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36-636

36-636 名前:千鶴のささやかなる苦悩(1/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:33:17 ID:???

――その日、彼女の呟いた何気ない一言が、クラスの空気を凍りつかせた。

「私って、そんなに老けて見えるのかしら。何が悪いのかしらねェ……」

出席番号、21番。那波千鶴。
落ち着いた雰囲気。おっとりした言動。
所属部活は活動してるのかしてないのか怪しさ抜群の天文部。
むしろ放課後の彼女を探すなら、まほら保育園を覗く方が早い。
ボランティアで保母さんの真似事をしている……のだが、下手な本職よりも子供の扱いが上手くて。
そんな日常のせいか、母性的な雰囲気がたっぷり。ちなみにクラスで一番の巨乳。
いつもニコニコ、悩みらしい悩みのなさそうな彼女ではあったが――

彼女の唯一の悩み。
それは、年齢不相応な自らの雰囲気、だった。

初対面の人に、正確な年齢を当ててもらったことは1度もない。
大抵何歳か年上、下手すると10歳以上も上の数字を口にされる。既婚者扱いもしばしば。
クラスでのあだ名は「ちづ姉」、みんな同級で同い年のはずなのに「姉」という呼称が実に馴染む。
中1の頃からこんな雰囲気だったせいもあり、いつしか「千鶴は昔っからあの外見だったのだ」と噂され。
果ては数百年も生きているだの、曾孫までいるだの、不老不死だのと無責任なヨタ話なども……

……なおちなみにこれは余談だが、これら全ては事実無根の無責任な噂である、とも明記しておく。
でないと筆者自身の身も危うい。こう断わっておいてもなお危険が残る。今夜あたりがヤマだろう。
次作が投下されなかった場合、「そういうことなのだ」と御理解して頂きたい……

閑話休題。
ともかく、千鶴は常にそういう噂やら視線やらに晒されており。
間違いなく中学生である彼女の精神は、それなりにちゃんと、傷ついていたのだ。
その性格から、それが露骨に外に現れることはあまり無かったのだが……。
36-637 名前:千鶴のささやかなる苦悩(2/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:34:09 ID:???

「…………!」
千鶴の溜息交じりの呟きに、ジリジリと下がるクラスメイトたち。
みな、顔には恐怖が浮かんでいる。脂汗が浮かんでいる。
自分の方に話題を振られぬよう、微妙に視線をズラし、ゆっくりと逃げようとしていたが。

「ねえ、夏美。どう思う?」
「どどど、どう思うってちづ姉、わ、私の口からは、ちょっと……!」
「千雨さんは、どう思う?」
「わ、私かよッ!? 何で私に聞くんだよッ! 尋ねるべき相手は他にいくらでも居るだろッ!!」

千鶴に声をかけられた者たちは、見るも哀れに動揺しつつ、回答を避ける。
「そんなことはない」と言えば、嘘になる。「そうだね」と同意すれば、虎の尾を踏むことになる。
どちらに転んでも危険だ。主に、お尻のあたりが。
怯え、話題を逸らし、できれば逃げ出そうとするクラスメイトたちに、千鶴は変わらぬ微笑のまま。

「ハルナさんは? ハルナさんは、どう思う?」
「そりゃ決まってるでしょー! 誰がどうみてもおばさ……!(モゴモゴ)」
「ちょ、ちょっと待つです、千鶴さん!」
何も考えず満面の笑顔で「真実」を言い放ちかけたハルナの口を塞いだのは、綾瀬夕映。
必死になって親友の言葉を封じつつ、真剣な表情で千鶴に問い掛ける。
「その質問は、何の他意もなく、純粋に『知りたい』ということなのですね?」
「まぁ……そうねぇ」
「ならば、『無礼講』ではありませんが……ルールを決めて、みんなで話し合うです。
 一度、きっちりとケリをつけて、尾を引かないような形で考えるです。
 みんなのために。そして、お互いのために、です」

な、何を言っているんだコイツは!? と言わんばかりのみんなの視線を浴びながら、提案する夕映。
千鶴はゆっくりと首を傾げ、そして……
36-638 名前:千鶴のささやかなる苦悩(3/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:34:54 ID:???

【 大ぶっちゃけ大会! 徹底討論! 那波千鶴が年相応に見られるにはどうすれば良いのか!?

 ルール:
  1.60分一本勝負。延長なし。
  2.この討論大会の間、千鶴さんは何を言われても決して『怒らない』こと。
    誰かを睨みつける・不気味な笑い声を上げる・ネギを手に持つ等の行為は禁止されます。
  3.この討論大会の間、千鶴さん以外の全員は何を言っても構いません。
    この大会中に限り、発言者の身の安全は武道四天王が命を掛けて守り抜きます。
  4.問題点の指摘だけでなく、なるべく建設的な意見を述べるようにしましょう。
  5.大会が終ったら、すっぱり頭を切り替えて、その後に決して引きずらないこと。 】


「……ということで、本日のHRは予定を変更して、この議題について扱おうと思います。
 みなさん、この約束はちゃんと守れますねー? 特に……えーっと、千鶴さん」
「ウフフ。約束してしまいましたものねぇ。仕方ないわねぇ」
「では、早速始めましょう。誰か、何か意見のある人ー!?」

教壇の上、確認を取るネギの声も少し震えている。みんなの視線の中心にあるのは、やはり千鶴。
宣誓を録音した。血判状も取った。法的拘束力のある書類まで作った。
武道四天王は完全武装で教室の四隅に控えているし、超一味のロボット部隊も外に控えさせている。
万が一の時の千鶴の暴走を止めるための、考えうる限りの手を尽くした。

なのに誰もが恐怖を拭いきれずに。意見を求めるネギの声に、手を上げる者はいない。
これでは、議論が進まない。
能天気なこのクラスでも、喜んで地雷原に突進するような自殺願望は、誰も持っていない。

「困りましたね……。じゃあ、紙を配りますので、それぞれ思いつくことを書いて下さい。
 匿名で結構ですが、白紙はダメです。で、その中から話題を選んで議論を進めていきましょうか」
36-639 名前:千鶴のささやかなる苦悩(4/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:35:39 ID:???

かくしてクラスに白紙の紙が配られ、10分ほどの時間の後に回収され。
ネギはそれを教卓の上でかき混ぜ、適当に手に取る。
「まず第一の指摘は……これですね!」

 【提言1:やっぱ私服のセンスが悪いんじゃない? ファッションセンス無さすぎ。
       ぶっちゃけ、どの服も地味でオバサン臭い。あれだけで5歳は老けて見えるよ】

「……ということなんですが……」
シーン。静まり返る教室。
いきなり飛び出した大胆なNGワードに、クラスに緊張が走る。
見るからに青ざめダラダラと汗をかいているのは、柿崎美砂。誰が書いたか丸分かりだ。
しかし、当の千鶴は……
「あらあら。じゃあ、どんな服を着ればいいのかしら?」
「ちょッ……ちょっと待ってて! 今用意するッ!」
「わ、私もッ!」
「そういうことなら、演劇部から色々持ってくるねッ!」
誓約に従い、怒りを表に出すことなく微笑み続ける千鶴に。
クラスの何人かが、俊敏に動き出す。教室を飛び出し全力疾走をし、僅か数分で様々な服を掻き集める。
「ちょっと着てみて、ちづ姉! これなんか『今時の若者』っぽくてイイんじゃない!?」
「これなら『おばさん』っぽくはならないと思う! どう!?」
「あ、ネギ君はあっち向いてて! 見ちゃダメだよ〜!」
教壇のネギが背を向けて目を覆う中、次々と服が用意されて。
千鶴のファッションショーが、唐突に始まった。

……結果は、散々だった。
可愛い系の服は、なんだか木に竹を接いだような違和感がありまくり。
胸が大きいからセクシーな衣装も似合うはずなのに、首から上と首から下が全然噛みあってない。
あるいは逆に、服の方が千鶴に「呑まれて」しまって……やっぱり、落ち着いた雰囲気になってしまう。
ジーンズなどを穿かせてみても、やっぱり「主婦」の雰囲気になってしまうのだ。手の打ちようが無い。
36-640 名前:千鶴のささやかなる苦悩(5/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:36:38 ID:???

「き、気を取り直して次に行ってみましょう……」
結局、服だけ変えても無駄、という結論となり、緊張高まる教室の中。ネギは次なる提案を読み上げる。

 【提言2:ロングの髪が重たいんだと思うなー。髪形変えてみたら?】

この意見を受け、早速超とハカセの発明品、『新型3Dモンタージュマシン』が教室の中に持ち込まれる。
要するに取り込んだ画像を元に、精密な3D画像で顔の各部の変更を試せるマシン。
実際に千鶴の髪を切ったりせずとも、「髪形を変えた千鶴」の映像を作り出すことができる。
「それじゃ、片っ端から試してみるネ」
超はそう言うと、千鶴の顔と、クラスの残り30名の髪形を、それぞれ片っ端から合成してみる。

……結論。千鶴はロング以外、似合わない。

それも金髪はダメだ。今くらいの明るさか、あるいは黒髪か。
木乃香の髪形を組み合わせたバージョンは、比較的似合っていたが……
残念ながら、「見た目を若々しくする」役には全然立ってない。やっぱり千鶴は千鶴のままだ。


 【提言3:おっとりした口調が悪いんじゃないかな? もっと若者らしく弾けようよ☆】

「ほにゃらば やっほー! ちづるだぴょん♪ ハロ〜、みんな元気〜?
 ……と、こんな感じかしらねぇ。どうかしら、可愛かった? 若く見えたかしら?」
「…………」
……痛々しい。あまりに、痛々しい。
教室の中には冷たい風が吹き抜け、演技指導した面々は揃って肩を落とす。
なんでこう、他のクラスメイトなら許されるような言葉遣いが、千鶴の顔と声だと痛々しくなってしまうのか。
いや、千鶴は頑張ってはいるのだが。考えうる限りの努力は感じられるのだが。
36-641 名前:千鶴のささやかなる苦悩(6/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:38:02 ID:???
 【提言4:ちづ姉、ってあだ名で損してるかも】

「そういえばそうだねぇ。なんか本気で同い年には思えなくて、つい『姉』ってつけちゃうんだよね」
「でも私、本当は1月生まれで結構遅いのよ。
 実は夏美ちゃんの方が3ヶ月お姉さんだし、あの双子も12月生まれでしょう?
 本当に私よりも年下なのは、せいぜい6人くらいじゃなかったかしら?」
「「「う、嘘だ〜〜ッ!?」」」
まあ、千鶴の発言は真実ではあるのだが、誰にも納得してもらえない。
みな、はっきりと口にこそしなかったものの……
「アッハッハ。やっぱ千鶴さん、年誤魔化してるんじゃないの〜? 流石にそりゃ、ありえないって!」
「…………」
……いや、神をも恐れぬ早乙女ハルナがはっきり口にしてしまったが。誰もが似たことを考えていた。
考えてはいけないことを、思わず考えてしまっていた。
「まあ拙者も11月生まれで、それでも風香殿・史伽殿からは『かえで姉』と呼ばれてるでござるしな。
 こういう呼び名に、実際の年齢はあまり関係ないでござるよ」
と、楓の一言で、クラスは破滅に至る思考から解放され、しかし問題は何も解決しておらず。
色々と代わりのあだ名が考えられたが、いずれも即座に却下された。
いくらなんでも、『ちづちゃん』とか『ちづ吉』とかが定着するとも思われない。
せいぜい頑張って『千鶴さん』……それだって、「さん」付けがどうしても避けられない。


 【提言5:逆転の発想〜☆ ちづ姉が老けてるんじゃなくて、クラスのみんなが幼いんだよ!】

「……で? 私はどうすればいいのかしら?」
「…………」
発想だけ逆転させたところで、何が変わるというものではない。
確かにこの意見は真実の一端を突いているだろう。鳴滝姉妹のように、幼すぎる外見の者も少なくない。
でも、対策の取りようがないから、困るのだ。
「え、えーっと、じゃあ、私たちがどうすればお姉さんっぽく見えるか、考えるですー!」
「……無駄だよ史伽、そんなことしたってちづ姉は老けたままなんだからさー」
「他のみんなが今より5歳くらい年上に見えたとしても、その中でもまだ最年長っぽいかもしれませんわね」
南無。
36-642 名前:千鶴のささやかなる苦悩(7/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:39:03 ID:???

 【提言6:仮装。】

「えーっと、これはどういう意味でしょう? 良かったら書いた人、説明して貰えませんか〜?」
困惑した様子のネギの呼びかけに、静かに手を上げたのは……ザジだった。
無言のまま、黒いローブと、顔を完全に隠す面を取り出す。
「……? えーっと、つまり、『素顔が見えなければ外見年齢に悩む必要もない』ってことですか?」
「……(コクコク)」
年上に見られて困るなら、そもそも見られなければいい。見られなければ困らない。
仮装してしまえ、というザジの発想ももっともであったが、しかし飛躍が過ぎる。
それじゃ日常生活にも支障をきたすだろう。ましてや、ローブと一緒に出された仮面は……
「般若の面……。よりによってソレ出すかよ、ピエロめ……!」
千雨でさえもフォローを放棄する。あの面を被ってネギ握っていたら、かえって怖くて仕方ないだろうに。


 【提言7:怒るからいけないんじゃね? 『おばさん』とか『老けてる』とかの単語に反応しすぎ】

「これは同じような内容を書いた人が何人もいますねー」
「だって本当なんだもん」
「聞いてよ先生! みんなで雑談してたときに、たまたまお父さんの妹、叔母さんの話になったんだけど。
 ふと気付いたら後ろに那波さんが立ってたんだよ?! すっごい怖い顔して!
 その時は慌てて説明して事なきを得たけどさ、アレ、本気でありえないって!」

ネギが読み上げたことで、一気に噴き出す不満。あまりに痛々しい過剰反応の数々。
裕奈の叫んだ一例に限らず、「NGワード」への反応はあまりに鋭敏すぎるもので。
そこまで気にされると、こちらもそれが気になって仕方なくなってしまう。

「もし『おばさん』とか言われても、笑い飛ばせばいいのにねー」
「ムキになって怒るから……。葱とか持ち出すし……」
「他のことなら何言っても寛容なのに、年齢のことだけ全然違う反応すんだよな」
「気にしすぎアルよ。私なんか、バカと言われてもその通りだから今さら怒らないアル」
「老けて見えるのは事実だもんねー」
36-643 名前:千鶴のささやかなる苦悩(8/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:39:52 ID:???

……みんな、千鶴の「怒らない」という約束、「何を言ってもいい」という約束のせいか、言葉に歯止めがなく。
言いたい放題言われまくっている千鶴は、やがて笑顔のままプルプルと震えだす。
セキュリティ担当の4人に、緊張が走る。刹那は剣を構え龍宮は撃鉄を上げ楓・古菲は身構えて……
その不穏な空気を察したネギが、咄嗟に強引に次の話題に進める。
「そ、その話はそれくらいにして、次の話題に行きましょう!
 ……これも同じ内容を書いた人が何人も居ますねー」

 【提言8:ハルナが悪いです。ハルナの同人誌が諸悪の根源です。
       ああも繰り返し年齢詐称ネタと尻葱オチを繰り返せば、そりゃ年増扱いが定着するです】

「……へ? ちょッ、だって、みんな、喜んでたし……えっ!?」
クラス全員の視線が、早乙女ハルナ1人に集中する。
ハルナは助けを求めてキョロキョロと見回すが、誰もが哀れみに近い表情を浮かべるばかり。
親友を「売った」一文を書いた綾瀬夕映も、済ました顔で「スパークリング酸素水」を飲んでいるだけで。

「……うふふ。やっぱり、そういうことなのかしら?」
「ひぃッ!」
ハルナの方を、ゆっくりと振り返る千鶴。全く変わらない微笑がかえって恐ろしい。
その視線に射竦められたハルナは、思いっきり縮み上がって――

「――そこまでです、千鶴さん」
「それ以上は、許すわけには行かないでござる」
「この60分の討論大会、誰も傷つけさせないという契約なのでな」
「ハルナ吊るし上げたいのは私も一緒アルけどね、今は駄目アルよ」
冒頭に定められたルール、それに抵触しかけた千鶴を4人の戦士が一瞬で囲む。
刀が銃がクナイが拳が、それぞれ千鶴にピタリと狙いを定める。
誰もが決死の表情。己の身を捨ててもクラスメイトを守りぬく覚悟。
だが……
36-644 名前:千鶴のささやかなる苦悩(9/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:40:40 ID:???
「あらあら、ごめんなさい。別に何もする気はなかったのだけど……誤解させちゃったかしら」
「本当に……何もしないでござるか?」
「ええ。ただ、ハルナさんには刺激が強すぎたみたいですけど」
千鶴の穏やかな言葉に、誰もがはッと振り返る。
早乙女ハルナは――既に、意識を失っていた。
過去の悪行の数々、その後に受けたお仕置きの数々を思い出し、回想だけで逝ってしまったか。
ともかく、千鶴が何か行動を起こすまでもなく、目を回して倒れこんでいた。

「はい、そろそろ終わりですねー。内容が被ったものを除外すれば、これが最後の意見です。
 えーっと、ちゃっちゃと読んじゃって終わりにしましょうか……」
教壇の上では、マイペースに進行を進めるネギ。ハルナが倒れてもそ知らぬ顔だ。
そういえばネギ自身も他の生徒と同じように書いていたはずだが……一体どの意見と「被った」のか。
そんな追求を許さぬペースで、彼は最後の意見を読み上げて……。

かくして、恐らくは最初で最後であるだろう「大ぶっちゃけ大会」は終了したのだった。
おそらくこれだけNGワードを連発できる話を書けるのも、最初で最後だろう。
ちなみに明日以降、筆者の姿が見あたらない場合、「そういうことなのだ」と(ry


「んッ……?」
「あらあら。目が覚めたかしら?」
早乙女ハルナが意識を取り戻した時――彼女は、己の死を覚悟した。
保健室のベッドの上に横たえられていた自分。覗き込んでいたのは、他ならぬ那波千鶴。
周囲には身の安全を保障してくれる武道四天王の姿はなく。既に大ぶっちゃけ大会は終了した模様。
「ああ……私の人生も、ここまでなのね……。シクシク……!
 本棚の裏に隠した『本当にヤバい本』、処分しとくんだった……!」
「あらあら、何を言ってるのかしら。ちなみにどんなヤバい本なの?」
「普通のボーイズラブならもうバレてもいいけど、その中でも特にマニアックな、って……
 ……って、なんでそんなこと聞くの?」
36-645 名前:千鶴のささやかなる苦悩(10/10)[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 23:41:35 ID:???
突然の千鶴の問いかけに、ハルナは首をかしげる。
しかし、千鶴はニッコリ普段通りの笑みを浮かべると。

「ハルナのことが、もっと良く知りたいからよ」
「んッ……!?」
唇を、重ねた。
あまりに、唐突なキス。流石のハルナも訳が分からない。
そのまま、しばしハルナの唇を味わった千鶴は、ゆっくりと顔を離して……
「今度、お部屋に遊びに行くわね。順番は逆になっちゃったけど……もっと、色々お話しましょ」
「え……? ちょっ、それって……!?」
ハルナが問う間もなく、保健室を出て行ってしまう千鶴。その表情は、心なしか『若々しく』て。
バタン、と戸が閉じてから、ハルナはドサッとベッドの上に倒れこむ。なんだか急に疲れが襲ってきていた。

「はぁ……。なんか生気吸い取られたって感じだなぁ……。遊びじゃないキスって、初めてかも……。
 それにしてもアレだね。ラブ臭って、自分に向けられた時は分からないもんだねー、ギリギリまで。
 さて、どうしたもんかねェ。これが他人事なら、こんなに悩まないんだけどなァ……!」

保健室の外。廊下を軽やかに歩く千鶴。
その手に握られていたのは、1枚の紙。「大ぶっちゃけ大会」の際に出てきた、最後の意見。
あらゆる手段が空振りに終った中、試しに採用してみることにした意見。
いつもより少しだけ、ほんの少しだけ華やいだ表情で、千鶴は小さくスキップをした。


 【提言9:恋をすればええんちゃうかなー。そーゆー噂一切ないしー。
       ほら、恋をすれば若返るとか、心はいつでも15歳とか、よく言うやろ?(あれ、言わんかな?)
       男の子でも女の子でもええから、気になる子とかおらんの?
       あるいは、ついついちょっかい出したくなるような子とか……。
       自覚ないだけで、ひょっとしたらそれって恋かもしれないで?】


(明日が見えないまま、とりあえず一旦終幕……?)

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最終更新:2007年07月29日 02:33