25-119
-
25-119
名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/02/16(木) 23:54:41 ID:???
-
調理実習 1/3
亜子「ごめんな。ウチ、今回ばかりは他の班に参加したいんや」
前日のことであった。明日の調理実習についていつもの四人が何を作ろうか相談している時であった。
唐突な一言に、三人には目を丸くする。
亜子「ウチな、このかと桜咲さんに誘われとるんよ。悪いんやけど……」
こうして、運動部四人組の班はバラバラに再編される事となった。まき絵はバカレンジャー班に、アキラは
龍宮と一緒にゆえパル班に編入された。そして、裕奈は……、
裕奈「げっ、行くトコがない……!」
気が付けば美空のポジションを確保してしまったのだ。その美空はちゃっかり双子たちの班に紛れ込んでいた。
チアの三人がザジ・千雨とくっ付いたのが誤算であった。
亜子「せやったらウチらの班にする? 下準備とか色々大変やけど……」
選択の余地は無い。こうして裕奈は関西班に参加する事となった。
亜子が言ってた下準備。それは……
裕奈「まさかうどんをこねるなんて思わなかった……」
ばしん。
刹那「すみません明石さん。手伝わせてしまって……」
ばしん。
その日の夜。裕奈は刹那と二人で一心不乱にうどんをこねていた。この時点で関西班がやろうとしている内容が
裕奈にも理解出来た。そう、本場のきつねうどんを作る計画のようだ。
木乃香はわざわざ薄揚げを作っているらしい。お稲荷さんに使うような寿司揚げでは駄目なのか、と裕奈は
軽い気持ちで尋ねたのだが、
亜子「あんなパチモンで納得出来んわっ!」
木乃香「中がスカスカなんはカスや」
刹那「私もあれはちょっと……」
三人に真顔で怒られてしまったのだ。ちょっと怖かったです。ハイ。(関東の人、ごめんなさい)
-
25-120
名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/02/16(木) 23:56:08 ID:???
-
2/3
調理実習が始まった。亜子がつゆの管理をしている間に木乃香はてきぱきとおばんさいを作っている。裕奈は刹那が
切り分けたうどんを茹でる役割だ。そして、瞬く間に料理は完成した。
亜子「透明や……、透明なおつゆや……」
木乃香「久々のご対面やな、せっちゃん……」
刹那「はい……」
裕奈(うお、マジ泣きですか……)
出来上がったきつねうどんを前に、三人は涙すら浮かべている。ただ一人、裕奈だけはこのノリについていけない。
裕奈「じ、じゃあ食べよっか……」
裕奈が促すと、三人は我に返ったように箸を取る。そして、
刹那「ああ……、この味です……」
木乃香「さっぱりしてて深みがあって……」
亜子「これや……、これがけつねうどんや……」
再び号泣。これ以上ない程の喜びようである。たかがうどん一つでここまで熱くなれるものなのか。
裕奈はおそるおそるきつねうどんに箸をつける。
裕奈「…………!!」
その瞬間、裕奈は知ってしまった。今まで自分が食べてきたものは紛い物だったという事実を。
裕奈「こ、これが本場の味……!」
震えが止まらない。全身を熱いものが駆け巡る。一杯のどんぶり。そこには関西人の魂があったのだ。
亜子「せや……。ゆーなも分かってくれたんやな……」
木乃香「讃岐うどんとかやったらこっちでもよーやっとるけど、うちらでうどんといえばこれやっ!」
刹那「私達の誇りです……」
こうして異様な雰囲気で食事は進む。木乃香が用意したおばんざいも、亜子が隙を見て焼き上げたねぎ焼きも、
裕奈にとってはカルチャーショックであった。関西、恐るべしである。
そして、この関西班にとどめを刺した料理人がいた。
五月 楽しそうですね。これ、差し入れです……。
亜子・木乃香・刹那「!!!!」
五月が用意した二皿を前に、三人の涙腺が再び決壊した。
-
25-121
名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/02/16(木) 23:57:43 ID:???
-
3/3
木乃香「せ、せっちゃん、これって……」
刹那「はい……。ぐじの若狭焼きです……」
京都出身の二人には堪らない一品である。そしてもう一品は……、
亜子「ウソや……。ホンマに……、ホンマに大阪焼やん……!」
関東では滅多にお目に掛かれない大阪焼に、亜子は再会を果たしたのだ。
五月 では、私はこれで……。
にこりと笑って五月は自分の班に戻っていく。
裕奈「さっちゃん……。あんたプロだよ……」
裕奈にはなじみのない料理。しかし、この三人の反応を見れば分かる。三人とも涙を流しながら黙々と
箸を進めていた。
こうして、関西班のテーブルからはずっと嗚咽が漏れていた。そして……、
亜子「―――ううっ、ちょーしにのってもーた……」
刹那「わ、私としたことが……」
木乃香「もうアカン……、これ以上は食べれへん……」
裕奈「やれやれ……」
食べ過ぎで仲良く保健室送りになった三人に、裕奈はただただ苦笑するしかなかった―――
(おしまい)
25-130
-
25-130
名前:葉加瀬 変身2[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 04:30:00 ID:???
-
葉加瀬 変身2
こんな時間、誰もいないから・・また唐突にコスプレしちゃいましょう
葉加瀬 「こんばんわ・・もう少しでおはような時間です」
前回のコスプレは失敗しました。どうやら背伸びしたことが原因のようです
ですから今回は・・やっぱり背伸びしてみましょう
葉加瀬 「んしょ・・んしょ・・」
葉加瀬 「え・・・」
そのあまりの情けなさに泣きそうになりました
GS美神より美神令子さんです
ボディコンの服を着てみたのですが・・ひらりと胸の辺りがめくれてしまいました
美神さんはボン、キュ、ボンな、はずなのですが、全身鏡に映っている人は、キュ、キュ、キュです
ボンが何処にもありません
少し体を振ったら、服が一気に脱げてしまいました。もう止めです
もう背伸びをするのは止めましょう
葉加瀬 「・・ドラえもん」
何でこういうのが似合うんでしょうか?
ドラえもんよりのび太くんです
黄色のシャツに青色の半ズボン・・メガネ・・ジャストフィットです
これで情けなく誰かに抱きつけば完璧そうです・・でも・・なんだか泣きたくなってきました
助けて・・ドラえもん・・超さんでもいいや・・
泣きながら寝よう・・朝、起きれなくてもいいや
さよ 「見ちゃった・・私も悲しくなって・・きました」
完
-
25-131
名前:千雨[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 04:32:49 ID:???
-
ニヤリ・・
-
25-132
名前:葉加瀬[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 05:05:40 ID:???
-
あっ・・
25-138
-
25-138
名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 13:35:33 ID:???
-
仕事の準備をする真名と刹那
刹那の携帯が鳴る
『聖なる空の下で〜♪』
「あ、このちゃん?」
真名は電話に出る刹那より着うたが気になった
(これは間違いなく刹那と近衛、ああうらやましい。デュエットしたい)
「あ、うんうん。ほなな」ぴっ
電話を切った刹那は鋭い視線を感じた
「どうした龍宮?」
「いや、その携帯…」
刹那は着うたの事と気付いて
「いや、この前お嬢様とカラオケで歌った歌を録音して長谷川さんに…」
言うが早いか真名は刹那をカラオケに連れて行った
25-155
-
25-155
名前:3−Aとりえリレー 第13走[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 22:20:57 ID:???
-
シリーズ/3−Aとりえリレー
木乃香「…わ、次はウチやったわ。」
新田「よし、じゃあ引け!」
ごそごそ…
刹那「お、お嬢様……。」
木乃香「ほぇ…せ、せっちゃん!?大丈夫なん!?」
刹那「…お嬢様の出番とのことで駆けつけてまいりました。」
木乃香「せっちゃん、ウチのために無理せんでも…。」
刹那「いえ…私はお嬢様の…いや、このちゃんのそばにおりたい…。」
木乃香「せっちゃん……。」
新田「…取り込み中すまんが、クジは引けたのか?」
木乃香「あ、そうやったそうやった…。
せっちゃん、ウチなら何でも大丈夫や。」
刹那「お嬢様……。」
新田(お前らどこの昼メロだ、そりゃ…。)
木乃香「…あ、これやったら楽勝やろな。」
新田「何!?……よ、『四葉五月』!?」
五月 あらら、私の出番ですか…。
新田「ということは…コレかっ!?」
3−Aとりえリレー
第13走『見せろ 木乃香の 包丁さばき!!』
新田「ルールは簡単。
某番組のごとく、私と近衛が試食者の注文に沿った料理をつくり、うまかった方の勝ちだ。」
千雨(それってスマ○マじゃねーか!!)
-
25-156
名前:3−Aとりえリレー 第13走[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 22:25:04 ID:???
-
新田「ちなみに今回の試食者は…しずな先生だ!!」
しずな「今日はおいしい料理を期待してるわ。」
和美「はいはーい、ここからは報道部の朝倉が進行しますよー。
さてしずな先生、本日のご注文は?」
しずな「そうねぇ……パスタなんかおいしそうよね。
じゃあパスタで!」
和美「わかりましたー、それじゃ行きます…。」
ちりりりりん…
和美「オーダー!創作パスタ!!!!」
木乃香&新田「ウィ!!!」
千雨(ちょwwwwそのまんまじゃねーか!!)
千雨(ふーん…近衛はさすがに3−A屈指の料理上手、手馴れてんな。)
木乃香「んー…せやったらこの方がええんとちゃうかな…?」
千雨(…ほー、スパゲティのゆで時間もちょうど7分…アルデンテ手前で止めたな。)
木乃香「…で、このソースをこれに…。」
千雨(…ん?あれ市販のミートソースだよな…あぁ、あれに豆板醤とラー油入れて辛味加えた…。
なるほどな…中華風な。こりゃあたしもメモっとこ。)
木乃香「せっちゃん……」
千雨(…はいはい、桜咲に食わせる妄想はいいから…。)
千雨(それに引き換え新田のヤロー、食わせられるモン作れんのか…?)
新田「…これでどーだ!!」
千雨(うわぁ……麺早く引き上げすぎだろ…。まだ3分しか経ってねーじゃねーか。
スパゲティはカップ麺じゃねーっつーの!)
新田「で、ソースはこれにこれとこれを…」
千雨(うげ…なんでオタフクソースなんか使ってんだよ…!関西組に殺されるぞ…。
それにありゃ砂糖…あ、大量に入れちまいやがった!!ありゃ激甘だぞ!?)
新田「…よし、こいつでいいだろ。」
千雨(よくねぇよ、このバカ生徒指導!!料理ひとつくらい覚えとけよ!!)
-
25-157
名前:3−Aとりえリレー 第13走[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 22:25:59 ID:???
-
木乃香「できたで〜。」
新田「できたっ!!」
朝倉「は〜い、完成でーす!!」
朝倉「さてそれでは木乃香の方からいってみましょう!
ちなみに審査員には、古菲とさっちゃんが加わりまーす。」
古菲「お、うまそうなニオイアル!!」
五月 花に水、人に愛、料理は心…
千雨(神○川じゃねーか!!)
木乃香「ウチのはちょっと辛味をきかせた中国風にしてみたえ。
みんなの口に合うかわからへんけど…。」
古菲「お、中国風アルか!いっただっきまーす!!」はむはむはむ…
しずな「あらあら。それじゃさっちゃん、私たちもいただきましょうか。」
五月 そうですね、いただきます。
しずな「あら、いいお味だわ。」
五月 ホントです。豆板醤とラー油の比率が絶妙ですね。
木乃香「そうか、おいしい言うてくれてうれしいわ…。ほえ、くーふぇどないしてん?」
古菲「………う」
木乃香「ほぇ?」
-
25-158
名前:3−Aとりえリレー 第13走[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 22:26:42 ID:???
-
古菲「うーーーーーまーーーーーーーいーーーーーアルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
千雨(ミスター○っ子じゃねーか!!)
古菲「この味は間違いなく四川の味アルよ!辛味の中にうまみが詰まってるアル!!」
木乃香「ホンマか?くーふぇに喜んでもらえてうれしいわ〜。」
和美「さて、次は新田先生のですが……」
しずな「あ、近衛さんの勝ちで…。」
五月 私も近衛さんの勝ちでいいと思います。
古菲 いやぁ、コノカの料理はうまかったアル!もう満腹アルよ!!
新田「こ、渾身の作品が……」
??「ふっふっふ…ざまぁみろ新田!!コレが空気の恐ろしさだ!!」
五月 あ、次は私でしたね。
25-164
-
25-164
名前:葉加瀬 変身3[sage] 投稿日:2006/02/17(金) 23:40:37 ID:???
-
葉加瀬 変身3
葉加瀬 「ばれてしまいました・・」
どうやらさよさんが朝倉さんに詰め寄られて、私のコスプレのことをばらしてしまったようです
まさか私の監視網をすり抜けるとは、さよさん侮りがたしです
と、いうわけなので、朝倉さんを少し説得しました
私を敵に回して今後一切のジャーナリズム活動をあらゆる手段で妨害されるか?
あるいは、私のコスプレ撮影に協力するか?
まあ、答えは言うまでもありませんでしたが・・
和美 「これなんかどう?」
葉加瀬 「あうう・・・」
地獄少女より閻魔あいさんです
なんといいましょうか・・和服につるぺたまでは良かったのですが・・おでこにメガネは似合いません
それに声が・・宮崎さんは何処でしょうか?
さよ 「ではこれで・・」
葉加瀬 「乳が・・・」
BLEACHより井上織姫さんです
だから私には巨乳キャラは合わないんです。しかも天然で巨乳なんて・・那波さんですか?
あるいは・・あれ?なんでエヴァさんを思い出したんだろう・・
和美 「道は長いね・・」
さよ 「頑張れ!!です」
葉加瀬 「もっと乳があればなぁ・・」
完
25-175
-
25-175
名前:無能[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 01:38:57 ID:???
-
新しい衣装を纏った自分の写真。昨日サイトに載せたその反響を眺めながら、私は不機嫌だった。
バレンタインの熱気など過ぎ去ったこの時期に、私の中でバレンタインはまだ尾を引いている。
「何で私には袋チョコで、手作りをどこの馬の骨とも解からんヤローにっ!」
そうなのだ、ルームメイトのピエロことザジのヤローが、手作りのチョコ。
と言っても業務用を湯煎して型に入れて冷やしただけなのだが、それを誰かに渡したらしい。
私によこしたのは袋詰めの市販のものだったのに、手作りだぞ?扱いが随分違うじゃないか。
そこぉ!笑うな。女子中じゃバレンタインのチョコ交換など当たり前だ。
おほん。まあ、とにもかくにも、渡した相手は今現在不明。
問い質そうとは思うのだが、バレンタインの話を振ると、ザジの態度がよそよそしくなる。
最近サイトの更新にかまけてあまり構ってあげてないし、まさかその間に変な男にでも引っ掛けられて――
「駄目だぁっ!」
いけない。私達は確かにそういう間柄じゃあない。
しかしだ。まだあどけない中学生が甲斐性も無い馬鹿男に騙されるのを黙ってみていられるはずが無い。
そうさ、ルームメイトとして道を踏み外そうとしている友人を助けるのは当然のこと。
その為に多少過激な手段に出るのも仕方の無いことである。
-
25-176
名前:無能[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 01:39:31 ID:???
-
言い聞かせるようにして「ザジのためだ」の連呼。
ノートパソコンをシャットダウンし、勢い良くクローゼットの戸を開く。中にひしめく洋服の群から引き抜いたのはセーラー服だ。
先日着て見せた幾つかの衣装の中で、これが一番評判が良かった。メガネを掛けたままの方が高評価だったのも見逃さない。
露出は少なく清楚なイメージ、しとやかな居振る舞いで、メガネにポニーテール。このちょっぴりドジな委員長キャラで―――
「ザジを落とす!」
「…落とす?」
ぎゃぁと悲鳴を上げそうになったが、悲鳴を上げれるような生易しい驚きではなかったので、声無き叫びとなった。あまりの衝撃にセーラー服も落としてしまった。
驚いて振り返れば、ブレザー姿で肩に大きなバックを掛けたザジがいる。部活の帰りだろう。まさかここまで早いとは予想外だ。
慌てふためきクローゼットを後ろ手で閉め、掛け算の七の段を暗唱し始めたところで、ザジの言及が入る。
「どこに…落とすの?」
「い、いや、その―――」
煮え切らない言葉の列を零す口を一旦閉め、深呼吸を繰り返した。
違う、これは私の求めていた展開ではない。例え突然予期せぬ事態に放り込まれても、
それをすぐに持ち直す思考の回転の速さ、そして動揺を見せぬ可愛い笑顔が人気を勝ち取る。
やがては裏の世界の女王を襲名する私だ。女の子一人落とせないでどうするっ!
「大切な、話があるっ」
-
25-177
名前:無能[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 01:40:21 ID:???
-
ザジの肩を掴み、まっすぐに見つめ、台詞を吐き出した。
言葉足らずもいいところだ。何の説明にもなっておらず、問いかけは流した形になる。
恥ずかしさと情けなさで心臓が破裂しそうだ。しかし、ここで怯えて一歩引けば、この後の流れは破綻しかあり得ない。
一歩を踏み出せば、走らないと生まれるのは悔いのみだ。最後まで、行っとけ私。
「チョコレート、誰のために作ったのか、教えて欲しい」
「………」
自分でも解かるほど顔は真っ赤。跳ね上がる心臓は抑えなど効くはずも無く暴れ周り、言葉も震えている。
だが目はそらない、掴んだ肩も離さない。無言のにらめっこ間。流れるのは沈黙。
それを返答として受け取り、だから言葉を紡ぐ。
「好きな人に作ったのか?」
「……」
小さく、しかし確かに頷いた。瞬間、頭の中が白く痺れた。
しかし、私は停止していなかった。意識が殆ど無い中、私は呟いていた。
「駄目…だからな」
-
25-178
名前:無能[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 01:40:55 ID:???
-
呟くごとに意識が引き出され、それでも否定は止まらない。
「そんなの、駄目だからな」
呟くごとに、言葉には力が加味される。
「絶対に、駄目だからな」
呟くごとに自らの気持ちが鮮明に理解できる。
「私は、ザジが好きだ!大好きだ!認めない、私以外を好きになるなんて認めない!」
爆発した。そう、私はこいつが好きだ。どうしようもないくらいに。
だからこそこんなに悲しいのだろう。先ほどから、目が潤んできて、前もまともに見えない。
「………」
そんな私をザジは抱きしめた。頭を抱え込み、私の頭をなで、額にキスをし、そして呟く。
「ゴメンね」
予想していた答えだが、実際に口にされると、それが引き金であったかのように涙が零れ落ちた。堤防が決壊した涙腺は涙の洪水を止められない。
ぐずついた呼吸を繰り返し、とうとう声まで上げて泣こうとした時だ。
-
25-179
名前:無能[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 01:41:53 ID:???
-
「…ウソなの」
「―――へあ?」
間抜けな声が出た。予想もしなかった言葉だ。まるで土星あたりから飛来したかのように虚を突いてくれた台詞である。
ウソ?何が?どこからどこまで?てゆうかまさか夢オチか?今見ているこの世界がウソなのか?
「…チョコ、那覇に頼まれて、作った。子供に、渡す、らしいよ?」
「―――?」
説明を続けるザジだが、残念なことに私の脳が会話についていけない。
それでもどうにか時間を掛けて要点だけを摘み上げると、つまり、チョコを作ってたのは頼まれたからで、好きな人に作ったって言うのが嘘なのか?
「………」
頷いた。
途端に全身から力が抜け、へなへなとへたりこんだ。そんな私の頬を撫で、ザジは笑顔を浮かべる。
-
25-180
名前:無能[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 01:43:25 ID:???
-
「何で、そんな嘘ついたんだよ」
「ちうが、構ってくれないから」
…落とす云々の前に、私がはめられてるじゃないか。
落胆する私の頭を撫で、そしてザジは台詞を続ける。
「私も、ちうがダイスキだよ」
「―――ん」
足を曲げ、背を曲げ、もたれかかるようにされたのは口付け。
突然の出来事だが、思考が追いつく前に私はザジを受け入れていた。
両手をザジの頬に添え、長く、長く呼吸も忘れて接吻を交わす。
「ぷはっ」
「ファーストキスだから、責任、取ってね?」
「………」
ご機嫌な様子で着替えを始めるザジを隣に、暫くの思考の沈殿した世界をさまよい、すぐに覚醒。
「ちょっと待て!今のは明らかにお前からだったろうが!」
25-200
-
25-200
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 19:30:57 ID:???
-
『fine color girl』 1/8
「ちわー。今終わったの?」
午後五時。サッカー部の練習を終えた亜子が引き上げようとしていると、円から声を掛けられた。
「うん。くぎみんはまだ練習中なん?」
「くぎみんゆーなって。―――ま、今日は美砂も桜子も居ないから自主練やってるだけなんだけどね。けど、
サッカー部が体育館で練習、って珍しいね」
「そやね。今日はグラウンドが全部埋まってもーたから……」
「あはは。こっちだったら空いてるからね。私みたいに時間延長して自主練してても問題ないし。ほら、
向こうでゆーなもやってるよ」
円の視線の先には裕奈が一人でシュート練習に励んでいた。他の部がまだ練習している中でバスケの
コート周辺は裕奈の貸し切り状態となっている。
「ゆーなも頑張っとるなあ〜。……けど、他の子はもう上がりなんやろか?」
「うーん、バスケ部は大体五時には練習切り上げてるし。ゆーなのトコはいわゆる仲良しクラブだからね」
円の返事に亜子は首を傾げた。
「そーなると、ゆーなはいっつも居残りで練習しとるんやろか? ウチら四人で帰るのって大体六時過ぎとるし」
「言われてみれば……。ゆーなってしょっちゅう居残り練習やってる気が……」
「なんちゅーか、元気あり余っとるなあ……」
亜子はくすくすと笑いながら裕奈の元へ足を運ぶ。円もその後に続いた。
裕奈はエンドラインギリギリのところからスリーポイントの練習をやっていた。ボールは美しい放物線を描き、
音も無くゴールに吸い込まれる。
おおーっ、と歎息を漏らしながら亜子が拍手すると、裕奈はすました顔で振り返った。
「亜子とくぎみーじゃん。どうしたの?」
「だからくぎみーゆーなっつーの。あんたらは二人して……」
円が目元を押えながら渋い表情を浮かべると、亜子はあはは、と苦笑した。
「ゆーなは居残りなん?」
「まあね〜。部活のメニューだけじゃ物足りなくってさ」
そう言って裕奈は再びシュートを放つ。リプレイ映像を見ているかのように、ボールは同じ軌道でゴールを
通過していった。
-
25-201
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 19:31:40 ID:???
-
2/8
「スゴいな〜……。よう、そないなトコから入るわあ……」
うっとりと亜子が呟くと、円もうんうん頷いている。
「えっへへー。ま、本職ですからっ!」
「でも弱いんだけどね」
「放っとけー!」
円がからかうと、裕奈はお約束のツッコミを入れる。
「でも、なんで勝てへんのやろ? ゆーなはホンマに上手やのに……」
「真顔でゆーなあっ!」
今度は亜子にツッコミ、と忙しい。けれど、亜子は本気で考え込んでしまっている。これには裕奈も円も
苦笑するしかなかった。
「―――まあ、バスケはチーム力が重要だからね。いくらゆーな一人が上手くても、他が並以下じゃあね。
高さはないし、スピードもスタミナもシュート力も大したことないし」
遠慮のない円の意見に、裕奈は少々ムッとしてしまう。
「いいの! あたしたちはバスケが好きでやってるんだから!」
「―――けど、ゆーなは勝ちたくないん?」
亜子の一言に、裕奈は返答に詰まってしまう。
「連携はしっかりしてると思う。だから、基礎さえしっかりしてたら勝てるのに」
チアで応援している立場だけあって、円の指摘は的確である。裕奈は苦笑しながら溜息をついた。
「その通りなんだけど……。バスケの基礎練ってさ、地味な上にハードなんだよ。たからあたしはいいとしても
他のみんなには厳しいんだよね……」
キャプテンとしてみんなを纏める立場としては、本来ならば心を鬼にしなければならない時もある。
だが、どうしても裕奈には練習を強要することが出来ないのだ。結果として裕奈は試合ではのびのびとプレイする
事が出来ない有り様である。先程円が仲良しクラブ、と評したのはまさに正鵠を射るものであった。
「―――まあ、ウチもマネージャーやからゆーなの気持ちも分かるんやけど、やっぱスポーツは勝たなアカンと思う」
亜子の助言に円はくすくすと笑ってしまった。先程までのサッカー部の練習を思い出してしまったからだ。
こう見えて亜子はなかなかのやり手である。虫も殺さぬような可愛い笑顔で激励しながらハードなカリキュラムを
次々と押し付ける姿は、まさに敏腕マネージャーそのものであった。
-
25-202
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 19:32:29 ID:???
-
3/8
「勝たなきゃダメ、かあ……」
裕奈はそう呟くとシュート練習を再開した。悩みを振り払うように、裕奈は黙々とシュートを続ける。亜子と円は
コートの隅でじっと見守っていた。
(そりゃあ、あたしだって勝ちたいよ。けど、楽しくなくちゃイヤなんだよね……。やっぱり楽しみながら
強くなるのって難しいなあ……)
ずっと裕奈が心に抱いていた悩みであった。それは裕奈がキャプテンに任命された時から背負っていた重荷。
結果として裕奈は勝利よりも楽しさを重視していた。それがバスケ部の伝統でもあったから。けれど……、
―――強いチームにしたい。
それが裕奈の本心であった。バスケ部をもっと大きな舞台に連れて行きたい。そう、考えていた。
その為には今のようなぬるま湯に浸かった環境を変えなければならない。そう思って居残り練習を始めた。
(けど、あたし一人じゃどうにもならないんだよね……)
誰か一人は居残りに付き合ってくれると思っていた。けれど、現実は甘くない。他の部員達は練習が終わると
早々に帰ってしまうのだ。まだまだ遊びたい年頃なのだからしょうがないだろう。彼女達はそういった意味で
時間に融通の利くバスケ部を選んだのだから。
(キャプテン失格だよね、あたし……)
苦悩を抱えたまま、裕奈は延々とシュート練習を繰り返していた。
しばらくすると円の表情が次第に変わっていく。
「―――ね、ねえ亜子。さっきからゆーなって全然外してないじゃん」
「せやね〜。やっぱゆーなはスゴいわ〜」
亜子はにこにこしながら呑気な事を言っている。だが、大会の応援などで目の肥えた円は驚きを隠せずにいる。
「知らない間にゆーなってメチャクチャ上達してるよ……」
「そうなん? ゆーなは頑張り屋さんやからな〜」
いまいち理解出来ていない亜子に、円は苦笑を禁じえない。
「ほら、今ゆーながやってるのはフェイドアウェイってヤツだけど、バックジャンプしながらシュートするのって
すっごく難しいんだよ。それなのにゆーなは平然と決めてるし……」
先程亜子が呟いた一言が円の脳裏に蘇る。本当に、これだけの技術を持ちながらどうして勝てないのだろうか。
円がその理由を知ったのは、三日後の事であった。
-
25-203
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 19:33:04 ID:???
-
4/8
日曜日。バスケ部は練習試合を行っていた。
「ゆーな、応援に来たで〜」
「うあ、こいつはまたスゴい点差ね……」
ハーフタイム中に亜子と円が応援に駆け付けた。しかし、円はスコアボードを見て苦笑してしまう。前半だけで
麻帆良バスケ部は20点近くリードされていたのだ。
「あはは……。みっともないトコ見られちゃったなー」
ドリンクを口にしながら裕奈は恥ずかしそうに頬を掻く。
「アカンよー? 諦めたらそこで試合終了やから。せっかくウチらが応援に来たんやから、頑張ってな!」
「うお、安○先生ですか……。そんなコト言われたら頑張るっきゃないねっ!」
裕奈は気合いを入れ直すと、他のメンバーにもハッパを掛けて後半に挑んでいった。
「なーなーくぎみん。ゆーなのポジションて司令塔なん?」
「そだね。ポイントガードは重要だよ。なんたってパスの供給源だから。……つか、いー加減くぎみんはやめれ」
と、二人は和やかに試合を観戦していた。だが、しばらくして円はある事に気が付いた。
「―――なんでゆーなはシュート打たないのよ」
後半開始から3分。それまでに裕奈はロクにシュートしていないのだ。パスに専念しているように見受けられるが
仲間のシュートは次々と外れてしまう有り様である。高さのない麻帆良チームはリバウンドを支配され、点差は開く
一方であった。
「ちょっと! ゆーなっていっつもあんなカンジでプレイしてるの!?」
円は控えの後輩を捕まえて問い質す。
「は、はい……。明石センパイは厳しくマークされるので囮に使ってるんです」
「……今は全然警戒されてないじゃない」
円は呆れた表情で呟く。実際にシュートを打たない裕奈を相手が警戒している素振りはない。裕奈がドリブルを
止めても、向こうのディフェンスはゾーンを固めたままなのだ。しかし、円は裕奈の心境も理解出来た。
「成程、ね。なんとか周りを使おうとして、拘り過ぎちゃってるんだ……」
「ゆーなはあれで意外と気い使うタイプやもんなあ……」
亜子もしみじみと呟く。
「……ったく、そーゆートコはホントに不器用なんだから。ちょっとタイムアウト取ってくれない?」
円の目にはチアとしての魂が宿っていた。
-
25-233
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 05:25:43 ID:???
-
『fine color girl』5/8
「こらこら、無闇にタイムアウトを使わないでよ」
そんな軽口を叩きながら裕奈がベンチに戻って来る。しかし、待ち受ける円の表情は笑っていなかった。
「ゆーな。何遠慮してんのよ。いくらポイントガードだからって、そこまで気を使う必要はないんじゃない?」
「えっ……?」
「あんたは何の為に毎日居残り練習してんのよ! ズバズバシュート決めてみんなを引っ張ってく為でしょ!」
(あっ……!)
円の力強い檄が、裕奈の心に衝撃を与えた。
(そっか……。いつの間にかあたしってみんなに遠慮してたんだ……。くぎみーの言う通り、あたしはみんなを
引っ張る為に練習してたのにね……)
みんなを活かす為には、まず自分が先頭に立たなければならない。そんな当たり前の事を裕奈は忘れていたのだ。
「今やったらやりたいほーだいやん。そないな美味しい状況で暴れんのはゆーならしくないで」
亜子はいつもの笑顔でそう言ってくれる。裕奈の表情に決意の色が浮かんだ。
「らしくない、か……。そーだよね、あたしらしくやればいいんだよねっ!」
裕奈はくすりと微笑むと、チームメイトに宣言した。
「みんな。ちょっくら大暴れしてもいーかな?」
チームメイトもはっきりと頷く。それまで敗戦ムードだった麻帆良バスケ部の空気が、一変した。
「このままやられっぱなしじゃつまんないもんね!」
「ここから逆転しちゃいましょう!」
「私たちはディフェンスに専念するから!」
「ゆーなは遠慮なく暴れちゃって!」
チームメイトの激励を受けながら、裕奈はスコアボードに目をやる。点差は25点。あまりに開き過ぎている。
「25点差、ひっくり返しちゃいますかっ!」
軽い、いつものノリで、裕奈はきっぱりと言い切った。
「さあ、私たちも応援するよっ!」
「りょーかいやっ!」
タイムアウトが終了し、裕奈達はやる気に満ち溢れた顔付きでコートに戻る。円と亜子はしっかりと
見届けようと、ぎゅっ、と拳を握った。
そして、裕奈の一人舞台が幕を開けた―――
-
25-234
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 05:26:27 ID:???
-
6/8
ゆったりとドリブルをしながら、裕奈は周囲を見渡す。自分のマーカーは全く警戒していない。こんな状況で
無理矢理パスを回していたのかと思うと、ちょっぴり恥ずかしくなる。
「さて、と。まずは挨拶代わりに―――!」
スリーポイントラインにまだ届いていない距離で、裕奈は突然シュートを打った。
「決まれっ―――!」
完全に虚を突かれた相手は全く反応出来ず、ノーマークで放たれたシュートは鮮やかにゴールに吸い込まれた。
「それだよ裕奈! このままガンガン決めちゃえ!」
円の声援を受け、裕奈の表情から笑顔が弾けた。
「よーし、ここからが本番だよっ!」
このシュートで裕奈のエンジンが点火した。そして、すかさず相手のボールをスティールすると、再び
スリーポイントの構えに入った。今度は向こうもシュートチェックに入る。だが、
「そんなんじゃ、あたしは止めらんないよっ!」
居残り練習でやっていたフェイドアウェイが炸裂した。裕奈のシュートはディフェンスをあざ笑うかのように
ゴールを捉えていく。たった2本のシュートで点差は19点になった。
「まだまだいくよ〜っ!」
三度、裕奈はスリーポイントの体勢に入る。だが、今度はフェイクであった。ブロックショットに入った相手を
かわすと、鮮やかなドライブでディフェンスを次々と抜き去り、美しいフォームでレイアップを決めた。
「スゴいゆーな……。ホンマに一人で反撃しとるやん……」
亜子はどきどきしながら親友を応援し続ける。こんなにいきいきとした裕奈を見たのは久し振りだ。
「水を得た魚、ってカンジだね」
円は吹っ切れた様子の裕奈に目を細めるばかりである。いつしか二人は立ち上がったまま声援を送っていた。
焦りからか、相手のシュートに乱れが生じる。がちがちにゴール下を固めていた麻帆良チームはリバウンドを
渡さない。
「ナイスリバァン! 速攻出してっ!」
すかさず裕奈はパスを受け、一気に相手ゴールまで切り込んでいく。レイアップの体勢に入った瞬間、ギリギリで
間に合ったディフェンスがブロックに跳んだ。タイミングは合っている。
「ヤバッ……!」
咄嗟に裕奈は空中でボールを持ち直し、ブロックを掻い潜ってからシュートを放った。ダブルクラッチである。
-
25-235
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 05:27:09 ID:???
-
7/8
ざしゅっ。
「やったあっ!!」
体勢を崩して倒れ込んだ裕奈は、シュートが決まったのを確認すると思わずガッツポーズを見せた。
一か八かの賭けは見事に成功し、裕奈の美技に相手は完全に浮き足立ってしまう。こうなると試合の流れは
麻帆良に傾き出した。リズムに乗った麻帆良チームは次々と相手ボールを奪っていく。
「ディフェンス一本! ディフェンス一本!」
「またスティールやっ!」
円と亜子の応援にも熱が入る。この異様な盛り上がりに、観客の数が徐々に集まり出した。25点あった点差は
みるみる縮まり、相手は3分間ノーゴールという信じられない状態になっていた。対して、裕奈は全くシュートを
外さない。相手のリバウンダーはゴール下で虚しく立ち竦むばかりであった。
(もう最高! やっぱりバスケって楽しい―――!)
裕奈は疲れを感じないくらいに高揚していた。同時に神経は研ぎ澄まされ、コート上のプレイヤーの動きが
全て視野に収まっていた。
(お、ダブルチームで来たね。でも……)
相手は二人掛かりで裕奈を止めようとするが、裕奈はスピードを殺さずにクロスオーバードリブルで一人目を
かわす。二人目のマーカーと接触しそうになるが、裕奈は見事なボディバランスでチャージング狙いの相手を
抜き去った。
「ダブルチームじゃ今のあたしは止められないよっ!」
そのまま裕奈のジャンプショットが決まり、ついに点差は射程距離内に入った。
ダブルチームでも止まらない裕奈に対し、とうとう相手はトリプルチームでマークに当たった。
「今だ! インサイドがガラ空きだよっ!」
この時を待っていた裕奈はピンポイントでパスを通す。ゴール下に味方がカットインし、次々とシュートが
決まり出す。もう勝負あり、といった状態だ。そして、
「これでトドメだあーっ!!」
ディフェンスを三人抜き去り、裕奈の豪快なワンハンドダンクが爆発した。
同時に、試合終了のブザーが鳴った―――
-
25-236
名前:『fine color girl』[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 05:27:51 ID:???
-
8/8
『やったあーーーっっ!!』
裕奈を中心に、歓喜の輪が出来る。63対57。麻帆良の大逆転勝利であった。裕奈は後半だけで32点を叩き出す
暴れっぷりであった。
「あはは……。マジで逆転しちゃったよ」
信じられない、といった表情で円は腰を下ろした。先程まで立ちっぱなしで応援してたので喉はカラカラ、
汗びっしょりである。心地良い疲労感が、勝利の余韻と共に残っていた。隣では亜子が嬉しそうに裕奈を
出迎えている。
「ウチ、バスケの試合見ててこんなに興奮したんは初めてや〜。ゆーなが夢中になるんも分かるわ〜」
「ふふん。じゃあサッカーよりも面白い?」
「や、それは譲れんけどな」
裕奈の意地悪な質問に、亜子はきっぱり答える。そして、三人で笑った。
「応援ありがとねっ! お陰で久々の勝利だよっ!」
「や、お礼を言いたいのはこっちの方だって。こんなに面白い試合、滅多にみられないものね」
「せやせや! ホンマにカッコよかったで、ゆーな!」
こつん、と三人は拳を重ねる。
「今日はただの練習試合だったけど、あたしにとっては忘れられない試合になったよ。―――やっぱりさ、
勝負事は勝たなきゃダメだよね」
タオルで汗を拭いながら、裕奈は感慨深く呟いた。今日の試合が、ずっと悩んでいたものの答えだった。
自分が先頭に立ってみんなを引っ張っていけば、必ず結果はついてくる。もう、裕奈に迷いは無かった。
「―――けどさ、亜子の応援はスゴかったね〜」
「うんうん、私もびっくりした。途中から大声で『いてもうたれ〜っ!』とか『ボコボコにしたらんかい!』とか
叫ぶんだもんね〜」
裕奈と円の意地悪な視線が亜子に注がれる。
「わ、忘れてえな……。地元やとこれくらいの野次は当たり前なんよ……」
亜子は真っ赤になりながら恐縮するばかりであった。
その後、裕奈の居残り練習にはちらほらと他の部員も参加するようになり、いつしかバスケ部は練習時間が
延長されるようになったという―――
(おしまい)
最終更新:2007年10月13日 17:43