総括所見:中華民国/台湾(第1回独自審査、2017年)


原文:英語
日本語訳:平野裕二(翻訳にあたっては台湾政府による中文訳も適宜参照した)〔日本語訳PDF

子どもの権利条約の実施についての中華民国/台湾の第1回報告書に関する総括所見

I.はじめに

1.2014年6月、中華民国(台湾)の立法院は、子どもの権利条約実施法(「実施法」)を可決した。同法は2014年11月20日に施行され、CRCの国内法上の調和化の枠組みを提供している。2016年4月22日、台湾の立法院はCRCの採択を支持する法案を可決し、これを受けて総統は2016年5月にCRCへの加入書に署名した。
2.行政院は、実施法にしたがって2016年11月に第1回国家報告書を発表し、その英語版は2017年3月に利用可能とされた。第1回国家報告書の審査を行なうため、台湾政府は、子どもの権利に関する国際的な独立専門家5名を招聘して独立審査委員会(「審査委員会」)を設置した。5名の専門家とは、ヤープ・ドゥック(委員長・オランダ)、ジュディス・カープ(イスラエル)、ナイジェル・カントウェル(英国/スイス)、ローラ・ランディ(北アイルランド)およびジョン・トービン(オーストラリア)である。
3.審査委員会は、2017年3月に審査委員会に提出された台湾の第1回報告書を検討した。審査委員会は、子ども団体および子どもたちのグループを含む市民社会組織から報告書を受領した。審査委員会は、2017年6月に台湾に対する事前質問事項を提出し、2017年9月に詳細な文書回答を受領した。審査委員会はまた、事前質問事項および事前質問事項に対する国の回答を受けて市民社会から提出された多数の追加報告書も受領した。
4.審査の一環として、2017年11月20日、審査委員会は子どもたちおよび市民社会のメンバーと非公開の会合を持った。審査委員会は、2017年11月21日および22日、政府代表団と公の対話を行なった。審査委員会は、2017年11月24日にこの総括所見を採択して発表した。
5.審査委員会は、CRCを実施するために台湾政府が行なっている真剣かつ誠実な努力を認知する。審査委員会は、関連するすべての省庁および政府機関の代表が出席した審査における政府との建設的対話に、大いなる謝意を表明するものである。市民社会およびとくに子どもの積極的参加も、審査プロセスにとって必要不可欠であった。
6.審査委員会は、審査委員会に実質的支援および後方支援を提供してくれたことについて、衛生福利部(およびとくにそのCRCチーム)に謝意を表明する。

II.国際人権条約の承認

7.審査委員会は、CRCのみならず次の国際人権条約も採択する旨の台湾の決定を歓迎する。
  • (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約
  • (b) 市民的および政治的権利に関する国際規約
  • (c) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
  • (d) 障害のある人の権利に関する条約

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6))

立法
8.審査委員会は、CRCが留保なしに接受されたことおよびCRCの実施のための特別法が採択されたことに、評価の意とともに留意する。審査委員会は、政府が、国内法を条約の規定と調和させることを目的として国内法の見直しを継続するなかで、子どもの権利影響評価のプロセスを実行するよう勧告する。
9.審査委員会は、実施法を改正し、国内法の規定との抵触がある場合にはCRCの規定が優先されることを明示するよう勧告する。
10.審査委員会は、政府に対し、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関するCRCの両選択議定書を採択するよう奨励する。
包括的な国家的行動計画
11.審査委員会は、政府が、広域行政圏および地方の当局、市民社会組織、関連の専門家、子どもおよび親の関与を得ながら、CRCの実施のための国家的かつ包括的な行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。
調整
12.審査委員会は、子どもおよび若者の権利と福祉に関する政策の調整および促進を任務とする「子どもおよび若者の福祉および権利促進チーム」が設置されたことおよび行政院の「子どもおよび若者の福祉および権利の促進のための委員会」が設置されたことを歓迎する。審査委員会は、政府が、これらのチームおよびグループに対し、その任務を遂行するための十分な権限が与えられ、かつ十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう勧告する。
13.審査委員会は、立法院に子ども委員会を設置するよう勧告する。同委員会は、子どもおよびその人権に影響を与える立法提案の作成にあたり、子ども、関連の職能団体および市民社会と協議するべきである。
独立の監視
14.審査委員会は、台湾がまだ独立の国内人権機関(「NHRI」)を設置していないことに懸念とともに留意する。
15.審査委員会は、CRC委員会が一般的意見2号(2002年)で行なっている勧告にしたがい、子どもの権利を監視するための専門部署を有するNHRIまたは子どもオンブズマン事務所もしくは子どもの権利コミッショナーのいずれかを、遅滞なく設置するよう勧告する。このような機関はパリ原則を遵守するものであるべきであり、かつ、官民の部門に関連して子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情申立てを、子どもに配慮したやり方で、申立人のプライバシーおよび保護を確保しながら受理し、調査しかつ処理することができるべきである。
苦情申立て手続
16.審査委員会は、教育、社会福祉、保健および少年司法の現場で子どもに提供されている苦情申立ての機会についての情報に、評価の意とともに留意する。
17.審査委員会は、苦情申立ての機会および手続に関する情報をすべての子どもが受け取るべきであることを勧告する。政府は、これらの手続が子どもにやさしいものであること、子どもに対して十分な支援(適切なときは親または権限のあるNGOによる支援を含む)が提供されること、および、子どものプライバシーが保護されることを確保するべきである。さらに審査委員会は、政府が、苦情を申し立てた子どもおよび子どもに代わって苦情を申し立てた者を報復、脅迫または他の悪影響から保護するために必要な措置をとるよう勧告する。苦情申立て手続は独立の再審査に服さなければならない。
資源配分
18.審査委員会は、第1次子ども予算を提出したことについて政府を称賛する。審査委員会は、公共予算編成に関する子どもの権利委員会の一般的意見19号(2016年)にのっとり、政府が、公の対話(子どもたちとの対話を含む)を通じて透明なかつ参加型の予算編成を確保するとともに、資源の配分および使用の十分性、有効性および公平性を監視しかつ評価するための機構(地方当局レベルにおけるものを含む)を設置するよう勧告する。
データ収集
19.審査委員会は、家庭環境および代替的養護、保健および福祉、教育ならびに特別な保護措置などの分野における子どもの権利の実施に関わる統計情報の提供を評価する。
20.実施に関する一般的措置についての子どもの権利委員会の一般的意見5号に照らし、審査委員会は、政府が、データ収集システムをさらに改善するとともに、中央データ収集部署の設置を検討するよう勧告する。収集される情報は、条約のすべての分野を網羅し、かつ、ジェンダー、年齢、都市部/農村部の別ならびに先住民族的背景および民族的背景ごとに、ならびに、妥当かつ適切な場合には障害、国籍および性的指向ごとに、細分化されるべきである。
意識啓発および研修
21.審査委員会は、子どもの権利に関してさまざまな省庁が中央レベルで提供している研修および地方レベルで提供されている研修に留意する。しかしながら審査委員会は、研修の質および有効性に関する情報がないこと、および、焦点が主として公務員に当てられているように思われることを懸念するものである。
22.審査委員会は、政府が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療専門家、施設養護および里親養護の仕事をしている専門家ならびに子どものための特別な保護措置の分野で働いている専門家、警察、裁判官および検察官ならびに少年司法の分野で働いているその他の者など)を対象として、子どもの権利に関する研修を確保するよう勧告する。すべての研修において、CRCの一般原則(差別の禁止に対する権利、第1次的考慮事項としての子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利ならびに意見を聴かれる権利)および発達しつつある能力の原則に、特別な注意が向けられるべきである。すべての研修を継続的な監視および評価の対象とすることが求められる。親に対しても、学校、地方政府、福祉・保健サービスおよびメディアを通じて子どもの権利に関する情報が提供されるべきである。
市民社会および企業セクターとの協力
23.審査委員会は、政府と市民社会組織との肯定的関係および開かれた対話を称賛する。審査委員会は、台湾における子どもの権利の実現をさらに進めていく手段として、このような協力を奨励する。
24.企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についてのCRC委員会の一般的意見16号(2013年)を参照しつつ、審査委員会は、政府が、とくに子どもの就労および労働条件、メディア(ソーシャルメディアおよびインターネットを含む)ならびに環境保護の分野で企業セクターが子どもの権利を遵守することを確保するための規則を定めかつ実施するよう、勧告する。

B.子どもの定義

25.審査委員会は、台湾における成人年齢が20歳であることに留意する。審査委員会の任務は18歳未満の者に限定されている。しかしながら審査委員会は、台湾におけるCRCの実施が、18歳または19歳の若者に対する権利の適用可能性に関する不整合および混乱を生み出す可能性があることを強調したいと考えるものである。
26.審査委員会は、政府が、国際条約機関の勧告にしたがって最低婚姻年齢を男女ともに18歳と定めることにより、現行の最低婚姻年齢の調和を図る法律の制定を公約としていることに、評価の意とともに留意する。

C.一般原則

差別の禁止(第2条)
27.審査委員会は、とくに被害を受けやすい立場に置かれた子ども(先住民族の子ども、LGBTIの子ども、障害のある子どもおよび無国籍の子どもなど)に対する差別を防止し、かつこれらの子どもを差別から保護するためのさまざまな法的規定に関して提供された情報に、評価の意とともに留意する。しかしながら審査委員会は、これらの規定を確保し、かつ性別平等教育法の実施への抵抗に対処するための政策およびプログラムの有効性に関する情報がないことを懸念するものである。
28.審査委員会は、国が、子どもたち、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家および市民社会と継続的に協議しながら、引き続き、とくに被害を受けやすい立場に置かれた子どもの差別を受けない権利に関する意識啓発キャンペーンの促進および支援を図り、かつ、子どもの差別を禁じたさまざまな法的規定の全面的実施を確保するために必要な措置をとるよう勧告する。
第1次的考慮事項としての子どもの最善の利益(第3条第1項)
29.審査委員会は、子どもの保護に関連する立法および民法により、裁判所その他の公的機関による決定は子どもの最善の利益に基づいて行なわれなければならないとされていることに留意する。審査委員会は、政府が以下のことを確保するよう勧告するものである。
  • (a) この権利が、子どもの最善の利益に関する〔CRC〕委員会の一般的意見14号と一致する形で解釈されること。
  • (b) この権利が、立法上、行政上および司法上のあらゆる手続および決定ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすあらゆる政策、プログラムおよびプロジェクト(出入国管理および少年司法に関する法令を含む)において一貫したやり方で統合されかつ解釈されること。
生命、生存および発達に対する権利(第6条)
30.審査委員会は、子どもの自殺率および自殺未遂率の高さを国が認知していることに留意するとともに、国が、子どもおよび若者の自殺の原因を評価しかつこれに対処し、かつきわめて高い水準にある子どもの自殺を減らすために現在行なっている努力を拡大するよう勧告する。
意見を聴かれる子どもの権利(第12条)
31.審査委員会は、学校および地方政府の委員会の委員に子どもを含めるためにとられてきた措置を歓迎するとともに、とくに国民教育課程綱要審議会に子どもが含まれていることを称賛する。しかしながら審査委員会は、社会文化的態度により、子どもが家庭、学校およびより広いコミュニティにおいて自由かつ安全に意見を表明することが制約され続けていることに、懸念を表明するものである。
32.審査委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関するCRC委員会の一般的意見12号に対して政府の注意を喚起するとともに、政府が条約第12条にしたがってこの権利の実施を強化するための措置をとるよう勧告する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもたちにとってもっとも重要な問題およびこれらの問題に関する子どもたちの意見をあらゆる場面でもっともよい形で聴ける可能性がある方法を特定するための調査を実施すること。
  • (b) 家庭、学校およびコミュニティにおいてすべての子どもが意味のある形でかつエンパワーされながら参加することを促進するため、親、教員、ソーシャルワーカー、裁判官および子どもとともにまたは子どものために働くその他の者を対象とする研修プログラムおよび意識啓発活動を実施すること。
  • (c) 立法および政策立案の過程で子どもたちの意見が聴かれることを可能にする機構を設置することにより、国レベルでの子ども参加を強化すること。
  • (d) 子どもが意見を聴かれる自己の権利について情報を提供され、かつその権利を意味のある形で行使するための支援を受けられることを確保する等の手段により、関連の行政手続および法的手続において意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。

D.市民的権利および自由

国籍を取得する権利(第7条第1項)
33.審査委員会は、養子とされていない無国籍の子どものうち中華民国(台湾)の国籍を取得できる子どもを増やすために政府が行なっている努力を歓迎する。審査委員会はとくに、子どもの母親が移住者であり、かつ父親が知れない場合に、母親が子どもを連れずに帰国したときに生ずる子どもの資格および地位関連の問題についての報告に留意するものである。審査委員会は、これらの子どもが無国籍のままにならず、または台湾の他の子どもが受ける資格を有しているいかなるサービスまたは給付も奪われないことを確保するため、政府があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
表現の自由に対する権利(第13条)
34.審査委員会は、大人が否定的態度を有していることおよび子どもが処罰への恐怖心を抱いているために、表現の自由に対する権利の行使が、とくに学校において実際には制限される場合があるという報告について懸念を覚える。審査委員会は、政府が、子どもがあらゆる場面で表現の自由に対する権利を享受できることを確保するとともに、たとえば学校内外における生徒新聞または生徒通信その他の刊行物の制作および配布を促進しかつ支援するよう勧告する。
結社の自由および平和的集会の自由に対する権利(第15条)
35.審査委員会は、20歳未満の子どもおよび若者が自分たち自身の結社を設立できず、かつ親または保護者の許可がなければ既存の結社の構成員にもなれないことに、懸念とともに留意する。このような立場は結社の自由に対する子どもの権利と両立せず、かつ子どもの発達しつつある能力を尊重していない。
36.審査委員会は、子どもが、その年齢、成熟度および発達しつつある能力にしたがって、いかなる差別もなく、結社の自由および平和的集会に対する権利(平和的抗議に対する権利を含む)を全面的に享受できることを確保するため、政府が必要な立法上その他の措置をとるよう勧告する。
プライバシーに対する権利(第16条)
37.審査委員会は、教員が、法律に定められた理由以外の理由で生徒の私物の検査を行ない、かつ秘密とされるべき子どもの情報を開示してきたという報告に、懸念とともに留意する。審査委員会は、プライバシーに対する権利へのこのような不法かつ恣意的な干渉から子どもを保護するため、政府があらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。教員に対しては、関連の規則に関する情報を提供し、かつこれらの規則に違反した場合には懲戒手続の対象とすることが求められる。
拷問または他の残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを受けない権利(第37条(a)
38.審査委員会はまた、矯正施設その他の入所施設における独居拘禁および抑制手段の使用についても懸念を表明する。審査委員会は、政府が、独居拘禁の使用および独居拘禁が行なわれる条件を規律する規則が条約第37条および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(「ハバナ規則」、パラ67)と全面的に一致することを確保するとともに、これらの規則が尊重されることを保証するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに審査委員会は、政府が、抑制手段の使用を規律する規則がハバナ規則に掲げられた基準(パラ63および64)に一致することを確保するため、当該規則の見直しを行なうよう勧告するものである。

E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1項および第2項、第20条、第21条、第25条ならびに第27条第4項)

家族支援
39.子どもの養育責任に関して金銭的その他の形で親を支援するためにさまざまな措置が用意されていることを歓迎しながらも、審査委員会は、ひとり親世帯(離婚後の世帯を含む)および低所得かつハイリスクの一部世帯が十分な支援にアクセスできていない可能性がある旨の報告に留意する。審査委員会は、政府に対し、このようなすべての世帯を包摂する目的で適切かつ必要な支援へのアクセスを拡大するため、あらゆる実現可能な措置をとるよう促す。
不法移送および不返還(第11条)
40.審査委員会は、子どもの不法移送の通報が義務的なものとされておらず、かつ通報件数は不法移送の被害者である子どもの人数の一部しか反映していない可能性があるという情報に留意する。さらに、法律上の規定はこのような移送を防止するのに不十分であるように思われる。
41.審査委員会は、台湾が、子どもの不法移送および(不)返還の事案に対応するための拘束力のある文書として、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)を採択するよう勧告する。
家庭環境を奪われた子どもおよび代替的養護(第9条第1項および第20条)
42.審査委員会は、入所型養護の使用およびその運用のあり方について懸念を覚える。審査委員会は、親/家族から分離されているまたは分離されなければならない子どもの入所型養護施設への措置を削減するための措置を政府がとってきたことに留意する。審査委員会はまた、入所型養護を受けている子どもの人数が顕著に減少しつつある一方、入所型養護を行なう国以外の提供機関の数が増加し続けていることにも留意するものである。審査委員会は、認可、査察および監査のために現在設けられている制度のもとで、質の保障が効果的に行なわれていない可能性があることを懸念する。審査委員会の理解によれば、、私立施設に対して現在提供されている資源では、資格のある十分な人数の職員を採用しかつ雇用し続けることができない可能性がある。審査委員会は、過剰定員のために、家庭を基盤とする養育ではなく入所型養護施設に子どもを措置するインセンティブが生じる可能性があることを懸念するものである。審査委員会は、政府が、この過剰定員の理由を検討するとともに、子どもの代替的養護に関する国連指針に一致する、代替的養護を必要する子どものもっとも適切な措置を確保するようなやり方で資源を配分するよう勧告する。
43.審査委員会は、公式な親族養育を受ける子どもの割合を高めるという政府の目標を歓迎する。審査委員会は、政府が、親族養育者になれる可能性がある者についての資格および補助金に関わる負担の大きい一部の要件を緩和することによって、現在進んでいる親族養育の増加をどの程度促進できるか検討するよう提案するものである。
44.審査委員会はまた、里親養育(特別なニーズを有する子どもの養育に関連するものを含む)を促進する政府の政策、ならびに、このことが含意する里親養育者の研修および支援の強化も歓迎する。審査委員会は、政府がこの政策を継続しかつ強化するよう勧告するものである。
45.審査委員会は、政府が、子どもの代替的養護に関する国連指針にのっとり、とくに措置が必要になることを防止するために家族を支援しかつ強化すること、および、このような子どもを対象として家庭を基盤とする養育の利用を推進しかつ促進することによって代替的養護制度の脱施設化を図るための、包括的なかつ予算の見積もりをともなう戦略を作成するよう、勧告する。
46.さらに審査委員会は、代替的養護への子どもの措置があらゆる場合に家庭裁判所の決定に基づいて行なわれること、そのような措置の期間が法律で定められること、および、措置期間の延長は裁判所の決定によって、かつ法律の定める基準を満たす形で行なわれることを確保するため、政府が必要な立法措置をとるよう勧告する。審査委員会がとりわけ懸念するのは、措置が必要でありかつ子どもの最善の利益にのっとっているか否かの評価に裁判所がまったく関与することなく、親が自己の子どもの措置を手配できるようになっていることである。
47.審査委員会は、不当な取扱いを受けている子どもおよび差し迫った重大な危険に直面している子どもが72時間を上限とする保護的措置の対象とされうること、および、この措置が裁判所の決定により3か月間繰り返し延長できることに留意する。審査委員会は、公的機関が、子どもが家族のもとに復帰できない場合の長期処遇計画の作成を、緊急入所施設に2年間滞在した後でなければ要求されないことを懸念するものである。
48.審査委員会は、政府が、CRC第25条および子どもの代替的養護に関する国連指針にしたがい、代替的養護を受けている子どものあらゆる措置を定期的に再審査する効果的システムを確立するよう勧告する。緊急施設および入所型施設への措置の再審査に特別な注意を払い、当該措置が子どもの最善の利益に照らしていまなお必要であるか否か、および(または)、家庭を基盤とする形態の代替的養護に子どもを措置することが可能か否かを、最低でも毎年評価することが求められる。政府はまた、子どもがある代替的養護現場から他の現場へと頻繁に移動させられることを防止するために必要な措置もとるべきである。
49.最後に、子どもの代替的養護に関する国連指針にのっとり、審査委員会は、代替的養護制度から離脱する子どもを対象として、このような子ども(および該当する場合にはその家族)が養護から離脱するプロセスに向けて準備できるようにし、かつ、適切な期間、あらゆる必要なアフターケア支援を提供する、効果的かつ適正な政策およびプログラムを整備することの重要性を強調する。
国内・国際養子縁組(第21条)
50.審査委員会は、年間の国内養子縁組件数が国外における台湾の子どもの養子縁組件数よりも少ないことに留意するものの、近親間養子縁組および継親養子縁組の解消率が高いことに、懸念とともに留意する。審査委員会は、これらの解消の原因を分析すること、解消率を低下させるための是正措置をとること、および、当事者であるすべての子どもに適切な養育を確保するためにあらゆる必要な努力を行なうことを勧告するものである。審査委員会は、国内で養子縁組を行なおうとする者がしばしば特別なニーズを有する子ども(障害のある子どもおよび年長の子どもを含む)を引き取りたがらない場合があり、したがってこのような子どもにとっては国際養子縁組が唯一の解決策と見なされる場合があることを認識しながらも、政府に対し、意識啓発を図り、かつこのような子どもの国内養子縁組を促進するよう促す。
51.審査委員会は、政府による国際養子縁組手続の監督(民間養子縁組斡旋機関の認可および監視を含む)の水準および実効性について懸念を覚える。審査委員会は、台湾が、台湾からのおよび台湾への国際養子縁組の事案に対処するための拘束力のある文書として、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を採択するよう勧告するものである。

F.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条)

52.審査委員会は、子どもに対する暴力に対処する為に政府がとったさまざまな行動(とくに体罰およびいじめに関するもの)、および、ハイリスクの子どもおよび若者ならびに不利な立場に置かれた6歳未満の子どもにサービスを提供するプログラムを歓迎する。
53.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) これらの活動その他の活動を継続しかつ強化するとともに、CRC委員会が一般的意見13号(2011年)で示した指針および勧告を考慮しながら、あらゆる場面(家庭を含む)におけるあらゆる形態の暴力を防止しかつこれらの暴力から子どもを保護するための、複数年次にわたる包括的な国家的行動計画を策定しかつ実施すること。
  • (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を2030年までに終わらせること(持続可能な開発目標の目標のひとつ(ターゲット16.2))に貢献する国および地方ならびにNGOの活動を含む同行動計画の実施のために、必要な人的資源および財源を提供すること。
54.審査委員会は、「学校でのいじめ防止指針」を歓迎するものの、その実施に関する具体的情報がないこと、ならびに、被害者その他の者による通報およびフォローアップ機構が実効性を欠いていることを懸念する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 監視および通報のための手続が実効的なものとなることを確保するため、子どもたちと協議しながらこれらの手続を見直すこと。
  • (b) いじめが被害者である子どもおよび学校共同体に与える悪影響についての、教員および生徒双方の理解および意識を増進させること。
  • (c) 安全な教室づくりのための教員の能力を強化するとともに、被害者および目撃者に対していじめの事案を通報するよう奨励すること。
  • (d) 被害者および加害者である子どもならびにいじめの影響を受けている可能性があるその他の子どもを対象として、実効的なカウンセリングおよび修復的実践を行なうこと。
55.ネットいじめとの関連で、審査委員会は、政府がプラットフォーム運営者に対し、防止およびネットいじめに関する苦情申立てのための適切なサービスおよび機構を発展させかつ強化することを促すよう勧告する。
56.審査委員会は、学校および施設で体罰が法律で禁止されている旨の情報を歓迎する。しかしながら、家庭における体罰は禁止されておらず、かつ学校における体罰の使用は続いている。
57.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) CRC委員会の一般的意見8号に一致する形で、家庭における体罰を明示的に禁止する規定を採択すること。
  • (b) 体罰ならびにその他の形態の品位を傷つける取扱いおよび屈辱的な取扱いの悪影響に関する意識啓発および教育キャンペーンを実施するとともに、肯定的行動を促進するための代替的手法に関する情報を提供すること。
  • (c) 公立・私立の学校および施設で働くすべての者が体罰を使用しないことを確保するため、あらゆる適切な措置をとること。
  • (d) 子どもに対する暴力が疑われるすべての事案を適切な機関に通報することの重要性について、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を教育すること。

G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1項~第3項および第33条)

障害のある子どもの権利(第23条)
58.審査委員会は、政府に対し、障碍者権利条約に関する審査委員会の勧告を実施するよう促す。審査委員会はさらに、政府が、障害のある子どもに関する正確なかつ細分化されたデータの収集を確保するとともに、以下のことを確保するための適切な措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) これらの子どもが農村部で適切な学校教育にアクセスできること。
  • (b) これらの子どもが、学校教育の修了後、意味のある就労に移行できること。
  • (c) これらの子どもが、たとえば共融〔障害の有無等にかかわらずすべての子どもが利用できる〕遊び場の開発を通じ、遊び、余暇およびレクリエーションのための意味のある機会を享受できること。
  • (d) これらの子どもが、自分自身およびその家族のための適切な支援サービスを受けられること。
59.審査委員会は、入所型施設で暮らしている障害のある子どもの人数が多いことを懸念する。審査委員会は、政府が、コミュニティを基盤とする環境で暮らし、かつインクルーシブな普通学校にアクセスできる障害のある子どもの人数を増やすための5か年戦略を採択したことを歓迎するものである。
健康に対する権利(第24条)
60.審査委員会は、すべての子どもが、その能力にかかわらず、医学的治療を受けるために親の同意を得なければならないことを懸念する。このような立場は、十分な理解力を有する子どもは、親が同意を与えることに消極的な場合を含め、医学的治療に同意する能力を有していると説明する子どもの権利委員会の見解と一致しない。
61.審査委員会は、子どもの医学的治療のために必要とされる同意〔に関する規定〕がCRC、とくに第5条および第12条と一致することを確保するため、政府が関連の法律を改正するよう勧告する。審査委員会はまた、CRC委員会が一般的意見12号(パラ102)で行なっている、各国は同意権が子どもに移行する特定の年齢を定めた法律を採択するべきである旨の勧告の実施を政府が検討することも勧告するものである。
62.審査委員会は、子どもに対して専門的な精神保健サービスを提供するために政府が行なっている努力(地域メンタルヘルスクリニック、精神保健を専門とする専門家および子ども向けホットラインの提供を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、精神保健上の問題を経験する子どもの発生(とくに高い自殺率)および提供されるサービスの有効性について懸念を覚えるものである。
63.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 精神保健上の課題を有する子どもおよび若者の自殺に関するデータを引き続き収集すること。このようなデータは、可能かつ適切である場合には、課題の性質、年齢、ジェンダー、農村部/都市部の別、先住民族としての地位および性的指向ごとに細分化されるべきである。
  • (b) 子どもに提供されるサービスの有効性について、ヘルプラインにアクセスした子どもの付託率および付託の結果に関するデータも含めて監視および評価を行なうこと。
  • (c) 精神保健サービス(子どもにやさしい予防サービスを含む)が、健康に対する権利についてのCRC委員会の一般的意見15号に一致する形で利用可能性、アクセス可能性、需要可能性および適切な質を備えていることを確保すること。
  • (d) 子どものための精神保健サービスの開発、実施および監視に役立てるため、CRC第12条に一致する形で子どもたちの意見を積極的に求めること。
64.審査委員会は、子どもの肥満の問題に対処するために政府が行なってきた一連の取り組みを歓迎する。しかしながら審査委員会は、以下のことを勧告するものである。
  • (a) 政府がこのような取り組みの有効性の評価および監視を行なうこと。
  • (b) 学校で子どもの体重測定を実施する際、プライバシーに対する子どもの権利が保護され、かつ子どもに屈辱を与えないようなやり方で測定が行なわれることを確保するために慎重な配慮をすること。
65.審査委員会は、政府が、2011年以降、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育を子どもに提供するためのプログラムを漸進的に導入してきたことに留意する。審査委員会はまた、このプログラムの有効性および適切性についてさまざまなグループが相当の懸念を有していること、性感染症の発生率が高いこと、および、いまなお10代の妊娠が相当数発生していることにも留意するものである。
66.審査委員会は、政府が現行のプログラムを見直し、その有効性を向上させかつ適切性を確保するために何らかの修正が必要か否かを評価するよう勧告する。このような見直しにおいては、子どもおよび青少年、親のグループ、保健専門家および教育者を含むすべての関係者との協議が行なわれるべきである。
67.審査委員会はさらに、当該見直しにおいて、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する現行プログラムが以下の要件を満たしているか否かの評価を行なうよう勧告する。
  • (a) 社会権規約委員会がセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する一般的意見22号で行なった思春期の子どもに関する勧告、ならびに、CRC委員会が思春期の健康と発達(一般的意見4号)および思春期における子どもの権利の実施(一般的意見20号)についての一般的意見で行なった勧告に一致していること。
  • (b) 年齢相応であり、かつエビデンスに基づいていること。
  • (c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する、LGBTIを自認している子どもおよび障害のある子どもを含むすべての子どもの権利の保護が目的とされていること。
  • (d) CRC第12条に一致する形で、プログラムの立案、実施および評価において子どもたちの意見が取り入れられていること。
  • (e) 尊重しあう関係についての情報、および、性的活動を行なうようになる前に子どものエンパワーメントを図るための措置が含まれていること。
  • (f) 妊娠した女子に対し、適切な情報および支援サービスを提供していること。
  • (g) 親を対象として、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する子どもの権利を理解するための教育を実施していること。
68.審査委員会は、環境の質およびこれが自己の健康に及ぼす危害の可能性に関する懸念を子どもたちから聴取しており、政府が、環境が子どもたちの健康に及ぼす影響を監視するための措置をとるよう勧告する。審査委員会はまた、政府が、子どもの権利と環境に関する2016年の一般的討議を受けてCRC委員会が行なった勧告を考慮し、子どもたちが環境に関してまたは子どもの健康に関連するその他の事柄に関して政府に懸念を表明できるようにする制度または手続を発展させ、かつこれらの懸念に対して十分な立法上その他の行動で対応することも勧告するものである。

H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条)

教育に対する権利(第28~29条)
格差の縮小
69.審査委員会は、6~15歳の義務教育において学費が無償とされていることを歓迎する。にもかかわらず、審査委員会は、私立の職業学校および高級中学校に通う生徒が、学費その他の学習費用および生活費を払うために融資の申請を行なわなければならない状況が拡大していることを懸念するものである。
70.審査委員会は、教育部(「MOE」)が、私立の職業学校および高級中学校の学費に関する全般的検討を行なうとともに、この点に関して、経済的に不利な立場に置かれた生徒を私立学校による過度な請求から保護するための審査制度を設けるよう、勧告する。審査委員会はさらに、政府が、債務の返済について困難を経験している生徒を援助するための適切なプログラムを導入するよう勧告するものである。
就学前教育施設
71.審査委員会は、公立および非営利の幼児園が不足しており、かつ、私立幼児園に子どもを入園させる親の金銭的負担が重いことを懸念する。委員会はまた、幼児教育保育法第7条を遵守できるようにするためには地方当局が追加の人的資源および財源を用意しなければならないことも懸念するものである。
72.審査委員会は、地方政府が公立幼児園を増設し、より多くの親が子どものための質の高い教育および保育にアクセスできるようにすることを援助するための「公的教育・保育サービス最大化事業(2017~2020年)」を歓迎する。
73.審査委員会は、政府に対し、公立幼児園の増設および訓練を受けた幼児園教員数の増加との関連で同事業の実施の有効性を評価し、かつ、離職率の高さに対処するためこれらの教員の賃金を改定するよう、奨励する。審査委員会は、政府が、公立幼児園の学費を無償化し、かつ私立幼児園の学費を負担可能なものとすることを目指すよう勧告するものである。
遠隔地および農村部における教育のための予算配分
74.審査委員会は、政府が遠隔地および農村部の子どもの教育に追加的資源を配分する決意を示していることを認知する。しかしながら審査委員会は、このような資源の配分が、これらの地域の子どもに対して質の高い教育を確保するうえでは必ずしも十分ではない可能性があることを依然として懸念するものである。審査委員会は、政府が、農村教育および遠隔地教育のために引き続き追加的資源を配分するとともに、子どもがCRC第28条および第29条に一致する形でどの程度教育に対する権利を享受できているか監視するための措置をとるよう、勧告する。
子どもの権利と公民教育
75.審査委員会は、人権およびとくに子どもの権利を、あらゆる形態のおよびあらゆる教育段階におけるカリキュラム(国民教育課程綱要を含む)の必修項目とすることを勧告する。審査委員会はさらに、年齢および能力を問わずすべての子どもを対象としたアクセスしやすい資料を制作すること、および、子どもの権利に関する知識および訓練を教員の必須要件とすることを勧告するものである。審査委員会はさらに、MOEが、公民教育および市民性教育における子どものエンパワーメント関連の活動を支援するよう勧告する。
校務に関する生徒代表の参加
76.審査委員会は、高級中等教育法が生徒の自治団体の創設について規定していることを認知するものの、同法が効果的に実施されていないことを懸念する。審査委員会は、MOEが、私立学校を含むあらゆる学校における、選挙または運営に学校職員が介入することのない生徒の自治団体の設立をモニタリングするよう勧告するものである。審査委員会はさらに、校務および生徒の教育上の関心について扱うすべての学校委員会に、自治団体の代表が実質的に参加するようにすることを勧告する。
カリキュラム指針改革
77.審査委員会は、試験がきわめて重視され、かつカリキュラムが柔軟性を欠いているために生徒が自分自身の教育上の関心を追求できる範囲が限定された状況下で生じている、高い学業成績を収めることへの圧力の結果、生徒に引き起こされているストレスについて懸念を覚える。審査委員会は、カリキュラムをより柔軟で、生徒の関心により合致した、かつ生徒にとってストレスがより少ないものとする目的でMOEが現在進めているカリキュラムの見直しを歓迎するものである。審査委員会は、MOEに対し、生徒の効果的参加を得ながらこの見直しのプロセスを継続するよう奨励する。
中退した生徒
78.審査委員会は、学校を中退した生徒を対象とするすべてのサービスが統合されているわけではないことを懸念する。審査委員会は、政府がこれらのサービスを統合し、かつ、このような生徒を支援するために十分な資源が配分されることを確保するよう勧告するものである。
懲戒措置
79.審査委員会は、学校が生徒の懲戒に関する独自の指針を作成できることに留意するとともに、このために子どもが連座罰のような恣意的かつ不法な懲戒措置の対象とされる可能性があることを懸念する。審査委員会は、政府が、子どもの権利と両立する懲戒措置の概要を示した通知を学校に対して発し、かつこれを公開するよう勧告するものである。
80.審査委員会は、学校で軍訓教官が雇用されていることを懸念し、このような慣行を可能なかぎり速やかに漸次廃止するよう勧告する。
体罰
81.審査委員会は、学校における体罰の禁止が十分な監視および執行の対象とされていないことを懸念する。審査委員会は、禁止規定の効果的実施を確保するためにMOEがあらゆる必要な措置をとり、かつこの措置を用いた教員に対して適切な制裁を科すことを勧告するものである。
不服申立て機構
82.審査委員会は、生徒の苦情申立てに関して現在設けられている不服申立て手続の実効性について懸念を覚える。審査委員会は、政府が、あらゆる学校(私立学校、輔育院、矯正学校および中途学校を含む)が行なった不法な管理上の決定または措置に関する個別の不服申立てに対応するための、秘密が守られかつ安全な通報手続を用意する独立の機構を設置するよう、勧告するものである。生徒は、そのような審理において意見を聴かれ、かつNGOによるものを含む独立の代理人をつけることを認められるべきである。
休息、遊びおよび余暇に対する子どもの権利(第31条)
83.審査委員会は、子どもが学校またはその他の学校外教育機関で非常に長い時間を過ごしていることを深く懸念する。審査委員会は、政府が、学業成績に関連して子どもに加えられる圧力を軽減することにつながるのではないかという思いから、国の試験制度改革を進めてきたことに留意するものである。
84.審査委員会は、学校が子どもに対して十分かつ定期的な自由時間を提供することを確保するため、学校の1日のあり方を見直しかつ規制するよう勧告する。さらに審査委員会は、政府が、十分な睡眠をとらないことならびに遊びおよび余暇にアクセスできないことが子どもの学習および発達ならびに身体的および精神的健康に及ぼす有害な影響について、親および教員を教育するための措置をとるよう勧告するものである。
85.審査委員会は、安全な遊び場の提供を通じ、都市環境において子どもが遊びの空間にいっそうアクセスできるようにするために政府が行なっている努力を称賛する。審査委員会は、政府が、障害のある子どもを含むすべての子どもが遊びにアクセスできること、および、子どもが自然環境のなかでこの権利を享受できることを確保するべきであることを強調するものである。休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)を参照しつつ、審査委員会は、政府および地方当局が、十分かつ持続可能な資源をともなった遊び・余暇政策を採択しかつ実施する等の手段により、休息および余暇に対する子どもの権利ならびに子どもがその年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に参加する権利を保障するための措置を実施するよう、勧告する。審査委員会は、政府が、コミュニティ、地方および国の各段階で、遊び政策ならびに遊びおよび余暇に関連する活動の企画、立案および監視において子どもたちの全面的関与を得るよう勧告するものである。
86.審査委員会は、先住民族の文化および言語を含む多様な文化についてすべての子どもが学べるようにするために行なわれている努力に留意する。審査委員会は、政府に対し、子ども、その家族およびマイノリティ・コミュニティと協議しながらこれらの活動を見直しかつ拡大するよう奨励するものである。

I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第34条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条)

先住民族の子ども(第30条)
87.審査委員会は、先住民族の子どもの権利を保護するために政府がとっている多数の措置および国家原住民族委員会が果たしている重要な役割を歓迎する。
88.審査委員会は、政府が、先住民族コミュニティ(当該コミュニティ出身の子どもを含む)と連携しながら、先住民族の子どもの権利を保護するための特別措置を引き続き実施し、監視しかつその有効性の評価を行なうよう勧告する。審査委員会はさらに、政府が以下の点に特別な注意を払うよう勧告するものである。
  • (a) 先住民族の子どもの乳児死亡率を削減するための措置。
  • (b) 先住民族の子どもが、適切な資格を有する教員により、自己の先住民族言語で教授を受けることができること。
  • (c) 先住民族の子どもが教育のため農村部から都市部に移転した際に提供される援助。
  • (d) 部族協同組合による就学前教育施設の設置を支援するための措置(十分な資源の配分、ならびに、そのような就学前教育施設の設置、職員配置および運営への先住民族コミュニティの関与を含む)。
  • (e) 先住民族コミュニティにおける慣習的な代替的養護体制の支援。
  • (f) 親を対象とする文化的に適切な教育および支援サービスの提供。
児童労働(第32条)
89.審査委員会は、低年齢の子どもを含む子どもが、しばしば長時間労働をともなう条件および(または)子どもの健康および発達にとって有害となる可能性がある条件のもとで働いているという報告に、懸念とともに留意する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 仕事の性質、年齢、ジェンダーおよび子どもの背景(先住民族出身、農村出身または都市部出身)別に細分化された、働いている子どもの人数についてのデータを収集すること。
  • (b) このような子どもの権利を保護するために適切な措置をとること。
薬物濫用(第33条)
90.審査委員会は、薬物濫用の防止のためにとられているさまざまな措置(地方における濫用防止センターの設置および「ドラッグにノーと言おう」プロジェクト、ならびに、薬物依存の子どもの治療のための医療施設の指定など)を歓迎する。しかしながら審査委員会は、これらの措置の有効性に関する情報がないことを懸念するものである。
91.審査委員会は、必要に応じてこれらの措置を調整しまたは強化する目的で、政府が、薬物使用者である子どもおよび青少年の関与を得ながら、これらの措置の実施およびその有効性に関する評価を定期的に実施するよう勧告する。加えて、審査委員会は、政府が薬物の使用を犯罪ではなく健康問題として扱うよう勧告するものである。
性的搾取および性的虐待(第34条)
92.審査委員会は、子どもおよび若者の性的搾取防止法が2015年に採択されたこと(2017年1月1日施行)、ならびに、子どもが巻きこまれる性売買の防止および性犯罪の捜査の強化を目的とした関連の諸計画が採択されたことを歓迎する。しかしながら審査委員会は、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもの緊急措置が長期間にわたって延長されうる一方、延長の根拠が明確でないことを懸念するものである。さらに審査委員会は、性的虐待の被害を受けた子どもが、司法(刑事)手続において、加害者とされる者にとって不利な証人となる場合に、人権に関する国際的な基準および勧告を全面的に遵守した保護が必ずしも提供されていないことを懸念する。
93.審査委員会は、政府が、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもの緊急措置の延長の根拠を法律で具体的に定めるとともに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第8条、および、子どもの犯罪被害者および証人に関わる事項における正義についての国連経済社会理事会決議2005/20の勧告に掲げられた規則を遵守する目的で、司法手続における証人としての子どもの被害者の保護に関する現行規定を見直し、かつ必要な場合には改正するよう、勧告する。
拘禁環境(第37条)
94.審査委員会は、子どもが自由を奪われている間に不当な取扱いを受けているという報告があることを懸念し、政府が以下のことを確保するための効果的な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第37条および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則が全面的に遵守されること。
  • (b) 自由を奪われた子どもとともに働くすべての職員に対し、このような子どもの権利に関する情報が提供されること。
  • (c) 自由を奪われた子どもの不当な取扱いに関するすべての訴えが全面的に調査されること。
少年司法(第40条)
95.審査委員会は、少年非行の防止のために政府がとっている措置について、また少年事件処理法に基づいて優れた構造の少年司法制度が設置されていることについて、評価の意とともに留意する。しかしながら審査委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 少年事件処理法でさまざまな年齢制限および分類が用いられているため、7~12歳の子どもが少年(刑事)司法統計で扱われることにつながっていること、および、刑事責任に関する最低年齢(MACR)が14歳とされていることから12歳および13歳の子どもの扱いが明確ではないこと。
  • (b) 子どもの問題行動を地位犯罪として刑法に含めることにより、このような行動が犯罪化されていること。
  • (c) ほとんどの場合に法的援助が有償であるため、事実上、少年司法手続全体を通じ、刑法に抵触した子どもおよび少年に対して法的その他の援助が提供されていないこと。
96.少年司法における子どもの権利についてのCRC委員会の一般的意見10号に照らし、審査委員会は、政府が少年司法制度をCRCおよび他の関連の基準に全面的に一致させることを勧告する。とくに審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われまたは認定された14歳未満の子どもには、少年事件処理法ではなく子どもおよび若者の福祉および権利保障法に基づいて対応するとともに、その目的で必要な立法上その他の措置をとること。
  • (b) 地位犯罪を廃止するとともに、問題行動を有する子どもに対し、子どもおよび若者の福祉および権利保障法の文脈において必要な支援および保護を提供すること。
  • (c) 刑法に抵触した子どもに対し、法的手続の最初からおよび全体を通じ、資格のある者による独立の法的援助が提供されることを確保すること。
  • (d) 審判前拘禁が厳格に必要とされる期間を少しでも超えて続けられないことを確保する目的で、裁判所/裁判官による審判前拘禁の再審査が定期的に(2週間おきに行なうことが望ましい)行なわれなければならない旨、法律により定めること。
  • (e) 自由の剥奪をともなう刑が最後の手段であることを確保すること。
97.審査委員会は、少年司法制度内に修復的司法のための機構が設けられておらず、かつダイバージョンのための措置も限られていることに留意する。審査委員会は、政府が、修復的司法のための措置を導入する可能性を模索し、かつ、裁判手続の開始前にとられる真正なダイバージョンのための措置を促進するよう、勧告するものである。

J.普及

98.審査委員会は、第1回報告書、事前質問事項に対する文書回答およびこの総括所見を、同国の言語で広く利用可能とするよう勧告する。


  • 更新履歴:ページ作成(2019年10月12日)。
添付ファイル