何度でも夢に見る。
どうしようもなくフラッシュバックする。
街が燃えている。
東京が燃えている。
何が起きているのかさっぱり分からない。聞こえてくる断片的なニュースなどはどれも混乱している。
けれど、そんなことより。
「は……繁菜(ハンナ)っ! 陽羽利(ヒバリ)っ!!」
目の前で大切な二人が倒れている。どちらもぴくりとも動かない。
ガレキの下から這い出そうともがく。自分の頭から血が流れてくるのが分かる。
手足の骨も折れているのかもしれない。
構うものか、そんなことより。
「だれか……誰か助けてくれッ! ふたりを、妻と娘を、助けてくれッ!」
動けないままに、喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。
けれど、助けなど来るはずがない。似たような光景が見渡す限り広がっているのだ。
そしてもしも助けが来ても、意味なんてないことは分かっている。
二人が受けた損傷は、輪郭が変わるほどのそれは、素人目に見ても、もう……。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
東京が燃えている。
世界が燃えている。
何故こんなことになったのか。
いったい誰のせいなのか。
自分は何をどうしていれば良かったというのか。
訳も分からないままに、がむしゃらに右腕を伸ばす。
指先が何かに触れる。
はっとしてそちらを見る。
倒壊した建物のどこから崩れてきたものか。
見たこともない、懐中時計が。
ちく、たく、ちく、たく。妙に大きな針音を響かせていて。
いつも、夢の終わりは、その映像が最後。
柄森司(つかもり・つかさ)は、毎日泣きながら朝の目覚めを迎える。
◆◆
大都市東京。
多彩な人間を抱え込んでいるこの都市は、ある意味で自由な都市でもある。
いい歳をした男性が、平日の昼間からラフな格好で歩いていても、「休日がカレンダー通りではない職種なのかな」程度で済む。
そして、そんな人々を対象とした商売も、営まれている。
呑気で平和な昼下がり。
大きな公園の片隅で、虚空に向けて何やら喋っている、若い男性が一人。
そしてそれを遠くから見守る、背格好としては中学生程度の、フードを目深に被った小柄な人影があった。
「……それは大変だったね。それで、君と戦ったその相手のことなんだけども……」
ひょろりと背の高い男性は、子供から見て咄嗟に「お兄さん」と呼ぶか「おじさん」と呼ぶか迷うくらいの歳格好。
ヒマな大学生のようにも、たまたま休みの取れた勤め人のようにも見える。
そんな彼が話しかけている先は、赤い三角コーンと縞々の縄で区切られた、立ち入り禁止の表示のあるその向こう。
公園の片隅、何故か焦げ付いたような痕跡を残す場所だった。
「そっか、なるほどね。つまり貴方たちは……」
ふわあああ。
そんな様子を、少し離れたベンチで見守る小柄な人物は、大きくあくびをする。
下半身はジーンズ、上半身はフード付きのパーカー。顔はフードに隠れて見えない。
のんびりしているように見えて、常に男性の姿を視界に収め、警戒している。
やがて背の高い男性は虚空に向かって礼を言うと、パーカー姿の人物の所に歩いてくる。
「やあ、待たせたね。有意義な話を聞けたよ」
「やっぱり『聖杯戦争』の参加者かの?」
「ああ。夜中にここで戦っていたらしい」
パーカーの人物は、少女のような、しかしどこか皺枯れた老婆のような、不思議な声で尋ねた。
男性にとっては慣れっこになっているようだ。
彼は何かに気付いて少し周囲を見回すと、あるものを見つけて指さした。
「ちょうどキッチンカ―が出ているようだね。シコちゃん、クレープは知っているかな?」
「『くれぇぷ』? 知らん。
なんじゃ、この香りからすると、甘味の類かや?!」
「ちょうどいい、買ってあげよう。僕も小腹が空いたしね」
親と子と言うには近すぎ、兄と妹というには離れすぎている二人は、クレープ屋の車上販売の所に向かって。
ああでもない、こうでもない、と散々悩んで品を選んで購入すると、二人揃って元のベンチに戻って腰かける。
そしてそれぞれかぶりつく。
「……なんじゃこれ、美味ッ! 儂(わし)、こんなの初めてじゃ!
ケーキとも違う、なんじゃこれ!? アツアツの生地に、冷たいバニラアイスが……!」
「だいぶ分かって来たねぇ、シコちゃんも。まああんだけ色々食べてれば覚えもするか」
「なんちゅう時代じゃ。なんちゅう贅沢な時代じゃ。
儂はこんなに幸せでいいのか? こんな役得があってええのか?!」
「あっ、シコちゃん、こぼれてる」
大げさに喜びながら食べる少女に、男性がそっと優しく指摘する。
少女は反射的に口の周りに手を当てる。
男性はかぶりをふる。
「違う、眼だよ。右目がこぼれちゃってる」
「おっと」
男性の指摘の通り、少女の右の頬のあたりには……いつの間に抜け落ちたものやら。
少女の眼球が、ぶらぶらとぶら下がっていた。太い視神経だけで眼窩と繋がっている状態である。
周囲の一般人に気付かれていないことを確認しつつ、少女は無造作に眼球を押し込む。
そして照れ笑いを浮かべる。顔のあちこちに絆創膏を貼った、おかっぱ頭の少女。
美少女ではあるが……妙に顔色は悪い。
「すまんのぉ、ツカサ。なかなか自分では気づかなくての」
「せっかく実体化して食べ物も食べれるんだから、気をつけなきゃね」
ツカサ、と呼ばれた男性は、シコちゃん、と呼ぶ少女に対してどこまでも優しい。
平和な東京の平日の昼下がり。
戦争の気配は、遥かに遠い。
◆◆
柄森司が燃える東京の中で掴んだ、懐中時計。
それが与えてくれたものは3つ。
あの光景が嘘だったかのような、元通りの平和な東京での日常。
おおむね話の通じるサーヴァント。
そして、死者の声を聴く異能。
彼のサーヴァントの推測によると、司はもともと、死霊魔術の方向の才能を秘めていたという。
それが、この聖杯戦争という環境で、その一芸に特化する形で開花したものであるらしい。
死者の声と言っても実際にそこに霊魂が居る訳ではなく、残留思念のようなモノであるようだが。
いささか狂乱する者が多いが、時間をかけて話を聞けば、有効な情報を引き出すことが出来た。
むしろ魔術師としての才能ではなく、柄森司という個人の温厚な性格が幸いしているようだ。
さて、そして、この東京では既に、聖杯戦争は始まっているようで……
既に戦い破れて脱落する者も出てきている。
柄森司とそのサーヴァントは、その脱落者にこそ、用がある。
いったいどんな相手と遭遇したのか。
どういう経緯で戦闘となったのか。
どんな方法で殺され、死者の声となったのか。
司なら、それらを丁寧に聞き出すことができる。
情報さえあれば、その危険な主従と遭遇する可能性を減らすことができる。
仮に出会ってしまっても生き延びられる確率が上がる。
こうしてサーヴァントを護衛として従えつつ、平日の昼間から散歩しているのは、この主従の必死の生き残り策でもあった。
「でもごめんね、シコちゃん」
「なんじゃ、藪から棒に」
「シコちゃんの『任務』のためには、こんな消極策、困るよね」
「んー、気にする必要はないぞ。儂の方の事情はそこまで急ぐものでもないゆえ」
クレープを食べ終え、自販機で買った缶ジュースを飲みながら、ふたりは穏やかに会話を交わす。
「どうせ長丁場になるじゃろうしな。儂としても、早々に他の連中に襲われる方が困る」
「そう言ってくれると助かるよ。でも、見つからないね、それっぽい『六人』って」
「まあのぉ。儂もほんとは文句を言いたいところじゃ。せめて名前や顔くらい教えて貰わんと……」
当面の聖杯戦争を生き抜くこととは別に、シコちゃんと呼ばれたサーヴァントにはやるべきことがあった。
英霊の座に刻まれるよりも前から抱えていた『任務』。
彼女自身の『存在意義』。
「まったく、どこの馬鹿じゃ、『六人』も『黄泉返らせ』おったのは。
まあそのおかげで、めったにお呼びのかからない儂みたいな英霊に、出番が回ってきたんじゃがの」
少女がニッ、と笑うと、口元に貼られていた絆創膏が一枚、はらりと落ちる。
絆創膏で隠されていた下には、皮膚が脱落した跡。
しかしそこには血の色はなく、じんわりと薄灰色の液体が滲むのみ。
ふとした拍子で零れ落ちる眼球といい、血色の悪さといい、身体のあちこちにある皮膚の脱落といい。
まるでゾンビのような外見をした少女。
真名を、黄泉醜女(ヨモツシコメ)と言う。
日本の神話の冒頭も冒頭。イザナギとイザナミの、死の国にまつわるエピソードに登場する、死の国の住民である。
死の国から逃げ出そうとするイザナギを、猛然と追いかけて捕まえようとする黄泉醜女。
イザナギは二回に渡って身に着けていた装身具を投げて食べ物を作り出し。
黄泉醜女がそれを食べている間に、黄泉平坂を駆け抜け、この世へと戻ってきたという。
日本の神話に限らず、古今東西、どんな世界の冥界や死者の国にも共通の基本
ルールがある。
それは、「一度訪れたものを決して逃がさない」という理(
ルール)。
並大抵のことでは覆すことはできず、万が一成し遂げた者があればそれは神話にも残る英雄や神の足跡ともなる。
黄泉醜女とは、日本神話において、その万国共通の理(
ルール)が、ヒトに近い形で具現化した存在である。
ゆえに、彼女には許すことができない。
聖杯の奇跡であろうとも何だろうとも、死者の蘇生を看過することはできない。
ましてや、それが六人も居るのなら!
速やかに「あるべき姿に返す」――つまり、「蘇生した者たちを再び殺す」。
それが、シコちゃんこと黄泉醜女が抱える、聖杯戦争そのものとは別立てのミッションだった。
◆◆
「……なので、ツカサよ」
「なんだい?」
「頼むから、『変なこと』は考えてくれるなよ。
儂はお主を気に入っておる。くれぇぷやらアイスクリームやらを喰わせてくれるからだけではない。
儂は本当にマスターに恵まれたと思っておるんじゃ。だから」
「…………」
黄泉醜女の真剣な眼差しに、柄森司はしばし黙り込む。
譲れぬ使命を抱えた相棒の懸念。
その内容を察しつつ、咄嗟には言葉が出せない。
死者の声を聴ける才能に目覚めた柄森司だったが、彼が一番聴きたい二人の声だけは聴くことができずにいる。
この新たな、聖杯戦争のために造られたと推定される東京でも、彼の妻と娘は黄泉返ることはなかった。
あの全貌も掴めぬ東京壊滅は、起きてもいないことになってはいたが。
妻と娘の二人は、「大きな事故」に巻き込まれて、死んだ扱いになっていた。
ご丁寧に墓と位牌まで用意されていた。
幸いにして、柄森司が勤めていた大企業は、今どきホワイト極まる従業員に親身な職場だった。
大切な家族を二人も亡くした悲劇の彼に、心の傷のことも考えて、長期の休職を許可してくれていた。
だからこうして平日の昼間から歩き回ることが出来ている。
聖杯戦争に、より正確に言えば、身の安全を確保することに全力を投じることも出来ている。
ただ。
二人は死んだ扱いになっているにも関わらず。
墓でも、位牌の前でも、あるいは燃える東京で絶叫を上げた、あの位置に足を運んでも。
彼は大事な二人の声を聴くことが出来ていない。
黄泉醜女の推測によれば、今いるこの東京は、聖杯戦争のために造られた世界であるらしい。
彼が二人を見送ったのとは、細部までそっくりでありながら、違う世界。
そうであれば、ここにいる限り、あの二人の声を聴くことはできない。
せっかく目覚めた異能であるというのに、とんでもない生殺しだった。
今いる場所と、二人が死んだ場所が違うのならば、今ここで死んでもあの二人の所には行けない可能性がある。
柄森司は、なんとしても生き延びて、元の東京に帰らねばならなかった。
たとえそこに何も残っていないのだとしても、帰りたかった。
そして……聖杯戦争を生き抜き、最後の一人を目指すのであれば。
必然として、視野に入ってくる誘惑がある。
万能の願望機、聖杯。
最後の一人になるということは、それを手にする権利を入手するということでもある。
「おそらく、聖杯を手に入れれば、お主の会いたかった二人を黄泉返らせることも可能じゃろう。
じゃが……後生だから、それだけは願わないでおくれ。
もし、それをお主が願うのじゃとしたら」
「もし、僕がそれを聖杯に願ったとしたら?」
「儂は……儂デハ、居ラレナクナル。
黄泉返リシ者ヲ、儂ガ、即座ニ、再ビ、殺ス」
赤く輝く目で。
地獄の悪鬼のような表情で。
少女は、中身を飲み終えた金属の缶を、無造作に噛み千切り、咀嚼した。
内なる狂暴性を鎮めるかのような、暴食だった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
黄泉醜女(ヨモツシコメ)@古事記、日本書紀
【属性】
秩序・中庸/狂
【ステータス】
筋力A+ 耐久C 敏捷C (B) 魔力C 幸運D 宝具B
【クラススキル】
無情の追跡者:B
バーサーカーのクラススキル「狂化」を置き換えて配置されたスキル。
与えられた任務の遂行の際には、理性ではなく人間性を喪失して代わりに驚異的な暴力を得る。
任務遂行状態となった場合、人間的な感情や容赦は一切失われ、機械的に任務遂行に最善の策を模索するようになる。
合わせて、この状態ではすべてのパラメーターが底上げされ、精神攻撃全般への強い耐性を得る。
今回の召喚においては、「はじまりの六人」の「再殺」が任務。
「はじまりの六人」については、名前や能力など一切の情報を与えられていない。
ただ六人いる、ということは把握しており、また仮に自分と関係のない所で脱落したとしても、その事実を把握できる。
なお、標的を直接目視すれば、直感的にそうであると理解できる。
さらに、仮に聖杯に死者の蘇生を祈る参加者が出て、その場に黄泉醜女が居合わせた場合。
奇跡を使って復活したばかりの死者を、黄泉醜女は自動的に無情に再殺することだろう。
これに対する説得などの試みは自動的に失敗する。
【保有スキル】
怪力:A+
魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性。
黄泉醜女の「醜」は、現代語における「みにくい」という意味のみならず、「強い」という意味もあると言う。
神話では直接的に描写されていないが、始祖神すら逃げの一手を選ぶしかないほどの存在。
瞬足:B
足の速さ。
基本的に黄泉醜女の敏捷のステータスはC相当だが、移動力の計算と移動速度に関する判定のみ、敏捷:Bとして扱う。
なお、何らかの手段でステータスを見た場合、(B)の表記はされないため、かえって意表を突かれる可能性がある。
神性:A
神話の時代に、日本神話の始祖神を捕まえようとした存在。
条件次第では真正の神霊にすら干渉可能な域にある。
暴食の顎(あぎと):B
底なしの胃袋と疲れを知らぬ顎。
彼女はどこまでも食事を続けることができる。
物理的・魔力的な容量を無視して食事、噛みつき攻撃を行える。
また、何らかの形で彼女を「満足させよう」「限界を超える量の何かを注ぎ込もう」という試みに対して強い耐性を持つ。
逃がさずの番人:B
敵の逃亡の試みに際し、それを阻止するスキル。
一度戦闘が始まった後からの、敵の逃亡判定に対して強いマイナスの補正を与える。
何らかのスキルや宝具(仕切り直しなど)に対しても、発動を阻止できる可能性を持つ。
なお、自動発動するスキルではないため、意図的に見逃すことは可能。
【宝具】
『八人日狭女 (はちにんひさめ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
記紀において、黄泉醜女は1人だったとも8人だったとも言われている。
それはいずれも真実であり、黄泉醜女は最大8人にまで分身が出来る。
いずれの黄泉醜女もオリジナルであり、たとえ何体倒されようとも1体でも残ればそれが本体だったことになる。
その最後に残った1人からさらに分身を増やしていくことも可能。
なお、容姿のベースはいずれの分身も変わらないが、個体ごとにゾンビとして外見上損傷を受けている部位が変わる。
非常に強力な能力であるが、分身を増やす行為に魔力を消費し、維持し続けるにも魔力を消費する。
現時点ではマスターの魔力量の関係で、事実上、4体出すのが限界であり、それも長い時間の維持は困難。
8人全員出しての運用となると、事実上令呪を使うしかない上で時間制限があるという、最後の切り札となってしまう。
『大喰らい (ビッグイーター)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
あらゆるものを噛み砕くその口は、非常に効率のいい魔力変換機構でもあり、魔力吸収機構でもある。
黄泉醜女が何らかの魔力を帯びたものを噛みつき攻撃にて破壊した場合、それは即座に魔力に転換されて吸収される。
これらの魔力は前述した宝具『八人日狭女』の維持や発動に使うこともできる。
記紀に記された「食べ物を生やすイザナギ」「それを食べる黄泉醜女」の構図は、互いに高度な頭脳戦でもあったのだ。
結果的にはイザナギの逃亡が成った訳だが、あえて敵を強化してまで時間を稼いたその胆力は恐ろしいものがある。
及ばなかったとはいえ、そこまで追い詰めた黄泉醜女の強さについても察するに余りある。
【weapon】
鋭い歯と爪。
戦闘においては噛みつきを主な武器とする。
鉄板すらも余裕で嚙み千切り、コンクリートすらも余裕で咀嚼して嚥下する。
派手さはなく、攻撃範囲も限られるが、通常攻撃としては数多の英霊たちの中でもトップクラスの破壊力を誇る。
生半可な防御は防御ごと真正面から噛み砕く、暴食の顎。
もちろん手足を使った攻撃もその怪力に見合うだけの威力を持つ。
【人物背景】
日本の神話の最も序盤。
イザナギとイザナミの国造りの後、死んだイザナミを追ってイザナギが黄泉の国に降りた際。
逃げるイザナギを捕えるべく追いかけてきた鬼女こそが、黄泉醜女である。
記紀の中だけでも、予母都志許売、泉津醜女、泉津日狭女など複数の表記ブレが知られている。
(むしろ「黄泉醜女」表記は後世に定着したものである)
また一人とも八人とも言われるが、こちらも誤記によるものである可能性が残る。
古今東西、いかなる神話でも、冥界や死の国の類は「一度来たものを返さない」という理(
ルール)を備えているのだが。
黄泉醜女は、古代日本においてその理(
ルール)がヒトに近い姿を取って具現化した存在と言える。
神霊にも近い存在であり、滅多なことでは英霊として召喚されるような存在ではない。
しかし今回、二度目の聖杯戦争のために生死の理が大きく損なわれたことを受けて、連動して召喚されるに至った。
間違いなく一度は死んだはずの「はじまりの六人」の「黄泉返り」。
これは、黄泉醜女が飛び出してくるに足るだけの、世界の基本
ルールを損ねる行為だった。
この六名を「確かにあるべき所に返す」、つまり「もう一度殺す」。それが黄泉醜女の今回のミッションである。
【外見・性格】
ゾンビ少女。
別に悪臭などはしないが、血色が悪く、あちこち皮膚が剥けて肉が出ている。
眼球もしばしば零れ落ちるが、本人が雑に押し戻している。
おかっぱ頭の美少女で、本来の服装は裾の短い着物姿。足元は本来は素足。
ただ、マスターが与えてくれたフード付きのパーカーとジーンズ、スニーカーという現代的な服装を好んでいる。
顔などの目立つ部位の皮膚脱落に対しては、おおぶりな絆創膏を貼ることもある。
普段はフードを被って両手をポケットに突っ込んでおり、その状態だとゾンビと気づくのは難しい。
霊体化も可能ではあるのだが、本人の趣味嗜好として実体化し続けていることを好む。
通常時はややしわがれた声で老婆のような喋り方をする。
人間の食事に興味津々で食いしん坊。
ただそれ以外の部分では意外と真っ当な人格を有している。
【身長・体重】
153cm/45kg
【聖杯への願い】
特になし。
素直に願いを言うならば「もっと色々なものを食べてみたい」だが、常識的に弁えてもいる。
ただ、聖杯よりも大事なこととして、「はじまりの六人」を再び殺す任務を置いている。
またこの聖杯戦争において新たに死者蘇生が成されるようであれば、可能であればその蘇生した人物を再び殺さねばならない。
なお、特筆すべき事項として、彼らを蘇生させた
神寂祓葉そのものは、別に粛清の対象とはしていない。
【マスターへの態度】
協力的であるし、美味しいものを食べさせてくれるので好感を抱いている。
しかし一方で、彼が妻と娘の蘇生を聖杯に願う可能性に対して警戒もしている。
警告を受けて蘇生を諦めてくれれば良いのだが……。
【名前】
柄森 司/Tsukamori Tsukasa
【性別】
男
【年齢】
25
【属性】
中立・善
【外見・性格】
ひょろりと背の高い若者。無関係な子供が、咄嗟にお兄さんと呼ぶべきかおじさんと呼ぶべきか迷うくらいの塩梅。
気弱な笑みを浮かべることが多く、誰もが一目見て「優しそうな男性」と直感する。
見た目通りに真っ当な人格者。温厚で常識人。
気づかいもできるが、怒ることは苦手。
学生時代にはワンダーフォーゲル部に所属しており、実は外見の割には基礎体力も備えたアウトドア派でもある。
【身長・体重】
180cm/64kg
【魔術回路・特性】
質:D 量:B
特性:死霊魔術系への適性
素人から急に覚醒した割には、魔力量だけは実は相当に才能が高い。
【魔術・異能】
『死者の声を聴く』
特にこれといった師を持たない司が、本能的に獲得した死霊魔術の一種。事実上この一芸のみとなる。
死亡した人間の残留思念のようなものから情報収集ができる。
これらの思念は支離滅裂なことが多く、欲しい情報を得るためにはかなりじっくり時間をかける必要がある。
また、あくまで話を聞けるのは、『
神寂祓葉が作ったこの新世界の中で死んだ人物』の声のみ。
世界五秒前仮説の如く完璧に作られた世界であるが、創世以前の死者の声は聴くことができない。
つまり柄森司が一番聴きたい二人の声だけは、このままでは聴くことができない。
方法があるとしたらたったひとつ。この才能を維持したまま、元の世界へ帰還することだけである。
【備考・設定】
大手の真っ当な企業のサラリーマン。
実は第一次聖杯戦争で壊滅した東京の中で、目の前で妻と娘を失った。
その時点では聖杯戦争のことなど一切知らないし、この第二次聖杯戦争がその元凶によって開催されたことも知らない。
こちらの世界での役割においても、以前と同じ職場の同じ身分ということになっている。
ただし妻と娘は「大きな事故」に巻き込まれて死んだことになっている。
それを受けて、ホワイト極まる職場の理解と同情を得て、長期の休職に入っている。
ほとんど無職の暇人のような暮らし。
生まれて初めて得た長期休暇のような空白の時間帯。
なお、妻は柄森 繁菜(ハンナ)、享年24歳。娘は柄森 陽羽利(ヒバリ)、享年2歳4か月。
【聖杯への願い】
迷っている。
素直な願いとしては、妻と娘を取り返したい。
しかしそれをそのまま聖杯に願った場合、蘇った次の瞬間には黄泉醜女が再殺してしまうと理解している。
願いを「もう一度会いたい」程度に留めて、生死を覆したりはしない?
黄泉醜女をなんとか処分した上で復活を願う?
全てを諦める?
まだ心は定まっていない。
方針を決めきれないまま、基本的に黄泉醜女の任務以外のことについては、危険を回避し身を守る方向で進めている。
【サーヴァントへの態度】
好感の持てる相棒。
妻や娘と重ねて見ている自覚もあるが、それを抜きにしても信頼できる人格の持ち主。
彼女が抱える任務についても、無理のない範囲で手助けしたいなとも思っている。
だからこそ迷う。だからこそ運命を呪っている。
【備考】
聖杯戦争の脱落者の残留思念から、ある程度の情報を得ています。
特に好戦的な参加者に関する情報は得やすく、遭遇を回避する助けになるでしょう。
採用された場合、これらの情報を活かして本編開始まで戦闘を回避する方針で生き延びてきたことになります。
【備考その2】
妻と娘については、登場話時点ではこれ以上の設定はしません。
後続の書き手が回想などで自由に設定を広げてもらって結構です。
最終更新:2024年06月14日 08:26