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シリーズ/美空ウイルス

美空ウイルス.exe【ver:6.1】---------------------------------------------------------------

ラジオの人気番組『ネギまほラジオ』は麻帆良学園でも聴くことができる。
リスナーの支持もかなり高い。
そして、キャラの人気をランク付けするというその内容は、
ネットアイドルの顔を持つ千雨にも当然ながら興味深いものだ。

===
・「ネギまほラジオ:ゆえパル分析隊」にて空気認定を受けた者を新たなる空気とする。
===
しかし、ここに書き記されている言葉の意味が、千雨には理解できなかった。
"空気"…それも、"新たなる空気"とは何か。
ウイルスに感染したPCを操作している内に、龍宮が見ただろう文面にも遭遇した。
それの文末は、このように締め括られている。
===
では、私が本気であることを証明するため、まず見せしめとして、最新の空気を空気にしてみせよう。
===
"最新の空気"…なんだ、それは。それに、PCのログを閲覧していたら、こんな行が見付かった。
====================
Action:Virus_Misora【________:空気設定を完了】
====================
空欄には何か文字が入っていたはずだ。そもそも、ログに書き込まれていた文字が消滅するとは、不可解だ。
閃いた千雨は受話器を手に取り、彼女の部屋の番号にかけた。
コール音がしばらく続き、勢いよく相手の受話器が持ち上げられる音がした。
「もしもsy

ガチャン!……ツーツーツー…

思いっきり切られた。千雨はもう一度、怒りながらもコールする。
ガチャ…
諦めたように受話器が持ち上がる。よし。
「もしもし、早乙女か?」
「ったく、何よ。長谷川?今、本番前で大変なのよ」
「長く話す気はない。だから、ちゃんと答えてくれ」
「…なに」
「お前らがやってるラジオ番組の話なんだが…」

美空ウイルス.exe【ver:6.2】---------------------------------------------------------------

ミソラは激怒した。

握り拳を掲げ、絶叫と共に振り下ろす。クラスが、社会が、この世界が憎かった。
叩かれた机は振動し、そこに乗っていたグラスが倒れる。中の水がじわりと溢れ出た。
自分が主役のSS、タイトルにも自分の名が刻まれている。それなのに、扱いは空気以下ではないか。
美空は短髪で隠れることのない額に血の竜脈を浮き立たせ、再度、絶叫した。
まさに狂人だった。しかし、彼女は戦っているのだ。
「存在していないかのように見なされていることで存在している存在なんて、私は認めない!」
言い終わってから、台詞のややこしさに頭を悩ませる。間違ってた気もする。
いいや、気にしない。間違ってたとしても、すべて世間様が悪いのだ。

美空は既に犯罪者の仲間だった。ウイルスを意図的に感染させたのだから。
しかし、今回は更に恐ろしい暴挙に出ることにした。

「ネギまほラジオ…私の味方はアナタだけ…」
そう寂しげに言い、天才Cの作り上げた"ラジオ乗っとりマシン"を愛しそうに撫でた。

==========【ラジオ放送】==========
ガーガーピー……みんな…聴いてる?私のこと、聴こえてる?
…番組の途中ですが、全学園同時特別生中継を行います。
私は全世界の空気を動かせる唯一の人間、カスガ・M…ミソーラ。通称「M」です。
みんなは、この『ネギまほラジオ/ゆえパル分析隊』を楽しみにしてるよね…
でも、それを楽しく聴いていられるのも昨日まで…
みんなは覚えてないよね?
村上夏美って娘がさ、昨日、消えちゃったんだよ。誰が消したと思う?
えへへ…私。空気を軽く見ると、酷い目に遭うよ…

この番組で、空気認定された娘は、大変なことになるよ…消えちゃうからさw
あの、村上夏美みたいにwww

だがMという私は実在する!
==========【特別生中継終了】==========

【つづく】

美空ウイルス.exe【ver:7.1】---------------------------------------------------------------

ここは何処?
暖かくて寒い…変な気分。脳裏に焼き付いた、ちづ姉の必死な顔。
あれから、何が起きたんだろう…。私、どうしちゃったんだろう。
霞の中にいるみたい。何もかもが揺らいでいて、これと定まっていない世界。私、誰だっけ?
握ったり開いたりして手の感触を確かめる。掌を見つめると、透き通っていた。

空気になるって、こういうことなんだ…。
私は生きてるのかな?
皆はどうしてるんだろう?

村上夏美という自分の存在は、どうなってしまったんだろう?

「気付いたカ?」
だっ、誰?
「名乗るつもりはないネ。しかし、今の村上さんを認識できる存在のひとつ、とでも紹介しておくヨ」
私は、生きてるの?
「死んではないネ。概念的には生きていると言えるヨ」
あなたは、どうやって私に話し掛けてるの?
「それは言えないヨ」
じゃ、じゃあ…私は元に戻れるの?
「もうすぐ戻れるはずネ。そうプログラムしたネ」
ぷろぐらむ?
「なっ…なんでもないヨ」

それを最後に、その声は聞こえなくなった。誰だったんだろう…。でも、私、戻れるんだ。
待っててね、ちづ姉…。もうすぐ、帰るから。

【つづく】

美空ウイルス.exe【ver:8.1】---------------------------------------------------------------

ラジオを聴きながら、美空は小包がスタジオに届いたと確認して、ついに笑いを堪えきれなくなった。
「空気!空気!あいつも空気〜!」
部屋で孤独に、独り空気祭りを開催中だったが、急に虚しさに気付いてしまった。
「考えてみれば、『シスターM』って自ら本名隠してるじゃん…」
とんでもない計算違いだった。ラジオに送りつけたにも関わらず、誰にも"美空"を意識させられていないのだから。
「ちっくしょー!超の奴に騙されたァー!」
この小包をスタジオに送りつければ良いネ!これで美空も有名人ヨ!…とか妙な助言を信じた自分も自分だが。
「そういえば、あの小包の中身って何だったのかな?まぁいいや、興味ねッス」

とりあえず、空気の新入りが出来ることは嬉しい。美空は孤独も忘れて、独り空気祭りを再開した。

美空ウイルス.exe【ver:8.2】

相坂さよと朝倉和美は、互いに目を見合わせ、部屋に届いたばかりの眼前の妖しげな小包について議論していた。
「絶対に開けない方が良いと思います」
「謎のシスターMが電波ジャックしたのは聴いたけど、まさか番組にまで手を出すとは…」
朝倉は顎を触って、考えを巡らせた。
電波ジャックの内容によれば、番組で空気認定されたキャラは存在が消えてしまうらしい。
しかし、そんなことが信じられるはずもない。
「そういえば、確か、今朝の出席確認で那波さんが変なこと言ってたよね?」
何かに気付いた朝倉は、さよに尋ねた。
「えーと、"村上夏美って人がクラスにいるはずだ"って」
「そう、それだよ!それから、ネギ先生が出席簿の印刷ミスに気付いて…」
「信じられませんが、電波ジャックの内容とは、言い分が一致してますね」
二人は考えた。そして、ひとつの仮定をしてみることにした。シスターMの発言が正しいとした場合、何が起きるか。
「大変ですよ、朝倉さん!私、消えちゃいます!」
「大丈夫だって。さよちゃん、まだ消えてないから」
そして、やはり二人の視線は小包に注がれる。うん。絶対に開けない方が良い。間違いない。
二人は顔を合わせて頷いた。
「これを開けなければ安心ですよね?」
不安そうに訊く友人を慰めようと、朝倉は気分転換を促した。
「さよちゃん、心配しすぎだよ。ところでさぁ。明日の放課後にでも、彼処に行かない?ほら、西の花畑!」
………。

返事がない。部屋を突然の静寂が支配した。
まさか、そんな、まさか。朝倉は浮かび上がる推測を振り払おうと努力した。
「さよちゃん?ねぇ…さよちゃん?…返事してよ」

Action:Virus_Misora【相坂さよ:空気設定を完了】

美空ウイルス.exe【ver:8.3】---------------------------------------------------------------

ラジオを聴き終えた千雨は、再びPCの画面と"にらめっこ"を続けていた。
「なんだかなぁ…」
そう呟いて、解読できないウイルスのコードを睨んだ。
謎のシスターMとかいう、このプログラムを作ったらしい馬鹿の電波ジャック放送はもちろん聴いた。
"空気"という単語の意味も判明した。
ところで、どうやって人の存在を消すというのか?そもそも、相坂さよって誰?

「ああっ!そうか!相坂さよって人物の存在は、もう消えてるのか!」
ありえねー。千雨は冷ややかに自身へのツッコミを済ませた。
「ちうー?」
今の声に、眠っていたザジが起きてしまったみたいだ。
千雨はザジをなだめ、PCの画面にお別れを告げることにした。
「ウイルスも訳わかんねぇし、とりあえず今日は寝るか」
千雨はザジの敷いてくれた布団に潜り込んだ。
それに続いて、ザジも布団に潜り込む。ところが、お布団は一人分しかない。
はてな?千雨は背中越しに、飢えた野獣の鋭い視線と涎を感じとった。今夜は長そうだ。


千雨とザジがお楽しみの間、PCは勝手に起動した。
彼女たちが気付かぬ間に、ウイルスは新たなる二行をログに書き込んだ。

Action:Virus_Misora【村上夏美:空気設定を解除】
Action:Virus_Misora【相坂さよ:空気設定を完了】

【つづく】

美空ウイルス.exe【ver:9.1】---------------------------------------------------------------

日が昇る。新しい何かが始まるのには、朝陽がまず必要なのだ。今日の始まり。それは、昨日の終わり。
「ふぁあ〜」
夏美は目覚めた。見慣れた天井が視界を塞ぐ。
変な夢だったなぁ…そんなことを思いながら、目覚まし時計を傾けた。
「6時…起きなくちゃ」
素足が触れた木張りの床は冷たい。ベッド脇に脱いだままになっているはずのスリッパを足で探る。
そして、いつまでも足に触れないスリッパに苛立って、足元を直視してみた。
「あれ?スリッパがないや」
不思議がりながらも、夏美は自分の部屋を出た。いいんちょとちづ姉の部屋の扉はまだ閉まっている。
まだ眠っているみたいだ。
階段を降り、スリッパの行方を探す。ぴたぴたとした足音が、静かな寮部屋に聞こえた。
「スリッパ〜、スリッパはどこに脱いだっけ?」
瞬間、夏美は納得のいかない光景を目にした。スリッパは玄関にあったのだ。
帰って来る主人を迎えようとするかのように、その口はドアを向いていた。
夏美には、まるで自分が寝床に直接帰って来たみたいに思えた。
玄関から帰って来て、スリッパを履き忘れて、夜まで気付かないはずがない。

「夏美さん?」

いいんちょの声が、後ろの方から響いた。何故だろう。どこか懐かしい感じがする。
振り返ると、階段の途中にいいんちょが立っていた。
階段を降りる途中で夏美に気付き、硬直してしまったように、眼を見開いて、驚きの表情を浮かべている。
「夏美さん…そんな、わたくし、なんてことを…」
あやかは眼を瞑り、頭痛を抱えたように俯いた。
「いいんちょ、おはよう。頭痛いの?」
その言葉を聞き、あやかは突然泣き出す。
「ごめんなさい、夏美さん、ごめんなさい」
夏美には意味がわからなかった。でも、あやかを抱きしめることはできた。

【つづく】

美空ウイルス.exe【ver:10.1】---------------------------------------------------------------

いいんちょの寮部屋は、今や日常から切り放されていた。
二人はソファに並んで腰掛け、昨日の事柄に関する言葉を交す。
そこには早朝の清々しさはなく、ただ謎めいた事実への恐怖が漂っていた。
あやかも、夏美も震えていた。

「私は、昨日の私は、どうしてしまっていたのでしょう…」
あやかには当然だろうが、彼女の語るその話は夏美にも到底理解できないものだった。
「つまり、昨日は、私がいないことになってたの?」
あやかはゆっくりと頷いた。
あやかの表情が伴って、やっと真剣になれる話だ。それほどに、現実性に欠けている。
人の存在が記憶から抜け落ちる…そんなことが、有り得るのか?
「ネギ先生も、いいえ、クラス全員、まるで夏美さんのことを全く知らないみたいに振る舞っていました…。
でも、本当に覚えてなかったのです。嘘みたいな話で、私にもよく…」
そこまで語って、あやかは言葉を止めた。思い出したのだ。何よりも重要な、あの事実を。
「千鶴さん!」
「ちづ姉がどうかしたの?」
「千鶴さんだけは、夏美さんのことを忘れてませんでした!」
「えっ、ちづ姉が?」
そこまで聞いて、夏美は自分の記憶に微かに残る夢の断片を拾いあげた。ちづ姉の、必死な顔。
それは夕陽の刻を舞台にした、夢の一場面。
「そんな…まさか、ね?そんなはず、ないよ。夢で見たことが現実だったなんて…」
夏美はよたよたと言葉を続ける。
「そんなこと、有り得ないよ。それじゃあ、私は昨日、何処にいたことになるの?」
玄関のスリッパ、カレンダーの日付、あやかの嘘のような話…そして、あの夢。
「ちづ姉を起こさなきゃ…いいんちょも学校に遅れちゃうよ?」
そう言いながら、しかし、その言葉の無力さを夏美は十分に分かっていた。

美空ウイルス.exe【ver:10.2】---------------------------------------------------------------

千鶴の部屋のドアを軽くノックする。返事はない。
「ちづ姉、入るね」
そう断って、夏美はドアを開けた。いつもと同じ、部屋の光景。
ベッドで寝息を立てる千鶴は穏やかな顔をしている。しかし、千鶴の瞼はわずかに赤く腫れていた。
「ちづ姉…眠れなかったんだ」
あやかが心配そうに千鶴の顔を覗き込む。
「やっと眠れたんですわね」
「そうだね」
「今は、そっと寝かせてあげましょう。今日は、いつもの朝とは違うようですから」
あやかが夏美の肩にそっと手を置くと、夏美は首を縦に振って答えた。

昨夜は泣き明かしたのだろう。それを思うと、夏美は胸を締め付けられる思いがした。
でも、夏美が悪いのではない。非日常の出来事が三人を翻弄したに過ぎない。

部屋を出ようとした夏美とあやかは、机に立て掛けられた写真に目を留めた。
修学旅行の時の写真が、京都で買ってきた写真立てに収まっている。
写真の中で、班のメンバーはそれぞれが目一杯に笑っていた。夏美も、千鶴も、あやかも笑っていた。

「…夏美…ちゃん?」
声の方を見ると、ベッドで千鶴が上半身を起こしていた。
夏美は言葉に詰まった。何から告げていいか分からない。
「ちづ姉…」
それしか唇は動かない。
千鶴は困惑した表情のまま目を閉じると、ホッとしたように微笑み、瞼を上げた。
「おはよう。今何時かしら?早く支度をしないと、学校に遅刻してしまうわ」
昨日と思われている時間は、夢の中の出来事だったのだ。悪夢を見ていただけなのだ。
千鶴はそう自らに言い聞かせたのだと察知して、あやかは苦しく残酷な台詞を聞かせる決意をした。
「千鶴さん」
「なにかしら」
「夏美さんに、おかえりなさい、と」
咲いたばかりの希望が、一瞬で枯れてしまう様を夏美は見た。

美空ウイルス.exe【ver:10.3】---------------------------------------------------------------

予鈴が校内に響きわたり、学校が動き出したことを知らせている。
開いたままの教室の出入り口から長谷川千雨が現れるなり、池の縁に吸い付く泡のように龍宮真名が近付いた。
「例の件は解決したか?」
龍宮の妙に堅苦しい言い方に吹き出しそうになりながら、千雨は首を左右に振った。
「登校早々、そんな話かよ…。別のPCを貸しただろ?」
「確かにWinnyttaを使ってダウンロードする分には不自由ない。むしろ、故障したPCよりも快適なくらいだ」
「なら良いだろがっ」
「いや、そんなことはない。故障したPCにダウンロードしてあったファイルが見れないじゃないか」
千雨は言い返す気も失せかけた。しかし、言わねば更に厄介なクレームが待っているに違いない。
「ウイルスの原因かもしれないファイルを見たいのか?」
龍宮の顔つきが一瞬で変わった。
「つまり、もう見れないということか?」
「そうだよっ」
龍宮は灰になった。眼は生と死の境をうろつき、頬は涙に濡れていた。
開いたままの口は閉じず、息絶えてしまったようだ。

絶望する龍宮を全力で無視して、千雨は自分の席に座った。
あぁ、腰が痛い。座ってしまったら最後、しばらくは立ち上がれそうにない。
千雨がザジを睨むと、ザジは千雨にしか読み取れない全力の笑顔を返した。

ザジ:(=´∀`)b…昨日のちうは可愛かったよ

千雨:Σ(OДO;)…バッ、皆がいる場所で言うんじゃねぇ!

ザジ:(=´∀`)b…ザジの愛言葉はちうにしか聞こえないから大丈夫

美空ウイルス.exe【ver:10.4】---------------------------------------------------------------

「つまり、夏美ちゃんは幻のような場所に閉じ込められていたというの?」
千鶴は訊いた。部屋の中央に置かれたテーブルを囲み、三人は真剣に話し合っていた。
あやかと千鶴は寝間着のままで、夏美は制服だった。
「私にもよく分からないんだけど、真っ白な霧の中で浮いてたの。
自分の体も透けてて、でも、身体の感覚ははっきりしてた」
「それで聞こえた声…その声は、誰の声だったのですか?」
あやかの質問に、夏美は表情を曇らせた。
「それが、わからないんだ。何処かで聞いた声なんだけど…」

ここまで話して、今度は夏美が質問する番になった。
「いいんちょは、私のことをどう忘れてたの?」
あやかは頭の触れられたくない部分を素手で触られたような気がした。この嫌悪感はなんだろう…。
「全く知らない人…そんな忘れ方でしたわ」
あやかの気持ちを汲み取ってか、千鶴はあやかの手を両手で包む。
「自分を責める必要はないわ…ねぇ、あやか。あなたは悪くない。そうでしょ?」
千鶴の優しさにあやかは感謝した。

時間は刻々と過ぎていく。忘れられた時計の針は、ぴったし朝の九時を指していた。

学校の方からチャイムの音がする。ホームルームが始まる。

美空ウイルス.exe【ver:10.5】---------------------------------------------------------------

教室にネギ先生が入ってきて、教卓の前に立つ。
「皆さん、おはようございます」
『おはよー、ネギくん!』『おはよう、ネギ坊主』『おはようネ』
それぞれが元気に挨拶を返す。
「あ…龍宮さん?ホームルームを始めるので、席について下さいね」
一瞬、笑いが沸いたが、死にかけた龍宮の表情を知って、静かになった。
「それじゃあ、出席をとりますね」
ネギ先生は笑顔だ。

生徒の名前が次々と呼ばれていく中、朝倉和美は堪えていた。昨夜、ラジオ放送の後に親友は消えた。
そして、今の自分の立場は、自分も参加していた昨日の出席確認における那波千鶴と同じだ。
「那波さん…那波さん?…あれ、那波さんはいませんか?」
那波千鶴が欠席?いや、昨日のあれを思えば不思議じゃない。
私がさよちゃんの事を訴えたところで、昨日と同じ結果が待っているだけだ。
そもそも、さよちゃんは幽霊。認識できる人は限られてる。どうすればいい?
「宮崎さん」
「は…はぃ…」

「いいんちょさ…あれ?すいません、間違えました。村上さん」

返事はない。教室はざわめいた。しかし、教室に溢れたのは、普通のざわめきではなかった。
自分の中に謎を見い出し、それに驚く。そういった、ざわめき。
ネギは名簿を見直し、思い出す。訂正で消された30番。
それ以降の、まるで掛け違えたボタンのように上書きされた出席番号。ネギは混乱のうめき声を発した。
「えぅぇ?…これは、どういう…」

「先生、話があります」
椅子から立ち上がった朝倉に皆の注目が集まる。教室は真空のような無音になった。
「あ…朝倉さん、これは一体…何が起きたんですか!?」
朝倉は震える唇を強引に動かし、クラス全員に聞こえる声で言った。
「先生は、シスターMを知っていますか?」

【つづく】

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最終更新:2007年07月29日 02:34