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26-239
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:47:24 ID:???
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1/11
「やっほーいいんちょ」
放課後。まき絵がネギと他愛のないおしゃべりをしていると、あやかの姿が見えた。まき絵が嬉しそうに
声を掛けると、あやかの反応は早かった。
「あら、ネギ先生にまき絵さん」
あやかは極上の笑みを浮かべながら早足で二人の元へ歩み寄る。こうして三人はしばしの間、雑談に花を咲かせた。
あやかとネギが楽しそうに談笑するのを、まき絵はご機嫌な様子でにこにこと眺めていた。
「―――では、ごきげんよう」
やがてネギが仕事に戻り、あやかは笑顔で見送る。ネギの姿が見えなくなってから、あやかはくるりと
まき絵の方に振り返った。
「まき絵さん。よろしかったのですか?」
「へっ? 何が?」
あやかが怪訝そうな表情をしているのに対し、まき絵はいつもの笑顔で小首を傾げる。
「何が、って……。せっかくネギ先生と二人きりでいらしたのに……」
ライバルにまで気を使う辺りが、いかにもあやからしい律儀なところである。
「だって、二人でいるより三人でおしゃべりした方が楽しいよ」
とはいうものの、あやかが話の輪に加わってからまき絵はほとんど聞き手に回っていただけである。
「まあ、そうおっしゃるのでしたら構いませんが……」
あやかは腑に落ちない様子であったが、やがてその表情を緩ませた。
「では、わたくしも用がありますので……」
「うんっ! まったね〜」
あやかが一礼して立ち去る。まき絵は終始笑顔のままであった。
その日の夜。まき絵と亜子の部屋には裕奈がお泊まりに来ていた。何でも真名が珍しく遊びに来ているらしい。
裕奈は気を利かせて二人きりの時間を真名とアキラに提供したのだ。
女の子が三人集まれば、自然と恋愛話が始まる。口火を切ったのはまき絵であった。
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26-240
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:48:04 ID:???
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2/11
「ゆーなも亜子もアキラもらぶらぶでいいよね〜」
まき絵はいやらしい目付きでにやにやと二人を見つめる。
「まき絵も頑張りなよ。まあ、ネギ君はライバル多いけど……」
「特にいいんちょは強敵やな〜」
二人に即座に切り返され、まき絵はあはは、と苦笑する。
「今日もおしゃべりしたよ。私といいんちょとネギ君の三人で、だけど」
「ダメダメ。もっと積極的に二人きりにならなきゃ!」
まき絵の報告に、裕奈は恰好を崩しながらアドバイスする。
「けどホンマにいいんちょは強敵やなあ……。ネギ君への偏愛はスゴいから……」
「確かにねー。普段はいい人なんだけど、ネギ君とアスナの事となるといいんちょはキャラ変わるからねー」
亜子と裕奈のおしゃべりを、まき絵はちょっぴり複雑な心境で聞き入っていた。
「いいんちょは頭ええし、美人やし、ちょい真面目過ぎやけどええ人やもんなあ」
「まき絵と違ってスタイル抜群だしね〜」
裕奈は意地悪な目線でまき絵に話を振る。しかし、まき絵の反応は想定外のものであった。
「ホント、うっとりしちゃうくらい素敵だよね……」
まき絵は言葉通り歎息を漏らしながら呟く。思わず裕奈と亜子はきょとんとしてしまう。
「そうだ、この際だから二人に聞いちゃお! ―――あのさ、女の子同士ってどうなの?」
唐突なまき絵の反撃に、亜子はやや恥ずかしそうに顔を伏せ、裕奈は目を白黒させてしまう。
「イ、イキナリそないなコトゆわれても……」
「まあ、人目は気にしなきゃなんないし、色々と大変だよ。けど……」
裕奈は突然、まき絵に見せつけるように亜子の肩を抱き寄せた。
「あたしが亜子以外の女の子と付き合うなんて考えられないよっ!」
「ウ、ウチもゆーなやから……」
亜子の方も恥ずかしそうにしながら答えた。どこかの種馬さんに聞かせてあげたい程の熱々っぷりである。
「あはは。好きなんだからしょうがない、ってカンジだね〜」
まき絵はそんな二人に目を細めるばかりである。そして二人に感謝していた。それは、自分が心の中に
押し込めていた感情を解き放つ、わずかな勇気を受け取ったから。
そんなまき絵の心境に、裕奈も亜子も気が付かなかった―――
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26-241
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:48:50 ID:???
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3/11
「あらまき絵さん。ちょうどいいところに」
翌日。まき絵が寮の廊下をてくてくと歩いていると、あやかに声を掛けられた。
「これからお茶にしようと思ってましたの。昨日のお礼といってはなんですが、まき絵さんもいかが?」
「お礼? 私なんかしたっけ?」
まき絵は額に指を当てながら思案する。
「イヤですわ。わざわざわたくしにネギ先生とお話する機会を下さったじゃありませんか」
(あはは……。そりゃ私にとってもチャンスだったからね……)
まき絵はこっそり苦笑したが、折角のお誘いなので二つ返事で了承する。そして、二人でネギにも
声を掛けようと部屋を訪れた。しかし、
「ネギ君なら出掛けとるえ」
木乃香の呑気な返事にあやかはあからさまにがっかりしている。この場に明日菜が居なかったのがせめてもの
救いであった。あやかは仕方なくとぼとぼと自室に向かう。まき絵もその後に続いた。
「仕方ありませんわね……。わたくしと二人きりですがよろしいですか?」
「はれ? 那波さんと夏美ちゃんは? それとコタロー君も居ないの?」
「ええ。夏美さんは葉加瀬さんのお手伝いで、千鶴さんとコタローさんはお買い物に出掛けてますの」
あやかの返事に、まき絵の胸が高鳴る。願ってもないチャンスがやって来た。
(私も、勇気を出さなきゃ……!)
まき絵はぐっ、と小さく拳を握ると、神妙な面持ちであやかの部屋に上がり込んだ。
あやかはてきばきと紅茶を淹れ、お手製のクッキーを用意する。恐らく、ネギ先生の為に焼いたのであろう。
「うんうんオイシイよ! 私もお料理には自信あるんだけど、いいんちょも上手だね〜」
「ふふ。ありがとうございます」
あやかは穏やかな表情で紅茶を口に運ぶ。こうして二人は和やかな雰囲気でにお茶会を楽しんでいた。
しばらくして、まき絵は唐突な質問をぶつけてみた。
「―――ねえねえ、いいんちょはネギ君に告白しないの?」
「ぶっ!!」
あまりの直球に、あやかは思わず口に含んでいた紅茶を噴出する。けほっけほっ、とむせた後、あやかは
あからさまに狼狽しながら懸命に答えた。
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26-242
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:49:43 ID:???
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4/11
「こここ告白だなんてそんな……! わ、わたくしは確かにネギ先生をお慕いしてますが、教師と生徒という
立場でそのようなことは―――!」
「えー? そんなの好きになっちゃったらかんけーないと思うんだけどな〜」
まき絵があっけらかんと答えると、あやかはばつの悪い表情をする。
「しかし、ネギ先生はまだお若いですのよ。わたくしは先生がご成長なされるまで待つつもりですわ。勿論、
ネギ先生をずっと見守り続ける事に変わりはありませんが」
「ふーん。じゃあいいんちょはずっと片思いのままでいいんだ」
「ううっ! そ、それは……」
まき絵の一言が、あやかの胸に刺さる。
「私は、そんなのイヤだな……。ずっと待ってるなんてムリだよ……」
まき絵はいつになく真剣な顔付きで答える。
「だったら告白して玉砕した方がスッキリすると思うんだ……」
「ま、まき絵さんまさか……」
あやかの表情に緊張が走る。そして……
「ダメ元だけどね。私は告白するよ」
まき絵はきっぱりと宣言した。そして、みるみるうちにあやかの表情が一変する。
「そ、そのような事許しませんわ!! わたくしを差し置いてネギ先生に告白だなんて……!」
「ちょっと待って」
顔を真っ赤にしながらまくしたてるあやかを、まき絵は笑顔で制した。けれどその目は笑っていない。
それは覚悟を決めた目であった。思わずあやかはその眼差しに引き止められる。
そして、まき絵が次に発した一言は意外なものであった。
「私、ネギ君には告白しないよ」
「えっ―――?」
あやかは自分の耳を疑った。今、まき絵さんはなんとおっしゃったの?
信じられない様子でまき絵を見る。あやかの胸中には、いつもまき絵というライバルが存在していた。
自分にない明るさを持つ少女は、同じライバルであるのどかよりもずっと脅威に思っていたから。それだけに
まき絵の一言はあやかにとって衝撃的なものであった。
しかし、驚くのはまだ早かった。
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26-243
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:53:22 ID:???
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5/11
まき絵は緊張しているのか、少し頬を染めている。けれど大きく息を吐くと、これ以上ない笑顔を見せた。
そして、まき絵はゆっくりと告げた。迷いのない、まっすぐな瞳で。
「私が好きなのは、いいんちょだから―――!」
…………。
…………。
…………。
一瞬、あやかは真っ白な世界に陥ってしまった。何か喋ろうと口をぱくぱくさせるが、全く言葉にならない。
「ゴメンね。私がネギ君の傍に居たのは、いいんちょに意識して欲しかったからなんだ」
まき絵の告白は確実にあやかの抱いていた概念を破壊していく。
「私、ずっといいんちょが好きだったの……。これがホントの気持ち」
そして、自分を好きなまき絵という存在が、あやかという器に入り込んでくる。それは今まで経験した事のない、
不思議な感覚であった。
「まき絵さん……」
搾り出すように、あやかはやっとの思いで少女の名を口にする。まき絵はもう一度微笑み、とどめを刺した。
「私と付き合って下さい。あやかさん―――!」
そう言った瞬間、まき絵は突然腰が抜けたように崩れ落ちた。
「まき絵さん!?」
慌ててあやかが駆け寄ると、まき絵はあはは……、と情けない声を上げる。
「な、なんか疲れた〜。私の全てを使い果たしちゃったよ〜」
まき絵はあやかの手を取り、懸命に笑顔を作る。そして、息を荒くしながら最後の一言を告げた。
「返事はまた今度でいいかな……? もう限界みたい……」
まき絵はそのまま気を失ってしまった。言葉通り、まき絵は全てのエネルギーを告白に使い果たしたのだろう。
「そんな……。まき絵さんがわたくしを……?」
後には茫然とするあやかが取り残された――― (つづく)
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26-244
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:54:27 ID:???
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6/11
「おっ、やっと起きたね」
まき絵が目を覚ますと、そこは自分の部屋であった。枕元には亜子と裕奈、それにアキラの姿があった。
「まき絵大丈夫なん? どこも痛うない?」
「ん……、へーきだよ」
心配そうな亜子の呼び掛けに、まき絵はゆっくりと身体を起こす。
「よかった。さっきいいんちょが気絶したまき絵を運んできた時は驚いたよ」
「いいんちょ、理由も言わずに帰っちゃったけどね」
アキラと裕奈の説明に、まき絵は苦笑する。
「あはは……。いいんちょには悪いコトしちゃったなあ……」
三人の視線がまき絵に集まる。そして、まき絵はあっさりと事の顛末を語り始めた。
「―――と、ゆーワケなんだ。あはは、告白ってこんなに大変だったんだね……」
まき絵は恥ずかしそうに頬を掻く。対して、三人は完全に硬直していた。
「まき絵の本命っていいんちょだったんだ……」
「ウチ、ネギ君やと思っとったわ……」
「私も……」
親友たちの感想に、まき絵は穏やかな笑顔で頷く。
「私ね、ホントは諦めてたんだよ。いいんちょと比べたら私なんてバカでのーてんきでお子ちゃまだし、向こうは
お嬢様だから……。でもね、目の前で仲良くしてる亜子とゆーなを見てたら、やっと分かったんだ。好きなものは
好きなんだからしょうがないって。だから、諦めるくらいなら告白しちゃえ! って思ったの」
「それで、どうだったの?」
アキラの問いに、まき絵は思わず苦笑する。
「あはは……。返事はまだなんだ……。ちょーっと早まったかも。いいんちょ、すっごくびっくりしてたし……」
まき絵は乾いた笑みを浮かべる。いきなり順序をすっ飛ばして告白したのだ。あやかの驚きは当然である。
今となっては後悔が募るばかりであった。
「まあ、フラれてスッキリするつもりだったからね……」
顔を伏せながら自虐的に呟くと、突然亜子が抱きついてきた。
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26-245
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:55:10 ID:???
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7/11
「きゃっ! ど、どーしたの亜子?」
まき絵が伺うと、亜子はぽろぽろ涙をこぼしながら叫んだ。
「そないなコトあらへん! まき絵みたいなええ子を振るやなんてアホやっ!!」
「や、やだなあ……。私なんてそんな……」
と、まき絵が否定しようとすると、今度は裕奈が口を挟む。
「コラコラ。自分をそこまで卑下するんじゃないの。それは亜子の専売特許だって!」
そう言って裕奈は優しくまき絵の頭を撫でた。
「ちょ、ちょっとゆーな恥ずいよぉ……」
まき絵はみるみる顔を赤くするものの、裕奈はにっこりと微笑むばかりである。
「そりゃあさ、いいんちょだって驚いただろうけど、ちゃーんと分かってるよ。まき絵が素敵な子だってコトは」
「うん……」
アキラも一緒になってまき絵の頭を撫でる。
「まき絵はカワイイよ。まっすぐで、頑張り屋さんだし……」
「もっと自信を持ちなさいって! 落ち込んでるのはらしくないぞっ!」
「せやせや。まき絵は後先考えんといつも通りにしとったらええんや!」
親友たちの激励に、まき絵は思わず涙がこぼれそうになる。
「ありがとみんな……。もしフラれちゃったら、また慰めてね」
そう言ってまき絵は目を擦りながら笑った。つられて三人も笑顔を見せる。
「―――あ、そうだ」
唐突に、まき絵はポンと手を叩いた。
「ねえねえゆーな、卑下ってなに? 私、おヒゲなんて生えてないよ?」
ずるっ。
バカピンク全開の一言に、三人は盛大にずっこけた。
同時刻。あやかは世界樹にいた。まき絵を運んだ後、ルームメイトが帰ってきたのだ。一人の時間が欲しくて、
あやかはこんな所まで足を運んでいた。
「ふう……」
あやかは深く溜息をつく。
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26-246
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:56:00 ID:???
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8/11
それは、ずっと自分の中で最優先事項だった筈の存在。なのに、今となってはどこかへ置き忘れて
しまったかのように、消えてしまったもの。
「ネギ先生……」
あやかが求めていたもの。その全てが、あの告白によって壊れてしまった。その代わりにあやかの心に
住みついたのは、笑顔の眩しい少女。
彼女が羨ましかった。
彼女のような素直な心が欲しかった。
人はあやかの事をしっかりした人だという。それは当たり前だ。名家の次女に生まれたあやかは、幼少の頃から
お嬢様としての教育を受けてきたから。丁寧な言葉遣いに社交術。それは後からあやかに付けられた枷である。
気が付くと、あやかが本当の自分を出せる相手は幼なじみである明日菜しか居なくなっていた。けれど、
そんな明日菜に対してさえ、自分は本音をさらけ出せずにいたのだ。
あやかにとって佐々木まき絵という少女は、ある種の憧れであった。
自分にない素直な心を持つ少女。それは、あやかがどうしても手に入らなかったもの。
いつもネギの傍には自分と彼女がいた。あやかはいつも自制しながらネギに接していたのに対し、まき絵は
心の赴くままにネギと接していた。だから―――
(私、まき絵さんが苦手でした……)
彼女といると、自分の嫌な所が映し出されるような心境であった。
憧れと畏怖。相反するものを抱かせる存在。それがまき絵であった。
『私と付き合って下さい、あやかさん―――!』
その一言で、あやかの世界は完全に崩壊した。そして、自分の気持ちが分からなくなってしまった。
本当に、自分はネギを愛していたのか? そもそも愛とはなんなのか?
あやかの心に残ったのは、まき絵が置いていった気持ちだけ。
「まき絵さん……」
ぽつり、とあやかは彼女の名を口にした。
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26-247
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 08:56:45 ID:???
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9/11
その翌日。この日はまき絵の誕生日であった。
「んじゃ、あたしたちは先に準備してるからね〜」
「えへへ、まき絵の好きな料理ぎょーさん作ったるからな〜」
「ケーキも楽しみにしてね」
放課後になり、親友三人は一足先に帰路についた。まき絵は教室で時間を持て余すばかりである。
「誕生日、かあ……」
まき絵の心境はそれどころではなかった。今日一日、あやかと会う機会が無かったからだ。
あやかは学校を休んでいた。ルームメイトである千鶴と夏美の話では、どうやら実家にいるらしい。
「あはは。やっぱりフラれちゃったな……」
誰も居ない教室で、まき絵のすすり泣く声が響いた―――
しばらくして、亜子からメールが届く。その内容を見るなり、まき絵は首を傾げた。
『準備OKやで〜。今からお迎えが行くから、まき絵はおとなしゅう待っててや〜♪』
「…………お迎え?」
まき絵の頭に5つ目のクエスチョンマークが浮かんだ時であった。突然、執事風の老紳士がやってきたのだ。
「失礼します。佐々木まき絵様でいらっしゃいますか?」
「は、はあ……」
「お迎えに上がりました」
「へっ…………?」
まき絵は素っ頓狂な声を上げたものの、素直に老紳士の後に続く。すると、校門の前にはいかにもな
リムジンが停まっていた。
(こ、これってまさか―――!)
さすがのバカピンクも察しがついたらしい。まき絵を乗せたリムジンは、雪広邸へと急行した―――
その頃。寮では裕奈と亜子、そしてアキラの三人が談笑していた。
「いや〜、てっきり終わったかと思ったけどさ、まさかの急展開だったにゃ〜」
裕奈の一言に、亜子もアキラも笑顔で頷く。そして、裕奈の更なる一言が、全てを物語っていた。
「ふっふっふ。まき絵が帰ってきたら思いっきり冷やかしちゃおうねっ!!」
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26-248
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 09:00:30 ID:???
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10/11
バルコニーに案内されたまき絵を待っていたのは、二人分のフレンチのフルコースであった。
「では、ごゆっくり」
老紳士が一礼すると、控えていたメイド達も去っていく。代わりに、主であるあやかが姿を現した。
「あ、あの、いいんちょ?」
「お誕生日おめでとうございます、まき絵さん」
戸惑うまき絵を尻目に、あやかは笑顔で向かいの席につく。
「さ、冷めない内に召し上がれ」
「う、うん……」
まき絵はどきどきしながら料理を口にする。正直、味なんて分からない。けれど、目の前のあやかが
あまりに嬉しそうな表情で見つめてくるので、まき絵はそのまま食事を続けた。
やがて、あやかが口を開く。
「―――さて、まき絵さんにお聞きますわ。私のどこがお気に召したのですか?」
まき絵は手を休め、しばし言葉を選んだ。
「んと……、最初は憧れだったんだよ。私ってバカで幼稚で、スタイルも子供っぽいから……」
まき絵は素直に自分の思いの丈を奏でる。
「だから、いいんちょが眩しかった。私に無いものをいーっぱい持ってて、素敵だと思ったの」
あやかはくすりと笑う。それは求めるものこそ違えど、自分が抱いていた気持ちと同じだったから。
「でもね、私が好きになった一番の理由はあやかさんの笑顔なんだよ」
「えっ……?」
思わずあやかはどきりとする。この一言は完全に予想外であった。
「ネギ君といる時のあやかさんはね、ほんっっっとうにカワイイ笑顔で笑うんだ。だから私も一緒にネギ君を
追っ掛けてたんだよ」
あやかの顔がみるみる赤くなり、まき絵はくすくすと笑っている。
「笑顔、ね……。その言葉、そっくりお返しいたしますわ」
あやかは急に立ち上がり、まき絵の席に回り込む。そして、まき絵の首に腕を回した。
「えっ? ちょ、ちょっと……!」
「失礼します……」
そのままあやかはゆっくり顔を近付け、まき絵のピンク色の唇を塞いだ。
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26-249
名前:『比翼連理』[sage] 投稿日:2006/03/07(火) 09:01:16 ID:???
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11/11
そっとあやかは顔を引く。そして、穏やかな笑顔を見せた。対して、まき絵は茫然としている。
「まき絵さんの笑顔こそ犯罪ですわよ。わたくしの心を奪ってしまったのですから……」
「そ、それってつまり……!」
「待って」
そう言ってあやかはまき絵の唇に指を当ててウィンクした。
「こちらをご覧なさい。素晴らしい夕焼けでしょう?」
あやかの差す方向。そこには美しい夕陽があった。
「わたくしのお気に入りの景色ですの。そこで、まき絵さんにお願いしたい事がありますのよ」
きょとんとするまき絵に、あやかは夕陽をバックにおねだりした。
「ここでもう一度、まき絵さんのお気持ちを聞かせて下さい」
それはあやかがみせた素直な気持ち。だから、まき絵は迷う事なく頷いた。
誰にも真似出来ない、まき絵らしいまっすぐな笑顔で。
「あやかさんが好きです! 私とお付き合いして下さいっ!!」
「―――はい。わたくしでよろしければ」
オレンジ色に染まりながら、あやかは極上の笑顔で頷いた。その目に光る雫を隠そうともせずに。
「あやかさん! 私、わたし……!!」
まき絵は感極まった表情で飛び付いた。そして、あやかの胸で涙を流す。そんなまき絵をあやかは優しく
受け入れた。
「あやか、と呼んでください……」
あやかはまき絵の顔に手を掛け、再び口付けを交わす。先程とは違う、濃密なキス。互いの舌と舌が絡み合い、
二人はお互いの愛情を絡め合っていた。
やがて、どちらともなく離れ、二人で笑った。
「ふふ。わたくしだってまき絵さんが羨ましかったのですわ。素直で可愛らしくて……」
「えへへ……。お互い様なんだね」
まき絵はにこにこ笑いながらあやかにぴったりと寄り添う。そして、こっそりと囁いた。
「私もコトもまき絵、って呼んでね。あ・や・か」 (おしまい)
最終更新:2007年07月29日 02:34