奇襲戦法その三

ラトビアンギャンビット


1. e4 e5
2. Nf3 f5

これぞ奇襲戦法の代表格とでも言うべき定跡です。センターポーンを犠牲にしてキングサイドおよびセンターからの猛攻を狙います。
黒はキングサイドの防御をおろそかにする上にクイーンが早めに出るなど、オープニングの原則をことごとく無視していますが、そのインパクトは相当大きいです。相手が受け方を知らないならば、最初の10手で持ち時間を相当使うでしょう。

3. Nxe5

3. Bc4!? という荒業もあります。
ポーンアップを気にせずに、弱くなったキングサイドにアタックをする返しです。非常に受けるのが難しいので、ここはしっかりと準備しましょう。
以下、3...fxe4 4. Nxe5 Qg5 5. d4 Qxg2 6. Qh5+ g6 7. Bf7+ Kd8(下図左) 8. Qg5+ Qxg5 9. Bxg5+ Be7 10. Bd5 Bxg5 11. Nf7+ Ke7=
8. Bxg6 なら 8...Qxh1+ 9. Ke2 Qxc1! 10. Nf7+=(下図中央) とドローラインに持ち込みます。白がドローを避けてもほぼ互角、後の展開を見ると黒がちょっといいかもしれません。
ドローが嫌なのであれば、9...Qxc1 ではなく、以下のラインがあります。
9...c6 10. Nc3 Kc7 11. Bf4 hxg6 (11...Qxa1? 12. Nxd7 Kd8+-) 12. Qg5 Be7(下図右) 13. Nf7+ Kb6 14. Na4+ Ka6 15. Nc5+ Kb6 16. Rxh1 +/-



この辺のラインは非常に難解な上に、お互いに一手のミスが死に直結します。
ラトビアンを指す上では知っておかなければなりません。
と、ここまでだけでも非常に多くのことを書きましたが特に 9. c6 のラインは複雑ですので、使うのであれば頭に叩き込まなければいけません。
では、続きを書きましょう。

3...Qf6

3...Qe7 という手もあります。グレコがよく使ったはめ手でグレコバリエーションと呼ばれています。
興味のある人は調べてみてください。
http://www.chessgames.com/
で調べれば出てくるはずです(ECOコードはC40です)。

4. d4

4. Nc4 という手もあります。
このときは、4...fxe4 5. Nc3 Qg6 6. d3 Bb4 7. dxe4 Qxe4+ (7. Bd2 Nf6) 8. Ne3 Bxc3+ 9. bxc3 Ne7+/-

4...d6
5. Nc4 fxe4
6. Nc3 Qg6
7. f3!

おそらく、この局面における最善手です。ですが、この定跡を知っていなければなかなか指せない手だとおもいます。
他には 7.Bf4 や 7. Nd5 などがありますが、どちらもそれほど白はよくなりません。白のクイーンがアクティブになりづらいからです。

7...exf3
8. Qxf3 Nc6
9. Bd3 Qg4
10. Qe3+ Be7
11. O-O Nf6+/-

黒の狙いはe.fファイルを使った攻撃でしたが、上手く事がはこんでません。
7. f3 が強力な手であるが故に、逆に攻め込まれそうにも見えます。
駒数は互角ですが、白の駒の働きが良いので白優勢です。
11...Qxd4 と取る手もあります。その場合、12. Nb5 と飛ばれるとc7のポーンを取られることになります。

最後に、実践譜を紹介しましょう。
1992年に指された、ソコロフの試合です。マスターがこの定跡を選択するのは珍しく、R2500以上のプレイヤーの試合で黒が勝ったゲームはこれしか見つけられませんでした。


White "Apicella, Manuel"
Black "Sokolov, Ivan"
[Result "0-1"]
[ECO "C40"]
[WhiteElo "2435"]
[BlackElo "2630"]

1. e4 e5 2. Nf3 f5 3. Nxe5 Qf6 4. d4 d6 5. Nc4 fxe4 6. Nc3 Qg6 7. Bf4

ここで、白はビショップを展開します。

7...Nf6 8.Qd2 Be7 9. O-O-O O-O 10. h3 a6 11. d5 Nbd7 12. Kb1 b5 13. Na5 Nb6 14. a3 Nfd7 15. g3 Nc5 16. Bg2?

敗着ではありませんが、あまり良くない手です。
ここは 16. Be3 と下がって、黒の狙いを消しつつ強いナイトに圧力をかける指し方が良かったと思います。

16...Rxf4!=/+ 17. Qxf4 Bg5 18. Bxe4 Nxe4 19. Qxe4 Bf5 20. Qd4 Bxc2+ 21. Ka2 Bf6 22. Qd2 Bxd1 23. Rxd1 Re8 24. g4 Qf7 25. Ka1 Be5 26. Qd3?

致命的なミス。
ルークを取られた時点で黒が良かったのですが、この手はさらに状況を悪化させました。

26...Qxf2-/+ 27. Rf1 Qg2 28. Qf5 Bf6 29. Rf2? Qxh3-+

おそらく、g5 とポーンが突けないことを白は見逃していたのでしょう。

30. Nc6 Qh6 31. Ka2 Qg5 32. Qxg5 Bxg5 33. Nb4 Bf6 34. Nxa6 Bxc3 35. bxc3 Nxd5-+ 0-1





最終更新:2010年08月28日 04:02
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