桜場コハル作品エロパロスレ・新保管庫

コクハク

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coharu

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もう3月。6年生の卒業式も終わり、短縮日課になって授業の代わりに大掃除ばかりの毎日をリョータは送っていた。
早く帰れるのは嬉しいんだけど、正直張り合いというものがないではないか。

「ダリィよな~。なんでこんな事するために学校来なきゃいけねーんだよ~、休みでいいだろ~」
ツバサはこう言っている。普段からああいう奴だけど。
そして今日も、何事もなく帰りの挨拶まで終わった。
「おい、佐藤……悪いがコイツをゴミ捨て場に運んどいてくれ」
捕まってしまった。教室も6年生に変わるために教材や掲示物の片付けが必要なのだ。
断ったってやらされるんだ、ハイと答える意外に余地はない。


「お、重……」
そりゃあ1年分だもの、なんてチカがいたら言いそうだ。いや、物理的に重いんだけど。
生徒が一斉下校してる中、リョータはやっとの思いでゴミ捨て場にたどり着いた。
「ふぅ~、よっしゃあ、これで帰れ……」

ポツリ

「んあ?」
雨が降ってきた。ふむふむ。状況確認がリョータの脳内で始まる。

"ピー……雨……強イ……ガガガ……傘……所持してイナイ……キケン…"

「うわわわわ……ヤバい! 急がねえと……」
教室へ帰ってランドセルを取り、階段を駆け抜けて昇降口へ向かう。
が、時既に遅し。土砂降りとなっていて、とても帰れる状況ではなかった。
「はあ~……ついてねえな……」
仕方がない。職員室で傘を借りるしかない。リョータの足は反対側へと向いた。
そして硬直した。水色をした傘の先っぽがリョータの胸を刺していて、その先には相原カズミが立っていた。
「……討ち取ったり……」
「う……あ……やるな、相原……。グフ……俺の負けだ……」
なんというノリの良さだろう。それは置いといて、なぜカズミがここにいるか?
どうやら寝ていたらしい。てか、誰か起こしてやれよ……と思ったが、どうやら"起こすな"という紙を貼っといたらしい。
どうせ短縮なら家に帰ってから寝ろよ……とリョータは心の中で思った。



「でもちょうど良かった。相原、傘入れてくれよ」
「いいけど……」


最初の頃よりは雨は弱まってきた。だが、まだまだ傘を抜け出すには程遠い。
しかし、会話がない。チラッとカズミのほうを見たが、相変わらずの眠たそうな無愛想な眼をしている。
「なあ、相原……何か喋ろうぜ…」
「うん……」
会話が止まった。え?それだけ……な反応をされた。
いつもの事といえどもショックだ。
「佐藤君……」
「え?」
意外にもカズミの方から話しかけてきた。しかも、あの無愛想な顔なまま。
「チカちゃんの事、好き?」
「……え!?!??」
突然何を言い出すかと思えば……確かに、最近は何かと意識はしてしまうが……
「ど、どうだろうな……」
こういうときは違うと言えばいいのに……。カズミはでも特に反応はない。
「相原……??危ない!」

"ビチャア!"

トラックが跳ねた泥水がリョータの背中にかかる。3月の雨はまだ冷たく、ひんやりとしてくる。
「大丈夫か? 相原……」
カズミの顔を見ると、頬を赤らめている。珍しい……と思いつつ、下を見ると右手で胸を触り、左腕でカズミを抱いていた。
「わわ……ごめん!」
急いで離れようとするが、今度はカズミが腕を回してリョータを放さない。
「おい、相原……濡れちゃうだろ……相原?」
強い。こんなにまで強い力で抱かれるのは初めてだった。
「寒いから……こうしていたい……」
「何言ってんだよ! このままじゃ2人とも風邪引いちゃ……」
言葉の途中、カズミは急に足を後ろに下げ、いつもは冷たい視線でいるが、その時は悲しそうな瞳をリョータに見せていた。
雨がザアァァと降る中で、リョータとカズミは無言の空間を作り出していた。
(何だよ……相原…何かいつもと……)
いつもと違う。何だか、チカへとは同じようで違う感情がリョータの中に湧き出てきた。

「相原……」
「……佐藤君、――。……ごめん……」
眼を見開いた。だが、その瞬間にはカズミは走っていて、リョータから遠ざかっていた。
動けないリョータの横で、カズミの落としたままの傘が反対になり、雨水を溜めていた。

翌日も空はまだどんよりとしていて、予報では降水確率は90%であった。今日はさすがにリョータも傘をってきている。
「珍しくないか?」
「え?」
「いや、相原が休むなんてさ……」
コウジの言うことの裏側を自分は知っている。あれだけの雨の中をずぶ濡れで帰ったんだ。風邪を引かないのがおかしい。
すぐ風呂に入ったからか、はたまた馬鹿だからか風邪を引かなかったリョータには余計にカズミが気にかかる。

"……佐藤君、――。……ごめん……"

あんな事を言われたら、頭はそれしかないだろう。あの時のカズミは今までで一番……可愛く感じた。

「……ョータ? リョータ!!」
ハッ、と気がつくと、目の前にはチカが立っていた。教室には、ほとんど残っていない。
いつの間にか、下校時間になっていた。
「ねえ、一緒に帰ろうよ。雨も降ってきたし」
「あ……ああ」
何となく頷いて、昇降口まで歩いていった。傘を刺し、校門から道路へ出る。
並んで歩いている。昨日は、カズミと1本の傘の下だが、今日は自分の傘とチカの傘がそれぞれにあって……。
「リョータ……今度、どっか遊びに行こうよ」
「うん……」
「どこにする?」
「うん……」
突然、チカが前に来た。しかも、怒った顔で。それは、昨日見たカズミとは対照的な意味で可愛い。
「今日、変だよね? コウジ君達とも遊ばないでボーっとして……何かあったの?」
「何でもないよ……」
「嘘!リョータ、私、わかるよ? いつも、昔からリョータの事知ってるんだから!」
また同じ場所だった。カズミと抱き合ったあの場所。そこで、今度はチカに抱きつかれた。
「リョータ……好き……」

"……佐藤君、好き。……ごめん……"



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