葛西希美SS 自分の見た目





希美が気づくと、学生寮内の自分の部屋にいた。
その姿は既に戦闘着である鉄道員のコスプレ姿になっており、自前のさすまたを取りだそうとしているところだった。

…またあの夢だ。

ここ最近になって希美がよく見る悪夢。特にハルマゲドンが不可避の状態になり、作戦会議が始まると、ほぼ毎日のように希美は悪夢に遭遇していた。
結末は知っている。この後、戦場で不意を突かれ致命傷を負い、死ぬ。
ある程度の身体の自由は利くので、その結末から逃れようと脱走しようとした事もあるのだが、いつも途中で記憶が無くなり、気がつくと戦場に立ち、その後はどんなに気を付けようと必ず槍に突かれる。

…一体どうすればこの悪夢が収まるのか…。

希美は途方に暮れていた。


自分の部屋を出る前、ふと、希美は部屋に立て掛けてあった姿見を覗いた。

…え?

その姿に希美は驚いた。確かにそこにはさすまたを持った鉄道員の姿の少女がいた。しかし、髪は黄色く、胸も自分より大きかったのである。鉄道員の格好も、普段から愛用しているものと違う。

…あれ?私の髪は緑だったはず…。

別人の可能性も考えたが、希美が手を振ると、鏡の中の少女も同じように手を振った。そして、自分の胸に手を当てると、やっぱり普段よりも大きいように感じた。

姿は違うけど、これがこの世界での自分…。

希美は不思議に思ったが、外から自分を呼ぶ声が聞こえたため、部屋を出ることにした。


「…また槍に突かれて終わった…」
夢から覚め、寮内の自分の部屋のベッドで横たわっている希美は、思わず呟いた。
連日の悪夢にうんざりしているものの、登校しない訳にはいかない。それに今の生徒会の仲間も大事だ。見捨てられる程、希美は薄情ではない。
顔を洗おうと洗面台へと向かう。そこに映っていた姿は、緑髪の自分だった。胸の大きさも格段大きくはないが小さくもない自分の胸だ。
「そうだよね!やっぱりあれは別の世界の私だよね!現実のハルマゲドンがこうなる訳ではないよね!」
これから起きる戦いの不安を紛らわすように希美は自分に語りかけていた。

(でもあの胸、ちょっと羨ましいな…。一体何をすれば大きくなるんだろう?いやいや、大きい胸は戦いにおいて邪魔になる!それに今の胸だって…!)



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最終更新:2020年07月31日 19:53