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21-98

21-98 名前:真名の苦悩 20 義務[sage] 投稿日:2005/12/07(水) 23:44:31 ID:???
真名の苦悩 20 義務


私の愛する二匹の仔犬、アベルとカイン
彼らは非常に頭がよい、というよりも感受性が強いといったほうがいいのだろうか
こちらの考えていることをなんとなく理解しているらしい
だから時々扱いに困る事がある

真名 「お願いだ、こっちにきてくれ・・」
二匹は怯えながら私のほうを見ている。これからなにが起こるのか、それを察知して私に近づこうとしないのだ
真名 「ほら、骨付き肉だぞ・・」
私は手に持ったえさで彼らを釣ってみる。しかし反応はない
困った、どうすればいいんだろうか?
こうなったら・・そう思い、私は立ち上がった。手に彼らを入れる籠を持ち仁王立ちになる
真名 「いくぞ!」
強引に取り押さえて捕まえようとしたそのとき

アベル、カイン 「きゅ〜ん・・」
彼らは悲しそうに私を見つめる。そしてお互い身を寄せ合うようにして震え始めた
そんな彼らを見た私の心は罪悪感に襲われる
だが、これは私の義務、そしてなんといっても彼らのためであるのだ。私は心を鬼にして彼らを捕まえなければいけない

真名 「狂犬病の予防接種の注射は義務なんだ。許してくれ・・・」

21-429

21-429 名前:真名の苦悩 21 実験[sage] 投稿日:2005/12/13(火) 17:15:16 ID:???
真名の苦悩 21 実験

1/2
あそこに見えるのは葉加瀬聡美。そしてそのそばにいるのは、私を悲しみのそこに突き落とした仔犬型ロボット小泉くん
もう騙されない・・騙されんぞ


葉加瀬 「ああ、龍宮さん。どうもこんにちは」
屈託のない笑顔で彼女は私に微笑んでくる。しかしその笑顔の仮面の下には悪魔が潜んでいる事を私は知っている
真名 「ああ、そこにいるのは小泉くんだな?」
葉加瀬 「そうですよ〜、もう騙したりはしませんから安心してください」
そうか、それならばいいのだが・・でもその言葉はなんだか怪しく聞こえてしまう
葉加瀬 「今、起き上がりの調整中なんです。なかなか起き上がるという動作はバランスを取るのが難しいんですよ」
みれば小泉くんは横になっていて、その体勢から起き上がろうとしている
だがすぐに足がもつれて転んでしまう
葉加瀬 「実用化しようにもこの課題をクリアしないと実用化できないんですよね」
そんな小泉くんの姿を見て思った、頑張れって。だから思わず私は小泉くんに近づいてそっと起こしてあげた
21-430 名前:真名の苦悩 21 実験[sage] 投稿日:2005/12/13(火) 17:17:25 ID:???
2/2
葉加瀬 「ああ、だめですよ龍宮さん。今実験中ですから」
葉加瀬が私に注意してきた。そういえばこれはロボットだった。本物ではないのだ、私はなにをやっているのだろうか
再度、小泉くんは横に倒され起き上がりの実験が続けられる
しかし見ていて思う、頑張れって。その姿は生まれたての仔犬か、病気の仔犬が必死に生きようとする姿に見えてならない
なんだか涙が出そうになってくる。声に出して応援してあげたい、そんな気持ちになってきた

実験はその後30分続けられた
私はその間、ずっと小泉くんを見守っていた。頑張れって心の中で思いつづけている
そして、ついにそのときがやってきた。小泉くんは手足を震わせながら大地に立ったのだ
その姿は神々しく、そして誇らしかった
真名 「ああ!」
私は小泉くんに駆け寄ると、思わず小泉くんを抱きしめた
真名 「頑張った、よく頑張った!」
目から涙を流して私は小泉くんに頬擦りをする
なんて健気なんだ、なんてキミはかわいいんだと思った

超 「どうネ、実験の成果は?」
葉加瀬 「完璧です〜、龍宮さんをみてください。感動で前が見えないようですから」
超 「そうか。それは成功ネ。”生まれた後、生きるために起き上がるしぐさ”プログラムは成功したようネ」
葉加瀬 「はいです〜」
な、なぬ!それでは・・
真名 「グスッ、小泉くんは起き上がれないのではなかったのか?」
超 「二足歩行の茶々丸のオートバランスを作った私たちが、四足歩行のオートバランスを作れないわけないネ」
葉加瀬 「そうですよ〜、これは初回起動時のおまけプログラムです。生まれたてみたいだったでしょう?」

真名 「わ、私の涙を返せ!あの感動を返せ!!貴様らは鬼だ、悪魔だ、人の心はないのか!?」
葉加瀬 「科学の進歩のためには少々の非人道的行為もむしろやむなしです。それに完成したら一体あげますよ?いらないですか?」

・・・待ってる。完成待ってるから、頑張って・・

21-468

21-468 名前:真名の苦悩 22 回想[sage] 投稿日:2005/12/14(水) 01:12:50 ID:???
真名の苦悩 22 回想


初めてキミを抱きしめたのはいつのことだったろうか
いまでもそのときの君の暖かさは忘れることはできない
震えるキミはおびえる目で私を見つめていたね、とても大きな私はとても怖かったかな
でも、そっと抱き上げてあげると君のおびえるような目はなくなった
かわりに不思議そうに私を見つめたね

そして鼻先を近づけたらぺろりとなめてくれたね
私もうれしくなって思わずキスしてしまった
その後、うれしそうに尻尾を振ってくれたとき、私は泣きそうになったよ

ミルクを飲んでいるとき、ついなでなでしちゃってごめんね
まだ足がおぼつかなかったキミは、勢いあまってミルクの入ったお皿に顔を突っ込んでしまったね
そのときの悲しそうな顔はかなりぐっときたよ。キミには迷惑だったろうけど


誰かが私の指先をなめるのを感じた。私はソファーに座ってアベルと出会ったときのことを考えていた時のことである
ふと横を見ればアベルが何かを訴える様な、それでいて悲しそうな目で私を見つめていた
真名 「どうかしたのか?お腹すいたのか?」
彼が訴えたかったもの、それはすぐにわかった


アベル、床でおしっこしちゃダメだろう

21-471

21-471 名前:真名の苦悩 23 名前[sage] 投稿日:2005/12/14(水) 03:24:38 ID:???
真名の苦悩 23 名前


生きることを許されなかった命がある
死を知っている私だからそれがつらかった

保健所、その前に立てたれたボードを私は見つめる
捨て、野良、そこには色々な命が書き込まれていた。期限付きで
私は月に一度ここを訪れる
私はここでここにかかれた命の名前をすべて覚えるのだ
救うことのできない命を、せめて私がお前たちの名前を知っておこうと


エヴァ 「気に病むな。お前に救わねばならない責任があるわけではないだろう」
真名 「私は私の意思でここにいる。そして私の意思で彼らのことを記憶するんだ」
エヴァ 「つらいな・・」
真名 「つらくてもいい。それもただの自己満足だろう。それでもこうしたいんだ・・」


そのとき、保健所から一人の老人が出てきた。手にもった籠には何か入っているようだ
しばらくして保健所の職員さんがうれしそうにボードの名前をひとつ消した

エヴァ 「よかったな・・」
泣きたくなるのを抑えながら私はエヴァに笑顔を向けた

21-894

21-894 名前:真名の苦悩 24 野生[sage] 投稿日:2005/12/22(木) 20:53:08 ID:???
真名の苦悩 24 野生


ひらひらと舞い落ちる雪は、幾分か緩やかになってきたと思う
先ほどまで、まるで異常発生した羽虫のようにそこら中に雪が舞っていた
窓から見えるレンガで舗装された赤い道は、その舞い落ちる雪でウエディングドレスのように白く染め上げられている
だがすでにその道を通る者は無く、人が通った茶色の轍の跡にも雪が積もり、その姿を隠そうとしていた


そんな外の世界とは違い、私の部屋の中は熱の妖精がそこら中で遊んでいる
ストーブの周りで遊び、コタツの中でかくれんぼをしている
そんな彼らの存在を楽しみつつ、私はコタツの布団をめくってみた

その中には私の愛する仔犬のアベルとカインがすやすやと寝息を立てている
おなかのあたりをぷにぷにつついても何の反応も示さない
今ごろは夢の中で誰かと遊んでいる夢でも見ているのであろうか・・

でもそんな彼らを見て私は思う

♪犬は喜び、庭駆け回る♪

そんな唄があったと思う
キミたちの野生はどこへいっていってしまったのだろうか・・・
可愛いからいいんだけれども

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最終更新:2007年07月29日 02:33