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15-259 名前:朝倉×さよSS(1)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:48:22 ID:SWoFD/chO
触れ合わない手と手を握りあって、今日も私達は学校に通います。手と手の代わりに、心と心が温もりを交わすこの日々が、懐かしくて、でも新しくて。
60余年の見慣れた景色が、初めてのように輝いて目に映る。そして、私の目にはあなたが、あなたの目には私が。そう、お天道様にも無視され続けた私の姿が、朝倉さん、あなたの目にはしっかり写ってる。
カメラのレンズのようなあなたの目が私を捉えたあの日から、私の新しい生活がはじまりました。
そして、今日もその新しい日々のひとかけら。大事な大事な、ひとかけら。

朝倉「あ、ネギくん!おっはよ〜」
校門で朝倉さんとネギ先生があいさつを交します。
さよ「おはようございます。ネギ先生」
聞こえてないだろうけど。
ネギ「おはようございます、朝倉さん!」
朝倉「ねぇねぇ、ネギくん。なんかスクープない?」
彼女は報道部なんです。だから、マイクは常備で、盗聴器みたいなものも持ってます。それで毎日、私まで取材に連れていかれます。でも、嬉しいです。マイク片手のあなたの隣にいるの、結構、楽しいんですよ。
ネギ「ごめんなさい、ボクそんなに情報通じゃないですよ^^;」
朝倉「そっか、じゃあ、何か事件や噂があったら一番に私に教えてね!」
ネギ「はい」
明日菜「も〜、朝倉もいい加減にしなさいよー……」
そんな賑やかな会話が、この麻帆良学園の朝の風景。できれば私も会話に入りたいんですけど…それは高望みですよね?
欲張りはいけないぞ!>私
15-260 名前:朝倉×さよSS(2)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:50:40 ID:SWoFD/chO
ネギ先生と校門で別れて、私達は校舎へと。
神楽坂さんと近衛さんが占いが何とかと話しているそこから、少し離れた場所で、私達は私達だけの秘密の会話をします。
朝倉「ところで、ねぇ、さよちゃん」
さよ「はい。朝倉さん、なんですか?」
朝倉「今日、ちょっと帰りに寄りたいところがあるんだけど、付き合ってもらっていい?」
その何か企んだような目つき…取材ですね?取材なんですね?
さよ「また、取材ですか?」
朝倉「…ぅ〜ん…まぁ、そうかも」
さよ「毎日じゃないですか。少しは休みましょうよ。体、壊しちゃいますよ?」
朝倉「さよちゃんには言われたくない…かも」
そして、上目づかいで、悪戯な笑みを隠そうとします。無駄です。朝倉さん、バレてますよ。
さよ「朝倉さんのいじわる…」
朝倉「ごーめーんーって、でも、そうかもね。最近、忙しかったし。たまには休むのも…」
え!?これは意外な展開!あの朝倉さんが簡単に譲るなんて、こんな珍しいことはそうはないです。
さよ「じゃあ、西の花畑に行きましょう!」
朝倉「え。。。まさか、決めてた?」
さよ「どういうことですか?」
朝倉「い…いや、私も行こうと思ってたから…」
こういう瞬間がたまらなく嬉しい。不意に思いが通づるこの瞬間!
さよ「それじゃあ、決まりですね!放課後は西の花畑!」
朝倉「うん、そういうことでv」
私達は互いに握り拳の親指を突き立てて、軽くウィンク。きっと、コレ、他の人が見たら不思議に思うんだろうな…。
15-261 名前:朝倉×さよSS(3)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:52:15 ID:SWoFD/chO
夕方前に学校の授業は全て終わります。最後の授業はネギ先生の英語でした。英語…私は何年勉強したんだろ。
そんなことを考えていると、隣から肩にポンッと手が乗ったような感触が……あるはずもなく、朝倉さんが私の肩をスカスカと扇いでました。
空の雲となってしまった私の体が…雨露となって帰ってくる日は来るのでしょうか…。自分で考えてて情けなくなりました。
朝倉「今日の授業はこれでオシマイ〜…って聞いてる?おーい、さよちゃ〜ん!」
…ハッ!
物思いに更けてる場合じゃありませんでした。放課後は、そう、西の花畑!
さよ「行きましょう!西の花畑!」
朝倉「行こう!行こう!」
なんだか遠足みたいな気分です。西の花畑までは電車で数分。全然、"遠"足じゃありません。それを言うなら、私には遠"足"も変なんですけど。
楽しいことが待ってると、自然と体が"軽く"なります。朝倉さんも楽しそうです。電車の駅に着きました。買った切符は一人分。
さよ「二人で一人分…」
改札を抜けるとき、思わず言っちゃいました。朝倉さんがニヤリと笑います。あぁ、恥ずかしい。きっと顔は真っ赤です。
朝倉「そうね、二人で一人分!」
照れずに言える朝倉さんがかっこいい。私の顔は、ますます熱るばかりです。
夕日を正面に映した電車がホームに入ってきました。私達はこの電車に乗って行くのです。
席は?
勿論、二人で一人分。はみ出ないように寄り添って。
15-262 名前:朝倉×さよSS(4)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:54:17 ID:SWoFD/chO
電車の窓を透かす夕日は、朝倉さんの影を床に揺らし続けます。電線の影がゆっくり上下を繰り返し、前から後ろへと電柱の影。
だけど、電車の中は二人っきり。ここはもう私達だけの世界。勿論、その方がいい。
だって、ただ独り言が響き続けるのは、なんだか朝倉さんに申し訳なくって。どうせ、彼女は気にしないだろうけど。
目的の駅に着きました。本当にあっという間でした。それでも夕日は、さっきより、かなり沈んできています。
私達の向かう西の花畑。そこは、白いお花が咲き乱れるところ。夕日に照らされる美しい世界。
でも、ほら、急がなきゃ。夕日が沈んでしまえば、花畑の魔法は解けてしまう。
朝倉「大丈夫だって、まだ十分間に合うよ」
笑う顔が夕日に照らされて輝きます。私が本当に見たいのは、夕日に照らされた花畑じゃなくて、その花畑に照らされたあなたの笑顔なんですよ。
朝倉「じゃあ、行こっか」
そう言って、私達は急ぎ足で花畑へ向かう。ヨーロッパ調の三階建ての建物の間の通りを駆け抜ける。
もう、そこの曲がり角を曲がれば、道路を挟んで、目に入るのは、ただ一面に広がる花畑!
その瞬間を、あなたの笑うその瞬間を見たいがために、私は駆け出して曲がり角に先回り。
彼女を背にして曲がり角を抜けたら、私は振り返る。追い付いてきた朝倉さんが、曲がり角を曲がって。
そして、夕日が彼女の顔を目一杯に照らす。あまりの夕日の眩しさに、彼女は手で光を遮る。
その時、嫌な感触が私の体を背後から透き抜けました。私の形ない体を通り抜けたのは、一台のバイク。



それは私の目の前で、朝倉さんをひきました。
15-263 名前:朝倉×さよSS(5)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:55:50 ID:SWoFD/chO
目前で起こる悲劇。
朝倉さんを軽く数メートル突き飛ばして、バイクはそのまま滑るように転倒しました。運転手の人の体はバイクと共に倒れたまま動きません。
すると、運転手から霞か靄のような姿がゆらいで、むくっと起き上がりました。運転手の霊体。
事故の様子を見て驚き、絶望したような表情を見せ、そして振り返り、運転手は、自分の亡骸を見付けてしまいました。
その瞬間に、運転手の煙のような姿は消え去りました。成仏したんでしょうか?私はきっと、ああならなかったんでしょうね。
時が止まっているようです。私が駆け寄った先には、朝倉さんが倒れています。出血がひどいです。大変です。早く手当てしないと…
やっと、私の中で時が動き始めました。風が頬を擦る音、花畑で草花が揺れる音、朝倉さんのうめく声。為す術もなく響く、私の鼓動。
そして、私は今更になって自分の無力さに気が付きました。朝倉さんを手当てすることも、声を挙げて人を呼ぶことも、何もできないんです。
涙が…溢れました。自分に対する怒りの涙です。自分の愛する人を助けることもできない。
私の涙は朝倉さんの血を広げたアスファルトにこぼれ落ちました。
その時、何が起きたのかは私にもわかりません。突然、まわりの建物の窓がガタガタ震えて、建物の中から何人もの人のどよめき叫ぶ声がしました。
事故現場には人だかりが出来て、救急車がやって来て、朝倉さんと運転手をそれぞれ連れて行きました。
15-264 名前:朝倉×さよSS(6)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:57:26 ID:SWoFD/chO
ここは病院です。妙に白く、そして人工的な臭いが恐怖感を煽ります。建物全体がまるで潔癖症のようで、命を救う場所なのに、生き物の気配がまるでしません。
あの事故の後、救急車に乗って朝倉さんと私はこの病院にやって来ました。窓の外は真っ暗です。時計の針が夜の10時を過ぎました。
手術室から頭に包帯を巻いた朝倉さんが出てきて、もう30分になります。お医者さんの顔を見る限り、危険な状態なんだと思います。
私は何をしたらよいのかわかりません。ただ、朝倉さんを見守ることしかできません。
病室には、朝倉さんと私と看護婦さんの三人だけです。
不意に、私は朝倉さんの存在を確かめたくて、彼女の肩に手を置きました。彼女の温もりが伝わってくるようでした。彼女は生きている。良かった。
すると、朝倉さんが突然、起き上がったのです!その体は、私の体と同じもので出来ていました。
朝倉さんは驚いたような顔で私を見つめます。私は思わず、彼女の手を両手で包みました。
朝倉「あれ?もしかして、私、死んじゃった?」
心電図の音だけが響く病室で、朝倉さんの声は私にしか聞こえません。
さよ「まだ生きてます」
朝倉「でも、ほら。私、さよちゃんに触れてる」
さよ「死んじゃダメです」
朝倉「やっと触れた…」
さよ「朝倉さん」
朝倉「私、死んじゃったんだ…」
さよ「朝倉さん!!」
朝倉さんはこの時、振り返ろうとしたんだと思います。私は何よりも早く朝倉さんを抱き締めました。朝倉さんが体を見付けてしまわぬように。
15-265 名前:朝倉×さよSS(7)[] 投稿日:2005/10/22(土) 01:59:58 ID:SWoFD/chO
それでも朝倉さんは首を回そうとしました。私は、何も考えず彼女の頭を抱え込みます。
朝倉さんの顔を私の胸に押し付けると、そこから泣き声が聞こえてきました。
朝倉「さよちゃん…」
朝倉さんが私を呼ぶ声を聞いて、看護婦さんがこっちを見ました。気付くと、朝倉さんの涙は私の胸元ではなく、病室の床に落ちていました。
看護婦「朝倉さん、気付かれましたか?」
看護婦さんがいくつか質問して、朝倉さんがそれに答え終ると、看護婦さんはお医者さんを呼ぶと言って、病室を出て行きました。
今、病室は二人っきりです。
朝倉「助けてくれたんだね、さよちゃん」
さよ「私は何もしてませんよ」
朝倉「さよちゃんが抱きしめてくれた…そしたら、目が覚めた」
私は黙って見てました。
朝倉「怖かったよ…私…怖かった…」
さよ「…私も…怖かったです…」
涙で濡れた朝倉さんの瞳が、病室の明かりをバラバラにして映し込んでいます。
さよ「私も怖かったです…朝倉さんが、死んじゃうんじゃないか…って」
朝倉「ごめんね…さよちゃん…」
そう言って、鼻水混じりの涙を袖で拭いました。顔を見せたくなかったんだと思います。
さよ「朝倉さん…」
そう言って、私は朝倉さんをまた抱きしめました。触れられないはずなのに…。
しばらくして、お医者さんと学校の新田先生が病室に入ってきました。
お医者さんが言うには、奇跡的に重傷にならずに済んだそうです。新田先生は、これからの学校について話していました。
その間、私は病室の窓から遠くを眺めることしかできなくて、まるで今日が日常から切り取られた日のように感じていました。
15-266 名前:朝倉×さよSS(8)[] 投稿日:2005/10/22(土) 02:01:57 ID:SWoFD/chO
入院の日々は過ぎました。1週間もありません。でも、そのわずかな間に、ネギ先生やクラスの皆が御見舞いに来てくれたりしました。
こう振り返ってみると、あまり二人っきりの時間はありませんでした。退院するときもネギ先生は一緒でしたし…寮まで行く途中で別れましたけど。
ネギ先生の後ろ姿が見えなくなると、私達はまた秘密の会話を始めます。
朝倉「行こうか」
さよ「どこにですか?」
朝倉「西の花畑」
さよ「別にいいですけど…まだ昼前ですよ?」
朝倉さんは私の言葉なんて聞いてない風で、何かに衝き動かされているように見えました。
私達は寮には帰らず、退院したその足で、西の花畑に向かう電車に乗りました。
電車の中での会話はなく、ただ寂しいような悲しいような長い時間が淡々と過ぎていきます。
やっと、西の花畑の駅に着きました。それなのに、真上から私達を照らす太陽は、寮の駅を出た時と同じ場所にありました。日は足元の影しか許しません。
朝倉さんは、どんどん先を急ぎます。私は後ろから無言で付いて行くことしかできません。
ハッと私が顔を上げた時、そこは生々しいタイヤの跡が残った事故現場でした。
何故か、私のない足は動かず、花畑に向かう朝倉さんを追うことができません。
でも、どうすることもできないので、私はそのまま朝倉さんを見守っていました。
朝倉さんは花畑から幾つか花を摘むと戻ってきて、事故のタイヤの跡が途切れた道路の端に花を置きました。
朝倉さんが手を合わせると、私の足が自由になりました。
15-267 名前:朝倉×さよSS(9)最終[] 投稿日:2005/10/22(土) 02:04:34 ID:SWoFD/chO
朝倉さんの隣に行って、私も運転手に手を合わせました。
音が本当に何もなく、ただ、空間が軽くなってゆく感覚だけが私を包みます。不意に朝倉さんが口を開きました。
朝倉「さよちゃんのお墓があっても、私は手を合わせないし、花もたむけないよ」
さよ「ないと思います…お墓」
朝倉「さよちゃんって、死んじゃってるんだよね?」
さよ「はい。足もないです」
朝倉「そっか」
朝倉さんはそう言うと、手をほどいて花畑にまた向かいます。今度は私も付いていきます。
太陽を目一杯に浴びて、白い花たちはここにあります。その白い花たちに埋もれて、朝倉さんが少し離れたところから振り返って手をふりました。
朝倉「さよちゃーん!」
何が何だかわからなくて、私はただ呆然としていました。
朝倉「さよちゃーん!」
朝倉さんが呼んでる。私は、何も考えずに朝倉さんに従うことにしました。
さよ「なんですか?朝倉さん」
普通の声で聞こえるくらいの距離なのに、朝倉さんが何の反応もしません。私は首を傾げて、更に近付きます。朝倉さんが目の前になるまで、近付きます。
朝倉「はい!」
元気にそう言うと、朝倉さんは片手で白い花を私に差し出しました。その花はまだ朝露に濡れていて、太陽の光を美しく着飾っていました。
さよ「きれい!」
パシャッ!
花畑に響くシャッター音。朝倉さんがカメラ片手に、ニヤニヤと笑みを浮かべています。
そのままカメラの液晶画面に写っている私の姿を、朝倉さんはただ私に見せます。
朝倉「フラッシュは焚いてないよ。これが日の光を浴びた、さよちゃん…そのままの姿」
そして、太陽のような笑顔を私に見せてくれました。私が本当に見たかった、朝倉さんの笑顔を。
白い花で満たされた夢のような一時。それは、大事な大事な日々のただのひとかけら。
15-268 名前:朝倉×さよSS(絵)[] 投稿日:2005/10/22(土) 02:07:55 ID:SWoFD/chO
以上です。
ヘタレな文ですいません。

ちなみに、このSSを書くきっかけになった絵です。大きいサイズのは後日うpします。

にア http://d.pic.to/5uzpy


それでは、珍しく長文を書いてみたカールでした(´・ω・`)おやすみなさい。

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最終更新:2007年07月29日 02:33