◆◇◆◇


 日が登り始めていた。
 静かな朝が訪れていた。
 癒えぬ“虚しさ”を胸に湛えながら。
 彼は、“今日”の始まりを迎える。
 高所から、漠然と広がる世界を見つめる。

 鳥の囀りが、朝を穏やかに告げる。
 澄んだ青空は、火が灯るような朝焼けの輝きに彩られる。
 果てなき情景の下で、緑に覆われた山岳地帯が広がる。
 緩やかな斜面に覆われた大地に木々が並び、遠くでは河川が流れている。
 それは、文明と隣り合わせの自然風景だった。

 ――アメリカ西部。“魔術”とは程遠い、辺境の土地。
 長閑な時間と共に、風が吹き抜けていく。

 山岳の下の麓には、寂れた田舎町が見える。
 古めかしい木造の建造物が立ち並び、閑散とした道路には疎らに車が走っている。
 まるで映画に出てくる地方都市をそのまま描いたかのような、静かな街並みであった。

 “ここ”は丁度、街を遠方から見下ろせる位置に存在する。
 山岳の中腹――“山小屋”のテラスで、椅子に腰掛ける白人の男が一人。
 木製のロッキングチェアが、ゆらりと揺れる。

 たっぷりと髭を蓄えた、太い体格の大男だった。
 口にはパイプを咥え、草臥れたチェックシャツやジーンズを身に纏う。
 中折れ帽を被ったその姿は、農夫や木こりそのものだった。

 彼はただ、朝の訪れをじっと見つめる。
 何も言わず、何も動かず――神妙な面持ちで、彼は沈黙する。
 鮮明な朝焼けの下。木々に囲まれた、自然の傍ら。
 瑞々しい世界の中で、静寂に身を委ねていく。
 白髪の混じった髪と、疲れ果てたような眼差し。
 逞しい身体とは裏腹に、疲弊と虚無が刻み込まれている。

 今日も“夢”を見た。
 あの頃の、消えぬ“過去”を。

 非道な一族に従い、非道の所業を重ね。
 自らの過ちに気付いた頃には、時すでに遅く。
 その罪を抱えながら、あの世界から逃げ出して。
 その果てに、ようやく此処まで辿り着いて。
 孤独と引き換えに、自由を手にした。

 それでも、後悔というものは。
 今なお、彼の魂を蝕み続ける。

 ロッキングチェアが、静かに揺れる。
 パイプの口から、白い煙が揺れる。
 鮮やかな朝は、彼を相も変わらず突き放す。

 その左手に――いつの間にか、握られているものがあった。
 年季が入った、古びた懐中時計だった。
 それが何なのか、何を意味するのか。
 そのことを理解するまで、そう時間は掛からない。
 彼はまさに、奇跡を巡る戦争に参加する“資格”を手にしていた。

 エドゥアル・ブレッソン。
 彼はかつて、魔術師だった。


◆◇◆◇


 静まりかえった夜。仄暗い照明の灯されたリビング。
 二人の男が、テーブルを挟んで椅子に腰掛ける。
 テーブルに置かれているものは、世界で最も著名なバーボン・ウイスキー。
 白いラベルの貼り付けられた瓶の中は、琥珀色の液体で満たされている。

 エドゥアル・ブレッソンは、ゆったりと椅子に座る。
 その片手に握られたウイスキーグラスに、軽く口をつけながら。
 目の前で向かい合う男を、静かに見つめる。

 ボーラーハットにスリーピースの紳士服――薄汚れて草臥れている――を纏う黒ずくめの風貌。
 その身体は案山子のように痩せており、服装も含めて見窄らしさが漂う。
 髑髏を思わせる青白く骨張った顔も相俟って、何処か不吉な印象さえ感じられる。
 ――まるで、死神のような男だった。

 サーヴァント、アーチャー。
 この戦争に呼び寄せられた英霊の一人。

 ブレッソンは、己が召喚した従者と語らっていた。
 まだ出会ってから間もなく、アーチャーが聖杯に託す願いを聞いたばかりだった。
 彼の名をブレッソンは知っていた。かつて歴史に名を残し、銀幕の世界でも存在を刻んだ男だった。
 それ故に彼の“生前”に興味を示したブレッソンに、アーチャーは持ちかけた。

 ――この家、酒はあるんだろう?
 ――せっかくの御対面だ。
 ――ちょっくら、飲み交わそうぜ。

 そうして二人は、ウイスキーを語らいの“お供”とした。
 目の前の英霊が語る思い出話に、ブレッソンは耳を傾けていた。

「――で、ワイアットの野郎がな……」

 アーチャーが追憶する、生前の思い出。
 フロンティアの時代――アメリカの西部、とある町の酒場(サルーン)でのちょっとした馬鹿話。

「しこたま酒を飲んでから、“俺はジャッカロープを見つけた!”って急に騒ぎやがったんだ」

 過去を懐かしむように、アーチャーは飄々と語り続ける。
 ジャッカロープは、かつてカウボーイの間で語り継がれてきた未確認生物――要は“角の生えたウサギ”だそうだ。

「何バカなこと言ってんだ、飲み過ぎだぜアープって、周りは大笑いさ」

 アーチャーは片手に握るグラスを小さく揺らして、琥珀色のウイスキーが微かに波打つ。
 三つほど固まった氷の塊が、小刻みに音色を鳴らす。

「だがワイアットは意固地になりやがって、真っ赤な顔で“今すぐその証拠を見せてやる”とか宣ってな。
 そんで、サルーンから千鳥足で飛び出した……」

 そんな彼と向き合う“聞き手”――ブレッソンは、椅子に背中を預けながらアーチャーの昔話を聞き届ける。
 彼の片手にも、アーチャーと同じようにウイスキーの注がれたグラスが握られていた。

「数分後、“遂にジャッカロープを捕まえた!”とワイアットが叫んだ。
 俺も含めて、皆が半信半疑でぞろぞろ覗きに行ってみると――」

 そう語るアーチャーは、笑いを堪えるように表情を微かに緩める。

「あいつ、酔っぱらって馬小屋で寝てたウォルターじいさんをガッチリ捕まえてやがった」

 テーブルにグラスを置いたアーチャーは、身振り手振りでその様子を再現する。
 両腕で胴体にしがみつくような動作を真似て、彼は笑みを浮かべながら説明する。
 話に耳を傾けながらその様子を見ていたブレッソンの口元にも、思わず笑いが零れた。

「それを見て、誰かが言った。“そいつぁジャッカロープじゃねえ!ウォルターじいさんだろ!”」

 戯けた様子で語るアーチャー。
 その語り口は、荒んだ眼差しとは裏腹だった。

「で、ワイアットは赤ら顔で俺に言った」

 まるで過去の思い出を振り返る子供のように、彼は気さくに語っていた。
 かの有名な“ならず者”は、かつてつるんでいた“相棒”との記憶を、嬉々として語る。

「“おいドク、今の発言を記録したまえ。保安官の職務への侮辱にあたる”」

 ――その一言で、皆またしても大笑いって訳だ。
 そうして話を締め括るアーチャーは、目を丸くしてニヤッと笑い。
 奇行を働いた酔っ払いらしからぬ糞真面目な台詞に、ブレッソンも思わず吹き出すように笑ってしまった。

「あのワイアット・アープも酔っ払ったらその有り様とはなぁ。映画じゃまず見られない姿だ」
「あいつは“やくざ”みてえなボンクラだよ。だが、人を惹きつけることが不思議と上手かった」

 骸骨のような顔を緩ませて、アーチャーは“ワイアット・アープ”との記憶を振り返る。
 西部劇でも幾度となく語り継がれてきた、伝説の保安官と過ごした過去だった。

 曰く、普段は物静かだが“やくざ”同然の男。
 曰く、勇敢で人を惹きつけるのが上手い男。
 曰く、狡猾にして誰よりも誠実な男。
 曰く――。

「あんたは……」

 かつての相棒との思い出を語るアーチャー。
 その姿に、ブレッソンは何処か感慨深そうに微笑みを浮かべる。

「本当に、ワイアットと親しかったんだな」
「ああ。そうさ」

 あいつとは、親しかった――そう肯定するアーチャーの笑み。
 心からの嬉しさを滲ませつつも、何処か寂しげで、その眼差しには未練を宿す。

 アーチャーという男は、紛れもなくワイアット・アープとの親交を結んでいた。
 彼もまた、荒野の活劇の中で語り継がれてきた男であり。
 かの保安官との友情ゆえに、この地に喚ばれた英霊であった。

「“最初”に語った通りだ。あいつとケリを付けるために、聖杯戦争に来た」

 ジョン・ヘンリー・ホリデイ。
 通称――“ドク・ホリデイ”。
 アメリカの西部開拓時代に活躍したガンマン。ギャンブラー。ならず者。
 かの“OK牧場の決闘”に参加した、伝説的保安官ワイアット・アープの相棒。
 彼はこの聖杯戦争で、アーチャーとして現界した。

「あんたにも、相応の理由があるんだろう」

 アーチャー――ドクは、自らのマスターの顔を覗き込んだ。
 己を呼んだ主君の真意を確かめるように、じっと見据える。
 そうしてブレッソンの顔から、微笑みが次第に消えていく。
 感慨に耽っていた彼の表情は、神妙な面持ちで沈黙する。

「ブレッソン。あんたは、何かを背負ってきた眼をしてやがる」

 まるで己のマスターの葛藤を見抜いていたように、ドクは投げかけてきた。
 そのことにブレッソンは、内心苦笑をする。
 ――まさか、すぐに気付かれるとは。
 ――やっぱり、鋭いもんだな。
 ブレッソンはそう思いながら、ウイスキーを一口喉に流し込む。

 じきに話すつもりではいたが、どうやら目の前の男には筒抜けだったらしい。
 流石はドク・ホリデイ――“あの”伝説のガンマン。
 神秘の薄れた近代の存在といえど、紛れもなく英傑の一人なのだ。

 とある日に、ブレッソンは“古びた懐中時計”を手にした。
 それが聖杯戦争の参加資格であることに気付くのに、そう時間は掛からなかった。
 彼は有無を言う間もなく、奇跡を巡る闘争に巻き込まれた。

 発端も含めて、突発的な出来事に過ぎなかった。
 しかし、きっとこれは、ブレッソン自身も望んでいたことだったのだ。
 そのことを悟って、意を決したように口を開く。

「……そうだな。願いって奴は、確かにある」

 彼に、奇跡に縋るだけの理由はあったのだから。
 そして少しだけ躊躇うように、黙り込んだ。
 されど、腹を括ったように、ブレッソンは語り出す。

「俺はかつて、魔術師だった」

 エドゥアル・ブレッソン――これは、偽名だった。
 魔術協会の影響が薄いアメリカへと渡って以来、かつての名を捨てていた。
 魔術師として生まれた本来の名は、“バルタザ・ロベル”。

 “時計塔”、すなわち魔術協会内での政治的立ち回りの失敗。
 一族に遺伝する魔術回路の衰退――魔術師としての限界。
 数代前にそれらの不運が重なったロベル家は、零落へと進んだ。

 一族の者達は、何としてでも再興を図ろうと足掻き続けた。
 “時計塔”での権威を持った有力貴族への根回し。
 魔術回路を増やすための優秀な“母体”を求めた政略結婚。
 一族の人間に眠る“素養”を引き出すための研究。
 必死に、必死に、あらゆる手を尽くして、その尽くが裏目に出た。
 それらの模索はいずれも実を結ばず、却って一族の停滞を後押しすることになった。

 そうして落ちぶれて、歪んで、誇りさえも失い。
 “バルタザ”が跡継ぎとなる頃には、ロベル家は邪道の一族と成り果てていた。
 外法の体現者として、魔術師達からも蔑まれてきた。

 そんな一族に対する疑問を抱きながらも、彼は再興のために奔走した。
 形振りも構わず、手段さえ選ばなくなったロベル家のやり方を貫いた。
 その過程で――多くの犠牲を支払った。

「俺には、妻と子供がいた」

 ロベル家は、歪んでいた。
 人道は愚か、魔術師としての常道さえも踏み外していた。
 それを悟った時には、既に取り返しは付かなくなっていた。

「ただ、それだけだよ」

 かつて喪われた“二つの命”を振り返って、“ブレッソン”は呟く。
 今日に至るまで後悔を抱き、彼は魔道から背を向けてきた。
 背負ってきた罪と業は、今もなお夢の中で彼の魂を苛んでいる。

 ブレッソンは、それ以上は語らなかった。
 戦うための動機など、それだけで十分だった。
 そうしてグラスの中に残ったウイスキーを、静かに飲み干していた。

 そんな彼の姿を、ドクは何も言わずに見つめていた。
 少しの間だけ、取り止めもなく沈黙が続いたが。

「……戦うには、十分だな」

 やがてドクが、静かに口を開く。

「俺なんざより、ずっと切実だ」

 その眼差しは、確かにブレッソンを見据えていた。
 まるで彼の悲哀を、有りのままに受け止めるように。

「重てぇよな。未練や後悔ってもんは」

 そして。
 枯れたように呟く、その声色は。
 目の前の男に対する、深い共鳴を宿していた。

「……ああ。そうだな」

 ドクの語る言葉に、ブレッソンはただ一言頷く。
 確固たる共感を、その素振りに込めていた。

「なあ、ブレッソン」

 そしてドクは、言葉を続ける。

「俺は、銃だけが取り柄の“ごろつき”だよ」

 骸骨のような面持ちと、死を帯びた双眸。
 それらは、目の前の男へと向けられる。

「きっと、何かを奪うことだけしか出来ねえ」

 己という人間が、何者であるのか。
 それを告げながら、彼はブレッソンと対峙する。

「それでも、構わねえか」

 ドク・ホリデイは――“人殺し”だった。
 銃を手に取り、やくざな商売で稼ぐ、“ならず者”だった。
 例え英傑として歴史に名を刻もうと、その事実は変わらない。
 彼は奪い、殺し、踏み躙る側の人間だった。
 そのことを、ドク自身は自覚している。
 故に彼は、問いかける。

「……ああ」

 そして、ブレッソンは迷わずに答える。

「俺も、どうしようもない奴なんだよ」

 死を纏って彷徨い続けたドク・ホリデイ。
 朽ち果てた枯れ木のように佇むエドゥアル・ブレッソン。
 彼らは同じ、生きながらにして“死人だった。

「目の前にある奇跡を、誰にも渡したくない」

 その在り方は違えど、未練と後悔だけは確かに結びついている。
 故にブレッソンは、そう答えた。
 己はこの聖杯戦争で勝ち抜くと――告げたのだ。

「……そうかい」

 自らのマスターの答えを聞いて、ドクは一言呟く。
 戦うための道筋は拓けたことを、改めて悟る。
 そうしてドクは、テーブルに置かれたウイスキーの瓶を手に取った。

「なら――」

 瓶の蓋を開けて、空になったブレッソンのグラスに液体を注ぎ込む。
 透明な器の中が、黄金のような色彩に染まっていく。
 そうしてウイスキーを注ぎ終えてから、ドクは自らのグラスを手に取った。
 二人の顔の間に掲げるように、器をすっと持ち上げる。

「勝とうぜ。旦那(マスター)」
「ああ。宜しく頼む、“ドク”」

 からん――二人のグラスが、響き合う。
 共に奇跡を求めることを誓う、戦いへと向けた乾杯。
 やがて掴み取る勝利へと向けた、ある種の祝杯。

 バーボン・ウイスキーが、琥珀色に輝く。
 彼らが求める奇跡の光を、映し出すかのように。


◆◇◆◇


 おう、ワイアット。元気してるか。
 ま、お前なら上手くやってるだろうな。
 今ごろあの世で酒場や賭場でも開いてんだろ。
 トゥームストーンでもお前は強かだったからな。

 “西部劇”とやらを見たぜ。
 ワイアット・アープ様は活劇の英雄なんだとよ。
 ま、歴史での評価は紆余曲折あるそうだが。

 おめえみたいな“やくざ”が清廉潔白の存在だなんて、全く笑っちまうぜ。
 んな柄じゃねえだろうに。酒場の連中が聞きゃあ、たちまち大笑いだろうよ。
 で、俺は映画の中じゃお前さんの“良き相棒”って訳だ。
 あの時から、依然として変わらずにな。

 さて――そうだな。
 お前と別れたのは、クラントン一家と片を付けてから暫く後。
 俺がお前の女を悪く言ったからだったな。
 “ワイアット、ユダヤ女となんか付き合うな。あんなアマが大事なのか”ってな。

 ああ、あの頃の俺は最低だった。
 “ごろつき”から成り上がって、お前とつるみ続けて、すっかり図に乗っていた。
 下らねえ蔑みで突っかかって、俺達の間に亀裂を作っちまった。
 そっから口論になって、溝は深まって、そのまま喧嘩別れって訳だったな。

 それから俺はまた根無し草、コロラドのコヨーテに成り下がっちまった。
 肺の病もどんどん酷くなっちまって、気が付きゃ酒とアヘンに逃げるようになって、そのままポックリって訳さ。
 バチが当たっちまったんだ。神は俺に友情を裏切った罰を与えた、当然だろうな。

 未練だの、後悔だの。
 振り返ってみりゃ、色々とあるが。
 結局、一番気がかりなのはお前とのことだ。
 お前とまた腹割って話して、蟠りにちゃんとケリを付けたくなっちまった。
 俺が此処に来た理由は、それだけだ。

 色んな悪党どもとつるんできたが、結局お前より上等な野郎とは出会えなかった。
 “映画”の中じゃ、俺とお前は無二の相棒同士だった。
 ――ああ、俺もそう思ってる。最期までそう信じて、ベッドの上でくたばった。
 喧嘩別れしちまってからも、結局俺は“ワイアット・アープの相棒”だった。
 生きるアテも無かった俺に、お前は命を吹きこみやがった。

 だから、なあ。
 ワイアット。
 今さらこう言うのも何だがよ。
 “仲直り”をさせてほしいんだ。
 お前の女に、そしてお前に、謝りたい。
 そしてまた、お前と語らいたい。
 それが、俺の望みなんだ。

 それと、だ。
 放っておけねえ奴が、一人いる。
 俺はそいつに手を貸してやるつもりだ。
 未練と後悔ってモンは、何よりも重い。
 女やガキが関わるんなら、尚更だ。

 あいつにも、勝たせてやりたい。
 だから俺は、また銃を取る。

 あっちで待ってろよ、相棒。
 俺は奇跡を掴んで、お前に会いに行く。
 久しぶりに、美味いバーボンでも飲もうぜ。

 ワイアット・アープへ。 
 ドク・ホリデイより、愛を込めて。


◆◇◆◇


【クラス】
アーチャー

【真名】
ドク・ホリデイ@アメリカ西部開拓時代

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力:D 耐久:E 敏捷:C++ 魔力:E 幸運:C+ 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:-
魔力に対する抵抗力は皆無。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
Cランクならマスター不在でも1日程度は行動出来る。

【保有スキル】
射撃:A
銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃全般の技術を表したスキル。
Aランクならば凄腕のガンマンと呼べる腕前を持つ。

クイックドロウ:A
射撃の中の早撃ちに特化した技術。
その腕前は保安官ワイアット・アープからも一目置かれた。
ドク・ホリデイは拳銃を瞬時にホルスターから抜けるようにするため、照準や角の部分をヤスリで削り落としていた。

労咳の銃徒:A
病に蝕まれ、病を背負って生きたアウトロー。
労咳と共に伝説へと昇華されたが故に、他の後天的な災いを跳ね除ける。
同ランク以下のバッドステータスを全て遮断し、宝具によるデバフも大幅に効果を軽減する。
ただし自身のターン時に低確率で喀血を起こし、その際には一時的なステータスの低下が発生する。

悪運の切り札:B
往生際の悪さ。逆境における引き運の強さ。
一定以上のダメージを受けた際、高確率で“ガッツ”付与が発動して生存を果たす。

無明の無頼:B+
余命幾ばくもない“ならず者”、あるいは“賭博師”としての意地。
自身の体力が低下した際、または窮地へと追い込まれた際、攻撃の威力・命中率が倍増する。
また先手を打てる確率が大幅に上昇する。

【宝具】
『墓石と決闘(トゥーム・ストーン)』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1
保安官ワイアット・アープらと共にクラントン一家と戦った“OK牧場の決闘”の再現。
――約30秒間に30発の弾丸が飛び交い、距離にして2m前後。苛烈な短期決戦であり、至近距離からの撃ち合いだった。
実態としては決闘と云うより、突発的な銃撃戦だったとされている。

言うなれば「一定時間敵が強制的にドクの至近距離へと転移させられ、尚且つドクの銃撃が大幅強化される宝具」。
宝具の発動と共にレンジ内の“空間”が歪み、敵が瞬時に“ドクの至近距離”へと転移させられる。
更にはドクの銃撃に“耐久値無視”と“防御貫通”の効果が発動し、一定確率で即死判定が発生する。
発動時間は伝承と同じ30秒間のみ。その間に敵はドクの至近距離から離脱できない。
己も敵も命懸けの肉薄戦闘へと引きずり込む、背水の陣に等しい宝具。

『死病の硝煙(トゥーム・オブ・ザ・ホリデイ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:50
ドク・ホリデイは伝染する“死の病”として畏れられた肺結核を患い、数々の暴力的な逸話によって“死神”も同然に語られた。
それらの伝承が一種の“死の概念”へと昇華され、宝具へと発展した。

発動することで不可視の“瘴気”を周囲に展開し続け、レンジ内に存在する者の体力・魔力を徐々に減少させる。
減少速度はドク・ホリデイの窮地や消耗に比例して上昇。
彼が致命的な状況に追い込まれていれば、敵も凄まじい速度で“瘴気”に蝕まれる。

【weapon】
六連装拳銃、デリンジャー、ナイフ。
そのほかライフルや散弾銃も状況に応じて魔力で生成できる。

【人物背景】
アメリカ西部開拓時代のガンマン。生没年1851-1887。
伝説の保安官ワイアット・アープの友人として知られる著名なアウトロー。
本名はジョン・ヘンリー・ホリデイ。短い間ながら歯科医師であったことから“ドク・ホリデイ”と渾名された。

ジョージア州アトランタ市で歯科医として活動していたが、若くして肺結核に罹患したことで転地療養のため西部へと移住。
以来ギャンブラーとして生計を立てるようになり、“暴力的な評判”を背負いながら各地を転々していく。
その後テキサスの酒場でワイアット・アープの窮地を救ったことから彼の友人となる。
アリゾナ州トゥームストーンでのクラントン一家との抗争においては、アープ兄弟と共にかの有名な“OK牧場の決闘”に参加する。

一連の事件の後はワイアット・アープと別れる。
一説によれば、ワイアットの伴侶だった女性がユダヤ系であったのを咎めたことが決裂の原因とされる。
以降はコロラド州でこれまでと同じようにガンマンやギャンブラーとして生活した。
しかし次第に肺結核の症状が悪化して酒やアヘンに溺れるようになり、最期は36歳で病死した。

【外見・性格】
案山子のように見窄らしく痩せた男。肉体は30代相当だが、血色の悪さ故に老けて見える。
短い白髪で、面長の骸骨のような顔に口髭を生やしている。
ギャンブラー風の黒いスリーピーススーツとボーラーハットを身に付け、首にはリボンタイを巻いている。
ただし、衣服はいずれも草臥れて薄汚れている。
腰には拳銃のホルスターを提げ、片手にはよくウイスキーの瓶を握り締めている。

伝承においては暴力的な評判を背負いながらも、知人からは“穏やかな南部の紳士”と評されていたとされる。
しかしこの聖杯戦争に召喚されたドク・ホリデイは、“ならず者”や“病に蝕まれた死人”としての側面が強く反映されている。
それ故に荒んだ態度が目立ち、常に窶れた表情でぶっきらぼうに振る舞う。
目的のためには暴力も辞さないが、性根は義理堅く純粋な性格。

【身長・体重】
179・60

【聖杯への願い】
ワイアット・アープとまた語らいたい。

【マスターへの態度】
ああ。信頼してるぜ、旦那(マスター)。


【名前】
エドゥアル・ブレッソン

【性別】

【年齢】
45

【属性】
秩序・中庸

【外見・性格】
ふくよかで逞しい体格の大男。髭をたっぷりと蓄えた白人。よくパイプを咥えている。
使い古したチェックシャツやジーンズを纏い、頭には中折れ帽を被っているなど、農夫や木こりを思わせる出で立ち。
「ポール・バニヤンみてえだな」とはドクの談。

物静かで穏やかな性格で、常に落ち着いた態度を取る。
温厚な人柄である一方、何処か喜怒哀楽に乏しく淡々としている。
彼は胸の内では常に虚無感と喪失感に苛まれている。

【身長・体重】
195・103

【魔術回路・特性】
質:C+ 量:D
特性:変換

衰退しつつある一族の中では素養に優れていた。
凡百の魔術師よりは高い素質を持つが、飛び抜けた才覚の持ち主と呼べる程ではない。

【魔術・異能】
地属性魔術の使い手。土や砂を操作して攻撃と防御を行う。
“骨材”を土と解釈することで、コンクリートへの干渉も行える。

『霊樹の泉(ミミルブルンナー)』
地面に宿る“養分”を“魔力”として変換することで、あらゆる土地に“疑似霊脈”としての機能を持たせる。
自然の要素が強い大地ほど、霊脈としての高い機能を発揮する。
ただし長時間の維持は行えないため、盤石の陣地を整えるための用途には向いていない。
基本的には戦闘時に即席の魔力タンクを作り出すために行使される。
“擬似霊脈”として使われた土地は、養分が再び戻るまで使用不可能になる。

『白霜の剛人(ヨートゥン)』
“霊樹の泉”を応用した自己強化魔術。
“擬似霊脈”で生成した魔力を“代謝機能を活性化させるエネルギー”へと変換し、一時的にあらゆる身体機能を倍増させる。
腕力や瞬発力が飛躍的に上昇するほか、代謝の向上による自己治癒能力も得られる。
ただしこの魔術を使っている最中は、その“疑似霊脈”を魔力タンクとして併用することは出来ない。

【備考・設定】
アメリカの田舎町で孤独な生活を送る中年の男。
他者との関わりを避け、町外れの山小屋で自給自足をしながらひっそりと暮らしている。

本名はバルタザ・ロベル。
彼は“時計塔”に属する魔術師一族・ロベル家の跡継ぎだった。
ロベル家は数代前の頃に魔術協会内での政治的立ち回りに失敗し、更には魔術回路の衰えも始まるなど、零落の道を辿っていた。
彼らは何とか一族を立て直そうと足掻き続けたが、それらも実を結ぶことはなく没落を繰り返していった。
そうしてロベル家は次第に、魔術師としての形振りや誇りさえも捨て去るようになった。

バルタザが跡継ぎとなった時点で、既に魔術師の世界においても“外法の一族”と蔑まれていた。
彼はそんな一族の在り方に疑問を抱きながらも、ロベル家再興のために尽力してきた。
その過程で、様々な犠牲を払い続けた。多くのものを喪ってきた。

――今の彼は、もう一族を背負う魔術師ではない。
魔術協会の影響力が薄いアメリカへと移住し、田舎町で“エドゥアル・ブレッソン”という偽名を用いて隠遁生活を送っている。
その魂の奥底には、深い喪失感が刻まれている。

【聖杯への願い】
喪った妻子を取り戻したい。
それだけが未練であり、己の後悔である。

【サーヴァントへの態度】
従者ではなく、対等な存在として信頼している。
彼の“願い”には思うところがある。後悔と未練の意味を、今のブレッソンは知っている。

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最終更新:2024年06月16日 23:31