───人でいたいと少年は願った。
───彼女と共に生きていたいと、少年は祈った。
使い潰せる呪いの継承先として生み出され、幼き日に全てを奪われた女の子。
修羅の戦場を駆け、心も体も磨り潰しながら生きてきた彼女が望んでいたのは、ささやかな幸せだった。
兄がいて、姉がいて、笑い合える友達がいる。なんてことない、ありふれた日常の風景。
血に塗れた戦士ではなく、一人の少女として当たり前の幸せが、彼女は欲しかった。
ただ一つの譲れぬ思いを懸けて、少年と少女は幾度もぶつかり、戦い、殺し合って。その果てに黄金錬成の真実を知って。
懸ける望みを失い、最後の願いを奪われ。
ずっとずっと一人で戦ってきた少女はもう限界で、唯一残った命にすら意味はないと項垂れるけれど。
「ヒーローなんていないと言ったな。誰も助けてくれないって叫んだな!」
「なら、たった今から、ここにヒーローがいるッ! お前を助ける最初の一人だ!」
「よく覚えとけ───主人公ってのは無敵なんだよ!」
沈みゆく少女の手を掴み引き上げてくれたのは、敵だったはずの少年。
何の力も持たない、弱くてちっぽけだった男の子。
彼はいつしか少女よりずっとずっと強くなって、本当にヒーローになってくれた。
こんな私を、助けてくれた。
だから願う。どうか神さま───彼を持っていかないで。
私のヒーローを、奪わないで。
待ってほしいと伸ばしかけた腕を、銃火が貫いた。
飛び散った血と肉片が、視界を赤く染める。
痛みに歯を食いしばり、堪えきれずに膝をつく。
声の限り叫んでも、心の限り祈っても。
その声は届かない。
奇跡は起きない。
神さまなんてどこにもいない。
そのことが、どうしようもなく分かってしまったから。
「……悪いな」
「文句はいくらでも聞いてやるから」
「今は黙って行かせてくれ」
少女の手は悲しいほどに短く少年には届かない。
彼の声は既に遠く、もう二度と答えが返ってこないと分かった。
もう二度と、帰ってきてくれない。
二度と笑ってもくれない。
怒ることも、悲しむことも、些細なことで言い合うこともない。
共に歩むことも、共に生きることもできない。
それが、世界を救うということ。
私たち以外の全員を救って、私たちだけは救われないということ。
その思い出は、決して過去の光として埋葬されることはなく。
「"流出"」
───その日、少年は本物の神さまになった。
▼ ▼ ▼
《おやすみ。そして》
《目覚める時間だ》
▼ ▼ ▼
源氏山公園。
名の通り、小高い山の周辺に設立された公園の中に、
アイ・アスティンはいた。
木々に囲まれ円形に開かれた広場の隅、ベンチの上にちょこんと座って、アイは何の気なしに辺りを見渡してみる。
夜で人の気配がないせいか、静寂がむしろ耳に痛い。一面の黒い木々は本当なら暖かみを感じさせてくれるはずだろうけど、今は夜の静けさと月の光に照らされて無機的な印象しか伝わってこない。
「やっぱり寂しいところです」
溜息を吐くかのような物憂げな口調で、アイは呟く。八幡宮の時のような特殊な静寂ではなく、単純に誰もいないがための寂しさが、ここには満ちているのだと感じた。
それは聖杯戦争の進行と深く結びついているのだと、察せられないほどアイは馬鹿ではない。今の鎌倉を出歩く危険度、追い詰められていく住民たちの精神、そして命を奪われることで減っていく人口。何もかもがこの侘しい静けさを作りだしているのだと分かる。
今日は激動の一日だった。
一日が終わろうとしている今、世界は冷たい静寂の底に沈んでいる。
……聖杯戦争も、既に終わりが近いのだろう。戦いはその意義を失い、今や道徳さえ失われた冷たい安寧の時間。死と停滞によって作り出された偽りの平穏こそが、今この瞬間なのだ。
けれど。
けれど、そんな終焉期においても、誰かを救う奇跡を夢見る者はいる。"世界"を救おうと夢見る者は、いる。
例えば、そう。
あなたにとって、"世界"とはなんですか?
そう聞いてみたアイに、
キーアは笑ってこう答えた。
"あたしと、あたしの大切な人達"
続けて、アイはこう聞いた。
あなたはそれをどうしたいんですか?
キーアの答えは、『ありがとうと伝えたい』だった。
すばるの世界は『日常』で、彼女はそれに『帰りたい』と言った。
蓮の世界は『自分とその周り』で、彼はそれを『ずっと続けていたい』と言った。
騎士のセイバーさんの世界は『人々の営み』で、彼はそれを『守りたい』と言った。
アイは
すばるが眠りに落ちるまで、ずっとみんなの"世界"を聞いてまわった。
そこには色んな世界があって、みんな自分なりにその世界を救おうと必死になって。
この街にはきっと、他にもたくさんの世界があったのだと思った。
その事実を思えば、何と尊く、残酷なことだと感じる。
そう思い至った瞬間、アイは自然と瞼を伏せて。
「それは祈りかい?」
いつの間にか傍にいたセイバー───騎士の青年に問いかけられ、アイは自分が手のひらを合わせていたことに気付いた。
「えと、はい、そうですね。
セイバーさん……っていうと、被っちゃってちょっと不便ですね」
「真名呼びは流石に拙いからね。でもそれ以外なら君の好きなように呼んでいいよ。隣、いいかな?」
「では騎士さんと……はい、どうぞ」
答えながら、アイはベンチの端っこのほうに身を寄せる。騎士のセイバーと二人、隣り合って空を見上げた。
「死んでしまった人たちへのお祈りです。意味は……多分、ありませんけど」
「その口ぶりからすると、信心深いのとは少し違うようだね。君のそれは、神や運命といったものに訴えかけているわけじゃないみたいだ」
「……すごいですね。騎士さんには何でもお見通し、って感じです。これが大人のヨユウって奴なんですかね」
それもちょっと違うかな、とアーサー。二人して少し笑って、ややあってアイが続ける。
「結局のところ自己満足なんですよ。私が納得するための、私のためのお祈りなんです」
君のための? とアーサー。アイはそれに小さくうなずいて。
「信仰ともちょっと違いますけど、死んだ人のことを想ったり祈ったりするというのは、人として当たり前のことだと思ってます。
だったら、私が彼らに祈らないというのは、つまり私が彼らのことを何とも思ってなかったってことになってしまうじゃないですか。
私は確かに彼らのことを助けたいと思っていました。だから、祈るんです」
それは───
何とも、神も仏もない考えだと思った。
思想自体にはある程度共感できる部分もあったが、それにしても幼子が抱くにしては渇きすぎている。
「君は……神を信じていないのかい?」
だから。
アーサーは、少女の顔を真っ直ぐに見下ろして言った。
アイはきょとんと目をしばたかせてから、ああ、と笑って。
「ええ、まあ。いないんじゃないですかね、多分」
そんな風に答えた。
「……君の世界は、15年前に神の消失を見たと聞いたが」
「まあそうなんですけど、でも私はその瞬間を見てませんしね。それに神さまの声を聞いたなんて言ってますけど、その時のことを覚えてる人って結構少ないみたいなんですよ。だから実際には嵐や地震と同じで、いたとしてもただの現象なんじゃないかってお父様が」
アイはいっそのんびりした顔で答える。それなら、と言いたげなアーサーに、アイは尚も笑いながら。
「でもですね、それでも神さまに祈るってことは、大事だと思うんですよ」
「生者が生者のために行うことだから、かな」
「はい。神さまがいると思えば、悪いことはできません。神さまが見てると思えば、誰も自分を見てくれなくてもひとりで頑張れます。神さまがいるいないじゃなくて、神さまに見られても胸を張れるように生きていくことが大事なんだって、そう思うんです」
そう語るアイは、彼女の言う通りに胸を張り、どこか誇らしげだった。
自然と、それを見守るアーサーの表情も柔らかいものになる。
「ならば、君には確かに神が見えているんだろうね。良心という、君の中にある君だけの神が」
「そ、そう言われるとちょっと照れくさいですね……」
人の信仰とは多少の違いこそあれど、どれも似かよった性質がある。
それは時に宗教として、時に道徳として語られど、すべてに共通するのは、それが人の生きる寄る辺であるということだ。
汝、罪を犯すことなかれ。善悪や罪刑など時代と場所によって様々姿を変えるけれど、いつだとて人は彼らなりの信仰によって自らを善良であろうと心掛けてきた。
ならばきっと、神とはそうした人の善き行いにこそ宿るのだと、アイは思うのだ。
「……えと、なんだか変な話しちゃいましたね。ごめんなさい」
「いや。とても良い話だったよ。僕も改めて学ばせてもらった」
「口が上手いですねぇ、もう」
セイバーさんにも見習わせてやりたいですよ、と上機嫌で嘯くアイを横目に、アーサーは何か眩しいものを見るかのように目を細める。
それはかつて、彼がひとりの騎士であることを決めた場所での一幕にも似て───
▼ ▼ ▼
「盗み聞きか?」
「ひゃっ!?」
突然後ろからかけられた声に、
キーアは思わず飛び上がってしまう。
慌てて振り返ればそこにはあきれ顔の青年の姿。セイバー───
キーアのサーヴァントと同じクラスの彼は、仕方ないなと言わんばかりの顔で話しかけてくる。
「ま、あいつも節操なくベラベラ大声で喋ってれば嫌でも聞こえてくるか」
ほら、と手渡される小さい円筒。触ると仄かに暖かい、夜風に少しかじかんだ手を解してくれる。
それを両手で包むように受け取って、
キーアは安閑とした声を漏らした。
「いい加減喉も乾いただろって思ってな。
……一応お茶じゃなくてココアにしたけど、どうも駄目そうなら言ってくれ」
「わざわざ選んでくれたの?」
別に、と憮然な態度の彼。ぶっきらぼうに見えて、意外と他人のことを良く考えてた彼。
その様子を見ていると、何故だか心の奥底から笑みがこぼれてきてしまう。
自分のまわりには、こういうタイプの人はいなかったから。最初の頃のギーにもちょっと似てて、少しだけ懐かしい気持ちになってくる。
あ、こういうのが"微笑ましい"ってものなのかな、なんて。
そんなことを思いながら、
キーアは蓮に笑い返すのだった。
◆
「あたしのいたところには、神さまは"なかった"の」
先ほどの場所から少し離れ、史跡の近くの台座の上。
缶の開け方が分からなくて結局蓮に開けてもらったそれを手に持ちながら、
キーアはそんなことを言った。
「なかった?」
「ええ。そういう、考え方?みたいなものがそもそもなかったの。西享の人たちが来てからは"神"っていうものの意味も分かるようになったみたいなのだけど、でもやっぱり馴染みは薄いわ」
曰く。
キーアの住んでいた土地───カダス地方において神性に対する概念は存在しなかったらしい。
代わり、彼らは機関(エンジン)の導きによって日々の糧を得ているのだと信仰しているのだとか。何とも即物的、かつ醒めた合理主義めいてるなと、別に神や宗教を快く思ってるわけじゃない蓮でさえそう思った。
「でもきっと、根っこのところは同じなんだと思うの」
「というと?」
「何かを大切に思ってるっていうこと。西享の人たちにとってそれは神さまで、あたしたちにとってそれは機関。でもひとりひとりに聞いていくと、みんな違うものを大事に思ってる。そういうもの」
分かってるのか分かってないのかよく分からない顔をした蓮に、
キーアは続ける。
「機関の恵みは、あたしも大切に思ってるわ。それを作った人にも、動かしてる人にも、そうした積み重ねのすべてにも。
でも、あたしにとって一番大事なのは、色んな人の笑顔とか、優しさとか、そういうもの」
それは例えばギーやアティといった家族のような人たち。パルやルポやポルンといった友達に、アグネスとフランシスカやドロシーやアリサ・グレッグのようなご近所さん。ルアハやヴォネガット老人や黒ぎぬの子のように、今はもう会えなくなった人たちも。
キーアの見知った彼ら彼女らが、日々を健やかに過ごしてほしいという思い。それこそが
キーアにとって一番大事な、何にも譲れないもの。
「だからあたしにとっての"神さま"は、みんながいてくれるってことなんだなって。
そして、みんなにもそういうのはあるんじゃないかって。アイの話を聞いて思ったの」
そう言ってはにかんで、「あ」と顔を赤らめて。
「ご、ごめんなさい」
意味もなく両手を振り、顔を俯かせる。
「あたしばっかりいっぱい喋っちゃって。迷惑、だった?」
「いや」
後ろ手をついて少しだけ空を見上げ、蓮は言葉を返す。
その脳裏には、彼自身の経験と記憶がリフレインしている。
―――神
―――いと高き場所に在って見守るもの。
―――空にて輝くもの。
信じ難き奇跡を用いて人々を救い、
幸福すべてを司り、慈しむ。大いなるもの。
人は皆、それを信じて生きている。
ある者は米を神と呼んだ。
ある者は空疎な観念を神と呼んだ。
ある者は金や女、学歴や見識を神と呼んだ。
人とは、"神"なくしては生きていけない生き物だ。だから。
「あるかもしれないな、そういうの」
神もまた、"神"なくしては生きていけないのだ。
───二人は、一緒になって笑った。
▼ ▼ ▼
眠るすばるを、友奈の虚ろな瞳が見つめていた。
双眸が光を放つ。しかしそれは意思の輝きなどでは断じてなく、水晶体が街灯の光を反射というだけの、単なる現象に過ぎなかった。
死人のように濁った瞳は、何者をも映してはいなかった。まるで骸がそのまま、操り糸に支えられて歪に座り込んでいるかのよう。
彼女が見失ったのは、正しく己の全てか。
色褪せない思い出の尊さを前に、彼女自身の築き上げたものが圧殺されているのだろう。
「……」
穏やかな寝息を立てる
すばるの横顔を覗きこんで、しかし友奈はぴくりとも動かない。
周囲からは、かすかに聞こえる談笑の声。
何を思うこともないはずの友奈の唇は、決して開かれることはなく。
───激しい振動が、二人を襲った。
▼ ▼ ▼
「これは……!」
一瞬の自失から立ち直った瞬間には、全てが遅かった。
正体不明の振動に虚を突かれたアーサーと蓮の二人は、咄嗟に自分のすぐ傍にいた者を庇った。熟達した戦士であり超常の反応速度を持つ二人ですら、それしかできないほどに短い一瞬だった。
白い星屑の群れが、流星であるかのように次々と地面に着弾していく。片手で少女を庇いもう片方の手で剣を手繰る二人は僅かな手首の回転のみで周囲の星屑を薙ぎ払い、蓮が小さく舌打ちを漏らす。見渡す一面には更に無数の星屑が湧き出で、周辺の景色すらまともに見えないほどに白一色に埋め尽くされていた。
そう思考が過る二人の視界に、凄まじい速度で上昇を果たす小さな影が見えた。それは夜空に幾何学模様を描き、そしてそのまま何処かへと飛び去っていく。
咄嗟にアーサーが駆けだした。交錯するように擦れ違い、背中越しに蓮が剣の魔力を解き放つ。
「戦雷よ、奔れ!」
「風よ、吹き荒べ!」
瞬間、蒼白の光が二条、星屑を貫いて夜空へと駆け上がった。生じた空白は瞬間の停滞もなく殺到する星屑によって埋められたが、セイバークラスのサーヴァントが囲いから抜け出すには十分すぎるものだった。
少女を抱えたアーサーの体が、冷たい夜空を駆け抜ける。
耳元で、ごう、と風が叫ぶのをアイは聞いた。木々に覆われた夜の風景が、視界を高速で流れていく。
「すまない、少しだけ我慢してくれ!」
「───!?」
奇妙な浮遊感と共に落着、間を置かずに再度の跳躍。声にならない悲鳴さえ置き去りにしてアーサーとアイは夜闇の中へ消えていく。
それを背中に感じる気配だけで見送りながら、雷電放つ剣を振るう蓮は言葉には出さず心の中で彼らの健闘を祈った。
(頼んだぞアーサー王……すぐに片づけて俺もそっちに行く)
トレードされる形になった二人のマスターは、この状況では元のサーヴァントの手元に戻すことは難しい。互いに令呪を使って転移させようにも、魔術師ではない彼らでは念話でタイミングを計ることもできず、また転移にかかる一瞬でさえ無力な少女たちにとっては致命的だ。
この場の星屑を殲滅しようにも、キャスターやアーチャーと違って広域戦闘に向かない彼らでは相応に時間がかかるし、悠長にしていたら単独で逃げ出した
すばるの安否も危ういものとなる。
つまるところ、彼らは文字通り片手落ちとなったこの状態ですばるを追走する他はなく。ならばどちらがより適任かと言えば、より殲滅戦に特化した蓮を星屑掃討に残すが定石。
アーサーが
すばるを追い、蓮は星屑たちを引きつけるデコイとして残る。言葉を交わさずとも直感のみで互いに合意を得た、二人のセイバーの連携であった。
「レン、なにが……」
「悪いが説明する余裕はない。けど心配すんな、すぐ終わらせてやる!」
キーアを後ろ手で庇うように屈み、抜き放たれた剣閃が紫電となって遍く星屑を打ち砕く。塵となる傍から新たに押し寄せる異形の津波を真っ直ぐに見据え、蓮は立ち向かうように一歩を踏み出した。
▼ ▼ ▼
両の手足で必死に挟み込むような姿勢で杖に跨り、
すばるは飛ぶ。ドライブシャフトを掻き鳴らして、闇色の空間に身を翻す。目の前を巨大な異形が横切り、次の瞬間には無数の殺意となって背後より押し寄せる。間一髪で衝突を避け、上を目指してひたすらに飛ぶ。そこかしこで白い異形が蠢き、まるで虫の大群であるかのようにざわめいている。
自分のいる場所がどこなのか、自分は今どこをどう飛んでいるのか。それすらも分からない。
鎌倉の空は、とうにその姿を失っていた。
「ぅう、ううぅぅぅ……」
叫びだしそうになるのを堪え、渾身の意志力で悲鳴を押し殺す。
すばるが眠りより覚め、即座に事態に対応できたのは夢の中の「声」のおかげだ。目覚める時間だと導いてくれたあの声に従って、そうしていたら起き抜けの思考の白濁も突然の事態に対する困惑も一切無視して、無意識に肉体が反応してくれた。
実のところ、
すばるは未だに自分が危険回避したという事実を呑みこめてない。彼女の意識は未だにあの公園のベンチの上にあって、こうして必死になって星屑から逃げているという事実すら現実味が感じられない。
風を切る音だけが耳に煩く。
けれど背中に突き刺さるは無数の殺意。
「わたし、どこまで……」
逃げればいいんだろう、と思いが過る。
飛び立ち際に見た膨大な星屑の群れと事態に対する混乱で、セイバーたちの元に戻るという選択肢は彼女の中から失われていた。そもそもこの群れを撒いて戻るということ自体が可能なのかどうか。
この状況に曲がりなりにも心が折れなかったのは、
すばるがひとりではないからだ。その腕に抱え込むように、同年代の少女の姿がひとつ。
ロストマン、
結城友奈。
彼女を守らねば、という意識が強いというわけではなかった。自分がそんなことを思うのは烏滸がましいと考えているし、単純に彼女のことをよく知らないのだから殊更に庇護意識があるわけでもない。同情の気持ちはあるけれど、それで死地に飛びこめるほど
すばるは聖人ではない。
ただそれでも。この状況にいるのが自分だけではないという事実そのものが、
すばるを幾分か心強くしてくれるのだ。
「たす、けてよぉ……」
それでも。精一杯に勇気を振り絞って、体を動かすことはできても。
それは平気へっちゃらであることを意味していない。今も
すばるの心は軋みを上げて、恐怖に泣き叫びそうになって。
「誰か、助けて……!」
「任せろぉ!」
一陣の突風と共に、透き通るような声が
すばるの耳元を駆け抜けていった。
「……え?」
呆然とした声。しゅるしゅるとドライブシャフトの速度が弱まり、振り返れば自分を追ってきていたはずの異形の姿はどこにもない。
代わりにそこにあったのは。
「───大丈夫だったかい?」
翼持つ不思議な馬に乗った、綺麗な女の子の姿だった。
『B-2/山道/一日目・禍時』
【
アイ・アスティン@神さまのいない日曜日】
[令呪] 三画
[状態] 疲労(中)、魔力消費(大)
[装備] 銀製ショベル
[道具] 現代服(収納済み)
[所持金] 寂しい(他主従から奪った分はほとんど使用済み)
[思考・状況]
基本行動方針:脱出の方法を探りつつ、できれば他の人たちも助けたい。
0:騎士さんと一緒に
すばるを追いかける。
1:"みんな"を助けたかった。多分、そういうことなんだと思う。
2:ゆきの捜索をしたいところだが……
3:生き残り、絶対に夢を叶える。 例え誰を埋めようと。
4:ゆきを"救い"たい。彼女を欺瞞に包まれたかつての自分のようにはしない。
5:ゆき、
すばる、
キーアとは仲良くしたい。アーチャー(
東郷美森)とは、仲良くなれたのだろうか……?
[備考]
キーア&セイバー(
アーサー・ペンドラゴン)と邂逅しました。
現在セイバー(
アーサー・ペンドラゴン)と行動を共にしています。
【セイバー(
アーサー・ペンドラゴン)@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ】
[状態]魔力消費(大)、全身にダメージ、疲労(大)
[装備]風王結界
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:
キーアを聖杯戦争より脱出させる。
0:
すばるを追走する。
1:キャスターの言を信じ成すべきことを成す。
2:赤髪のアーチャー(エレオノーレ)には最大限の警戒。
[備考]
衛宮士郎、アサシン(
アカメ)を確認。その能力を大凡知りました。
キャスター(
壇狩摩)から何かを聞きました。
傾城反魂香にはかかっていません。
セイバー(
藤井蓮)と情報を共有しました。
『B-2/源氏山公園/一日目・禍時』
【
キーア@赫炎のインガノック-What a beautiful people-】
[令呪]三画
[状態]魔力消費(中)、決意
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]子供のお小遣い程度
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争からの脱出。
0:事態への対処。
1:もう迷わない。止まることもしない。
[備考]
現在セイバー(
藤井蓮)と行動を共にしています。
【セイバー(
藤井蓮)@Dies Irae】
[状態] 右半身を中心に諧謔による身体破壊(中・修復中)、疲労(大)、魔力消費(中)
[装備] 戦雷の聖剣
[道具] なし
[所持金] マスターに同じく
[思考・状況]
基本行動方針:アイを"救う"。世界を救う化け物になど、させない。
0:白の異形を殲滅する。その後、アーサー王と合流したい。
1:聖杯を手にする以外で世界を脱する方法があるなら探りたい。
2:悪戯に殺す趣味はないが、襲ってくるなら容赦はしない。
3:ゆきの使役するアサシンを強く警戒。
4:市街地と海岸で起きた爆発にはなるべく近寄らない。
5:ヤクザ連中とその元締めのサーヴァントへの対処。ランサーは……?
[備考]
バーサーカー(
アンガ・ファンダージ)、バーサーカー(式岸軋騎)を確認しました。
すばる&アーチャー(東郷美森)、
キーア&セイバー(
アーサー・ペンドラゴン)とコンタクトを取りました。
アサシン(
ハサン・サッバーハ)と一時交戦しました。その正体についてはある程度の予測はついてますが確信には至っていません。
C-3とD-1で起きた破壊音を遠方より確認しました。
ライダー(
ドンキホーテ・ドフラミンゴ)を無差別殺人を繰り返すヤクザと関係があると推測しています。
ライダー(
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)及びアサシン(
アカメ)と交戦しました。
ランサー(
結城友奈)の変質を確認しました。
セイバー(
アーサー・ペンドラゴン)と情報を共有しました。
『C-3/鎌倉市上空/一日目・禍時』
【
すばる@放課後のプレアデス】
[令呪] 三画
[状態] 深い悲しみ、疲労(大)、飛行中
[装備] ドライブシャフト
[道具] 折り紙の星
[所持金] 子どものお小遣い程度。
[思考・状況]
基本行動方針: 聖杯戦争から脱出し、みんなと“彼”のところへ帰る……そのつもりだった。
0:逃げる。
1:生きることを諦めない。
[備考]
C-2/廃校の校庭で起こった戦闘をほとんど確認できていません。
D-2/廃植物園の存在を確認しました。
ドライブシャフトによる変身衣装が黒に変化しました。
ロストマン(
結城友奈)と再契約しました。
【ロストマン(
結城友奈)@結城友奈は勇者である】
[状態]魔力消費(超々極大・枯渇寸前)、疲労(極大)、精神疲労(超々極大)、精神崩壊寸前、呆然自失、神性消失、霊基変動。
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:……。
1:……。
[備考]
神性消失に伴いサーヴァントとしての戦闘力の一切を失い、また霊基が変動しました。
クラススキル、固有スキル、宝具を消失した代わりに「無力の殻:A」のスキルを取得しました。現在サーヴァントとしての気配を発していません。現在のステータスは以下の通りです。
筋力:E(常人並み) 耐久:E(常人並み) 敏捷:E(常人並み) 魔力:- 幸運:- 宝具:-
すばると再契約しました。
【
アティ・クストス@赫炎のインガノック- what a beautiful people -】
[令呪] 三画
[状態] 健康、正体不明の記憶(進度:極小)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] アーチャーにより纏まった金額を所持
[思考・状況]
基本行動方針:抱く願いはある。けれどそれを聖杯に望む気はない。
0:私は……
1:自分にできることをしたい。
[備考]
鎌倉市街の報道をいくらか知りました。
ライダー(
アストルフォ)陣営と同盟を結びました。
アーチャー(ストラウス)の持ち込んだ資料の一部に目を通しました。それに伴い思い出せない記憶が脳裏に浮かびつつあります。が、そのままでは完全に思い出すのは困難を極めるでしょう。
ヒポグリフに騎乗しています。
【
笹目ヤヤ@ハナヤマタ】
[令呪]三画
[状態]精神疲労(大)、魔力充填
[装備]
[道具]
[所持金]大分あるが、考えなしに散在できるほどではない。
[思考・状況]
基本行動方針:生きて元の場所に帰る。
0:なにこのモザイク
1:聖杯獲得以外に帰る手段を模索してみたい。アーチャーが良いアイデアあるって言ってたけど……?
2:できる限り人は殺したくないからサーヴァント狙いで……でもそれって人殺しとどう違うんだろう。
3:戦艦が妙に怖いから近寄りたくない。
4:アーチャー(エレオノーレ)に恐怖。
5:あの娘は……
[備考]
鎌倉市街に来訪したアマチュアバンドのドラム担当という身分をそっくり奪い取っています。
D-3のホテルに宿泊しています。
ライダーの性別を誤認しています。
アーチャー(エレオノーレ)と交戦しました。真名は知りません
ランサー(
No.101 S・H・Ark Knight)を確認しました。真名は知りません
如月をマスターだと認識しました。
アーチャー(
ローズレッド・ストラウス)と同盟を結びました。
ヒポグリフに騎乗しています。
【ライダー(
アストルフォ)@Fate/Apocrypha】
[状態]魔力充填
[装備]宝具一式
[道具]
[所持金]マスターに依拠
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを護る。
0:助けを求められたならそれに応える。
1:基本的にはマスターの言うことを聞く。本戦も始まったことだし、尚更。
2:とは言ってもこの状況は一体何なのさ!?
[備考]
アーチャー(エレオノーレ)と交戦しました。真名は知りません
ランサー(
No.101 S・H・Ark Knight)を確認しました。真名を把握しました。
アーチャー(
ローズレッド・ストラウス)と同盟を結びました。
アーチャー(ストラウス)の持ち込んだ資料の一部に目を通しました。
ヒポグリフに騎乗しています。
最終更新:2019年06月21日 22:25