♪やほーっ♪(手を振りながらヒロの元へ歩み寄る)」

ヒロ「……やぁ、こんばんは!…買い物途中…だったりしたかな?(にっこり」

結香「うーうん、散歩してたんだよー。(にこにこ)そだ、ヒロお兄ちゃん、また一緒に散歩しよーよー♪」

ヒロ「…うん、いいよ!…今日はどこに行きたいかな?(結香に)」

結香「んー…そうだなぁー……(顎に人差し指を添えて傾げる)…あっ!そうだ、『ダウンタウン』へ行こうっ!」

ヒロ「ダウンタウン?…それは、どういうところなんだい?」

結香「…うん…(突然、後ろめたい表情になる)…実はね、このキュラリアにはおっきな地下の街があるんだ。ボクも一度だけ行ったことあるんだけど…パパや、玲華お姉ちゃんに「とっても危険なところだから入っちゃダメ」だってよく言われるんだ。でも、ヒロお兄ちゃんが一緒なら……」

ヒロ「……俺が一緒なら、大丈夫…そういうこと…かな?(玲華ちゃんもそういうほどに危険な街、か…)」

結香「うんっ。(ヒロの顔を見上げて力強く頷き)…あ、でもねっ!ダウンタウンにはね…『ますたぁ』っていう優しいおじさんがいるんだぁ♪地下は危険だって言われてるけど…どうして危険なのかはボク、本当は分からないんだ。もしかしたら、ますたぁみたいな優しい人だってたくさんいるはずなんだよ??」

ヒロ「……そんな危険な街…とやらにも優しい人ってのはいるんだな……うん、行こうか!…君は何があっても守り抜くからなっ…!(ニッコリ 」

結香「……!ありがとう、ヒロお兄ちゃん…!(ぱぁと明るい表情に戻った)じゃあ、じゃあ…!ボク案内するね。来て!(そう言って人気のない裏路地へ入っていく) 」

ヒロ「…おうよ!(結香についていく) 」

結香「えーっと…何処だったかな…あっ! んっ…しょ…!(裏路地を進んでいくと、人が少数入れるほどの大きなゴミ箱を見つけ、その蓋を開ける)この中から行けるよ!(そう言い足元の台に乗ってごみ箱の中へ身を乗り出す) 」

ヒロ「…ゴミ箱が入り口なのか!…すごい街だなぁ…(結香の後に続いてゴミ箱の中へ) 」


ゴミ箱の中へ入ると、塵芥が散乱する灰色の階段が姿を現す。真っ暗な下へと繋がっており、そこから異様な冷気が漂っている。


結香「うぅ…真っ暗で冷たいなぁ…(少し震えながらぎこちなさそうに階段を下りていく) 」

ヒロ「…本当だなー……ん、これ、着るかい?(階段を降りながら着ていた上着を一枚結香に) 」

結香「ふぇ…?ぃ、いいの…?(ヒロの顔を見上げながら)わぁ…あったかい…♪(= >ω< =) 」

ヒロ「あぁ!…これであったまるかどうかはわからないけど、一枚着るだけでも違うと思うしね!(ニッコリ 」


そうして下り続けていくとようやくうっすらとした明りが二人を歓迎する。二人の目の前に―――――――灰色一色の殺伐とした大きな街が現れた。


ヒロ「…はぇーー…これが、ダウンタウン…?(周りを見渡す) 」

結香「(羽織ったヒロの上着をぎゅうと掴みながら階段を下りていく)……わぁ!…ここが…ダウンタウン…!(異様な景色を前に、期待の色が浮かぶ) 」


ヒロの視界には…建物の隅でうずくまるホームレスや、水の出ない寂れた噴水前でたむろする不良たち、路上でいかにも怪しそうな商売を行っている商人たちの姿が映った。


ヒロ「……(確かに…危険だっていうのもわかるな…用心しなくちゃ、な…)どこから回ろっかな…結香ちゃんはどっか見たいとことか、ある?(結香の方を見て) 」

結香「うーん…人は結構いるみたいだけど… なんだか上とは違って賑わってないみたいだね。(街の様子を窺う)あっ、そうだった。えっとー…えーとー… ど、何処だったろう…??ますたぁのお店。ボクほんとに一度しか来たことないから忘れちゃって…えひひ…(苦笑) 」

ザビーダ「フゥ~……おや、誰か来やがったみてぇだな。よりにもよって何だってこんな辺鄙なとこに……(街の中に上半身裸(デフォ)で立っている)(声-津田健次郎) 」

ヒロ「ハハハッ…(苦笑)…まぁ一回しか来てないならしょうがないよなぁ…よし、一緒に探そうか!」

結香「うんっ!」




PM17:50  ――キュラリア・ダウンタウン――


結香「うーんー……ますたぁのお店、何処だったかな。(額に手を当て周囲を見渡している)」

ザビーダ「やれやれ……ツイてないねぇ、あんたら。(町の真ん中で) (声-津田健次郎)」

ヒロ「…うーん…なんか特徴とかない?色とか形とか…(結香の横を歩いている)」

結香「ふぇー?わっ、はだか!はだかの王様だぁ♪(ザビーダを指して興奮)えっとね、喫茶店だってことは知ってるんだ。でもここさ、建物はみぃーんな灰色だから、何処に何があるか分からなくなるよ~…。>< 」

ザビーダ「(結香にニィッっと白い歯を見せる)…惚れちゃう? ま、おふざけはさておき……どうにも頼りなさそうな野郎だが……一人で嬢ちゃん守りきれんのか(ヒロを見ながら、呟きのトーンで)(声-津田健次郎) 」

ヒロ「…ふぅー…そんなことを言う奴は多いけどさー…俺を甘く見ないほうがいいぜ(ザビーダに)……あぁー……(周りの建物を見る)…それもそうか…ここの人に聞いてみるってのはー…どう…? 」

結香「ほ、ほれ…??(解っていない模様)んー…でもかっこいいよ!男前って感じだね♪ ヒロお兄ちゃん頭いいね!あ、じゃあー… ねえねえ!喫茶店のある場所知らないですかー?(ザビーダに尋ねる) 」

ザビーダ「っほほぉ~…勇ましいニィチャンなこった。……覚悟はできてんだろうなぁ?(急に戦闘態勢) …俺に訊いてる?ん~……さあ、どこだったかねぇ(いい加減で白々しい)(声-津田健次郎) 」

ヒロ「……やるってのかい?(ザビーダを睨み) 」

ザビーダ「見慣れねぇ連中がのこのこと、こんなとこまで……その覚悟がどの程度のモンか、俺が直々にテストしてやる。 クルクルクルクルクルクルッ、カシャッ!!──────ドゥンッ!!(銃を取り出すや否や、それを自分に突きつけ、ぶっ放した)────────コォォォォォォォォォォォ(疾風のような闘気が沸き起こる) (声-津田健次郎) 」

不良共『でさー、それがよー… はははっww冗談きついわーw(水の出ない寂れた噴水前で二人組の不良がたむろしている)』 」

結香「はだかのお兄ちゃんも知らないのかー……!けっ、喧嘩はダメだよー!!(二人の間に割り込み、二人の顎元に人差し指を添える)……あっ!ねえねえ!お兄ちゃんたち!(噴水前の不良たちに平然と声をかける) 」

ヒロ「…おっ…ごめんよ、結香ちゃん…いや、そっちに敵意がないなら何もする気はないって… 」

不良「んあ…?どったのじょーちゃん。(一人が応える)」

結香「うん、喧嘩はめっ。めっ、だよっ?(笑顔でヒロとザビーダに)何処かに喫茶店ってありませんかー?場所分からなくて困ってるの…。(不良に) 」

ザビーダ「おいおい…(闘気が消え、銃をしまう)調子狂っちまうじゃねぇか。…ま、女の笑顔を守るためだったら、しょうがない。 ……ほんと、ここは困らないねぇ...(呟く) (声-津田健次郎) 」

不良共『喫茶店ー…? ああ、それならおい、あそこにあったよな?確か『駅』の近くに。 あーあー!あったな、そういや。ああ、じょーちゃん。確か『駅』のすぐ近くにあったと思うぜ。ここをまっすぐ行って突き当たりを右な。』 」

ヒロ「…!(結香の笑顔を見る)そういうことだ、やめとこうや…(ザビーダに)(…不良に普通に声かけるとは、すごい度胸…)(結香の方へ歩く) 」

結香「わあ、ありがとー♪(微笑)ここまっすぐ行って右行くとあるらしいよ。いこっ、ヒロお兄ちゃん。(てけてけと小走りに進んでいく) 」

ヒロ「…そっか!…あぁ、行こう!(結香の後ろを走る) 」

ザビーダ「…おぉいちょい待て。たったふたりじゃどうなっちまうもんか分かったもんじゃねぇ。……俺も、同行させてもらおうかね。────────(横目で不良達の姿を捉えつつ、結香についていく)(声-津田健次郎) 」


走っていくこと5分、三人は通路を抜けると広間へと出た。そこには廃墟となった灰色の駅が存在していたが、その一部は黒く焦げており、また周辺には多くの花束が添えられていた…


結香「(駅を見て急に閃いたかのようにぴょくんとなる)あっ、思い出した…。ここ来たことある…!たぶん、ますたぁのお店はこの辺にあると思うよ。んー…。(きょろきょろと首を動かしながら歩く)」

ヒロ「……(この駅…もう使われてないのか…)(駅を見て)…思い出した…!? 」

ザビーダ「ふ~む……嬢ちゃんの故郷、ってとこか?にしては……随分と不釣り合いなほど寂れちまったもんだ。 …ちと、風に探りを入れさせてみるか。──────(声-津田健次郎) 」

結香「えっとー… あっ!ここっ!ここだよ!!やっと見つけたぁ~…!(『みずたまり』という看板が貼られた灰色の建物を指す)うーうん、ふるさとじゃないよー?ボクもこんなところに駅があったなんて知らなかったしね。(駅の方を、首を傾げながら見つめる) 」

ヒロ「…おっ、そこか!…(建物の前で足を止める)」

結香「…わぁ…ほんとに久しぶりだよ。ボク一人じゃ迷子になってこれなかったかも…。ますたぁとは時々、上の街でも見かけてお話しするけど… はぁ~…ますたぁのケーキ、早く食べたいなぁ…」

ヒロ「…めっちゃ広かったもんな…あの道教えてくれた人たちに感謝しないとなー…(結香の隣に立つ) 」

ザビーダ「ほぉ……こいつが嬢ちゃんの探してたブツってか。 おっ、そうだな(結香に)(声-津田健次郎) 」

結香「えへへ… ますたぁのところのケーキ、とっても美味しいんだよ~♪ カランコロン♪ (そう言って喫茶店の中へ入る)」

ヒロ「…ちーっす(結香に続いて店内へ) 」

黒縁の眼鏡をかけた男性「いらっしゃま… おや…?(来店した結香たちを見て、驚きと嬉しさを含んだ顔を見せる。コップを吹いている最中だったようで、手に持っていたコップをそっと棚に戻した)」

結香「ますたぁ~~♪♪(= >ω< = )=3 (小走りでカウンター席へ)お久しぶりっ♪今日はこっちから会いに来たよ~! 」

ザビーダ「よぉ『ますたぁ』とやら。ちぃと、邪魔するぜ...(ずかずかと容赦なく喫茶店に入り、図々しくどっかりとテキトーな席につく)(声-津田健次郎) 」

黒縁の眼鏡をかけた男性→ますたぁ「いやあ…びっくりしました。まさか結香ちゃんの方からお店に来てくれるなんてね。嬉しいですよ。しかしよくここまで来れて……? お友達の方、かな?いらっしゃいませ。(ヒロに会釈し)ははは… どうぞ、お好きな席へ。(微笑しながらザビーダに) 」

ヒロ「…ええ、結香ちゃんとは仲良くやってますよ(ニコニコしながらますたぁに) 」

結香「うんっ♪ヒロお兄ちゃんと、裸のお兄ちゃんのおかげでますたますたぁの店まで来れたんだよっ。(カウンター席に座ってにこにこ) 」

ザビーダ「そうそう。一見偶然に見えた出会いは、ところがどっこい、必然なもの。俺らもう立派なお友達ってわけさぁ。そうだろ~嬢ちゃん。ハッハッハ!!(ぇ(結香に肩組んできてニィっと歯を見せながら)(声-津田健次郎) 」

ますたぁ「なるほど、そうでしたか。 やはり、結香ちゃんのお友達でしたか。どうぞ。質素な造りの店ですが、もてなしの方は… っと、ご注文は何になさいますか。結香ちゃんのお友達ということで、本日はサービスいたしますよ。(微笑む) 」

ヒロ「…そうっすねぇ…オススメの商品は何かあります?(ますたぁに 」

結香「わっ、うんっ♪裸のお兄ちゃんも、ボクの友達だね♪(友好的な笑みを浮かべる)ますたぁ、おススメのケーキ食べたい!あと、アップルジュース♪ 」

ますたぁ「ふふ…『本日のケーキ』ですね?(微笑みながら結香に)では、当店自慢の日替わりメニュー『本日のケーキ』はいかがでしょうか。結香ちゃんも一押しですよ。 」

ザビーダ「じゃ、同じ物を。 ………で、だ。ただ物食いにきた、ってのが目的じゃあないんだろ?(声-津田健次郎) 」

ヒロ「お、そうっすか!…じゃあ、俺もそれいただきますかね… 」

ますたぁ「かしこまりました。(棚からグラス一客とコーヒーカップを二客棚から取り出し、それぞれにアップルジュース、コーヒーを淹れる。) 」

結香「ひぇ…気づかれちゃった…。(ザビーダの問いに苦笑する)……ねえ、ますたぁ…―――――最近ここに、『お兄ちゃん』、来なかった…?(前髪で目が隠れる) 」




その時ヒロの脳裏には、以前結香と一緒に訪れた玩具屋で聞いた、彼女の兄の話が横切った。


ザビーダ「そりゃあな……わざわざガラの悪そうな連中に聞き込みかましてまで来たがるなんざ、普通じゃないと思うだろ?(声-津田健次郎) 」

ヒロ「……(『お兄ちゃん』……やっぱり、か…)(結香の顔を見る) 」

ますたぁ「トポトポ…(コーヒーを淹れる最中、伏し目に結香を一瞥する)…いいえ。もう…"2年間"も会っていないですね。(冷蔵庫を開いて、中からカットされたタルトを取り出す) 」

結香「2年間… …そうか…『あの日』、家を出ていった時と同じだね。あれからここにも来なかったんだ…(伏し目がちになり) 」

ヒロ「2年間も、か…2年間も、妹の前から姿を…(何かがよぎったかのように、しばらく目を閉じる) 」

ますたぁ「…結香ちゃん、君はもしかして、お兄ちゃんを捜して此処まで来たのかな。…君のお兄ちゃんのことは知っているけれど、『あの日』以来から、私はあの子をここで見かけたことは一度もなかったよ。…ただ―――――コト…(ヒロとザビーダのもとにコーヒーを、結香にはアップルジュースを、そして三人にグレープフルーツのタルトを差し出す) 」

結香「……(やっぱり…)……!(目に前に置かれた、そのグレープフルーツのケーキを見て、何かひらめいたような顔を浮かべる) 」

ザビーダ「兄貴か……こんなに可愛い嬢ちゃん一人ほっぽって、トンズラかよ。ま、見つけたら縛り付けてくれる。(声-津田健次郎) 」

ヒロ「(…ただ…?)(…目を伏せたままコーヒーを飲む) 」

ますたぁ「…最後にあの子がこの店に来た時、ふふっ… 幸せそうに、大好きなこのケーキを食べていたよ。…『本日のケーキ』、グレープフルーツのタルトでございます。(三人に勧めるように) 」

結香「……(『お兄ちゃん』が好きだった…グレープフルーツ…)……あむ…(ゆっくりと一口食べる)…ん…ん… ……あむ…(二口目で、体が静かに震える)……ん……ん… ……う…っ… …うぅ…!うっ… あ…ぅ…―――――うああああぁぁん!! (突然目にいっぱい涙を浮かべ、わんわん泣いた)…美味しい… 美味しいよぉ…っ…!ますだあぁ…!! やや、やっばり!…ますだぁのゲーキ……ほんとに美味しくて… …あ、うわあああああん!!(小さな瞳から大きな雫がぽたぽたと滴る) 」

ザビーダ「ほぉ、なかなかの………ん?オイオイ、いったいどうしたもんか。(声-津田健次郎) 」


甘酸っぱくもほのかな甘みが漂うそのケーキは、どこか、懐かしい温かな思い出を蘇らせるような、不思議な味をしていた。


ヒロ「…(結香の横に行き、彼女の背中を無言でやさしくさする)…… 」

ますたぁ「…兄妹ともに、君たちは本当に優しい子だ。(そっと目を瞑り、温かい表情で結香と向かう) 」

結香「うあ…ああぅぅ…!…うぅ……ぅ…!『お兄ちゃん』が大好きだったグループフルーツ… …ボク、ね… ほんとはね…!グレープフルーツ苦手なんだ…。……でも、なんでだろ… うっ…ますたぁのケーキが…ひっく!…こんなに美味しいのは何でなんだろ… うぅ……!なんで、だろ… …ううぅ…!!(両手で顔を覆い、静かにヒロに身を委ねる) 」

ザビーダ「……女の泣き顔は何か、きついもんがあるな。 ……外の空気でも吸ってくるか。(そう言って察するように喫茶店を出ていく)(声-津田健次郎) 」

ますたぁ「(店を出るザビーダに軽く会釈する)…おかわりはたくさんありますからね。好きなだけ食べてください。(そう言うとますたぁ自身も察して、少し離れた所で食器を拭き始める) 」

ヒロ「…(身を委ねた結香の肩に手を回す)…兄貴が、美味しくしてくれてる…のかもな…もしかしたら、だけど…な(もう片方の手で彼女の頭に手を置く) 」

結香「うん… うんっ…!(ヒロの腕の中で静かに泣いている)……ほんとはね…『お兄ちゃん』、この街の何処かにいるかもしれない…って、時々思うんだ。…必ずね、ボクの誕生日や、街の大きな祭りのある日や、クリスマスの日とかに…家の、ボクの部屋の…窓の傍に、『手紙』を置いてってくれるんだ。…『ワスレナグサ』の花びら、いつもそれを置いてってくれる…。 」

ヒロ「ワスレナグサ、か……(肩に回した手をポン、ポンと叩きながら)…(確か、ワスレナグサって…俺のことを忘れないで…とかいう意味があったような気がするな…)手紙…その手紙には…どういうことが書いてあるんだい…? 」

結香「(首を左右に振う)何も書いてないの…けど、それがボクには、『お兄ちゃん』からの手紙に思えるの…。…ひっく… …『お兄ちゃん』のこと…ずっと忘れない…。大好きだから、世界でただ一人…ボクだけのお兄ちゃんなんだから…。(その時、ようやく笑顔が戻る)…懐かしいなぁ… ボクが泣いていたら… よく、こんな風に、ぽんぽんってしてくれた。(ヒロに) 」

ヒロ「……そうか……優しい、兄貴だったんだね……兄貴、早く見つかるといいな……俺も…手伝えることがあったら…力になるから(にっこりとする) 」

結香「……!(ヒロの言葉に嬉しくなる)……ありがとう。『お兄ちゃん』がいないと悲しくなることも…あるけれけど… でも、寂しくなんかないよ。だってボクには、ヒロお兄ちゃんがいて、玲華お姉ちゃんがいて、パパとママがいて、街のみんながいてくれるから。 …ヒロお兄ちゃん、ケーキもっと食べよっ。いっぱい泣いたら、お腹すいちゃった…えへへ…。 」

ヒロ「…あぁ、そうだな…!…どんどん、食べよう!…すんません、ケーキ4つ! 」

ますたぁ「おやおや。(二人をほくそ笑みながら見つめる) 」

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最終更新:2020年09月10日 09:00