夕暮れを告げる放送が、稲村ケ崎の街に響いた。
夜の色に染まりつつある落陽の赤い光に照らされる海岸線を、割れんばかりの喧騒が包んでいた。
人々は飽きることなく通りのそこかしこに溢れだし、それを防災服を着込んだ警察官らが必死になって制している。事態の中心地に取り残された人間を諦められないのか、置いてきたものに未練でもあるのか、あるいは単なる見物か。押し寄せる人々は皆一様に必死の形相で、事態発生より数時間が経った現在でも悲鳴と怒号が鳴りやまず、重なる声は巨大な音となって稲村ケ崎の街に響いた。
彼らの興味と執心の対象はただ一点。正午に発生した軍艦の砲撃行為により破壊されてしまった、稲村ケ崎と七里ヶ浜の街だ。
いや、厳密に言うならば───それを為した当人である、正体不明の軍艦こそか。
数日前より相模湾に突如として漆黒の軍艦が姿を現して以来、その話題は市民の間でひっそりと語られ続けている。
「この軍艦の正体とは一体何であるのか」「その目的とは」「何か嫌な予感がする」───人々が言外に感じていた鎌倉市の変貌、その中に渦巻く言い知れぬ異常と災害の気配。それについての漠然とした不安と疑問は、正体不明の軍艦という具体的な形を得たことで市民の間に急速に浸透していったのだ。
そこに持ってきて、今回の砲撃行為。
市民が感じていた危機意識、その不安を見事に的中させてしまったこの事態はかえって市民の興味を掻き立て、二射目もなくほとぼりも冷めつつある現在では近隣住民の誰もが家を飛び出して最寄りの海岸線に集まり、自分なりの憶測を語り合い遠目に事態の変遷を見守るという状況が発生していた。
ここ数日、及び今日の午前中において行政機関と警察組織は、鎌倉全域に均等に警備網を配置させていた。各所で起こる大量殺人事件や大規模事故を恐れてのことは勿論、今や暴動を起こさんばかりに熱狂する市民に対処するため、これら機関は全ての予備人員を投入せざるを得なかった。そしてその一部には、事件事故の容疑者あるいはテロリストの可能性があるとして「戸籍を持たない浮浪者」を検挙・鎮圧する役目を負った者らもいるということは、最早言うまでもないだろう。
つまるところ、件の場所を包むのは狂乱の渦であり。
本来脇目も振らず逃げ去るのが当然の災害現場に集る有象無象の群れであった。
▼ ▼ ▼
海原の空高く、一つの影が飛んでいく。
跳んでいるのではない。文字通り飛翔しているのだ。その影は人の形をしていながら、しかし鳥であるかのように空を翔けていく。
地上からはその姿を捉えられまい。その影はあまりに高く、そして速い。サーヴァントであっても視力に優れるアーチャー以外では見えるかどうか。
彼が今ここにいる理由は単純だ。相模湾海上に陣取る黒塗りの戦艦、明らかにサーヴァントの手のものと思しき正体不明の物体に対する秘密裡の偵察である。
本来あれに接近するのは至難の業だ。海上を移動する手段を持ち得る者からして限られてくるし、仮にその手段があったとして下手に動けば相手に感づかれて迎撃される。遮蔽物が何もない海上において、身を隠しながらの接近など不可能に近い。
それを為せるとするならば、例えばこのドフラミンゴのように、姿が見えぬほどの高高度を飛翔するのが第一候補に挙がるだろう。
雲の隙間を縫うように飛ぶ彼は、言葉通り雲に糸を引っ掛けることによって空中移動を可能にしている。それは逆に言えば雲が無ければ宙を移動することができないということだが、まばらに雲のかかる今においては関係のない話だ。
恐るべきは彼の有する糸の異能、その汎用性の高さと言うべきだろうか。今こうして空を翔けるドフラミンゴが、実は彼の糸によって編み出された精巧な分身であると信じられる者がそう多くあるまい。彼の座する屋敷においては人に寄生し操る糸を以て意思なき屍の鬼たちを従属させていることも、戦闘に際しては自らの肉体のみならず周囲の無機物からすらも無数の攻性糸群を呼び出すことも、彼にとっては容易いことである。
故に、最初の砲撃が開始されて数時間経った現在において、最も早くその元凶たる戦艦に手をかけたのが彼であるのは、ある意味必然であったのかもしれない。
「よ、ッとォ」
戦艦のちょうど真上で静止する。軽い掛け声と共に、指先から飛び出た視認も難しいほどに細い糸が、眼下に浮かぶ漆黒の戦艦に向かって真っすぐに伸びていく。それは戦艦の外壁に突き立つと、たわむことなくピンと強く張った。
それは震える大気に反応して声と音を伝える、糸電話の原理を用いた盗聴であった。
「どれ、出てくるのは自信過剰な猪武者か、はたまた考えなしのボンクラか……」
言いつつ、ドフラミンゴは糸を伸ばした指を耳元に寄せる。
この場所からは眼下の詳細を目視することは叶わないが、こうして音を拾うことによって内部の様子を探るというのが、彼の狙いであった。
果たしてこの戦艦の主はどのような考えを持っているのか。何を思ってここまで大それた真似を仕出かしたのか。
その真実次第で同盟を持ちかけるか戦力をけし掛けるかが決まるのだと、ドフラミンゴは言葉なく思考して。
「───素晴らしい!」
唐突に鼓膜を震わせた、およそ知性の欠片も感じられない大声に、彼ですら思わず面食らってしまったのであった。
▼ ▼ ▼
「───素晴らしい!」
陽に暖められた潮の空気が、緩やかに頬を撫でた。
人々の集う海岸線から離れた水平線、渦中の黒船の艦首にて。
茜色の空を見上げ、腕を組み仁王立ちする男は一つ頷いた。
「今この街は絶命の危機に晒されている。遍く幻想たちの跳梁跋扈、天下に名高き豪傑共の英雄譚。それらが混沌となって相交わり、かつてないほどの災厄が降り注いでいる。
だが同時にそれを否と、あるいは是なりと憤激し立ち上がる者もいよう。故に、ここまで戦火が広がったのだ」
男の言通り、この鎌倉市は地獄絵図にも等しい魔窟と化していた。被害の規模、築かれた惨劇の多様さ、そこに含まれる悪意の多寡……そんなものは最早、語るまでもなく荒れ果てた惨状となって具現している。
それを成したのは間違いなく聖杯によって呼び出されたサーヴァントたちだ。己が譲れぬ願いのため、街と無辜の住民を犠牲にしてでも悲願を成就せんと手を伸ばす者たちによる行いだ。
市街地中央部での巨大な火柱、材木座海岸での突風騒ぎ、笛田での大規模破壊、その全てを彼は視界に収め睥睨していた。
そして曲がりなりにもそれら戦闘が勃発し破壊が為されているということは、転じてそうした蛮行へと立ち向かう者らも等しく存在するということであり。
「都市を覆う未曾有の大災害、そしてそれに立ち向かう者たちの雄々しき決意と覚悟。ああ素晴らしいぞ、寿ごう。皆等しくこの魔都を戦い抜くに値する勇者に相違ない。
願いの善悪を俺は問わん。貫きたい想いがあり、それに見合う意思さえ示せるならば、俺は善哉と認めよう」
集った輝きを睥睨し、男───甘粕は震えていた。それは彼の見つめる先、すなわち鎌倉を舞台とした聖杯戦争が、真実彼の求める形で進行していたからだ。
互いに譲れぬ己が真を見出し、それを貫かんがためにぶつかり合い、自らの命を賭して相手への敬意と共に輝きを高め合う───それは甘粕が理想とする世界の在り方であり、彼が終生求め続ける楽園の原風景でもあった。
我も人、彼も人、故に対等。甘粕の求める世界とは人類全てが全霊の境地に至れる研鑚の世だ。そしてそれには、文字通り全霊を賭さねば生き残れない過酷な試練が必要であると、甘粕は考えている。それ故の歓喜である。
甘粕は笑う。笑う。満面の笑みを以て遍く聖杯戦争の全てを祝福している。
そこに自分が加われなかったのは残念だが、讃えるべき事象に変わりはないと喝采している。
その時だった。
「だが」
ぞわり、と。異質な空気が場に満ちる。
甘粕は哄笑をそのままに、おもむろに手を伸ばす。
同時、周囲を空間が歪曲したかのような揺らぎが覆った。
「何者かは知らんが、興味があるなら正々堂々と正面から来いよ。覗き見に終わるなどと、英雄の名が泣くではないか」
その瞬間、甘粕の掲げた腕が、姿形はそのままであるというのに"何故か巨大化したように"見えた。
虚像かそれとも幻覚か、真実定かならぬままに甘粕は腕を振りおろす。
何かが叩きつけられる音が、甲板に響いた。
膝をついて起き上がり、突然の事態に呻くそれは、大柄な男の姿をしていた。
「ほう、これはこれは。奇しくも俺と同じクラスで現界したサーヴァントとは、験を担ぐ気は毛頭ないが結構結構。
ともあれよく来た、歓迎しよう。何処とも知れぬ時代より現れた英雄よ」
「……てめェ」
呻く声の主はドフラミンゴその人であった。
サーヴァントの索敵圏外であるはずの超高高度、そこから糸の振動を用いて盗聴していたはずの彼は、突如として"巨大な手に掴まれる"ような感触と共に、急速に眼下の甲板へと引き寄せられたのだ。
ドフラミンゴの声には隠し切れない嚇怒の感情が含まれていた。
サングラスに遮られた視線は、しかし物理的な重圧を感じるほどに鋭い眼光をしているのだと、光景ではなく感覚として伝わるものがあった。
「随分と不躾な真似してくれるじゃねェか。こっちは穏便に話を進めてやろうって気だったが、どうやらそっちにゃその気はねェらしいな」
敵意も露わに殺気を振りまくドフラミンゴとは対照的に、軍服の男は泰然とした姿勢を崩さない。
敵意はない。甘粕は常態のまま、むしろ友好的とさえ見えるそぶりでドフラミンゴに接している。
「不躾だったのは謝ろう。いやなに、性分でな。面白そうなものには生来目がないのだよ。
何しろこれは聖杯戦争、世に名高き英雄豪傑が集うとあっては黙っておれん。開戦の号砲を鳴らしたはいいが客人に恵まれなくてな。
退屈していたところに視線を感じては、思わず手を伸ばしたくなるというものだろう?」
だが、それでも自然と滲み出る威圧感が、あろうことか殺意振り撒くドフラミンゴと対等に拮抗さえしているのだ。
その事実は、彼という存在がどれほどに逸脱し、また危険な属性を秘めているかの証左であろう。
だがドフラミンゴの心胆を最も硬直させたのは、そんな彼の纏う気配や威圧感などではなく、次瞬に出されたいっそ場違いに思えるような台詞であった。
「さて、不躾ついでだが俺は一体何を話せばいいと思う?」
「あァ?」
……こいつ、今なんと言った?
いきなり拉致同然に目の前へ連れてきて、すわ戦闘かと思えば何も考えていないと?
ブラフの可能性が頭をよぎるが、当の加害者は心底困ったようにどうしたものかと顎を撫でている。
ふざけてるとか舐めてるとか、そういう次元じゃない。
「よォく分かった……てめェ単なる馬鹿だな?」
「そう怒るな。先にも言ったが性分なのだ」
重ねて一切の敵意なく語りかける甘粕に対し、しかしドフラミンゴの忍耐は限界に達しつつあった。
生来持ち合わせる高すぎるプライドがそうさせる、というのもある。生まれることそれ自体が偉業とまで揶揄される天竜人だった彼は、地に落とされて以降も変わらぬ溺愛を受けたことにより肥大化する自意識を止めることができなかった。
不意を突かれ地に這いつくばされた、というのもある。彼が最も嫌うのは他者に見下されること。それは精神的な意味でもそうだが、物理的な意味でもまた同様であるから。
だがそれ以上に、ドフラミンゴの逆鱗を逆撫でし続けるものがあった。
「ここには同盟の算段でも立てようかと思って来てみたんだが、どうやら外れのようだな。
思い上がった屑や弱者はいくらでも利用のしがいがあるが、馬鹿はそうも行かねェ。
なんせ馬鹿だからな、どう動くかなんざ予想もできねェ」
それはすなわち、理解不能の馬鹿を相手に話さなければならないという苦行。
"何故自分がこんな徒労をかけなくてはならないのだ"という不満の爆発である。
自信過剰な猪武者なら矛先を操ってやればいい。考えなしのボンクラなら甘い言葉で自陣営に利する考えを吹き込んでやればいい。
だが馬鹿はそうはいかない。彼らは一切の常識を持ち合わせないがために、どんな行動をするのか全く予測がつかないのだ。生前におけるドレスローザでの屈辱、麦わら一味のような採算度外視で殴りかかってくるような大馬鹿共。ドフラミンゴは、死して尚あのような手合いにかかずらう気は毛頭なかった。
「そうか、お前は俺に交渉事を仕掛けにきたのか」
「その気も失せたがなァ!」
なおも訳知り顔で勝手に頷いているこいつになど構ってやるものか。
同盟交渉など以ての外、一切関わらず野垂れ死ぬことを期待するか、あるいは自ら引導を下してやるかの二つに一つだ。
ドフラミンゴが選んだのは後者であった。ここにいるのはドフラミンゴ本体ではなく影騎糸による劣化した分身だが、だからこそ躊躇する理由も無かった。大きく後方に跳躍することにより体勢を整え、十指を伸ばし弾糸の発射準備を整える。
男が備えるは腰の刀。両足を付けて立つは騎乗宝具と思しき戦艦。帯刀相手に近接戦を仕掛けるには情報不足で、しかし遠距離に間合いを開けては戦艦の砲に狙い撃たれるが道理。幸いにしてドフラミンゴがいるのは戦艦の只中であるのだから、この利を捨てるは愚の骨頂。
故に取るべきは戦艦の甲板から逸脱しない程度に間合いを開けての中距離戦。飛び道具の釣瓶打ちで削るのが最も確実な方法だ。
爆縮する魔力が両の指より放たれる十の弾丸となる。
頭上に集合した魔力が雨雲のように糸を降り注がせる。
弾糸、そして降無頼糸。合計して36にも及ぶ糸の奔流が、怒涛の勢いを以て一直線に男へと殺到した。
けれど。
「駄目だな」
その全てが、雨露を振り払うような仕草一つで纏めて霧散した。
男が行ったのは、ただ腕を横に払うという、それだけのことだった。それが一体何を意味し、そして何故攻撃が無力化されたのか、ドフラミンゴは全く理解できない。
解法という術技がある。
邯鄲法が五常・顕象の最たる術法、五つの基本術式の一つである解法は、文字通り他の存在を「解す」術だ。
それは主に力や感覚、場の状況等を解析・看破することに長ける「透」と、他の存在を直接解体・崩壊させることに長ける「崩」に分かれる。邯鄲法の基本五種の中では最も剣呑であり、最も汎用性に富む術式と言えるだろう。
甘粕が先の交錯において用いたのは解法の崩だ。自らに触れた、あるいは触れる直前にある物体を根底から崩壊させる防御無視の一閃。先の一瞬において、崩が施された甘粕の肉体は触れる全てを解体する常軌を逸した存在と化していた。
それが証拠に、薙ぎ払われる甘粕の腕に付随する形で、黒色の結晶がばらばらと散らばり落ちていた。腕に触れ、原子単位まで分解された糸群が、空中で再結晶することにより歪な黒い塊となって散らばったのだ。そしてそれは甲板に墜落するより先に、指向性を持たない魔力の残滓として解け、再度霧散した。
腕を揮う。それを除いて、甘粕は重ねて不動。足の一本を動かすこともない。
そしてドフラミンゴに向けるのは、隠そうともしない失望の視線であった。
「話にならんぞ騎兵の英霊よ。交渉事とは媚びへつらうだけの場ではなく弁舌を用いた戦争行為、すなわち己の命を対価とした尋常なる決闘に他ならん。
にも関わらず交渉の席に座らせるのが当人ではなく木偶人形とは、命を懸けるどころか対等に向かい合う気概すら感じられんではないか。
我も人、彼も人。故に平等、基本であろうが。その真すら示せんようでは、お前に勇者を名乗る資格などない」
尚も繰り出される理解不能のたわ言に、もう付き合ってられないとばかりに再度の攻撃を果たそうとしたところで、ドフラミンゴは気付く。
体が動かない。手も足も、指の一本すら自由にならないのだと。
いや、それだけではない。そもそも跳躍したはずの自分は、"何故未だに着地を果たしていないのか"。
ドフラミンゴの肉体は、何某かの不可視の力によって中空へと縫い付けられていた。
「そして」
甘粕の視線が射抜く。それを前に、しかしドフラミンゴは微かな違和感を覚えた。
甘粕はドフラミンゴを見ている。見ているが、しかし同時に見ていない。そのような矛盾を何故か感じた。
それは何故か。どういうことなのか。
大して時間もかからずに理解した。
「情けない、情けないぞお前たち。一時の好奇に踊らされ、覚悟もなしに見物するのみで一体何を為せるという?
気に食わんなぁ、喝を入れてやるとしよう。この一撃でお前たちが輝きを取り戻し、都市を覆う災厄を乗り越えてくれると信じている」
甘粕は、笑っていた。
その目が射抜くのはドフラミンゴにしてドフラミンゴに非ず。彼は、その背の向こうにある街並みを睥睨していたのだ。
すなわち───海岸に集う、無辜の住民たちを。
甘粕の後方、戦艦の中枢に備え付けられた主砲が、軋む鋼鉄の音と共に変形を成し遂げた。
軋みをあげて旋回する。照準は空中に縫い付けられたドフラミンゴに向かって。そしてその向こうにいる多くの住民たちに向かって。
子供が無理やり玩具を扱っているが如く、毒蛇のように砲身をしならせて、普通ならば物理的な機能など失っているに違いないほどの変形を果たしながら。
それでも、その主砲は壊れながらも問題なく作動していた。
常軌を逸した光景だった。これが全て邯鄲法による不条理の実現、すなわち物質創造法である創法の「形」が為せる業だということを、ドフラミンゴは知る由もない。
「安寧という名の檻に囚われ意思を腐らせる人間たちよ!
俺はお前たちが堕落していく姿など見たくはない。命が放つ勇気の輝きを、未来永劫に渡り愛していたいのだ。守り抜きたいと切に願う。
故に立ち上がれ! お前たちの勇気と覚悟で、天上の光へ至る階段を築いてくれ。俺はその果てで待ち受けよう、祝福を歌い上げるために!」
まさか、と思う暇さえなかった。
もはや戯画的なほどに曲がりくねった戦艦の主砲が、炎の咆哮を迸らせた。
放たれた砲弾は今や魔弾と化し、射線上にあったドフラミンゴの総身を苦も無く呑みこむと、数刻前の展開を再びなぞるかのように七里ヶ浜へと着弾した。
響き渡る轟音と、地を震わせる振動が、波となって戦艦伊吹の元まで轟いた。
業火が地上を舐めつくすように広がっていた。
様子を見に訪れていた多くの市民も。
それを抑えようとしていた警察官や行政職員も。
人々を救わんがため消火活動にあたっていた消防士も。
皆残らず、一切の区別なしに、塵となって消えていた。
「ふふ、ははは、ふはははははははははははははははは───ッ!!」
哄笑が響き渡る。
轟く怒号が喝采となって魔王の降臨を祝福している。
希望となるべき要素など、ここには一つとして存在してはいなかった。
【E-2/相良湾沖/1日目・夕方】
【ライダー(
甘粕正彦)@相州戦神館學園 八命陣】
[状態] 健康、高揚
[装備] 軍刀
[道具] 『戦艦伊吹』
[所持金] 不要
[思考・状況]
基本行動方針:魔王として君臨する
1:さあ、来い。俺は何時誰の挑戦であろうと受けて立とう。
※D-1エリアが再び砲火に晒され崩壊しました。集まっていた一般市民に多くの被害が出ています。
※ライダー(ドンキホーテ・ドフラミンゴ)が影騎糸によりライダー(甘粕正彦)に関する情報を取得しました。
最終更新:2020年05月06日 20:39