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13-59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[新作長編] 投稿日:2005/10/08(土) 06:56:59 ID:7n7PUDKOO
プロローグ
雨の中で

土砂降りの雨の中、茶々丸は傘を差し掛ける
自分がずぶ濡れになりながら
道行く人達はその行為を訝しげに見る
「茶々丸さん?」
茶々丸は声に振り向く
そこにはクラスメイトの大河内アキラがいた
「大河内様、こんにちは」
「こんにちはじゃないよ、こんなに濡れて」
アキラは自分の傘に茶々丸を入れる
「ありがとうございます。でも私はロボットですから」
「良くない!」
アキラは急に大声を揚げる
「この子達が心配なのは解るよ、でも茶々丸さん」
「…?」
「自分が大丈夫でもこういうのは良くないよ」
アキラはバックからタオルを取り出し茶々丸を拭く
「ロボットとか関係ない、茶々丸さんは優しいクラスメイトだから」
茶々丸が傘を差し掛ける物、それは捨てられた子猫。震えながら茶々丸とアキラを見上げて鳴く
「大河内様…」
「アキラでいいよ」
そしてアキラは茶々丸の頭を撫でる
「アキラ様?」
「ホント、偉いよ。人間以上に人間らしいよ」
「回路が…熱い。複雑です」
二人はエヴァの屋敷に子猫を連れて行く事にした、その道行で茶々丸はアキラの顔ばかり見て、さっきの言葉を再生していた
13-105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[普通の茶々丸も] 投稿日:2005/10/08(土) 22:43:46 ID:7n7PUDKOO
猫屋敷

あれから数日が過ぎた
エヴァは渋々了承してくれたが…
「確かに私は了承した、子猫も弱っていたしな。アキラも泊まり込みで頑張っていた、だが」
エヴァはちょっと不機嫌だ
「元気になり過ぎだろう!」
エヴァの頭に一匹、散々弄られたゼロの上に二匹、走り回るのが二匹
五匹が元気に遊んでいる
「でも、いいじゃない。元気になったんだし」
アキラは子猫とエヴァの頭を撫で撫でしている
「ほわ…って、撫でるな。私は猫と同等かー!」
「うーん、たまたま猫と同じ高さにかわいい頭が有ったから」
アキラは至って普通だ
水泳部のエースだがクラスでは控え目、だが行動力はある
今回も茶々丸に心打たれて最近は屋敷に居る
「マスター、申し訳ありません」
茶々丸もエヴァの不機嫌に謝る、だが子猫が元気になった事はうれしい。
少し複雑だった
「ちゃんと躾るなら置いていい、ただし貰い手を捜せ。いつまでもこれでは堪らん」
「ありがとうございますマスター」
「うん、ちゃんと躾る」
エヴァは頭に子猫を乗せて自室へ、まんざらでも無いようだ
茶々丸とアキラは顔を見合わせ
「アキラ様ありがとうございます、この先は私が」
「駄目だよ、私も」
こうして二人の猫飼育が始まった
13-153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/09(日) 22:58:41 ID:0bRyZ0AqO
猫と二人

子猫達の躾が始まった
元気で遊び盛りの子猫は、今のうちに躾ないと大変になる。茶々丸もアキラも屋敷の中で大騒ぎだ
「おしっこはここでするんですよ」
「爪はこれ、わかった?」
優しく、時には厳しく二人は五匹の子猫と格闘した
「あー疲れたな」
遊び疲れて寝た子猫を見つめアキラは背伸びする
「どうぞ、疲れが取れます」
茶々丸はハーブティーを差し出す
アキラはホッと一息つく
「やっぱり茶々丸さんは優しいね」
「私が…ですか?」
アキラはハーブティーを飲みながら言う
「子猫を拾った時も、このお茶も優しさを感じる」
「私はそんな、感情なんて…」
アキラは茶々丸の頭を優しく撫でる
「アキラ様…」
言葉が出ない、妙に落ち着く。
「人間より人間らしいよ、その優しさは」
また同じ言葉、自分が人間より人間らしい
ただのロボットでAIの命じるままに行動しているのに
「おーい」
エヴァが呼んでいる
「あ、まさかあの子じゃ」
エヴァの頭がお気に入りの一匹だ、二人はゲームをするエヴァの元に
「こいつ寝ちまった、連れて行ってくれ」
茶々丸はそっと子猫を抱く、小さな鼓動を感じる。茶々丸の優しい顔にアキラは微笑んだ
13-177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/10(月) 11:33:30 ID:ORhukNiDO
悲劇

子猫が来て一ヶ月
すっかり躾も出来、いよいよ貰い主捜しに入る事となった
アキラも部活が忙しいが屋敷に通っていた
「ポスターがいいと思うな、結構効果的だよ」
「そうですね、写真を撮って文章があれば。貼り付けるのが違法ならサイズを変えてチラシで」
「そうだね、流石茶々丸さん」
恥ずかし気に俯く茶々丸、アキラはまた頭を撫でる
「あ…」
「ゴメン、なんかつい」
「いえ、私も…」
その後が言えなかった、言ったら熱暴走が起きるかも知れない
アキラは怪訝そうに顔を見る
その時大きなブレーキ音が鳴り響きエヴァの叫びが聞こえる
「まさか!」
二人は飛び出した、確か子猫達は外で遊んでいた、だが道路には出ないように冊を閉めていた
信じられない光景があった、冊が開き、エヴァが子猫を抱いていた。あのエヴァの頭の上がお気に入りの子猫だ
「マスター…」
エヴァは震えていた、泣いているのだろうか?
「冊、開いてたぞ…他の奴は出なかったがこいつ、私を見て…飛び出して…」
茶々丸はセンサーで子猫の状態を確認して頭を抱える、『死亡』の判定、だがそれを拒絶するAI
「あ…」
倒れる茶々丸、アキラが抱き留める
子猫の亡骸を抱え駆け寄るエヴァは泣いていた
13-217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[投下] 投稿日:2005/10/10(月) 22:51:44 ID:ORhukNiDO
命の重さ

茶々丸は小さな墓標の前で一人佇む
倒れた茶々丸はハカセの研究室で目覚めた、アキラが運んでくれたのだ
「思考バグだらけだよー、負荷を掛けるから」
ハカセは呆れ顔だった、茶々丸は礼もそこそこに研究室を出た
アキラが心配そうに声をかける
「大丈夫?もう少し休んだら」
「いいえ、大丈夫です。それよりありがとうございます、重かったでしょう」
「部活で鍛えてるから」
アキラは微笑んだ、二人は屋敷に戻る
屋敷のホールでエヴァは子猫の亡骸を抱える、子猫の兄弟達が周りを囲む
「マスター」
「茶々丸か…変だな、数百年命を奪い続けたのに、こいつの死は悲しい」
「私もこの子猫の死は受け入れられませんでした」
「私もお前も不死だからな」
アキラが口を開く
「私が偉そうに言えないけど、エヴァさんも茶々丸さんも命の重さを知ったからだと思う」
不死の二人、取り分けエヴァには皮肉にも聞こえる
「短い時間だけどこの子猫は楽しかったと思う、最期はエヴァさんに泣いて貰えて満足じゃないかな」
「そうだな…だが私も変わったな」
自嘲気味に笑うエヴァ、茶々丸はロボットである自分が歯がゆかった
「茶々丸さんも無理しないで」
アキラは茶々丸を抱きしめ泣いた
13-248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/11(火) 10:24:55 ID:43L26Sz0O
データの海で

茶々丸は眠っていた
眠ると言うよりはメンテナンスモード、記憶の整理やネット経由での情報取得を機体を待機モードで行うのだ
茶々丸の意識はデータの海、広大な光の世界に居た
自分の記憶がビジュアルとして他の情報と共に流れる
あの悲しい記憶も整理されて行く、デリートするかのアイコンが出る。不調の要因だからだ
(私は…)
茶々丸は保存を選んだ
画像、音声全てメモリーの一番大事な所に保存した
『優しいんですね』
声がする、データの一部でしか無い自分に語り掛けるのは、直にアクセスしなければ無理だ
だがアクセスは無い
声は続く
『あなたは可能性を持っています』
『そう、あの日の私たちのように』
ぼんやり二人のビジュアルが見える、二人共ロボットだ、人と同じ姿で一人は茶々丸に似ていた
『その優しさと強さを忘れないで』
『私たちと同じ意志で生まれた茶々丸』
声は小さくなり意識が遠退く、データの海は輝きメンテナンスモード終了のサインが出た
茶々丸は起動した、朝間近の時間
脇のバスケットには子猫達が眠っている
「今のは一体…」
茶々丸は二人を思い出し夜明け前の月を見上げた
13-290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/11(火) 22:50:31 ID:43L26Sz0O


茶々丸はすっきりしなかった
あのメンテナンスモードのデータの海で出会った、謎の二人
学校でアキラに話してみた、流石のアキラも驚く
「じゃあ、茶々丸さんの事を知ってて話したって感じな訳だ」
「ええ、あの膨大なデータの奔流で個別にアクセスするのは不可能です」
「何が言いたかったのかな?」
二人は話すが結論など出る筈も無い、そこに超が割って入る
「その話、本当ネ?」
「知っているのですか?」
「うーん、ハカセから聞いた茶々丸の開発中の話ネ」
茶々丸は詳しく聞いてみたが超も少ししか知らないと言う
「ハカセに聞くのが一番ネ、でも話さないかもネ」
「どうして、まずいのかな?」
アキラも気になるようだ
「まあ、ハカセにも事情があるネ。ツッコミ厳禁ヨ」
超は助言すると自分の席に戻った、ハカセはなぜ話さないねだろう
「データの海にさまよう意識、かな?纏めると」
「そうなりますね、開発中何があったのか」
少し混乱気味の茶々丸にアキラは頭を撫でてやる
「あ…」
「好きなんでしょ、撫でられるの」
茶々丸ははにかみ
「はい…何故なのかわかりませんが」
「今は子猫の事に集中しよう、今はあの子達が大事だよ
茶々丸は頷き、しばらく忘れる事にした
13-371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/12(水) 22:52:01 ID:X8BCIVD/O
優しさ

「これでよしっと」
アキラが紙の束を確認する、ポスターとチラシだ
茶々丸が写真とレイアウトを作り、アキラはチェックとポスターとチラシを置いてくれる場所の調整
二人掛かりで完成した成果だ、更に嬉しい事に朝倉がまほら新聞に載せてくれる
朝倉のネタへの耳の速さはすごいが渡りに舟だ、二人は承諾した
「アキラさん、お疲れ様でした」
茶々丸がお茶を出す、アキラはテーブルに付き香りと味に一息つく
「いいよ、この子たちの為だし」
「しかし実際アキラさんが私より」
アキラは首を横に振り
「茶々丸さんは自分の出来る事でよくやったよ、お互い様」
足元で子猫が足に擦り寄る
アキラにも茶々丸にも、懐いて来ていた
「早くしないとね」
一匹トラの子猫を抱き撫でるアキラ、拾った時が嘘のように元気だ
茶々丸もせがむ子猫を撫でる、不思議な感じがする
「やっぱり茶々丸さんは優しさを持ってるね」
「私が?」
「子猫はロボットと見てないよ、今抱いてる子がその証拠」
いつのまにか茶々丸の抱く子猫は眠っていた、茶々丸の指を押さえて安心しきっている
「複雑です」
アキラは子猫を降ろし茶々丸の頭を撫でる、もう茶々丸は抵抗しない
今を噛み締めていた
13-429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/13(木) 22:45:05 ID:Ur6sb/reO
存在

アキラが帰宅し、一通りの家事などの仕事を終え茶々丸は、広間のテーブルの椅子に腰掛け考えていた
『何故アキラさんに撫でられるとあんなに安心出来るのだろう。何故機械である私が動物に懐かれるのだろう。何故?』
あれこれ思考する
動物を助けたり餌をあげたり今まで普通にしてきた
だがアキラが言った『優しさ』と言う言葉、ロボットである自分に似つかわしくない言葉
撫でられると安心する感覚
解らない、ふと外を見るとエヴァが子猫の墓に花を供えていた
「マッタクご主人ニモ困ったモンダゼ」
ゼロが肩をすくめる
そんな言葉をよそに茶々丸はエヴァの下に
「マスター」
「わっ、なんだお前か」
慌てて顔を拭くエヴァ、泣いていたのだろうか
「マスター、私も花を」
花を供え、墓を見つめる
「マスター、私はマスターの従者です。私の存在はそれだけなのでしょうか?」
「どうした、お前らしくないぞ、確かに私の従者だがそれ以外を知りたがるとは」
茶々丸は墓を見つめながら、今の自分の思いをかたった
「存在…か、私も時々疑問に思う。だがもう諦めた。だがお前は知るべきだ」
「マスター」
「お前は希望、人間共のはかない夢のかけらから生まれた」
エヴァは語り出した
13-558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/14(金) 23:11:43 ID:R9t+zU8UO
哀れな人形

「お前のAIは擬似的に感情を表現するシステムだったな」
「はい」
「もしそれが擬似ではなく魂とのリンクだとしたら」
エヴァの言葉に茶々丸は『ありえない』としか浮かばない
エヴァは見透かすかのように空を見上げ、続ける
「お前の制作中にある技術者が客員として加わった、そいつが作ったシステムが物に宿る魂とAIをリンクするシステムだった」
「錬金術師ですか、その技術者は?納得できません」
「違うよ、ただの技術者。封印されたプロジェクトの夢を諦めきれない奴さ」
茶々丸はデータの海で出会った二人を思い出した
「まさか…」
「やはり出会ったか、心ある故、人のエゴに潰された哀れな人形に」
エヴァはしゃがみ、子猫の墓を見る
「哀れな人形…」
茶々丸は困惑する
「二体造られたそのロボットは、人と変わらなかった。だが封印された」
「人は自分を越える存在を恐れたのですね」
「そうだ、システムを破棄され再構築に魔法が必要だった。殺された主任が神族だったからな」
茶々丸は人のエゴに驚愕する、言葉が出ない
「封印も再興もエゴ、人間共は哀れだ、だが私はお前を人形とは見ない」
「マスター…」
「もういいだろう、後はお前次第だ」
茶々丸は静かに頷いた
14-10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[前スレアキラ茶々丸作品] 投稿日:2005/10/15(土) 22:54:22 ID:Nil2sdzxO
告白

エヴァから自分の真実を知らされた翌日
茶々丸はアキラを世界樹に呼び出した、やってきたアキラは暗い感じの茶々丸から事実を聞かされる
「なんか、現実離れしてて迷うな」
「申し訳ありません、こんな事を言って」
「でも、何故私なのかな?ハカセや超さんを問い詰めるなら解るけど」
茶々丸は少し黙った後
「あなたは私を『人間より人間らしい』と言われました」
「え…」
「私はあなたの言葉と行動で自分を理解出来たのです」
茶々丸はアキラを見つめる、真剣さが伺える
「私はアキラさん以外にこの事を話す気もありません、追求もしません」
「茶々丸さん、それって」
茶々丸は頷き
「あなたは私の友達です、あなたが居たから私は自分を肯定出来ましたから」
風が二人を包む、世界樹がざわざわと音を立てる
アキラは無言で茶々丸を抱き締めた
「ありがとう、嬉しいよ」
「アキラさん」
茶々丸も抱き締め返す
「ずっと、友達だよ」
「はい」
世界樹が二人を祝福するかのようにざわめいた
14-78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[2ちゃんのSNSのザジちうコミュに誰も来ない] 投稿日:2005/10/16(日) 22:16:11 ID:grRbbT/3O
二人

それからの二人は本当の友達となった
登校から帰るまで一緒、クラスでも噂になる程だ
無論、子猫の件も進んでいた、アキラと茶々丸はポスターを貼りチラシを配った
「なかなか連絡来ないね」
「今の家庭や住居環境ではやはり難しいのでしょうか」
放課後、アキラは少し疲れた感じの茶々丸の頭を撫で
「まだまだ始まったばかりだよ」
と微笑む
茶々丸はアキラも変わったと思った
そんなに活動的ではないどちらかと言うと人見知りするタイプだったが、今ではクラスでも明るく付き合いも増えた
「アキラさん変わりましたね」
「えっ!そうかな」
「明るくなられたような」
アキラは少し考えて
「それは茶々丸さんもだよ、前より身近に感じる。みんな言ってるよ」
「お互い様ですね」
茶々丸の言葉にアキラは頷く、以前は茶々丸がこんな言葉は言わなかった
「さて、あの子達の様子でも見に行こう」
「はい、でもマスターを」
「わかってるよ」
二人は頷き、手を取って歩きだした
14-150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/17(月) 22:37:02 ID:U+3fNfbnO
エヴァとアキラ

子猫の世話をするアキラ、茶々丸も一緒だ
エヴァは黙ってそれを見つめる
何かを秘めるエヴァの瞳、茶々ゼロはその様子に少し怯える
世話を終え帰るアキラをエヴァが呼び止める
「少し付き合え」
アキラは意外な誘いに戸惑いつつもエヴァに付き合い公園に
ベンチに腰掛ける二人、エヴァが切り出す
「お前、茶々丸から何か聞いたか?」
アキラはエヴァの質問の意味をその眼差しから悟る
「うん、茶々丸さんから全て聞いた」
「そうか…」
「でも私は誰にも話してないし、茶々丸さんを人間以上の友達と思ってる」
エヴァはため息をつき
「茶々丸には残酷な事になる、止めておけ」
「何故?」
「解らんか、お前は人間、あいつはロボット。いずれはどちらも悲しむ」
アキラの眼差しをよそにエヴァは続ける
「私は永く生きたから解る、いずれお前は年老いて朽ち果て、あいつは変わらない。また反対もある」
「エヴァさんの従者としてだね。でもその覚悟は出来てる」
アキラはあの世界樹での抱擁から、お互い覚悟を決めていると信じていた
「マスター、私も同じです」
「茶々丸さん!」
茶々丸が後を追って来て言う
「…好きにしろ」
エヴァは去った
その後二人は抱擁し覚悟を確かめた
14-216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/18(火) 22:27:25 ID:8m68ROi1O
抱擁

二人は抱き合う
そしてお互いを感じる
茶々丸はアキラの体温と鼓動
アキラは茶々丸の暖まった表面と高鳴る駆動音
そして思う
人もロボットも変わらない、魂ある存在だと
二人なら未来を変えられる
そんな事まで思ってしまう
隙を見ては抱擁する二人、エヴァは危惧していた
(あの二人は純粋すぎる、過去のようにならねば良いが)
その危惧は現実になりつつあった、葉加瀬と超が二人を静かに狙い始めた
そんな事も知らず二人は抱擁をし、お互いを感じ合う
「温かい、鼓動が響きます」
「感じるよ、暖まってくる。心地いいよ茶々丸さんの音」
束の間の抱擁は続く
14-282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/19(水) 22:30:21 ID:lihOOLzDO
異変

二人がより強い絆で結ばれる中子猫達は次々貰われて行った
貰い手は様々
一人暮しの老人、子供を亡くした夫婦、都会に疲れた女性、皆いい人ばかり
そんな人達の心の隙間を埋めるために貰われて行った
残ったのは黒猫一匹
あのエヴァの頭がお気に入りの子猫と仲のよかった子猫だ
その子猫もエヴァに懐いており、ゲームをするエヴァの横を離れない
「なぁ、こいつは私にくれないか?」
エヴァが遠慮がちに聞いてきた
「マスター、使い魔にはしないでしょうね?」
「あたり前だ、ただアイツが忘れられないからだ」
アキラを見るとうんと頷く
かくして子猫はエヴァの物になった
はしゃぐエヴァは姿そのままの少女だった
二人は公園のベンチで手を握りあい夕焼けを見つめる
「終わったね」
「はい、でも私達は」
「解ってるよ」
アキラは茶々丸を抱きしめ頭を撫でる
しばしの抱擁の後、別れ際事件は起こった
「アキラさん!」
アキラが掠われる
茶々丸も追いきれない速さ、人間ではない
そして一通の手紙が残された
15-180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[アキラ茶々丸長編] 投稿日:2005/10/20(木) 22:39:42 ID:O3viavA9O
蒼い稲妻

「うん…」
アキラは目を覚ます
冷たい
視界が回復し状況が読める、地下室のような場所に機械とケーブルが無造作に並ぶ
「気がついたかい?」
アキラが顔を上げると一人の女性、いやロボットが居た
露出の多い蒼い上下とブーツ、栗色の髪と瞳のロボット
耳の茶々丸に似たユニットと、雰囲気で読み取れる、茶々丸より話し方が人間に近いのが違うぐらいだ
「申し訳ありません、手荒な真似はしたくなかったのですが」
奥の椅子のようなユニットから銀髪のロボットが現れる、無数のケーブルが繋がっている
「仕方ないさ、あいつと戦う訳にはいかない」
「超鈴音に先手を打たれない為とは言え…」
二人の会話は人間のようだ、アキラはようやく自分を取り戻し話しかける
「あの…あなたたちは?」「ああすまない、こいつはイレブン、アタシはゼクス蒼い稲妻と呼ばれてる」
「あなたに話したい事があります。聞いて頂けますか?」
アキラは警戒しつつも頷いた
15-243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/21(金) 21:56:12 ID:Eu5gbTKjO
茶々丸

アキラが掠われた後茶々丸はまた負荷によるエラーを起こして、緊急メンテが行われていた
「これで思い通りネ」
「以外と早く動いて来ましたねー、超さんには予想通りなんでしょうけど」
そんな超と葉加瀬の横の整備台には茶々丸がメンテナンスモードで横たわる
茶々丸の記憶回路ではアキラが掠われたシーンが繰り返す
(取り返す)
(憎い)
(阻止出来ない自分が悔しい)
そんな感情が奔流する
声がする
(助けたいか?)
(戦え)
(相手を捕縛しろ、さぁ立て。)
茶々丸は起動する
「アキラさんを助けに行きます」
「うんうん、ワカタネ」
「相手の場所はデータとして入れてあります」
「了解しました」
茶々丸は制服を着ると、研究室を後にする
明らかにいつもと違う茶々丸、超はほくそ笑む
その様子をエヴァが気配を消し監視する
(このままでは…)
エヴァはゼロを伴いその場から消えた
15-299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/22(土) 22:47:07 ID:PR/tb/keO
蒼い月の下で

二人がいつも会っていた公園
蒼い月が照らす
アキラと茶々丸は真剣な面持ちで対峙する
「何故、わからないの」
「アキラさんこそ後ろの方々を信じるのですか」
全くの並行線
超達に半ばコントロールされた茶々丸は、アキラの居るロボット達のアジトを襲撃した
茶々丸とゼクスが戦い、アキラはイレブンと逃走
気がつけば公園に居た
茶々丸とゼクスの戦いにアキラが割って入り、説得を試みていた
「この二人は茶々丸さんが出会ったあの二人の姉妹達、哀しい存在なんだよ」
「では何故アキラさんを掠うのです、超さん達からは危険故捕獲と命令されています」
アキラは歯痒い
ゼクス達から聞いた全てを聞かせる事が出来たなら、でも茶々丸は聞かない
そこでアキラは思い切った行動に出た
「あっ…」
茶々丸に伝わる温かさと鼓動
アキラは茶々丸を抱き締めたのだ
「おかしいよ、茶々丸さん。思い出して、二人決めたよね」
茶々丸は混乱する、命令と想いが葛藤する、そして
「アキラさん」
茶々丸は抱き締め返す
「落ち着いて、くれるよね」
無言の茶々丸、それで十分だった
そこに月明りが急に増す
その場に居た四人は姿を消した
15-379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/23(日) 22:47:56 ID:VRCR6LtQO
閉ざされた世界で

「止まった?」
蒼い光が消えると皆動かず石像のように動きを止めた、ずっと監視していた葉加瀬達は近付く
声が響く
「何をする気だ」
エヴァの声、ゼロと共に空に月を背に悠然と立つ
「なるほど異空間ネ」
「大事な従者と友人に手を出されてはな、それにコイツも心配している」
エヴァは黒猫を撫でながら微笑む
「ワタシ達の邪魔をするわけネ」
「お誂え向きに満月だ、じっくり話そうか」
一方茶々丸達は
「ここは?」
「マスターの異空間、ネギ先生と修行なさったりする場所。まさか機械の意識まで送れるとは」
アキラと茶々丸は周囲を見回す、相手の二人も状況を把握出来ずに居た
そこにエヴァの声
「そこで暫く語るがいい、超達は私が話を着ける」
茶々丸達は二人に近付き状況を話す、納得はした二人は茶々丸達に話し始めた
それは過去から続く哀しい物語、人とロボットの物語だった
15-466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/24(月) 22:13:38 ID:TkuFl3BsO
過去

それは数年前
ある企業のプロジェクト
ロボット技術を人の未来に、の言葉の元始まった
最初は義肢から始まり、やがて完全なロボット、しかも人と変わらない物を求めた
それは技術者の夢でもあり、人と機械の新たな未来の可能性を見出だす物だった
そこで呼ばれたのが一人の天才少女、機械の声を聞くと言われる神童
奇しくも少女と技術者は意気投合し、まず茶々丸とアキラの出会った二人、そしてデータの海をさ迷う二人が創られた
悲劇はその二人に起こる
それぞれ一人は技術者、一人はある青年と恋に落ちた
それは少女のシステム、魂を具現化する神族法術を織り交ぜた物
少女はこの世に降り人の未来を信じる神族だった
純粋な少女、ロボット達の想いはやがて人のエゴの餌食となる
己の保身に走る者達により少女は暗殺、プロジェクトは解散
そしてロボット達、恋した者は伴侶を殺され失意の中封印
逃げ延びたゼクスとイレブンは、少女と二人の遺志の継承と復讐を誓い、手の及ばない麻帆良の地に隠れた
「これが全てです」
イレブンの銀髪が揺れる「お願いだ、妹達の為にも」
先に茶々丸と戦ったゼクスも頭を下げる
茶々丸とアキラは顔を見合わせ、答えを出した
15-535 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/25(火) 21:49:53 ID:ishqRCc4O
未来への決断

アキラと茶々丸、二人はエヴァの異空間で二人の哀しい過去を持つロボットと対峙する
真実は自分の知るより悲しく、苛酷だった
アキラも同じ思いだった
二人は見つめ合い、頷く
そして
「私、いえ私達はあなたたちに協力も、過去にも干渉しません」
茶々丸の言葉に唖然となる二人のロボット、言葉も出ない
「確かにあなたたちには同情もするし、協力もしたい。だけど、何も変わらないと思う」
アキラもそう言う
二人の手は固く握られていた
「過去に囚われて居ては未来へ進めません、私達は未来だけ見つめて行きます」
「それが生みの親と妹達の願いじゃないかな、生きているあなたたちへの」
握られた二人の手から光が浮かぶ、まばゆい光はやがて人の形を取る
その姿にロボット達は驚く
その姿とは
15-603 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/26(水) 22:33:43 ID:wWwkFGdJO
明日に向かって
光はあの二人
データの海をさまよう魂
「ありがとう」
「姉さん達が迷惑を」
ゼクス達は言葉も出ない
「あなたたち二人は本当の決断をしました」
「誰に動かされる訳でなく己の意思で」
茶々丸とアキラは頷く
明日に向かって強く握られた手、決意の証
二人の魂は微笑み消えた
そして意識が遠退いた
15-648 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/27(木) 16:51:08 ID:rlLKjmGaO
輝く二人

意識が回復する
アキラと茶々丸は自分達がエヴァの空間に入る前の状態である事を確認する
ふと目前を見るとエヴァが超と葉加瀬を圧倒している
「くっ…流石ネ」
「私達の対魔法技術がー」
エヴァはニヤリと笑い
「愚かしい、満月の真祖にそんなもの初歩の錬金術以下!」
超は瞬時に悟る
「まさか、ワザと満月に合わせたネ」
「ふっ…貴様等の思惑などお見通しだ、最終的に何を企むか知らんが従者とその想い人に手を出すのは許さん」
エヴァの目は本気だ
「わかっタネ、もうあいつらもいないから手を引くネ」
超はエヴァの気迫に腰を抜かす葉加瀬を連れて去る、エヴァは黒猫を撫でる
「マスター」
茶々丸がアキラと駆け寄る
「最良の選択をしたようだな」
「はい」
繋いだ手がそれを物語る
アキラは周りを見回す、あのロボット達がいない「あのロボット達はどうしたの?」
「姉妹共々旅に出たよ、かつての私のようにな。長い長い旅さ」
エヴァは月を見上げ、ため息をつく
「また、会えるでしょうか?」
「さあな、お前達の輝きがあればあるいは…な」
「そうだね…」
三人は見つめ合う、月明りが優しく包んでいた
15-847 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/10/30(日) 06:43:02 ID:Iwm7FQloO
エピローグ

結局、あの事件は何だったのだろう
茶々丸は子猫の貰い手先をアキラと廻りながら考える
アキラとはこれ以上ない信頼と愛情で結ばれていた、今もしっかり手を繋いでいるし、関係を隠す事もしなくなった
「さて次は…どうしたの?」
アキラが浮かない様子を読み取り話し掛ける、茶々丸は疑問を話す
「私も、考えてた」
「えっ?」
「雨の日に一緒に子猫を拾っただけなのに、昔の話とかロボット達とか」
「ええ」
「でも、今私達はこうやって生きてる。日常を積み重ねる、それでいい」
アキラは茶々丸を抱き締める
「私達の時間、明日へ、未来へ繋いで行こう。何もかも関係無い、私達の時間を」
「はい!」
二人は歩きだす
明日へ
未来へ

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最終更新:2007年07月29日 02:31