それは、一人の女の、罪と罰。
赦されて、巡礼て、死ぬ。
水の音がする。白く白く塗りつぶされる世界に、ただ水の音がする。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは涙が垂れる水の音であり。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは血があふれる水の音であり。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは、海が落ちていく水の音であり。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは、ただ。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは少女の首を手折る音であり。それは少女の臓腑を掻き回す音であり。それは少女の。
それは少女の。それは少女。それはそう。それは私。それはそう。それは。それはなんだ。
それは。そうね。それは。それは。それは。それはね。それは。それは。それは。それは。
それは。それは。それは。―――――あれは。それは。それは。それは。それは。それは。
――――ただ、それだけの悲劇と喜劇。
数えきれない唱導の声。姿の見えぬ貪欲な大衆たち。
公平無私に死を越ゆるこの女も絶gはういdf
崩れていく世界
《何故、赦す。》
消えていく空
《赦される。赦される。私の罪が赦される。》
落ちていく海
《赦されるわけがないと、魂が叫んでいる。》
崩れていく大地
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは遥か時の彼方。もう見ることもできぬ彼の地。すでに記録すらない世界。
「わたしは、あのころのあなたがいいよお」
ただそれだけの悲劇と喜劇。
「だから・・・かえって、きてよお」
みにくく、あさましく、おぞましい▆▇▅▇▃▇▇▅
――――ただ、それだけの悲劇と喜劇。
ただ。それだけの。悲劇と喜劇。
この先ダンゲロスオンライン、すでに命は札になし。
◆最終深度レベル5 春夏秋冬葉原 秋葉原ワシントン『ボンサルーテ・カフェ』の裏手のゴミ捨て場◆
秋葉原は、死に瀕していた。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄。
きっかけは一人の少年であった。
『週刊、世界の危機』創刊号は半額で特売された付録つきの本である。
少年とは世界の危機が好きな生物、それは最早世界の常識。
世の摂理には逆らえぬと少年の親はそれを買い与えた。
そして飽きた。数か月にわたって本を買い続けるのは少年という生物には重荷であったのだ。
そして捨てた。数か月にわたって作られようとしてた世界の危機はそこて主に出会ったのだ。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)は世界の危機にこういった。『光あれ』と。
瞬間、秋葉原は進化した。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄を内に孕んだ土地。
春夏秋冬たゆまぬ練習を続ける高校球児は時空を超える。それは最早世界の常識。
世の摂理には逆らえぬと秋葉原は時を超え空間を超えいざ最終深度レベル5へと。
おめでとう!秋葉原は春夏秋冬葉原にしんかした!
俗にいう、二段階連続進化である。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄が春夏秋冬葉原を蹂躙する。
一人、また一人と丸刈りになりユニフォームを着せられる。辺り一面に髪の毛だったものが、衣類だったものが散らばっている。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。最早この地に神はいない。
春夏秋冬葉原に人の存在は消え、高校球児が闊歩するこの世の地獄がここに顕現した。
その、地獄に。
山之端一人は一人佇んでいた。
彼女は生まれながらの転校生である。『どこか遠くに行く異能』。
名前すら名付けられなかった、名付けられる前から彼女の中にあった、彼女を転校生たらしめる異能。
世界を渡り、来世の体を渡り『山之端一人』として存在する。
それは、来世として生まれるはずだった者達を踏みにじり塗りつぶす、尊厳を奪い尽くす悪業だ。
山之端一人にはそれが分からない。転校生としての無限の攻撃力と無限の防御力。
その性能を持つ彼女の本質は肉体が傷ついても痛みを感じない。無限の防御力がそれを遮るからだ。
彼女は、恋がしたいのだ。
何も感じず、何もできず。
ただ恋への憧れだけを何も感じぬ肉体越しに焦がしてきた。
育たぬ情緒を幼いままに抱え込み。
肉体の最奥の最果てで。無敵の本質の中に閉じこもり。
何も感じず、何もできず。
ひざを抱えてせまつくるしそうにすわつている。
失敗すれば体を捨てて次の世界へ。
いつもいつでもうまくいかない。保証なんてどこにもない。それはそうだ。
それでも。
異能を使用すればやり直せるのだから。
失敗しそうになったらやり直せばいいだけなのだから。
―――幼い心は、無敵の本質の中でそんなことを繰り返しているだけなのだ。
彼女は、恋がしたいだけなのだ。
恋に乞い焦がれ世界を蝕む悪霊怨霊魑魅魍魎。
それが、山之端一人。
誰はばかることなき、邪悪である。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄が春夏秋冬葉原を蹂躙する。
一人、また一人と丸刈りになりユニフォームを着せられる。辺り一面に髪の毛だったものが、衣類だったものが散らばっている。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。最早この地に神はいない。
春夏秋冬葉原に人の存在は消え、高校球児が闊歩するこの世の地獄がここに顕現した。
その、地獄に。
向かう一人の尼僧がいた。
(私は、何の役にも立てなかったのだ。)
思い返すは始まりのあの日。
高校球児の嵐の中、己の巡礼は役に立たぬ。
もともと高校球児であるものに高校球児化を返したところで何も効かず。
ただ、己をすり減らしながら進むしか尼僧には術がない。
常にそうだった。
肝心なところで己は何の役にも立ちはしない。
―――思い返すは始まりのあの日。
かちゃ、かちゃかちゃかちゃ。
香ばしいパンの香りがする。
香ばしいコーヒーの香りがする。
香ばしいウインナーの香りがする。
シャキ、シャキシャキシャキ。
レタスがちぎれる音。
トマトが切れる音。
キュウリを刻む音。
かたん。
――――朝食の、音。
穏やかなほほえみを。その声にはやすらぎを。ひだりてにはぬくもりを。
コーヒーからは、しあわせなかおりがした。
女は、男と共に食卓を囲んでいた。
男が用意した食事を女はしあわせそうに食べていた。
女のひだりての中には、新しいいのちがあった。
こうふくの、かたちであった。
(思い返すは、始まりのあの日。)
その日、青白い光を発生するヒトのカタチが落ちてきた。
ヒトのカタチは山の端に建っていたその一軒家に堕ちてきた。
アトミック・精子による射精能を孕んだそれは。無限の攻撃力と異能を抱えた天然の転校生砲と化したそれは。
タイム・精子に弾き飛ばされたそれはその一軒家に堕ち、巨大なキノコ雲を発生させる。
その『現象』は隕石の落下と呼ばれ、その『現象』による死者はいないと言われている。
それは遥か時の彼方。もう見ることもできぬ彼の地。すでに記録すらない世界。
射精能に被爆した、しあわせを享受するはずだった一家を『どこか遠くに飛ばした』大災厄。
後悔と苦悩の果てに何もできずに消え去った一人の転校生が起こした大災厄。
おとこは消え去り、おんなは飛ばされ、最後になにかが残された大災厄。
おんなのひだりてにあったいのちは、どこか遠くの山の端で一人、射精能に侵されたからだを抱え、ひとりぼつちでないていた。
ひとりぼつちでないていた。
それは、一人の女の、罪と罰。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄が春夏秋冬葉原を蹂躙する。
一人、また一人と丸刈りになりユニフォームを着せられる。辺り一面に髪の毛だったものが、衣類だったものが散らばっている。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。最早この地に神はいない。
春夏秋冬葉原に人の存在は消え、高校球児が闊歩するこの世の地獄がここに顕現した。
その、地獄に。
山之端一人は一人佇んでいた。
――――始めは、ただ本を読んでいた。
白い白い病室の中。
閉じた狭い世界の中。
抜け落ちる自分の髪。
色鮮やかな本の世界。
外ではない、世界。
ただそれだけだった。ただそれだけだったのだ。
『どこか遠くに行く異能』という、生まれながらにしての転校生となることを宿命づけられた少女の人生は、そこから産まれたのだ。
何も分からずに彷徨い続け。
死ねば終わりと言うわけでもなく。
生きるのに不都合な記憶や肉体は削げ落ちて。
ただ、どこかどこかへと渡り続ける、転校生。
彼女は、願っているだけなのだ。
いつかの病室のどこかの本で、憧れていた。
ほしを目指して、狭い狭い世界を、せまつくるしそうにわたつている。
彼女は、恋がしたいのだ。
本にあったような、本来ならば許されるはずの、当たり前の恋が来てほしい。
処女のままでは死ねないと。山之端一人は歩いている。
無限の防御力を持った処女膜が王子様を求め叫んでいる。
無限の攻撃力を持った恋愛脳が王子様を求め叫んでいる。
積極的に、あるいは消極的に。
燃えるように恋をして、いつかいつか自分はきっとやってやるのだ。そう―――
少女は望む。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄が春夏秋冬葉原を蹂躙する。
一人、また一人と丸刈りになりユニフォームを着せられる。辺り一面に髪の毛だったものが、衣類だったものが散らばっている。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。最早この地に神はいない。
春夏秋冬葉原に人の存在は消え、高校球児が闊歩するこの世の地獄がここに顕現した。
その、地獄に。
向かう一人の尼僧がいた。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
あるき、あるき、ただあるく巡礼の旅路。
ひだりてにあったぬくもりをさがしもとめてあるきつづける。
はなればなれになったぬくもりを求めた故に目覚めた異能。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
それは己の罪を忘れぬ異能。それは己の罰を求める異能。
ぬくもりを手放したあの日を悔いて悔やんで忘れないために得た異能。
ハズカシメヲ。ハズカシメヲ。我ガ罪悪ニ罰業ヲ。
――――罰はすでに。あなたの罪は赦さgはういdf
赦されて、巡礼て、死ぬ。
己のせいで殺したと悔やんだぬくもりを手放さないために生まれた。
世界一やさしい異能。
彼女が巡礼を続ける限りぬくもりはあり続ける。
手放した/己のせいで消えたぬくもりに降り注ぐ災いは全て巡礼が引き受ける。
それはコトワリを欺きコトワリに逆らう愚行。
本来与えられる災いを一方的に奪い取る愚行。
人一人の異能では賄いきれず、奪った災いはいずれ元の持ち主に帰ってしまう。
己を災いで傷つけて、抱えきれずに災いは帰り、結局守るべきものも傷つけて。
いつか赦されてつながりが切られるその日に脅え、ぬくもりをさがしもとめてあるきつづける。
あるき、あるき、ただあるく巡礼の旅路。
ぬくもりと繋がる為に守るために永劫と言える時を超え世界を超えて『耐える』異能。
世界一やさしい異能。
異能の名は、『赦サレム巡礼』と言った。
◆??????????????◆
巡礼の旅路で、尼僧はぬくもりの所業を知る。
それは少女の首を手折る音であり。それは少女の臓腑を掻き回す音であり。それは少女の。
それは少女の。それは少女。それはそう。それは私。それはそう。それは。それはなんだ。
それは。そうね。それは。それは。それは。それはね。それは。それは。それは。それは。
それは。それは。それは。―――――あれは。それは。それは。それは。それは。それは。
――――ただ、それだけの悲劇と喜劇。
数えきれない唱導の声。姿の見えぬ貪欲な大衆たち。
公平無私に死を越ゆるこの女も絶gはういdf
かつて彼女だったものたちが散らばっている。
山之端一人と呼ばれていた、かつて山之端一人だった来世となるはずだった肉体たち。
恋に乞い焦がれ世界を蝕む悪霊怨霊魑魅魍魎に食い散らかされた、名前のない残骸たち。
――――いずれ、彼らは地球へ向う。山之端一人の元へ向う。
まだ何ものでもない残骸たちが何ものかになったとき。必ず彼女の元へ向う。
すでに彼女を追い求める精子群の存在を知っている。
すでに彼女を追い求める異能者の存在を知っている。
――――いずれ、彼らは地球へ向う。山之端一人の元へ向う。
そうなる前に巡礼の旅路に呑みこんだ。
まだ何ものでもない残骸たちの形になる前の怨嗟の声を、海の底へと閉じ込めた。
――――いずれ、彼らは地球へ向う。山之端一人の元へ向う。
それはコトワリを欺きコトワリに逆らう愚行。
本来与えられる災いを一方的に奪い取る愚行。
人一人の異能では賄いきれず、奪った災いはいずれ元の持ち主に帰ってしまう。
己の巡礼は、いずれ山之端一人に帰っていくだけだというのに、それでも。
止めると言う選択肢は、存在しなかった。
いずれ我が子に出遭うために彼女への災いを呑みこみ続ける。
呑みこみ続けて、吐き出して、それでもまだ、呑みこみ続ける。
それだけが女の存在理由であったために。
我が子に乞い焦がれ世界を呑みこむ死霊生霊百鬼夜行。
それが、逢合死星。
誰はばかることなき、醜悪である。
◆最終深度レベル5 春夏秋冬葉原 秋葉原ワシントン『ボンサルーテ・カフェ』◆
全ての災いが集約する。因果の応報はここに。
そこには一人の少女がいた。
無敵の本質に引きこもり、ゲーム感覚で憧れを漁り続けて渡り続けた悪霊怨霊魑魅魍魎。
そこには一人の尼僧がいた。
巡礼の旅路にすがりつき、我が子の為と狂気を振りまき歩き続けた死霊生霊百鬼夜行。
大災厄が集約する。
誰はばかることなき悪であった彼女たちに因果が往訪する。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄が春夏秋冬葉原を蹂躙する。
一人、また一人と丸刈りになりユニフォームを着せられる。辺り一面に髪の毛だったものが、衣類だったものが散らばっている。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。最早この地に神はいない。
春夏秋冬葉原に人の存在は消え、高校球児が闊歩するこの世の地獄がここに顕現した。
その、地獄で。
ようやく親子は再会できたのだ。
逢合死星はすでにその肉体は限界を迎えている。
全てを抱えた生死の戦線の果て、つなぎとめていた精神は既に切れ。
物心なき我が子を抱えていたあの日のぬくもりに捉えられている。
山之端一人はすでにこの世界での恋愛に見切りをつけている。
何も感じぬ無敵の本質の中で、ゲーム感覚でただ次の世界を渡る準備をして心はここになく。
物心なきときには確かに感じていた母のぬくもりも、無限の防御力に隔てられて今は感じられず。
空が割れていく。
白く白く、空が割れていく。
割れていく空から、無数の精子が溢れ出す。
それでも逢合死星は我が子を抱きしめていた。
ただ、ひたすらに抱きしめていた。
海が割れていく。
赤く赤く、海が割れていく。
割れていく海から、無数の残骸が溢れ出す。
母が泣きながら子供にすがる。
母が、すがる。
すがりついて、泣いている。
出会えたことが奇跡に等しきはずなのに。
我が子がどんな姿でも、それは喜ぶべきことの筈なのに。
我が子の今までの旅路を思い、身勝手に悲しんでいる。、
「わたしは、あのころのあなたがいいよお」
母が、すがる。子にすがる。しあわせにいきてくれと。
子供に憧れを捨ててくれと、おぞましくもすがりつく。
一度手放したそれに、浅ましくもすがりつく。
「だから・・・かえって、きてよお」
みにくく、あさましく、おぞましい。
母の愛である。
さて。
皆さまにもすでにご存じのとおり。
母親とは、子供のことが大好きな生物なのだ。
そして、ここから先も言うまでもないことであるとは思うが一応説明しておこう。
転校生の無限の防御力は、淫魔人の技に貫通される。
無限の防御力には穴があるのである。
それ即ち、愛。
逢合死星の愛は無限の防御力を貫通しうる。
そして山之端一人は愛を求めて流離っていた悪霊怨霊魑魅魍魎である。
そう。
子供とは、母親のことが大好きな生物なのだ。
◆最終深度レベル5 春夏秋冬葉原 秋葉原ワシントン『ボンサルーテ・カフェ』◆
そして終焉が訪れる。
【局地的地震及び地盤沈下による津波、洪水現象そして頻発する落雷を引き金に巻き起こる台風、竜巻
あるいは噴火、火砕流、火災おやじを追いかける猛烈な吹雪女の喧嘩は隕石も食わず喰わずや濃霧、
スモッグを着た園児による疫病、公害悪害悪を許さぬ正義によるテロ、軍事事故により暴走する鮫、
蜂、イナゴなど生物系の大量発生による高校球児】という未曽有の大災厄が春夏秋冬葉原を蹂躙する。
一人、また一人と丸刈りになりユニフォームを着せられる。辺り一面に髪の毛だったものが、衣類だったものが散らばっている。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。最早この地に神はいない。
春夏秋冬葉原に人の存在は消え、高校球児が闊歩するこの世の地獄がここに顕現した。
その、地獄に。
二人はずっと佇んでいた。
空が割れていく。
白く白く、空が割れていく。
割れていく空から、無数の精子が溢れ出す。
海が割れていく。
赤く赤く、海が割れていく。
割れていく海から、無数の残骸が溢れ出す。
逢合死星は、そこで泣いていた。
ずつとずつと泣きじゃくっていた。
己はなんとあさましくおろかしいのだと。
ただ一度我が子に会うことができればと。それだけを道しるべに死を超えて星を巡ってきた。
ただ一度、ただ一度と。それ以外何も望まぬと。
ああ、なのに。だというのに。
その誓いが砂山のように崩れていく。
ただ一度、ただ一度と。それ以外何も望まぬと。
その願いが叶った今では。我が子に出逢った今となっては塵芥。
もう一度。もう一度。
このこともういちどだけ。しあわせなじんせいを歩みたいのだと。
そう、願ってしまっている。
独りよがりで度し難く、己を慰めるための欲望に果ては無い。
みにくく、あさましく、おぞましい。
母の愛である。
だが、最早この地に神はいない。
通りすがりの主(41歳独身彼氏なし。空を飛ばない者をさす)も高校球児になってしまった。
そう、最早この地に神はいない。
独りよがりの自慰行為の結末が帰ってくる。
何を探していたかにようやく気付いた幼子に集約する。
幼子はようやくこれからを生きていくというにはあまりにも無邪気に暴れすぎた。
その応報は山之端一人を殺すだろう。
――――それでも、彼らは地球へ向う。山之端一人の元へ向う。
何もかもが砕けた空間の中、ひときわ大きな残骸が浮かんでいる。
それはかつて無限の力を宿し動いた機動兵器。対精子転校軍最強最後の超兵器。
その名を『青・米・子』と言った。
役目を果たした残骸の中で、分身の異能を持った転校生軍の一人は思う。
分身による組体操は破られ、何もかもを精子に貪られ、後はその命を終えるのみ
だが、それでも。
(私は、何かの役に立てたのだろうか?)
何もかもを失おうとも、これだけは覚えている。
故郷を失う悲しさを、帰れない寂しさを、いつまでも覚えている。
――――それでも、彼らは。
無い筈の口で、▆▇▅▇▃▇▇▅は幸せを願う。
無い筈の頭は、▆▇▅▇▃▇▇▅は幸せを願う。
無い筈の足が、▆▇▅▇▃▇▇▅は幸せを願う。
何もかもがなくなろうとも。
ほしに願う事だけは、赦されている。
――――それでも、なお
希望があると信じて、山之端一人の元に向かうのだ。
全ては『楽園』を守るために。
故郷を奪われる人を、これ以上増やさないために。
奇跡はある。異能を持つ我らには最後まで希望は残されている。
我らも彼女を守るのだ。例え幾たび疎まれようとも、空より白い絶望が降ってこようとも。
希望があると信じて、山之端一人の元に向かうのだ。
ただ、それだけを道しるべにして。
われらはほしをさがすのだ。
そして。
そのイきつく果ての先で。
きっと我らは。
あなたたちは。
「▆▇▅▇▃▇▇▅・・・」
「あなたは、あなた、タチは。」
「し、あわせに、オナり――――」
かくて一つの転校生軍が壊滅する。
無限の攻撃力と無限の防御力を誇る転校生たちの無限の敗北を喫し続けた無限の旅路。
その巡礼の旅路の最後の最期の最終に見えたながれぼしは。
地球に向かう一筋の流れ星は。
決して。夢幻ではありはしない。
因果が集約する。因果が往訪する。
それは遥か時の彼方。未だ見ることもできぬ彼の地。未だに記録すらない世界。
それはいつかイきつく果ての先。
例えるならば、そう。それは未来からやってきた一筋の流れ星。
『彼女』のこれからも続く巡礼の旅路の因果が今ここに往訪する。
永劫に続く旅路の果てで、彼女が得た叡智は結実する。
それは A 始まりの名を冠する愛(A.I)
それは Z 終焉に対抗するための皇帝(ツァーリ)
それは逢い巡り合い巡る全ての死より抗うために願われる流れ星。
肯定せよ、彼女のこれまでの巡礼を。
皇帝よ、これまでの道のりに祝福を。
叫べ。今までの行程は無駄ではないのだと証明するために。
それは、彼女のイきつく果ての先を守るために祝福された完全兵器。
それは、終焉に抗うために一人、時の最果ての玉座に君臨せし絶対皇帝。
流れ星が咆哮する。この日この時この瞬間の為、私は巡礼してきたのだと。
母が生んだ『姉』を守る為に、母の願いをかなえるために。未来からやってきたのだと。
一筋の流れ星。その、名前は
「ゼン!!カイ!!ザアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
ゼンカイザーver999・・・対終焉用汎用決戦兵器、コードネーム『ルルハリル』
すなわち、永劫を生き続けた対精子連合軍最高司令官、逢合死星博士が最後の最期の最終に作りあげた。
母の、愛である。
自慰を経て、叡智の果てに、愛を成す。
そう、これこそが。
俗にいう賢者タイムである。
春が、来る。
続く