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35-310

35-310 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 18:22:48 ID:???
風香 甘えん坊将軍


1/5
むか〜し、むかし。あるところに将軍様がおられたそうな
しかしこの将軍様、ちょっと困ったちゃんだっだのです
でも今回は将軍様は出て来ません


ハルナ 「くそう・・ネタはどっかにないのかしら」
この土手を歩く少女、名を早乙女さんと言います
絵師工房、早乙女堂のご主人であり、その道の探求者なのです
ハルナ 「こう・・ぐぐっときて、溢れ出るようなネタって落ちてないかな」
ネタに詰まったとき、彼女はこうして麻帆良川の土手を歩くのを習慣としていました

ちゃぷ・・ちゃぷ・・
ふと早乙女さんが耳を済ませんると、どこからか川の流れとは別の水の音が聞こえてきます
ハルナ 「はて?」
しばらくその音の発生源を調べる早乙女さん。やがてその音は、橋の下から聞こえて来ることがわかりました
ハルナ 「なにかな・・・お!?」
橋の下に降りてみると、水面を不思議そうに見つめる少女がいたのです

その少女の出で立ちに早乙女さんは胸をときめかせるのでした
頭の上にはお皿、黒髪は左右に分けたお下げ、眼鏡に、気の弱そうな顔
そしてなんといっても、異国のすくうる水着に身を包んだ姿が印象的でした

ハルナ 「おおお!!!これよ!!!今の私にはこれが必要だったのよ!!!」
早乙女さん、何かが閃き始めたようです
35-311 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 18:25:21 ID:???
2/5
ですが、その少女はすぐに川の中に逃げてしまいました
まあ、欲望丸出しの見知らぬ人が近くに来たらそうなるでしょうけど・・・

所変わって、ここはくいもん屋五月。早乙女さんはここで情報収集することにしたようです
さよ 「そうですね。それってたぶん、かっぱさんではないでしょうか?」
ハルナ 「かっぱ?」
壺の幽霊、さよさん。くいもん屋に居候する彼女は実はとても物知りだったのです
幽霊さんですから、妖怪とかには詳しいようです

さよ 「そう、かっぱさん。水辺の妖怪ですね」
ハルナ 「何とかまた逢えないの!?ちょっといたず・・・お話を聞きたいのよ」
さよ 「そうですね・・・かっぱさんはキュウリが好物だからもので吊ってみるというのはどうでしょうか?」
ハルナ 「キュウリね。ありがとさん!!!」
それだけ聞くと、早乙女さんはくいもん屋を急いで飛び出していきました
さよ 「お、お勘定・・・まあ、いいか。あの人ならまた来るか・・・」


早速近くの八百屋さんでキュウリを買った早乙女さん
目撃現場に急行すると、ざるにキュウリを置いて罠を仕掛けました
でもなかなかかっぱさんは現れてはくれません

そして三日が過ぎました

早乙女さんが待つの疲れて眠ってしまったときのことです
ぽり・・ぽり・・・
何かの音に気がついた早乙女さんが目を覚ますと、目の前であの日のかっぱさんがキュウリを食べていました
35-312 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 18:26:01 ID:???
3/5
ハルナ 「いたー!!!」
一気に目の覚めた早乙女さん。思わず叫んでしまいました

びくっ!!とかっぱさんは驚くと、慌てた水の中に飛び込もうとします
ハルナ 「何逃げてんの!!キュウリ盗ったでしょ!!」
その言葉でかっぱさんは動けずに固まってしまいました

ハルナ 「さて・・・あなたはだあれ?」
?? 「・・・」
かっぱさんは答えません。おどおどしています
ハルナ 「名前ぐらい教えてくれてもいいんじゃない?私はハルナ、画家をやってるの」
それでもかっぱさんは答えてくれません。おどおどしたままです
ハルナ 「言葉がわからない?」
かっぱさんは首を横に振ってそれを否定します
ハルナ 「喋れないの?」
コクン、とかっぱさんは少し悲しそうに頷きました

ハルナ 「名前もわからないのか・・」
そう早乙女さんがつぶやくと、かっぱさんはすくうる水着の胸の部分を強調し始めました
そこにはこう書かれてたのです
”なつめぐ”
ハルナ 「なつめぐ・・・あなたの名前はなつめぐなのね」
こくこく・・・かっぱさんはその言葉を聞くと、嬉しそうに何度も頷きました


ハルナ 「で、あなたはかっぱさんなのね?」
こくん。かっぱさんはキュウリを食べながら頷きました
35-313 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 18:27:35 ID:???
4/5
その日から早乙女さんとかっぱさんの交流が始まりました

ハルナ 「こんにちは、キュウリ持ってきたよ」
かっぱさんは早乙女さんの姿を確認すると、嬉しそうな顔で川から上がってきます
その手には小さいけれど、とっても綺麗な石がありました
ハルナ 「ん?翡翠かな。ありがとうね」
でも早乙女さんはその宝石を売るようなことはしませんでした
宝石に興味がなかったのもありますが、かっぱさんの心を売るようなマネをしたくは無かったのです

ハルナ 「動かないでよ・・・できた!!」
早乙女さんは、一枚の紙に筆でささっとかっぱさんの姿を書きました
それを見たかっぱさんはうれしそうに飛び跳ねます
そして、川辺まで来ると、水面を指さしながら絵と見比べています
ハルナ 「そうね、これがあなたの姿。可愛いわよ」
かっぱさんはその絵を愛おしそうに、ぎゅっと抱きしめました
すると水着についた水に濡れてしまい、絵が滲んでしまいました
なつめぐ 「・・・」
かっぱさんは目に涙を浮かべながら、申し訳なさそうに早乙女さんを見つめます
ハルナ 「大丈夫よ、また書いてあげるからさ。今日はもう紙がないから、また次の時ね」
その言葉を聞いたかっぱさんは、またうれしそうにするのでした

ですが早乙女さんはもうかっぱさんに絵を渡すことはできなかったのです


次の日から降った雨は、異常なほどの豪雨でした
何百年に一度というような大雨で、あっという間に川が増水し始めたのです
堤防の水かさが増し、決壊のおそれが出始めました
人々は必死の土嚢を積みますが、焼け石に水です
諦めた人々は高台に避難しました
35-314 名前:風香 甘えん坊将軍[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 18:30:29 ID:???
5/5
やがて堤防が決壊しようという時のことでした
奇跡が起きたのです
川の水が真ん中を中心に盛り上がって山のようになり、それに連動するように両脇の水位が下がりました
堤防からあふれ出そうになっていた水はだんだんと引いていきます
人々はその光景を見て喜びの声を上げました
そんなとき、誰かが声を上げたのです
?? 「あそこに誰かいる!!川の真ん中に誰か浮いてるよ!!」

それはかっぱさんでした
その姿を確認した早乙女さんは、急いで堤防へと向かいます
ハルナ 「だ、大丈夫なの!?」
早乙女さんはかっぱさんに声をかけました。しかしかっぱさんは反応しません。決して聞こえない距離ではありません
ハルナ 「なつめぐ・・・ありがとう・・・」
早乙女さんは雨が降りしきる中、その場を動きませんでした

やがて雨も収まり、水位も下がってきました
それを確認したかっぱさんは変化させた水位を元に戻すと、ゆっくりと早乙女さんの方を見ました
なつめぐ 「は・・る・・な・・」
かっぱさんはそれだけ言うと、消えるように川に溶け込んでいったのです
ハルナ 「なつめぐ!!!」

それ以降、かっぱさんの姿は見られなくなったそうです


ハルナ 「ほら、アンタの絵だよ・・・」
早乙女さんはそれから年に一度、かっぱさんの絵を川に流すようになりました
それを真似て人々も、川にかっぱさんの絵を流すようになりました
川が氾濫しませんようにという想いと、かっぱさんに感謝の気持ちを込めて流しました
それ以降、川は氾濫しなくなくなったそうです

35-322

35-322 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 23:01:35 ID:???
子猫

[拾ってください]
亜子「あっ、捨て猫やん」
アキラ「かわいいね」
子猫「にゃ〜」
ゆーな「にゃー」
亜子「この前までおらんかったのに…最近捨てられたんやな」

ゆーな「にゃー」
子猫「にゃー」
ゆーな「にゃー」
子猫「にゃー」
ゆーな「にゃー♪」
子猫「にゃー♪」
亜子「あはは、ええ話やな。あっという間に仲良くなったなぁ」
アキラ「よくわかるね…」
ゆーな「にゃー」
亜子「う〜ん。この猫どうしよか…」
アキラ「私には真名と一緒に飼ってる犬がいるんだよね…」
ゆーな「にゃー…」
子猫「にゃー」
35-323 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/12(水) 23:02:13 ID:???
ゆーな「にゃー!」
亜子「そないな!いややわゆーなったら///」
アキラ「何?」
亜子「ウチとゆーなの子ってことにするんや///」
ゆーな「にゃー///」
アキラ「それは無理があるんじゃない…」
子猫「にゃー」

35-328

35-328 名前:へべれけさん19[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 08:22:33 ID:???
へべれけさん19
1/2

 麻帆良学園中等部女子寮。そこには夜な夜な徘徊する酔っ払い女が棲むという……。
「一年ぶりね……。ずっと、すっと待ってたんだから―――!」
 思わず涙を見せる柿崎さん。歓喜のあまり、抱きしめてしまいました。
「あーはいはい、分かったからサッサと準備しなさい」
「りょーかいれ〜す。二ノ宮センセがお待ちかねだもんね!」
 釘宮さんのツッコミに、柿崎さんはいそいそと自家製の梅酒を空瓶に移し替えるのでした。
「―――にしても、見た目はフツーの梅酒だよね」
 釘宮さんは自前の梅酒と柿崎さんの梅酒を交互に観察しています。わざわざ一年間寝かせた梅酒は
美しい琥珀色の輝きを放っていました。傍から見たら全く区別が付きません。
「さーて、それじゃあロビーに突撃よっ!!」
 丁寧に梅の実を小皿に取り分け、柿崎さんと釘宮さんは二ノ宮先生の元へ急行しました。

「おお……、これが前に言ってた梅酒か」
 ロビーで一杯飲っていた二ノ宮先生。柿崎さんの梅酒を前に歎息をこぼします。
「では、早速どぞ……!」
「うむ……!」
 柿崎さんにお酌させると、二ノ宮先生は心して梅酒を喉に滑らせました。
「おおっ、これは凄い! なんとも濃厚な味わいだ……!!」
 思わず二ノ宮先生は大きく目を見開きました。ここまで美味しい梅酒であるとは想像していなかったようです。
「うんうん、思ったより飲みやすい! んで、この甘味と香りが堪んないですね〜」
 柿崎さんも納得の出来映えです。未体験の逸品に、思わず目を細めるばかりです。
「円もどう? いやマジで美味いって!」
「い、いや遠慮しとく……。中身知ってる分、どうしても抵抗あるから……」
 と、釘宮さんはやんわり断りながら、通常のレシピで作った自前の梅酒を口に運ぶのでした。
「しかし美味いな……。今年から私も作っておくか」
「これはもう、毎年作るっきゃないですねっ!」
 二ノ宮先生と柿崎さんはしきりに頷いています。こうして三人はしばしの間、梅酒を味わっていました。
35-329 名前:へべれけさん19 [sage] 投稿日:2006/07/13(木) 08:23:20 ID:???
2/2
「お、お、美味そうなのあるじゃん!」
 と、そこへやって来たのは明石さんと和泉さんです。すぐさま梅の香りをキャッチした明石さんは、
ぱたぱたと尻尾を振りながら宴会に首を突っ込んできました。
「ゆーなも飲む? へべれけ印のスペシャル梅酒!」
「へえ、これ柿崎が作ったんだ……。どれどれ……」
 目の前に差し出されたボトル。そこに貼られたラベルを明石さんはしげしげと見つめています。
「ご丁寧にラベルまで作ったんやね……」
「わざわざパルに頼んだのよ、こいつ」
 和泉さんがやんわり指摘すると、釘宮さんが解説してくれました。二人共、イラストの内容については
黙殺しています。まあ当然ですね。ウメー! と叫ぶ柿崎さんイラストなど、オヤジギャグにも程がありますから。
「あはは……、こりゃまたスゴいお酒だね……」
「いや、意外とイケるんだよ、これが」
 原材料を見て苦笑する明石さんに、二ノ宮先生は問答無用でスペシャル梅酒を差し出しました。
ごくり、と息を飲みながら、明石さんは神妙な面持ちでグラスを口に運びます。
「うわ、梅の味と甘さが口の中で爆発してる……!」
 瞬く間に明石さんの顔が赤くなります。けれど本人はいたくスペシャル梅酒を気に入ったようですね。
「よくこんなコト思い付いたねっ! さっすが柿崎!!」
「ふふん、お酒のコトなら私にまーかして!」
 自慢げに胸を張る柿崎さんに、和泉さんが興味津々で言いました。
「へえ……、そない美味しいんやったら、ウチも一口飲んでみたいわ」
「あ、いや、亜子は普通の梅酒にした方が……」
 やんわりと釘宮さんが忠告します。
「けど、梅酒はあんまきつうないやん。ウチ、梅酒やったら結構好きなんよ」
 そう言って和泉さんはスペシャル梅酒をくいっ、と喉に滑らせました。すると、
「!!!!!」
 ぼんっ! と和泉さんの顔は真っ赤になり、そのままぶっ倒れてしまいました。
「ありゃりゃ。やっぱ亜子にはスピリタスで作ったスペシャル梅酒はムリだったか」
 こりこりと梅の実を口にしながら、柿崎さんは呑気に呟くのでした―――
(おしまい)

35-355

35-355 名前:五月 くいもん屋[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 20:58:24 ID:???
五月 くいもん屋


1/2
疲れたとき、癒しを求めるのは当然のこと
私は、そんな人たちを癒してあげたくてここに立ちます
私は五月、人を癒す、くいもん屋のおかみさん


さて、今日はなにやら少し暗めな三人組が隅の方のテーブルでなにやらお話をしています
ちょっと聞き耳を立ててみましょうか

高音 「こんなの、本意じゃありません・・・122通ですか」
愛衣 「私には・・・95通です」
ナツメグ 「私は77通ですね」

テーブルの上にはなにやら手紙の山が積まれています
あれはいったい何の手紙なのでしょうか?

愛衣 「”あのときのあなたを見て・・・好きになりました”」
ナツメグ 「”おっきしたお( ^ω^)”」
高音 「”オーディション合格!!今日からあなたもAV女優!!”って何ですかこれは!!!」

怒り心頭の高音さん。もしかしてあの手紙って・・・
愛衣 「でも、お姉様へのアプローチが一番多いですね」

やっぱりラブレターだ
35-356 名前:五月 くいもん屋[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 20:59:27 ID:???
2/2
高音 「今、私がなんて言われているか知っていますか!!脱ぎ女ですよ!!脱ぎ女!!」
愛衣 「でもこんなに私のことを・・・えへ」
ナツメグ 「”スクール水着もOK!!眼鏡っ娘、激ラブです!!”・・・むふっ!!」
高音 「あなたたち!!!」

なんとなく可哀想ですね
でも出るたびに脱いでますからね。仕方がないでしょう

愛衣 「でもお姉様、ラブレターをもらうのは悪い気分じゃないでしょう」
高音 「そ、それは・・・その・・・」
ナツメグ 「”犬と呼んでください。犬と”byにっt・・・いやぁぁぁ!!!」

高音 「ふぅ・・・でもどうしましょうか、これ」
愛衣 「まあ、いい人がいたら・・・お、おつきあい・・・」
ナツメグ 「お、おつきあいですか」
高音 「わ、私たちにはマギステルマギになるという崇高な理想があるではありませんか!!」
愛衣 「でも・・・パートナーも欲しいですよね」
ナツメグ 「欲しい」
高音 「むうう・・・もう知りません!!!」


まあ、もてるんですからいいじゃありませんか
よく見てください。あそこの一番奥の席を
こうなってからでは遅いんですよ?

刀子 「なるほど・・・脱げばいいのね」

35-362

35-362 名前:時間のない場所[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 22:08:20 ID:???
時間のない場所


のどか 「最近はまっていることって何ですか?」
楓 「そうでござるな・・・縁側で湯飲みから上がる湯気を見ながらまったりとしているときでござろうか」
のどか 「いいですね。それ」
楓 「のどか殿は?」
のどか 「えへへ・・・途中まで読んだ本を枕にして寝るんです。すると自分なりの続きが夢に出てきて楽しいんです」
楓 「そうでござるか・・・」
のどか 「まったりですね」
楓 「なんだかお里を思い出すでござる」
のどか 「お里?」
楓 「拙者のお里でござるよ。電気もガスもなかったでござるが・・・毎日がゆっくりだったでござる」

のどか 「どんなところ何ですか?」
楓 「藁葺きの家があって・・・田んぼがあって・・・あぜ道があって・・・小川でキュウリが冷やされたりしていて」
のどか 「それで!?」
楓 「縁側でぼーっとしていたら、どこかでねこが鳴いてみたり・・・夕立が終われば蝉が鳴きはじめて・・」
のどか 「わぁ・・・」
楓 「雨上がりには虹がどこまでも続いていたり、水たまりに空が映っていたでござるな」
のどか 「そういう優しい時間が過ぎるところって・・・いいなぁ」
楓 「なんにもないところ。それが拙者のお里でござるよ」
のどか 「麻帆良は麻帆良でいいところですけど、楓さんのお里は麻帆良にないものがありますね」
楓 「そうでござるか」
のどか 「行ってみたいですね。楓さんのお里」
楓 「いつか・・でござるな」

35-370

35-370 名前:優先順位[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 23:36:56 ID:???

「ちっさめちゃーん!」
放課後、帰り仕度を始める千雨の前に満面の笑みを浮かべた桜子の姿があった。
「・・・何か用か」
手を休めるわけでも、顔を向けるでもなく千雨は不機嫌そうな声で答える。
「ザジちゃん今日部活でしょ?一緒に帰ろー!ザジちゃんには許可してもらってあるからー♪」
「なっ・・・!?ザジ!?」
桜子の後ろではザジが無言でコクリと頷くと、荷物を抱えて教室を出て行った。
後に残ったのはニコニコと千雨を見つめる桜子と、呆然とザジの出て行った入り口を見つめる
千雨という対照的な二人だった。



「ねぇー早いよぉ!千雨ちゃーん!待ってよォ」
「・・・・」
スタスタと早足で帰路につく千雨に後ろから桜子は甘ったれた声を出す。
その声に、千雨はますます歩調を速めるが、そこは運動部の桜子である、
ヒラリと軽い足取りで千雨を追い抜いた。
「じゃーん!!ダッチのアイスクリーム無料(タダ)券!!」
突然目の前に出てきた桜子に危うくぶつかりそうになり、千雨はようやくその足を止めた。
「新作キナコアイスー!甘さ控えめの低カロリー♪食べにイコ♪」
ものの見事な甘い誘惑。千雨の中の理性は『食べたらダメ』と警笛を鳴らしているにも
関わらず、桜子が持つ小さな紙切れに吸い寄せられるようにフラフラと歩き出した。
「わーい♪千雨ちゃんとデートだぁ♪」
「・・・今日だけだからな」
ぼそっと呟くものの、無邪気な桜子の笑顔に千雨もつられて目尻が下がった。
千雨の中で、ザジといる時の安らぎとは違う、何か特別な感情が生まれたような気がしたが、
すぐに否定していた。自分の中で認められないという念が強く働いていた。

35-371 名前:優先順位[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 23:37:27 ID:???
「うっひゃーおっいしー♪冷たくて生き返るぅぅぅ〜♪」
外は初夏。力を誇示するような太陽の光から逃れ、公園のベンチに二人は並んで座っていた。
木陰を吹き抜ける涼しい風が汗を乾かし、溶け始めたアイスがキラキラと輝いた。
「さすがにダッチはウマイな」
ひんやりと喉元を通り過ぎる冷たくて甘い誘惑に、千雨も完敗の様子だ。
隣に座る桜子のダブルのアイスが瞬く間にシングルに変わる様子をやや呆れ顔で見つめている。

―――と、TVでよく耳にするメロディーが唐突に流れ始めた。音の出先は桜子のスカートの中。
揺れながら音を奏でるその物体を桜子は慣れた手付きで耳元へと当てた。
「《桜子だよー どうしたの?》」
耳元で大振りなストラップの束がチャラチャラと音を立てながら揺れている。
どちらが本体で、どれほどの重みがあるかなんて千雨には想像できなかった。
「《えっ・・・・・・》」
ストラップの奥の顔が凍りついた。
今まで見たことのない桜子の顔に千雨は驚きつつも、視線を外せずにいた。
直後にパタンと携帯のしまる音が公園内に響き渡った。と、同時に桜子は走り出していた。
存在すら忘れられて置き去りにされた千雨は、ベンチの前に呆然と立ち尽くしている。
太陽にジリジリと照らされたアイスが、ドロドロと溶け出し千雨の手を汚した。
ダラダラと溶けた甘いしずくが地面に数点シミを作り、辺りにはムッとする甘い香りが漂い始めた。
「・・・んなんだよ・・・」
千雨の怒声と共に地面に叩き付けられたアイスがベンチの前でただ解けるのをずっと待っていた。


「・・・ざけんな くそっ」
勢いよく落ちる水飲み場の水に千雨は手を突っ込むと小さく舌打ちをした。
水道のやけに生温い水が千雨を余計にイラ立たせていた。
洗い流したはずの指がいつまでもベタついている気がして何度も何度も擦る。
夏の日差しは強く、夕方の時間だというのに勢いが落ちる気配すらない。
強い西日の中、キラキラと輝く生温い水が、影を帯びた千雨の顔をずっと映していた。
35-372 名前:優先順位[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 23:37:58 ID:???
「オカエリ」
寮の部屋の中ではエプロン姿のザジがフライパンを片手に千雨を待ち構えていた。
「・・・・・・・タダイマ」
「・・・ゴキゲンナナメ?アイスおいしくなかった?」
黙ったままベッドにうつ伏せになる千雨。
今までザジにそんな態度を取ったことは1度だってなかった。
千雨の中で、ザジに対する罪悪感に似た感情が目を合わせる事を拒んだ。
そんな千雨をザジは黙ったまましばらく見つめ、ふと思い出したように夕飯の仕度を再開した。
キッチンから千雨の耳に伝わる包丁の音が次第に千雨の心を落ち着かせていった。

「ちさめ?」
後ろから突然抱き締められ、ザジは一瞬たじろぐものの、ゆっくりと千雨の手を優しく撫で振り返った。
千雨はザジの背中に顔を埋め、微動だにしない。
「ザジ・・・お前は私のコトいつでも1番に思ってくれるか?」
「ちさめだけ ちさめが1番だよ」
向きを変えたザジは千雨を胸に抱いて、そっと頭を撫でた。
何度も何度も愛でるように―――ずっと―――


「・・・・・・やっぱりいるわけないよね・・・」
夕闇が迫る頃、桜子は公園に戻ってきていた。
辺りは暗くなったというのに気温はちっとも下がらない。
ジリジリと照りつける太陽の代わりに、ムッとする熱気が、まだ熱い地面から湧き上がっていた。
「ちさめちゃん・・・」
ベンチの前でグシャグシャになったコーンと、溶けたアイスの染みにアリたちが群がり、貪っていた。
「・・・帰ろう・・・」
さっきから桜子がかける電話に千雨は出ようとしない。
出られないわけではない。コール中に切られていた。
「にゃあ」
落ち込む桜子を慰めるように、腕の中の2匹のネコが小さく声をあげた。
35-373 名前:優先順位[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 23:40:33 ID:???
「千雨ちゃん、昨日はゴメ・・・・・・」
「なぁーザジー今日の昼メシどーする?」
「・・・・・・・」
朝から何度目かわからないため息を吐いた後、桜子の瞳にはうっすらと涙が浮かんできた。
心配そうに見つめるザジをよそに、千雨は構うことなく桜子を無視し続けていた。

「うぇっく、えっく、千雨ちゃ・・・ゴメン・・・ナサイ・・・あの仔たち・・・・・・ひっく、ひっく」
とうとう泣き出した桜子に千雨は鬱っとおしそうな視線を向ける。
しゃくりあげる桜子は言葉をそれ以上紡ぐ事も出来ず、イラ立つ千雨の前で泣きじゃくっていた。
「ちょっと長谷川ー!許してあげなよ。桜子にとってクッキとビッケは大事な家族なんだから。
具合が悪かったら好きな人放り出して病院に連れて行くのも仕方ないでしょ!!」
泣きじゃくる桜子の背中をさすって落ち着かせようとしていた円が、見るに見かねて口を挟んだ。
しかし、千雨にはそんな円の気遣いは逆効果で、更に怒りを増幅させてしまうだけだった。
「引っ張り回された挙句、何も言わずに置き去り?何が"大好き"だよ、あ?
相手のこと1番に考えられないような奴に好きだなんて言う資格ねーよ」
―――シンと静まり返るその空間で、最初に動き出したのは円だった。
怒りを抑えきれない顔で千雨へと突進する。
大きく振り上げた右手が千雨の頬を狙っているのは明らかだった。
35-374 名前:優先順位[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 23:41:04 ID:???
「ダメっ!!」
横から突然現れた物体に、円の手は行く手を阻まれ押さえつけられた。
そこにいたのはさっきまで泣いてた目を真っ赤に腫らした桜子だった。
呆気に取られた円は桜子を見つめたまま、その手を静かに下ろした。
その顔は、もう怒りを含んではいなかった。
「千雨ちゃん・・・昨日はゴメンネ。ビッケが具合悪いって電話で聞いて・・・・・慌てちゃって・・・・・・
私にとってクッキとビッケのコトは最優先なの。千雨ちゃんのことは、大好きだけど・・・・・・・
ゴメンナサイ。クッキとビッケは千雨ちゃん以上の存在なの」
何か決心したかのように、震えながらも桜子の言葉には迷いの欠片すらなかった。
何も言わない千雨に、桜子はそっと言葉を連ねる。
「でもね、千雨ちゃんを好きな気持ちはずっと変わらないよ。
ザジちゃんが1番でもいい。私は千雨ちゃんのそばにいられればいいの。」
まだ乾ききらない涙を、うっすらと目尻に溜めながら桜子はいつもの笑顔を千雨へ向けた。

桜子の言葉に何も反応を示さないままの千雨に、ザジは軽く袖を引っ張った。
我に返ったかのような千雨は
「・・・勝手にしろ」
と一言投げつけそのまま教室の外へと消えていった。
桜子を気にしてなのか、何度も振り返りながらザジが後を追いかけていった。


「・・・えへへ 円、ありがとね」
「もう・・・バカだよあんたはっ!1番になっちゃいな!」
笑顔を向ける桜子を円はぎゅっと抱き締め、素早く涙を拭い去った。
「・・・あたしも1番になれるようにがんばるから・・・」
桜子に聞こえないように、円はそっと呟いた。
35-375 名前:優先順位[sage] 投稿日:2006/07/13(木) 23:41:56 ID:???
「ちさめ。帰りにアイス食べよ」
屋上で千雨は手摺りにもたれかかり、校庭を見下ろしていた。
「・・・そうだな、2人で食べに行こうな」
千雨の言葉にザジはフルフルと頭を振り、千雨に向かってピースを見せる。
「さんにん」
ピョコンと指をもう1本突き出してじっと千雨を見つめる。
ジリジリと太陽が二人を上から狙い定めている。
遠くで予鈴の音がコダマした。
「しょーがねーな」
千雨は頭を抱えてザジに歩み寄る。待ち受けていたザジは千雨をそっと包んで頬を摺り寄せた。
二人を心地よい初夏の乾いた風が包み、影へと導いた。
「最優先」
ザジがポソッと呟くと、校舎の中から本鈴の音が響いた。


〜END〜

35-386

35-386 名前:幸せの一口[sage] 投稿日:2006/07/14(金) 12:52:08 ID:???
幸せの一口


夏美 「はい、あーんして」
葉加瀬 「えへへ、あーん」
夏美の持つ小さなスプーンの上には黄色くぷるぷる震えるものが乗っている
どうやら夏美特製のプリンのようだ
夏美 「おいしい?」
葉加瀬 「んむんむ・・・美味しいです〜」
軽く頬を赤らめてにっこりと微笑む葉加瀬。幸せそうだ

夏美 「じゃあ、もう一回・・・」
葉加瀬 「あ、あの・・・今度は私がやってみたいです〜」
夏美 「え?いいけど、これは葉加瀬の誕生日の特製だよ?私が食べてもいいの?」
葉加瀬 「私のものは夏美さんのもの、夏美さんのものは私のもの、です」
夏美 「あはは・・・じゃあ、食べさせて。あと、優しくしてね」
葉加瀬 「いいですよ〜」


と、この光景を遠くから羨ましそうに眺める一人の少女がいた
夕映 「何しているですか?楓さん」
楓 「うひゃあ!!!せ、拙者、決してぷりんが欲しくて覗いて・・・リーダーでござるか」
夕映 「楓さん、補習の時間ですよ。教室に行くです」
楓 「わ、わかったでござる」
夕映 「・・・今日はあの二人の邪魔は止めるですよ」
楓 「お見通しでござったか・・・」
夕映 「あと、教室に行く前に涎、拭くですよ」
楓 「おおっと。拙者としたことが・・・」

35-392

35-392 名前:birthday present[sage] 投稿日:2006/07/14(金) 18:17:44 ID:???
私は大河内アキラ。寡黙なためか、クールビューティーとか言われることが少なくない。
だが、それは違う。臆病なだけだ。傷付きたくないから、周囲に関わらないようにしているだけだ。
そんな自分自身を変えたいと思っている私は、あまり接点のないクラスメートと話をするようになった。
そういえば、今日は葉加瀬聡美さんの誕生日だと、前に超さんに聞いたことがある。
葉加瀬さんに何かプレゼントをあげよう。でもなにがいいかな。
ぬいぐるみ?
ダメだ、ベタすぎる。それに好き嫌いが別れる。
「ラさん。」
ハリセン?
明日菜じゃないんだから。
「アキラさん。」
ピコピコハンマー?
小学生か。
「アキラさん!」
私は驚いた。今が授業中ということをすっかり忘れていた。
「は、はい。」
「授業中考え事をしてはいけませんよ。」
「す、すいません。」
恥ずかしい。たぶん私の顔は林檎のように真っ赤になっているだろう。
昼休み、私は誕生日に何がもらえると嬉しいかクラスメートの皆に聞いてまわることにした。
まずは美空に聞いてみよう。
「わたしは今は特にないなあ。
あ、でもハルナは少年と少年が抱き」
「分かった、ありがとう。」
そのあとは言わなくても分かる。しかし、美空が早乙女さんと仲が良くなっていたのは以外だった。
「そうやなあ、うちがせっちゃんがいれば充分やけどなあ。」
はいはい、お幸せに。
「誰も飲んだことがない珍妙な味のジュースがいいです。」
なんの参考にもならない意見ばっかり聞いてしまった。
このままでは埒があかない。そう考えた私は、商店街で探すことにした。
外は暑い。夏だからと言ってしまえばそれまでになるが。夏といえば海だ。水着とかいいかもしれない。
デパートの水着のコーナーに来た私は、浮き輪が安く売られているのを見た。
35-393 名前:birthday present[sage] 投稿日:2006/07/14(金) 18:28:07 ID:???
葉加瀬さんは私と違って背が小さいから、浮き輪が似合うかも知れない。
でも、こんなに沢山種類があると、どれにすればいいのか迷ってしまう。
30分ぐらい迷った後、無難にみずたま模様の浮き輪を買った。
夜、葉加瀬さんの部屋を訪れた。
「お誕生日おめでとう。」
そう言って私は、みずたま模様の浮き輪を渡した。
「ありがとうございます。わたし、あまり人からこういうもの貰わないんですよね。」
彼女もそうだったんだ。私は親近感を感じた。
「今度暇な時に一緒に海に行かない?」
「いいですね、その時はこの浮き輪を絶対持ってきますね。」
葉加瀬さんの笑顔はかなり可愛かった。
自分の殻を破ったと実感した私は、これ以上にない充実感を感じながら床についた。
その日見た夢は、私と葉加瀬さんが仲良く海で遊んでいる夢だった。

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35-395 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/14(金) 21:03:25 ID:???
どうも、私釘宮円。くぎみー言うな、後私は爆発物なんか持ってない。
ところで最近私・・・孤独です。
桜子は千雨にべったりだし、美砂は飲んだくれてるし・・・。
まーいいけどさ。私はシルバーアクセサリーと洋楽がお友達さっ!
でも・・・寂しいよ。何かいい事ないかな。
とりあえず散歩にでも出ようと工学部の近くを通りかかったら・・・。
ドゴォ!
何この音?
シュウウウウウウウ
煙の中から出てきたのは・・・。葉加瀬だった。
「あいたたたた・・・。」
そういえば葉加瀬って天才だけどどこかドジだよね、結構かわいいかも。
「大丈夫?」
無視して立ち去るのもアレだし、どうせ私は暇だし孤独だし話しかけることにした。
「ケホ・・・大丈夫ですよ、心配かけてすいません。」
葉加瀬のメガネは粉々になっていたけど、一体何やってたんだろ。
フラフラと葉加瀬が立ち上がった、でもメガネない状態だと・・・転ぶよ?
ゴゲンッ
あ、早速壁にぶつかってる、本当に大丈夫なの?
「ホントに大丈夫?ていうか・・・研究室っぽいの派手に壊れてるけどいいの?」
「大丈夫ですよ、でも目がよく見えないです。フラフラして・・・・痛っ。」
ううん、心配だなぁ。そうだ、今日は葉加瀬と一緒に居てみようかな。
35-396 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/14(金) 21:04:06 ID:???
あ、そういえば今日は葉加瀬の誕生日だっけ、じゃあ・・・。何か買ってこようかな。
とりあえずこの場から離れるかな。
「じゃあ私行くね。」
「はい。ありがとうございます〜」
礼を言われる程何もしてないんだけどなぁ。まぁいいや、何買おうかな。
とりあえず街まで着てみたけどこれといって思いつかないな。
葉加瀬には色気がないから化粧品・・・は無理だな、怒られそう。
花・・・葉加瀬には必要ないかもね。
研究一筋でマッドサイエンティストな人でも喜びそうなものってそうそうないよなぁ。
ん・・・シルバーアクセサリー。いいかもしれない、モロ私の趣味だけどまぁいいか。
多少値段は張ったけど仕方ない、科学者っぽくフラスコみたいな形したやつを買った。
さーて、工学部に戻るかな。
あ・・・もう壁が直ってる、恐るべし真帆良土木建築なんとか。
葉加瀬は・・・いたいた。
「葉加瀬、誕生日おめでと。」
「えっ・・・あー・・・私こういうのあまりもらわないので・・・少し恥ずかしいです。」
おー、結構似合ってる、かわいい。
桜子が千雨狙いなら・・・私は葉加瀬を狙おうかな、ごめんね、夏美。

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最終更新:2007年07月29日 02:27