———一目見て電撃が走った
◇◇◇◇◇
夜でも光らないビルの壁を登る。人がいないから咎められる道理もない。少しのとっかかりだけあれば蜥蜴のように上へ行ける。昔映画で見たヒーローも同じことをやっていたな。
そんなどうでも良いことを考えながら私は手足を動かす。今狙われたら私は死ぬな。私のサーヴァント屋上にさっさといるし。死にたくないなぁ、あの子に会いたいし。
私の心配を他所に、なんの問題もなくビルを登り切る。屋上から一望する光景ははっきり言って不気味だ。光ることのないビル群が墓のように立ち並び、その隙間を縫うかのように人魂のような戦闘光が暗い夜を灯照らす。
私のサーヴァントはその光景を不愉快そうに眺めていた。いつのまにか用意されたティーセットに口をつけている。湯気が立ちルビー色の紅茶を優雅に飲み干す私のサーヴァント。所作ができているから気品を感じた。
「アーチャー、あなたの時代に紅茶なんてないでしょ?よくマナーを守れるわね。………ご丁寧にアフタヌーンティーセットまで出しちゃって」
私の言葉に嘲笑を浮かべる私のサーヴァント:アーチャー。生きた当時ないはずのテーブルマナーもきちんとこなしていて鼻につく。
「ふん、俺が死んだ後とはいえ今の英国の象徴の一つと聞いたぞ?なら嗜むってのが俺の流儀だ。」
「流儀?」
「鸚鵡返しは面白くないな。もう少し考えて言葉を出したらどうだ?」
私は思わず舌打ちをしてしまう。傲岸不遜な態度はまさしく私が思い描いたアーチャーの姿だ。とはいえここまで言うことに棘があるとは正直思わなかった。
「ちぇっ………あんた召喚したの間違えだったかなぁ」
「おいおい聞き捨てならないね!俺のどこが不満なんだ貧民(マスター)」
「その性根とステータスよ」
アーチャーのステータスは三騎士というには低めである。私の目を通すと彼の性能は蜥蜴の走るスピードで表せる。宝具が飛び抜けて速いがそれ以外は遅い。幸運が宝具に辛うじてついて来れている程度か?
「召喚の時、イギリス王室の宝剣使ったから、狙って出せないのはわかってたけど、まさか知名度に反してこんなに微妙な感じだったなんてねぇ………嘆きますよ私」
「あのさぁ………呼んできてやったのは俺の方なんだぜ?貴殿から感謝こそ受けて然るべしで文句なんか聞かんよ」
「いやでも私の文句に付き合ってもらうわよアーチャー」
「はっ!」
アーチャーの嘲った声を私は無視した。いちいちイライラしても仕方ない、椅子に座りポットから紅茶をカップへ注ぐ。一気にルビー色の煌めく紅茶を胃の中に運んでやった。美味い!
「貧相な舌でも旨さってのがわかるとはね………やっぱこの紅茶はすごい」
「どこで手に入れたのよこれ」
「王室秘密だ。知りたきゃ俺と婚姻でもするんだな」
「ふざけたこと抜かすんじゃないわよ!」
結婚?こんな王族であることを鼻にかけた傍若無人の権化にして筋肉デブの美しさのかけらもないイギリス野郎は。魔術回路がむず痒くなる。私の腕は竜の爪を持って変わり、アフタヌーンティーセットを一撃の元破壊した。
「もったいないことしやがって貧民(マスター)」
浮かんだケーキに手を伸ばしその全てを口に運ぶアーチャー。目に止まる速さだけどその分迫力がある。さっきまであった品を捨てた汚い食い方。
「アーチャー、取り繕っても結局見えるものね」
「わかった気になっちゃって貧民(マスター)」
「あら、私の舌は貴方の下劣さを見抜いているわよ」
笑う口元がぴくりと苛立つように動く。図星をつかれた感じかしら?アーチャーの背後の景色が揺らめく。あっ、これは怒りだ。常人を飲み込むカリスマと湧き立つ炎の魔力が陽炎を産んで、空間を侵食し、私を包み込む。アーチャーはロングボウを構え、私の額に矢を向けた。
「我慢は限度額が決まっているんだ貧民(マスター)。いい加減敬う気持ちを表したらどうだ?」
「敬う?サーヴァントに?意味が?」
特にこの男は私の身体を見て一瞬でも欲情しやがった。私の豊満に実った胸も、ガッチリと支える骨盤も、ぷるんと形の良い尻はあの子だけにぶつける物。それをサーヴァントの分際で卑しくも!
私の怒りが魔術回路を熱し、美肌の下から赤竜が姿を現す。
どんどんと伸びていく私の額に合わせてアーチャーは鏃を上へ上げた。私は口に息をためる。唇の隙間から火花が漏れる。どのタイミングで放つか。
バチリ
電光が夜を切り裂き、私たちを照らす。白光でアーチャーが切り取られたその時、私に向けられていた鏃がなくなり、頬を掠った事に気がついた。
全く気づけなかった。慌てて矢の軌道を追う私。強化された視力は夜にも遠距離にもその景色を鮮やかに映し出す。アーチャーの矢は私の遥か後ろにいる銃を持った別のサーヴァントに突き刺さっていた。眉間に矢が生えたそのサーヴァントは光の粒子となり空へ霧散していく。
「アーチャー、なんで私を助けた?」
「赤竜に俺は弓を引けん。ただそれだけのことや。」
アーチャーは不本意な声で答えた。私の運がただよかっただけのことだったらしい。自分の星の巡りにうっすら感謝の念を送っておこう。しかし王族とは扱いづらい。面倒なことだが………私も少しは我慢しなければならない。
「………まあアーチャー。お互い目的はあるわよね?」
「なかったら奴隷(サーヴァント)になってないからな」
「ならばせめて………そのためにお互い協力しましょうね。」
散々煽ったことを棚に上げ私はアーチャーに手を差し出す。その手をまじまじとアーチャーは観察し、片方の手を私の手に合わせた。
「ふん………次不敬したら殺すからな」
物騒な言葉と裏腹にアーチャーの陽炎は鳴りを顰める。これで一旦協力関係を作れたと考えて良いだろう。
このアーチャー、『ヘンリー8世』。ブリテンの王位についた人物の中で最もカリスマ性のあった統治者として多くの分野で名前をなした燃えるような人生を送った王。私はこの男と一緒に戦争を戦わねばならない。私の目的のために!
朧げだが前の戦争の記憶がよぎる。どう戦ったのか、誰と戦ったのか、どうやって負けたのか、それはまるで思い出せない。だがいいんだ。今の私にとって重要なのは2度目のチャンスが巡ったことなのだ。
神寂祓葉!一目見た時に私は彼女の子供を作りたいと思ったのを思い出す。本当に遺伝子的に相性がいいから、甘く芳しいフェロモンが私の舌を狂わせる。あの絹のように純銀のぴちぴち肌を舐めたい食べたい舐りたい。女子高生の制服姿だからどんな形のバストなのか、下着の色はなんなのか、隠した先にある秘境はどのような形状なのか。気になって夜も眠れない。あの子の舌どんな味するんだろう。あの子の中は絶対あったかいし気持ちよさそうだな。
私と彼女の子供はどんな形になるんだろう。ああサッカーのリーグ戦ができるくらい子供作りたい。名前は真っ先につけてもらおうかなぁ。子供産んだらすぐに仕込んでポコポコしたいなぁ。
「早く全員ぶっ潰して結婚式あげて初夜して6子仕込みてぇ………」
私の妄想にアーチャーは苦虫を潰した顔をして、距離を取った。
◇◇◇◇◇
縛れぬ火の王
統べるは、赤竜
〈はじまりの六人〉
抱く狂気は、〈性欲〉。
舞志・ペンドラゴ。統べるサーヴァントは、赤薔薇の長
全て真実。
サーヴァント
【クラス】アーチャー
【真名】ヘンリー8世
【属性】秩序・悪
【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:B 宝具:EX
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
単独行動:EX
マスター不在でも行動できる能力。ヘンリー8世は宝具を使わぬ限り、マスターがいなくても二週間ほど行動可能である。このランクなのは後述の宝具も影響している。
【保有スキル】
魔力放出(炎)B
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
ヘンリー8世は後述の宝具を利用して炎の魔力を纏う。
アーチェリーB++
弓矢を用いて標的に当てるスキル。Bランクならばスキルの影響を無視することもできる。あくまで当てるための技能のため防御を貫通するスキルを無効化はできない。
信仰の擁護者A-
カリスマの亜種スキル。アーチャーがカトリックの熱心な信者の際、教皇より授かった称号。カトリック教徒により大きく影響を及ぼすカリスマである。ヘンリー8世は破門された際この称号を失っているので、本来の効力よりも下がっている。
【宝具】
『燃え尽きる金襴の人生(バーン・イズ・トゥルー)』
ランク:EX 種別:対軍宝具/対界宝具 レンジ:1~3000 最大捕捉:1000
自らの人生を劇にした劇場を全焼させた程の激しい生き様を武器として形作った宝具。普段は赤と金襴で美しく装飾されたロングボウとして顕現する。
真名解放することでアーチャーが原型を作った王立海軍を古今問わず、魔力で形つくり、一斉射撃を行う。この宝具の威力自体はB+である。
なぜEXなのか?この宝具の真価は固有結界、そしてそれに類する大魔術に対する特攻を持つことにある。ヘンリー8世の火は大きな世界に顕現した小さな世界ごと薪として燃やし尽くす。この宝具は固有結界、それに類する大魔術を一つ破壊するごとに威力が1ランクアップしていく。
『望む物、契りなし(ラフ・フーニング)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
男子を求め、離婚や処刑を繰り返したアーチャーの人生が宝具となって形となった物。規格外の『単独行動』を付与する。真名解放を行うと、自らのマスターおよびその同盟者から令呪を奪い取ることができる。この宝具は6回まで使用可能。
【weapon】
ロングボウ
【人物背景】
イギリステューダー朝時代の王。カリスマ高く、スポーツ万能、ギャンブラー、文化人、好色、利己的、無慈悲かつ不安定な王であったとされている。
【外見・性格】
メガネ、茶髪、筋肉質で太め
非常に俺様気質。
勉強熱心で多趣味。
愛国心が強い。
【身長・体重】
182cm・130Kg
【聖杯への願い】
エリザベス女王を男とする(男で優秀な子供結局できなかったから優秀な女王を王にすればいいか)
【マスターへの態度】
赤竜だから見逃したが、ヘマ打ったら見捨てよう。(赤竜はイギリスの象徴なので)
マスター
【名前】舞志(まいし)・ペンドラゴ
【性別】女
【年齢】31
【属性】秩序・悪
【外見・性格】
B150・H62・W100
赤髪のポニーテール・褐色・メガネ・ジーンズ
思い込みが激しく怒りやすい性格
変なことをすることが好き
惚れた相手に一直線かつ自分勝手に愛をぶつける
強い感情が急に大きくなる
【身長・体重】
181cm・99kg
【魔術回路・特性】
異常
質A・量C
湧き上がる
【魔術・異能】
強化魔術の極北、竜を自らの身体に形作る。
舞志の場合、3m程の赤い竜となる。(翼はない)
湧き上がる魔力を口から放つことができる。
また皮膚は単純に頑丈で強い怪力を持つ。
自分の一部分だけを強化することで竜にすることも可能。
【備考・設定】
竜の一部を埋め込み肉体を改造強化することで、竜へと変貌する術を身につける魔術一族『ペンドラゴ家』の1人。31歳にもなって相手を見つけることができず焦っていたため聖杯戦争に参加。自らの遺伝子と完璧な相性を求めたのだが、神寂祓葉を一目見た際に、一目惚れ。彼女の心を奪うために聖杯を求める。なお彼女の体と声だけに心を奪われたので彼女の性格などに興味は全くない。そのため聖杯の力でさっさと洗脳して嫁にしようとしている。
【聖杯への願い】
神寂祓葉の全てを自分のものとする
【サーヴァントへの態度】
自分に婚約してこようとしたので嫌いになった。目的のため協力するビジネスライクな関係を目指している。
最終更新:2024年06月23日 00:00