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名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:08:39 ID:FYqN+Gll0
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激しい雨が降る。わずか10m先すらも霞んでしまう激しい雨。
霞む視界の先にお互いを捉えながら、二人の少女が対峙している。
不規則なリズムで、雷鳴と雷光が闇の中の二人を浮かび上がらせる。
二人は長い間、無言で見つめ合っている。
否、そのうちの一人は、その視線で相手を貫かんばかりの殺気を込め、睨みつけている。
そしてもう一人は、それを平然と受け止め、なおかつ笑みを浮かべてさえいた。
静と動。氷と炎。経過する時間に比例して、二人の温度差が増していく。
指先をピクリと動かすだけで爆発しそうなほどに張り詰めた両者の均衡は、氷の少女によって破られた。
「・・・昔流行った映画に、こんなシーンがあったよなぁ」
「・・・・・・」
「メガネをかけてるから、私がエージェントか? グラサンじゃないのが残念だ」
「・・・・・・ふざけないで」
「あのシーンじゃ、何十人もの同じ顔が二人を取り囲んでいたが、あいにく私は――」
「ふざけないで!!!」
――私は一人だしな、という少女の言葉を掻き消し、炎の少女が叫んだ。
「・・・長谷川。アンタ、自分が何をしてるのかわかってんの? 誰に逆らってるのか・・・それが何を意味してるのか、わかってんの!?」
「わかってるさ、朝倉。オマエみたいに、頼んでもないのにわざわざ教えに来てくれたヤツが、大勢『居た』からな」
「・・・・・・!!!」
千雨の、過去形を強調する物言いに、和美は歯が折れるかと思えるほどに食いしばった。
「長谷川、アンタどうかしてるよ!! 『あのお方』に逆らったら、死んじゃうんだよ!?」
「死ぬんじゃなくて、オマエらが殺しに来てるんだろうが」
どうかしてるのはどっちだよ、と千雨は聞こえよがしにつぶやいた。スカートのポケットに両手を突っ込む。
そして彼女は、あえて油を注ぐ。
「・・・ま、私はこのとおり、まだ生きてるんだけどな」
「長谷川ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
和美が吼えた。怒りのあまり、彼女の赤い髪が逆立つ。あたかも燃えさかる炎のように揺らめく。
その様子に、千雨は薄い笑みを浮かべる。しかしその瞳は、急激に冷めていった。
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名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:09:12 ID:FYqN+Gll0
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「私のほかにも、ヤツに従わなかった生徒が何人か居たはずだよな」
「『あのお方』をそんな風に呼ぶな!」
「そいつら、今どうしてる? 私と違って『説得』に応じたか? 応じなかったら、やっぱり『浄化』すんのか?」
「うるさい!! もう黙って!!」
千雨は笑顔の内に秘めた絶対零度の冷たさで、和美を挑発し続ける。
和美は内なる炎を隠そうともせず、その温度をますます上昇させる。
「私のとこに『説得』に来たのは・・・えーと、いいんちょ、桜子、双子に和泉に宮崎・・・あー、あと幽霊も居たな」
「!!・・・黙れって言ってるでしょ!?」
「相坂だっけ? さすがにあれは卑怯だよなぁ。なんせ最初から死んでるんだもんなー」
「・・・黙れ・・・黙れ・・・黙れ・・・!!」
「・・・でもまぁ、生きていようが死んでいようが、私には関係ない。どの道、『消えて』もらうだけだしな」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
二度目の咆哮と同時に、和美はカメラを構える。
愛用しているデジカメとは違い、ポラロイドカメラだ。
「・・・・・・遅いよ」
千雨は仰々しくため息をつく。
「わざわざ、あんなに分かりやすく挑発してやったのに、なんであそこで抜かないんだよ」
「・・・・・・」
「まさか、今さら『殺すのが怖い』とか言うんじゃないだろうな?」
「・・・・・・いよ」
「・・・え?」
「・・・怖いよ」
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名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:09:32 ID:FYqN+Gll0
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つい先ほどまで激しい怒りの炎につつまれていた和美は、一瞬にして以前と変わらない彼女に戻っていた。
さすがに千雨も、ちょっと動揺する。
「・・・ウソつけ。オマエらが今まで私にさんざん何してきたか、忘れたわけじゃねーだろ」
「ウソなんかじゃないよ・・・私・・・」
「・・・」
「・・・私・・・は、長谷川のことが・・・」
「・・・(・・・なんだなんだ?)」
なんとなく『違う』空気になりつつあるのを察知し、千雨がいぶかしむ。
「・・・・・・(かぁぁっ)」
「・・・(・・・おいおいおいおい。)」
ついに和美は顔を赤く染めてうつむいてしまった。手に持つカメラをいじいじとこねくりまわす。
まさか、もぢもぢしたふりしてシャッターを切ろうという和美の作戦なのか、と千雨は身構えるが、ストロボは一向に焚かれない。
どうやら本気で恥ずかしがっているようだ。千雨は必要以上に大袈裟なため息をついた。
「さっきまでの緊迫した展開はなんだったんだよ・・・」
「あ、あ、あの、えと、ご、ごめん・・・」
「ゴメンで済むかよ・・・で、どーすんの? 続けるの?」
「あ、えっと、続けてください」
千雨は、さっきよりもやや大きめに、和美を無言で責めるかのように、ため息をついた。
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名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:10:16 ID:FYqN+Gll0
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「・・・で、私のこと、殺したくないんだって?」
「うん・・・できることなら」
「・・・できることなのか?」
「・・・長谷川が、おとなしく『あの人』に従うのなら、できる」
「じゃあ無理だ。」
その瞬間、空気が凍った。
和美の目に再び、炎が宿った。しかしその温度は、先ほどの千雨と同じくらい冷たかった。
逆に千雨のほうが熱を帯びてきた。和美がやっと本気を出してくれた。うれしくてしょうがなかった。
「・・・なんで・・・わかってくれないの・・・」
「わかんねーよ。逆に教えてほしいよ。オマエらがアイツについてく理由をさ」
「私は・・・長谷川と一緒に居たいだけなのに・・・」
「悪いがゴメンだ。あんなガキに『生かされる』くらいなら、死んだほうがマシだ」
「じゃあ、いいんちょたちを返り討ちにせずに、素直に殺されてれば良かったじゃない!!」
「言ったろ? 私は負けない。・・・『負けられない』んだ」
「でなきゃ、私に順番は回ってこなかった!! アンタを殺さなくてもよかった!!」
「私は、自分じゃ自分を『消せない』。だから『消して』ほしかった! でもダメなんだよ! 『消される』前に『消しちまう』んだよ!!」
「死んじゃうんだよ!? このカメラのストロボを浴びたら、長谷川、死んじゃうんだよ!?」
「好きで『消してる』わけじゃない!! これ以上『消したくない』んだ!! 私に、オマエを『消させる』な!!」
「私は・・・私は!!・・・こんなにも長谷川のことが好きなのにぃぃぃぃッ!!!!」
「早く!! 私を!! 『殺せ』よぉぉぉぉッ!!!」
和美がカメラを構えた。シャッターボタンに指がかかる。指に力を込める。
同時に、千雨の指が動いた。
まばゆい閃光が、二人を包み込んだ。
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名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:10:50 ID:FYqN+Gll0
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激しい雨は、その勢いをさらに増し、二人を打ちのめす。
雷鳴も二人の叫びを掻き消さんばかりに鳴り響き、雷光は相変わらず無遠慮に二人を闇の中から浮かび上がらせる。
二人は長い間、無言で見つめ合っていた。
そのうちの一人は、ファインダーから目を離し、信じられない、といった表情で、向かい合った少女を見つめていた。
そしてもう一人は、カメラを持った少女を、悲しみとも、怒りとも取れる表情で、静かに見つめていた。
「・・・なんで・・・」
「・・・・・・」
「・・・なんで・・・?」
和美が繰り返す。カメラが彼女の手から落ち、アスファルトに転がる。止まったカメラのレンズが、二人を捉える。
「・・・なんで・・・? わたし、シャッター切ったよ・・・?」
本来なら、千雨の姿を写しこんだフィルムが、カメラから吐き出されるはずだ。被写体をフィルムに『閉じ込める』、和美の能力。
そのフィルムが、見当たらない。
「・・・・・・遅いよ」
千雨は仰々しくため息をついた。
「言ったろ? なんであそこで抜かなかったんだよ。あのときなら、私を殺せたはずなんだ」
「どうして・・・? なにがおこったの・・・?」
和美は全身の力が抜けたように、地面にぺたりと座り込む。
違和感を感じ、和美が自分の手を見る。指先が、まるで空気に溶けるように、消えていった。
全身が、透けている。少しずつ、薄くなっていく。『朝倉和美』という存在が、消滅しようとしている。
「すべてを『消す』・・・これが私の能力なんだよ」
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10-500
名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:11:55 ID:FYqN+Gll0
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千雨が両手を胸の前にかざす。すると空中に、ノートPCが現れた。
そのディスプレイには『Kazumi Asakura』と書かれている。その隣には『Delete』の文字が点滅し、その下には『30%』と表示されていた。
進行状況を示す青い帯がわずかに伸びる。『40%』
「私はもうこの能力を制御しきれない・・・自分の意思に関係なく、私に害を及ぼすものを消してしまうんだ」
「・・・・・・」『50%』
「何度も自分の名前を入力してみた。でも何度やってもエラーが出てさ」
「・・・・・・」『60%』
「でも、いちおう弱点はあってね。両手の前に、ノートPCが実体化できるだけのスペースがないと発動できないんだ。笑っちまうだろ」
「・・・・・・」『70%』
「朝倉の腕なら、ポケットに手ぇ突っ込んでる間に撮ってくれると思ってたんだが・・・」
「・・・・・・」『80%』
「・・・ははっ、まさかあそこで告白されるとはな。思ってもみなかったよ」
「・・・・・・」『90%』
「・・・実は、案外まんざらでもなかったんだぜ? あそこで私を封じてくれてたら、付き合ってやってもよかったんだけどな」
「・・・・・・じゃあ、返事はOKってことね?」『99%』
「へ?」
パシャッ!
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名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:12:58 ID:FYqN+Gll0
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先ほどまでの激しい雨とは打って変わり、ぱらぱらと小雨が降る程度に天候は回復していた。
雲間から青空ものぞき、光が闇を切り開く。
アスファルトに転がるノートPCとポラロイドカメラを、光が照らす。雨に打たれ、きらきらと輝く。
ノートPCは落下した衝撃だろうか、液晶ディスプレイが割れ、液漏れしている。
かろうじて『error』の文字が読み取れるが、もう使い物にはならないだろう。
一方のポラロイドカメラは、誰かが撮影した後なのか、一枚のフィルムを吐き出していた。
――そこには、二人の少女が口づけを交わす写真が収められていた――。
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10-502
名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/15(木) 02:14:34 ID:FYqN+Gll0
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「・・・早乙女。なんだこれわ?」
「何って、同人誌よ。私が描いたの」
「何だよこのむちゃくちゃな設定は! なんで私が朝倉に告白されてキスまでされなきゃいけないんだ!」
「いーじゃん長谷川。同人誌ってのはそーゆーもんよ。ねー、パル」
「ねー」
「実在の人物を実名で登場させるなよな! この学校の奴らが見たらどーするんだ!」
「・・・・・・」
「・・・なんで黙るんだよ」
「・・・いやー、あまりにも会心の出来だったもんで、サークルの子以外にもいろいろ配っちゃった♪」
「・・・・・・いろいろって、どこだ」
「3−Aのみんな♪」
「・・・・・・・・・_| ̄|○」
「あ、パルー。朝倉が売りさばいてたアンタの同人誌、おもしろかったわ。けっこう評判いいみたいよー」
「ありがとー、明日菜」
「 オ マ エ も 加 担 し て ん の か よ ! ! 」
「えー、だって、二人の愛をみんなに見せびらかしたかったしー」
「(カァァッ)あ、愛なんてねーよアホ!!」
最終更新:2007年07月29日 02:34