――プレーンヨーグルト――
給食の時間。シュウイチはシチューを盛る係だ。今週は当番だから。そんな当たり前の理由で行っている。
「俺はやっぱり、給食のデザートにはプリンが相応しいと思う!」
「プリンといっても、クリームが付いてるとかコーヒー味だとか色々あるだろう?」
またチアキとマコトの会話だ。体育の授業の時も、ハルカの話題とはいえ盛り上がったように話していた。
(何だよ……マコトとチアキが仲良いのは知ってるじゃないか……)
「……そうだ! 色んなプリンを混ぜて食べれば美味いじゃないか!?」
「風味が損なわれる」
「じゃあ、クリームから試してみたら?」
またまた吉野の一言がマコトを活動させる。
一足早くプリンの蓋を剥がし、湯気が立つシチューをプリンにかける。
それをスプーンでパクリと食らいつく。口の中で溶け合っていることだろう。
濃厚なクリームとカラメルソースが広がる。
「……クリームは不味いな」
「シチューでやるやつがいるか?。このバカ野郎」
少しばかり度が過ぎた天然ボケならぬ天然バカのマコトに、チアキはバカ野郎と一蹴する。
こんないつもの光景に胸を痛めていったのはいつからだろうか?。不安にかられていったのはいつからだろうか?
「俺はやっぱり、給食のデザートにはプリンが相応しいと思う!」
「プリンといっても、クリームが付いてるとかコーヒー味だとか色々あるだろう?」
またチアキとマコトの会話だ。体育の授業の時も、ハルカの話題とはいえ盛り上がったように話していた。
(何だよ……マコトとチアキが仲良いのは知ってるじゃないか……)
「……そうだ! 色んなプリンを混ぜて食べれば美味いじゃないか!?」
「風味が損なわれる」
「じゃあ、クリームから試してみたら?」
またまた吉野の一言がマコトを活動させる。
一足早くプリンの蓋を剥がし、湯気が立つシチューをプリンにかける。
それをスプーンでパクリと食らいつく。口の中で溶け合っていることだろう。
濃厚なクリームとカラメルソースが広がる。
「……クリームは不味いな」
「シチューでやるやつがいるか?。このバカ野郎」
少しばかり度が過ぎた天然ボケならぬ天然バカのマコトに、チアキはバカ野郎と一蹴する。
こんないつもの光景に胸を痛めていったのはいつからだろうか?。不安にかられていったのはいつからだろうか?
「抜けないんだよ……抜けないイィィィィィ!!」
「私が抜いてやるから」帰りの掃除でも、箒が重なり合ってる場所に強引にいれたマコトが結局チアキに手伝ってもらっている。
一つ一つを順番にどけていったのにも関わらず、中々抜けない。ロッカーの角に引っかかっているようだ。
「うおりゃあああ!! わ……うわああああ~~!」
ホコリが巻き上がる。その中でチアキはマコトを押し倒してしまい、めくれて広がったスカートはマコトの腹から股を覆い隠す。
「私が抜いてやるから」帰りの掃除でも、箒が重なり合ってる場所に強引にいれたマコトが結局チアキに手伝ってもらっている。
一つ一つを順番にどけていったのにも関わらず、中々抜けない。ロッカーの角に引っかかっているようだ。
「うおりゃあああ!! わ……うわああああ~~!」
ホコリが巻き上がる。その中でチアキはマコトを押し倒してしまい、めくれて広がったスカートはマコトの腹から股を覆い隠す。
「無理に引き抜く奴がいるか! このバカ野郎!!」
こんな事も何度かあった。前からありふれた光景なのだ。
ぐっとシュウイチは胸の痛みと同時に高鳴りも感じた。チアキの怒った顔が、可愛らしく思えてくる。
こんな事も何度かあった。前からありふれた光景なのだ。
ぐっとシュウイチは胸の痛みと同時に高鳴りも感じた。チアキの怒った顔が、可愛らしく思えてくる。
家で宿題をしている時にふとチアキを思い出す。ここ毎日がそんなのが続いている。
鉛筆を止めて椅子に寄りかかる。天井を見つめていると、今日のチアキばかりを思い浮かべてしまう。
「何だか……おかしいな……これじゃまるで……」
そこでハッとする。シュウイチの中で境界線を越えてしまった。
顔を赤らめて布団をぐしゃぐしゃと握っていく。自分の気持ちがそうさせているのだろうか。
(僕………チアキのこと……)
鉛筆を止めて椅子に寄りかかる。天井を見つめていると、今日のチアキばかりを思い浮かべてしまう。
「何だか……おかしいな……これじゃまるで……」
そこでハッとする。シュウイチの中で境界線を越えてしまった。
顔を赤らめて布団をぐしゃぐしゃと握っていく。自分の気持ちがそうさせているのだろうか。
(僕………チアキのこと……)
――プレーンヨーグルト――
確実にドキドキしている。友人たちとの会話中でも、チラチラとチアキの顔を見てしまう。
自分がボーっとしてることも気づいていながらも、やはり視線を動かしてしまう。
「……て……か……。シュ……チ………シュウイチ!」
「え?」
両手を上げてバッと胸を開くようにしてマコトはシュウイチを見ていた。
我に返ったシュウイチは昨日のことを思い出して少しだけ怒声を混ぜながら話し始める。
いつだったか、チアキの家に遊びに行ってからマコトはかなり彼女と親しくなった。
それからもちょくちょく遊びに行ってるようだし、接点は遥かにシュウイチよりも上である。
「聞いてくれよ~。ハルカさんがあの時の料理本をさ……」
「……羨ましいよ……」
「え?」
自分がボーっとしてることも気づいていながらも、やはり視線を動かしてしまう。
「……て……か……。シュ……チ………シュウイチ!」
「え?」
両手を上げてバッと胸を開くようにしてマコトはシュウイチを見ていた。
我に返ったシュウイチは昨日のことを思い出して少しだけ怒声を混ぜながら話し始める。
いつだったか、チアキの家に遊びに行ってからマコトはかなり彼女と親しくなった。
それからもちょくちょく遊びに行ってるようだし、接点は遥かにシュウイチよりも上である。
「聞いてくれよ~。ハルカさんがあの時の料理本をさ……」
「……羨ましいよ……」
「え?」
帰り道、いつものメンバーで帰っている。内田・吉野・マコト・冬馬………もちろんチアキもその場にはいる。
つい最近までは何となく帰っていただけなのに、今は一緒に帰るこの時間帯が愛おしい。
「シュウイチ君は真面目だよね」
吉野の一言で、視線の先をやっと変えることとなる。
あまり意識しすぎると、自分の気持ちがバレるかもしれない。
「そ……そうかな……」
「うん。宿題とかちゃんとやるし、先生の言うこともこなしてるじゃない」
確かにシュウイチは突っ込みをいれられるような部分はない。あったとしても、それ程目立つものではない。
(でも、それって特徴がないってことだよね……)
マコトはバカだ。10年に1人いるかいないかという、バカの卵天才肌という素質を持っている。
天才肌であるチアキとは対極の存在に位置している。それだけに、チアキはマコトを下に見ている。
しかし、だからこそ色々バカな事をしても許してしまうんじゃないだろうか?
どこまでもバカだから………
「うわあああぁぁぁぁぁ!! 酷いよ……あんまりだ!。わああアァァァァァン!!」
突如マコトが悲鳴を上げて走り出す。冬馬か内田が何かしら余計なことを言ったのだろう。
あるいは2人か。マコトを追いかけて内田と冬馬が走っていく。吉野も釣られて走る。
残されたのは状況を飲み込めないシュウイチと、マイペースを保つチアキのみである。
「全く、あいつらのバカ野郎ぶりにはキリがないなぁ」
話しかけてくる声が可愛く感じてくる。昨日までとは違うように聞こえる。
「……チアキ……」
「何だ?」
「僕ってつまらない奴なのかな?」
しょんぼりと俯きながら喋ってしまう。これじゃむしろ、根暗な奴みたいに思われても仕方がない。
つい最近までは何となく帰っていただけなのに、今は一緒に帰るこの時間帯が愛おしい。
「シュウイチ君は真面目だよね」
吉野の一言で、視線の先をやっと変えることとなる。
あまり意識しすぎると、自分の気持ちがバレるかもしれない。
「そ……そうかな……」
「うん。宿題とかちゃんとやるし、先生の言うこともこなしてるじゃない」
確かにシュウイチは突っ込みをいれられるような部分はない。あったとしても、それ程目立つものではない。
(でも、それって特徴がないってことだよね……)
マコトはバカだ。10年に1人いるかいないかという、バカの卵天才肌という素質を持っている。
天才肌であるチアキとは対極の存在に位置している。それだけに、チアキはマコトを下に見ている。
しかし、だからこそ色々バカな事をしても許してしまうんじゃないだろうか?
どこまでもバカだから………
「うわあああぁぁぁぁぁ!! 酷いよ……あんまりだ!。わああアァァァァァン!!」
突如マコトが悲鳴を上げて走り出す。冬馬か内田が何かしら余計なことを言ったのだろう。
あるいは2人か。マコトを追いかけて内田と冬馬が走っていく。吉野も釣られて走る。
残されたのは状況を飲み込めないシュウイチと、マイペースを保つチアキのみである。
「全く、あいつらのバカ野郎ぶりにはキリがないなぁ」
話しかけてくる声が可愛く感じてくる。昨日までとは違うように聞こえる。
「……チアキ……」
「何だ?」
「僕ってつまらない奴なのかな?」
しょんぼりと俯きながら喋ってしまう。これじゃむしろ、根暗な奴みたいに思われても仕方がない。
「う~ん……そうだなぁ。突っかかり所は、マコトや内田に比べて無いと言っていい」
思っていたとおり、自分には特徴がない。こんな自分が、チアキに見てもらえるとは思えない。
「だが、そこがお前のいいところだぞ?」
「え?」
「マコトや内田がバカしたり、冬馬と喧嘩したり、吉野が何考えてるかわからなかったり、色々ある」
「……………」
「そんな中で、平常でいられるシュウイチと一緒にいたら、心が落ち着く」
そんな言葉が聞けるとは思わなかった。てっきり眼中にないってほどに興味を持たれてないと思っていたのに。
「お前が私の家に来たときに変わりたいって言ってたが、私は癖のないお前も好きだ」
「チアキ……」
「自覚はないが、私が変わったのもみんなの影響らしい。無理に変えなくても、変わっていくものだ。焦る必要はない」
思っていたとおり、自分には特徴がない。こんな自分が、チアキに見てもらえるとは思えない。
「だが、そこがお前のいいところだぞ?」
「え?」
「マコトや内田がバカしたり、冬馬と喧嘩したり、吉野が何考えてるかわからなかったり、色々ある」
「……………」
「そんな中で、平常でいられるシュウイチと一緒にいたら、心が落ち着く」
そんな言葉が聞けるとは思わなかった。てっきり眼中にないってほどに興味を持たれてないと思っていたのに。
「お前が私の家に来たときに変わりたいって言ってたが、私は癖のないお前も好きだ」
「チアキ……」
「自覚はないが、私が変わったのもみんなの影響らしい。無理に変えなくても、変わっていくものだ。焦る必要はない」
――プレーンヨーグルト――
ちゃんと見ていてくれた。自分がどういうものかわからないのを、チアキは見ていてくれたんだ。
少しだけ気持ちが楽になった。今なら動揺せず彼女を見ることが出来る。
「お~~~い! マコトが川に落ちそうなんだ! 手を貸してくれ!」
冬馬の声がする。またマコトがやり出したバカで一騒ぎありそうな予感がする。
「何やってんだあのバ………おい!」
「手伝ってあげなきゃ。行こう、チアキ」
「あ、うん」
手を握ってシュウイチは駆け出した。友達を助けるために。でも、それだけじゃない。
自分は変わってゆく事ができる。だって彼女にもっと近づきたいから。変わった先に彼女があるはずだから。
いつか変わるために、もうしばらくプレーンヨーグルトでいるのも、悪くない。
少しだけ気持ちが楽になった。今なら動揺せず彼女を見ることが出来る。
「お~~~い! マコトが川に落ちそうなんだ! 手を貸してくれ!」
冬馬の声がする。またマコトがやり出したバカで一騒ぎありそうな予感がする。
「何やってんだあのバ………おい!」
「手伝ってあげなきゃ。行こう、チアキ」
「あ、うん」
手を握ってシュウイチは駆け出した。友達を助けるために。でも、それだけじゃない。
自分は変わってゆく事ができる。だって彼女にもっと近づきたいから。変わった先に彼女があるはずだから。
いつか変わるために、もうしばらくプレーンヨーグルトでいるのも、悪くない。
おわり