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『真野の諸々裏設定』(by まめ)


負けたので、真野の諸々裏設定でもつらつらと。

キャラクター
人間として認識されてる金元素で、これは読者の観測からIDを獲得して本の世界から出て来た『ソフィーの世界』のパクリ。
イデアの世界からこっちの世界に来る時に人間のIDを獲得したとかそんな感じ。他の風~土も同じ様な魔人になってるんだと思う。
金貨と人間の姿のどちらが実体とか本体とかではなく、両方が正体。

銃を撃たない理由は遺跡などを自分の銃弾で破壊しないため。
ただし、他人や自然による破壊はすなわち歴史なのであまり気にしていない。
(100年前に誰かが壊したか、今目の前で誰かが壊したかの違い)


能力
俺の中ではただの「おまじない」だけど、彼は「認識の魔人」なので、どの解釈でも正解だと思う。
というか、発動失敗しても1/2で狙った面が出るので、その場合は本人も発動成功したのかどうか分からないし。
発動率は4元素のバランスが悪いと下がります(決勝で使う予定だった)。普通の部屋で90%、製鉄所なら10%、海で1%ぐらい。

この能力はたぶん対戦相手のみんなが苦労したと思うんですが、敢えて言うとたぶん俺が一番苦労してると思います。
能力+知恵で頓知が作れる他の魔人と違って、こいつには頓知に組み込む自分の能力が無いからです。


SS
プロローグ
元々1回戦で使うはずのネタを繰り上げて使用。
何だかんだでこれが一番出来が良かったかなー。

1回戦
時間があったので、他のより読みやすいと思う。
一夜とは最初はあの後も戦ってたけど、読み返すと助長だったので丸々カット。
男同士が森で追いかけっこするSSとか誰も読みたくないですよね。

2回戦
試合展開が地味だったので「地味な試合を解説したコラム」という画太郎的な手法で解決。
リアルコイントス。なので俺の事は稲枝さんのイラストでイメージすると良いと思います。

準決勝
殆ど「ビッチや痴女には弱点を見破られる」ってネタ以外無い感じ。鏡子を出したのはその理由。
この辺に来るとネタは無いわ将棋では負けまくるわで凄く辛かった想いででいっぱい。
インパクト不足なので、頭に?マーク浮かべながら何回か読み返してもらおうと思って書いたのだけど、
基本的にはどういう解釈をしても正解です。イデアの金貨はそういう能力。


裏決勝戦前幕間SS『All Star!』(by 意志乃 鞘@ははは)


 『SNOW-SNOWトーナメントオブ女神オブトーナメント ~「第一回結昨日の使いやあらへんで!チキチキ秋の大トーナメント」~』
 表トーナメント決勝戦、そして裏トーナメント決勝戦の幕がもうすぐ上がろうとしていた――。


 某農大。
 トーナメントで敗れた沢木惣右衛門直保は、先輩の美里と川浜に呼び出されていた。
「まーったく、なんで負けとるんやお前は」
「はぁ……すんません」
「ここはやっぱり俺達が出るべきだったかなぁ」
 例え賭けが成立しなくなるとしても、どうせなら賞金1000万だけでも獲得しておけば良かったか。後悔先に立たずというやつである。
「――でもま、いい勉強にはなったやろ?」
「そッスね」
 直保の心には表と裏、両方で戦った強敵達との戦いが強く刻まれている。まるでついさっきの出来事かのように鮮やかに思い出す事ができた。
「なんつーか、世界は広いって……そんな気がしました」
 今なら、勝手気ままに世界へと飛び出した兄貴の気持ちが少しだけ分かる。そんな気がした。だけど悔しいから口には出さない。
「で、だ」
「はい?」
「希望崎の女の子と知り合えたんだろ? 可愛い子とかの情報はちゃんと仕入れてきたんだろうな」
「……えっと、話が見えないんスけど」
「かーっ、分かれや! ミスダンゲロスやミスダンゲロス! 次はそいつに結城を送り込もうっちゅうことになってな」
「蛍を!? 一体何がどうなってるんスか!?」
「えぇから、お前は今回のコネを使ってちょいと調べてくるんや」
 直保の苦難の日々は終わらない。


 何でも屋「封鈴花惨」が集まる広い部屋。相変わらず物が散乱している辺り、部屋の主の性格がうかがえる。
 トーナメント参加者の櫛故救世は、リーダーである虹瀬人生に簡単な報告を済ませていた。
「……というわけで、負けはしましたがサクラとしての最低限の仕事は果たしました」
「結局、報酬は無いがな」
「う……」
 痛いところを突かれたのか苦い顔をした救世に、しかしあまり気にするなと人生は声をかける。
「勝ち進んでわざわざお前の手の内を晒すリスクを考えれば、一回戦負けはむしろ賢い選択だ」
「そう……ですかね」
 言われてみれば、あの大会は何かおかしかった。
 警察に公安、裏世界の住人も参加していた。当然、多方面から注目されているに違いない。
 そう考えてみれば、成る程。今後の仕事を考えれば、あまり派手に目立つのは良くない。
「……だが、お前が眼鏡をかけさせられて喘いでる動画がネット上に拡散してるが、どうしたものか」
「ちょ――!?」
 世界中に広まった動画をなんとかするには、例えスーパーハッカーでも難儀である。


 真野風火水土と石田歩成。
 トーナメントを通じて知り合った2人は、最近将棋盤を挟んで会話する事が多い。
 言うまでもなくこの日も真野の全敗ではあるのだが。
「あぁ、うん――ちょっと待ってくれ」
「これで8回目ですよ、この対局で」
「いやいや。今度はちゃんと活かす。実は勝ち筋が見えたんだ」
 勿論、歩成が圧倒的な勝利を収めたのだが。
 対局後の休憩として、2人はおやつを食べながらとりとめのない雑談をしていた。
 羊羹の最後の一切れを口に運んだ歩成の視界に時計がちらと入り、彼はあることを思い出す。
「あ、そういえばもうすぐ決勝始まりますね。どっちも」
「そうだったな。君はそれぞれ誰が勝つと思う?」
 真野の言葉。それは言外に賭けをしようとほのめかしていた。賭け将棋の負けをここで取り戻そうとしているのだろう。
「皆さんここまで勝ちあがってきただけ実力者ですから、読み辛いですね。実際に手合わせしたわけでもありませんし――」
 言ってから、いや、と首を振る。
「……ある意味、ミドさんと手合わせはしたんですけど」
「うん?」
 何のことか一瞬分からず真野は首を捻る……が、すぐに思い至ったのか、ぽんと膝を叩く。
「そういうことか。――『兄弟』」
「な、なんか気まずくなるからやめてくださいよ……!」
 動揺したせいか、次の対局では歩成の駒は少々乱れることになった。
 ――勝敗はいつも通り。


「見つけたぞ、便利屋!」
「えっ、なんだ……!?」
 唐突に背後から声をかけられた南瀬弘市は驚きつつ振り向く。正確に名前を呼ばれたわけではないが、便利屋というからには間違いなく自分を呼んでいるのだろう。
 そう、弘一の仕事は便利屋である。トーナメントの参加者ではないが、適当に絡んで小金を稼ごうということでこの大会中、色々と動き回っていた。
 今のところ表立った仕事は無い為、収益は寂しいものだ。――尤も、表沙汰になってないところは別として。
 そんな自分に声をかけてきたのは一体誰か。名を問うてみると、男はメロスと名乗った。
「……で、そのメロスさんが何の用だい?」
「麻雀の面子を探していた!」
 ――その瞬間、呆気に取られた弘一は間抜けな顔をしていただろう。
 それもそうだ。麻雀のメンツが欲しければ適当な雀荘にでも行けばいい。わざわざ便利屋に金を払って依頼することではないのだ。
 何故自分なのか。理由を聞こうと口を開くが、言葉を発する前にメロスの背後に居たナニモノかが先に口を挟んだ。
「メロスさン。面子は見つかったノ?」
「いあいあ~」
 ぞくり。
 背筋が凍る。出会ってはいけないものと直面してしまったことを直感で理解していた。
 成る程。これなら確かに常人が打つには役者不足――!
 そしてまた、最早逃れることはできないだろうことも把握する。
「ステルスミーコとヰ・ソノ君ハ、誰にも負けないヨ」
 絶望と狂気が渦巻く雀鬼の世界に、南瀬弘市は足を踏み入れる――。


 トーナメントに参加した正体不明の生き物、ボルネオ。
 いや正確には正体不明だったというべきか。彼は試合で魔オランウターンであることを看破され、能力の加護を失って捕獲されていた。
 数々の魔人を殺した凶悪狂暴な魔猿は、しかし今、檻の中で静かに座していた。
「しっかし、ボルネオ……随分大人しくなりましたね?」
「まぁな。っつっても、あれが無けりゃどうなってたか分かりゃしねぇが」
 飼育係の男が、檻の前に置かれた四角い箱を指差す。テレビだ。
「まさかあのトーナメントの試合を流してやれば大人しくなるなんてな……」
「逆に荒れそうなもんすけどねぇ。こいつにどういう心境の変化があったんでしょう」
 そこまで話してから、もう1人の飼育係がふと気付く。
「あれ? そういえば試合がやってない時間は何流してるんです?」
「お前知らなかったっけ。これだよこれ」
 箱に繋げられたDVDプレイヤー。その隣に置かれた、DVDのパッケージを手にとって見せる。
 DVDのタイトルは――『サルでも分かる英会話』。
「Wooooo――b……bo」
 ――Borneo
 あの戦いが彼に何を目覚めさせたのか。それを知る者は、まだ誰もいない。


 柏木茉奈は落ち込んでいた。
 理由は先日の出来事だ。トーナメントにて敗北した羽山莉子の様子を見る為に、運営の許可を取って中に入った彼女はある場面を目撃した。
 莉子が白王みずきの陣中見舞いをする為に部屋に入っていったのだ。いや、それだけなら大した問題ではない。
 ――莉子ちゃんとみずきちゃん……仲、いいんだなぁ。
 うっかりしていたのか、莉子は部屋に入るときにドアをちゃんと閉め切っていなかった。
 そして、悪いとは思いつつも茉奈は中を覗いてしまったのだが……。
「……あぅ」
 その時の事を思い出すと泣きそうになってしまう。
 楽しそうに談笑していた。莉子がみずきに好きと言っていた。それに何より――
「――ん」
 胸が締め付けられるように痛くなる。
 莉子とみずきが……顔を重ねていた。
 実際のところ2人は額を重ねていただけであり、茉奈が想像するようなことはしていない。
 だがわずかな隙間から部屋を覗いていた茉奈にはそうとしか見えなかった。
「……キス、してた」
 今まで耐えていた涙がついに零れ落ちた――。
「――茉奈、どうしたの?」
「――!」
 莉子が居た。慌てて涙を拭いて笑おうとする……が、酷いものだ。
 見かねた莉子は即座に彼女を抱きしめながら何があったか問う。
「ど、どうしちゃったの!?」
「う……私……!」
 莉子の柔らかさ、体温を全身に感じて一度せき止めた筈の涙の堤防が再び決壊する。
「私、私ね……!」
 そしてあの日見たことを泣きながら話す茉奈。
「――」
「その事を思い出すと、私、壊れちゃいそうで……!」
 茉奈の言葉が最後まで紡がれることはなかった。
 莉子が唇を重ねたのだ。
 ん、と息継ぎの音だけが部屋に響く。
 しばらくして――
「……ごめんね。そんな想いさせてたなんて」
 でも、
「でも、信じて。私の唇は……ううん、私は――茉奈だけのものだから」
 真っ直ぐな瞳。
 分かる。莉子が嘘をついていないことは。
 何故なら、それが茉奈の大好きな――ヒーローだからだ。
「ん……」
 今度は、茉奈から唇を重ねた。


 戦いに敗れた双子の触手、そどむとごもら。
 『子どもを作る』という夢を打ち砕かれた弟は、粘液の涙を零していた。
「お姉ちゃん……僕……!」
 弟が考えてることは、言葉にされなくても姉には分かる。彼は双子であり1本の触手。
 心も体も1つだからこそ、弟の悲しみは痛いぐらいに伝わっていた。
「もう、無理なのかな……」
 なんとかしてやりたいと思う姉。
 勿論、自分が子どもを作りたいというのもある。だが、それ以上に弟を悲しませたくないのだ。
 しかし、触手の不妊治療はどれだけお金がかかるか分かったものではない。
 いや、それどころかお金があっても治せる医者がいるかどうか――
「――医者?」
 何か、引っかかるものがある。
 つい最近、自分達にとってとても重要な出会いがあったような。そうだ、あれは確か――
「――ワン・ターレン!」
 トーナメントの治療役を請負うワン・ターレン。必ず誤診をする能力を持つ転校生。
 そう、彼に「もう二度と子どもを産めない体でしょうな」と診察してもらえば、全てが解決する!
 姉が挙げた名を聞いて、弟も考えが至ったのだろう。触手がびんとそそり立つ。
「そうだよ! その手があった!」
「……でも、どうやってその言葉を導き出すの?」
「簡単だよ! セックスを、とっても激しいセックスをするんだ! 百人が見たら千人が『やりすぎだ』と言うようなセックスをすればいい!」
 セックスの権化である触手なら、それができる――!
 こうして、触手姉弟は愛のままに絡まり始めるのであった。


「……まったく、面倒だ」
 メスについた血をふき取りながら、医死仮面は独りごちる。
 仮面武闘會に戻らない意思を見抜かれたのか、最近組織から暗殺者が送られてくるようになった。
 制裁か。それとも情報漏えいを防ぐ為か。どちらにせよ、理解はできる。
「が……いまいち解せんな」
 どうにも暗殺者の質が低い。いくらなんでも組織は自分の力量を把握している筈なのにだ。
 ……もしかして、こいつは嫌がらせか?
 嫌がらせのためだけにわざわざ暗殺者を放つなんてそんな馬鹿な――首を横に振ろうとするが、どうしても否定しきれない。
 裏社会の人間なんてのは大なり小なりどこかイカれてるものだ。だからそういうイカれた指令が出ても不思議じゃない。
「これじゃ、あいつらに迷惑がかかるかもしれんな――」
 そう呟いてから、医死仮面は自嘲の笑みを浮かべる。
 誰とも関わりたくないと散々願っていた自分が、まさか他人の心配をすることになるとは。
 変わってしまったのか。変えられてしまったのか。
 変えられたのだとしたら一体誰に? 考えるまでもない。自分と似たような鳥の面を被るあの男にだ。
「……少し、本腰を入れて叩くか」
 SLGの会を巻き込むわけにはいかない。ぬるい嫌がらせ程度なら、こちらから殲滅してしまおう。
 ジョン・スミスは薬の準備を始めた。


「それじゃ撮るわよ」
「はい、腐ったチーズも一応食べ物としてあるんだから少し腐ったぐらいで捨てるのはやめようぜ。蛆が湧いたチーズなんて食べたくないけどな!」
「……中指立てるのはできればやめてほしいんだけど」
 ちなみに腐ったチーズとはカース・マルツゥの事だ。虫が苦手な人は検索しない方がいい単語だろう。
 小宅麗智奈に注意された阿野次のもじは渋々ダブルピースに変える。さすがにアヘ顔ではない。
 パシャパシャというシャッター音。麗智奈がのもじの写真を撮っているのだ。
 戦いでは敗れはしたものの、せっかくのイベントだ。写真部として写真を撮らない理由は無い。
 こうして、麗智奈は先日から大会参加者に声をかけて撮らせてもらっていた。できれば全員集合の記念写真なども撮りたいが機会はあるかどうか。
『ふむ、そういえば――』
 今日も変わらずのもじの頭上に鎮座するクイーンは、目の前の写真家の能力について考察を始める。
 彼女の能力は写真に写したものを具現化するというものだ。巨大過ぎるものや生物は無理とはいえ、そうでなければなんでも取り出せるという強力な能力だ。
『……欲しいのう』
「え、クイーンそっちの趣味あったんすか! 実は私のお風呂とか覗き見してました?」
『するか馬鹿たれ。わらわが欲しいと言ったのはその能力のことじゃ』
 何せ、なんでも具現化できるということは武器も複製可能ということだ。実際、麗智奈は銃火器を具現化して戦っていた。
『やはり武器の数を揃えるというのは非常に重要なことじゃからな。しかもそれがタダ同然であれば尚更じゃ』
「戦いは数だよ! でもトーナメントでの試合は終わったのに何と戦うの? トランクス君に何と戦ってるんだって言われちゃわない?」
 クイーンにとって戦う相手とは世界だ。が、今はまだ言わず黙するだけ。
 とりあえず今為すべきことは麗智奈の協力を得ることだ。
『小娘、今から言うわらわの言葉をしっかり伝えるのじゃ』
「へいへーい。あ、麗智奈さん、ちょっといいっすか?」
「何かしら」
「わたくし阿野次のもじを写真撮影のアシスタントとして存分にお使いください。その代わり、能力で複製したいものがあるんだー――あれ、これ働くの私じゃね? ドーイウコトさクイーン!」
 ……この娘は何故1人漫才をしてるのだろうか。
 そんな疑問を抱きつつも、使える手があるならそれに越したことはない。
「別にいいわよ」
「そこは断ってほしかった――!」
 のもじの精神が不安定な気がするが、元から彼女はそういう人物だった気がするので、麗智奈は気にしないことにした。
「……っと」
 つい先程撮った写真の現像が終わったので出来上がりを確認する。悪くない。
 ――ふと。のもじが被っているアキカン帽子が無性に気になった麗智奈は、それを写真から具現化させて調べてみようと考えた。
 だが、結果として具現化できなかった。
「これって……」
 具現化できないということはつまり――。アキカンをじっと見ながら、やっぱり関わるのはやめておけば良かったかもしれない。そんなことを考える麗智奈であった。


「えっ……と。なんでこんなことになってるんですか?」
「ふふ、なんでだろうね?」
 状況を簡潔に説明しよう。一∞が小波漣を押し倒していた。
 事の経緯は簡単だ。
「むっ! 眼鏡の似合う貧乳美少女がまだ眼鏡をかけてないセンサーに反応があったぞ!」
「何気に酷いこと言ってません!?」
 といったやり取りの後、∞が眼鏡をかけるように漣に迫ったのだ。その結果がこれだ。
 勿論、漣としても眼鏡をかけるだけなら別にこれといった問題はない。家計を考えるなら眼鏡を買うことはできないが、∞のことだから無料で提供――というか、押し付けてくるだろう。
 では何が問題かというと、∞の性嗜好だ。眼鏡好きは言うに及ばず、バイセクシャルだということはトーナメントを観戦していれば分かる。
 ――それどころか、この前廊下で自慰してましたし!
 あの場面に出くわした時は正直どうしようかと思った。喘ぎ声から察するに、白王みずきをおかずにしていたのだろう。
 ぶっちゃけ――変態だ。
 そんな変態の要求を呑んでしまったら、この後どんな展開になるか分かったものではない。
 いや自分が直接襲われなくても自慰のおかずにされてしまう。年頃の女の子として、それは精神的にノーサンキューだ。
 故に抵抗し、押し倒されてしまったのだが……。
 ――これなら素直にかけてた方がマシだったかもしれない……!
 後の祭。押し倒した状態で漣に眼鏡をかけるという目的を達した∞は、しかしなおもどこうとはしない。
「眼鏡は素晴らしい……。それはこのトーナメントの結果を見ても分かることだ」
「な、何を……!?」
「勝ち上がった者はみな眼鏡っこということだよ」
 馬鹿な。漣の記憶が確かであれば、眼鏡をかけていたのは美土だけのはず。
 いや、確か彼女の眼鏡は伊達眼鏡だと聞いたことがある。伊達でも構わないのなら、裏で勝ち上がった鞘も伊達眼鏡をかける時があるらしいから当てはまるのだろう。
 だがみずきも池松も、やはり眼鏡はかけていない。
「――なんてことを、考えてるんだろうね?」
「な……!?」
「ふっ。みずきちゃんには先日僕の方から眼鏡をプレゼントしておいた。これで彼女は立派な眼鏡っ娘だ……!」
 一体何を言っているのか分からない。そもそも勝ち上がってから眼鏡をプレゼントしているのであれば、眼鏡っ娘だから勝った証明にならないではないか。
池松叢雲に関してだが。……あの仮面の下に眼鏡をかけていないとは言い切れないだろう?」
「……は?」
「そう。かけているかかけていないかは観測するまで分からない。眼鏡をかけている池松叢雲とかけていない池松叢雲は世界に同時に存在する! これこそがシュレディンガーの眼鏡!」
「そのりくつはおかしい」
「いや――。眼鏡をかけていない者が眼鏡をかけている者に敵うわけがないから、上位存在の眼鏡をかけた池松叢雲が優先されるかな。ならば、やはり――!」
 狂っている。薄々分かっていたが、この少女は間違いなく狂人の類だ。
 そして、そんな狂人に押し倒されているという現実が、漣に重く圧し掛かる。
「さぁ、理想の眼鏡世界を作る為、君のイメージの力を貸してくれ――!」
 勝手なイメージを押し付けるな。そう言いたい漣であったが、何をされるか分からない恐怖に耐えかね、頷いてしまうのであった。


 転校生となってしまった不動昭良。
 今は面倒に巻き込まれるのを避ける為に各地を転々としていた。
 尤も、今のところこれといった追っ手は無い。国としてもわざわざ転校生に手を出して薮蛇な事態になるのを避けたいのだろう。
「どうしたものかなぁ……」
 転校生は別世界の住人である、と耳に挟んだことがある。
 つまり、遠くないうちにこの世界と離れることになるだろう。
 ……やっぱり、家族やお世話になった人たちに挨拶すべきなのかな。
「いやまぁ、その気になれば留まれるのかもしれないけど」
 自分が留まるとすれば、協力してくれそうな人達を知っている。……尤も、何かしら利用されるに違いないだろうが。
 そんな事を考え、改めて『違う存在』になったことを実感し、ため息が零れる。
「とりあえず――今は今、ということで」
 席に腰を下ろして、ゆっくりと決勝戦の始まりを待つ。
 そう、彼が今いる場所はトーナメントの観客席だ。元より魔人の中ではビジュアルは地味な方、少し変装するだけで誤魔化すには十分だ。
 例え面倒に巻き込まれるとしても……この戦いを、最後まで見届けたかったから。


「ごめんなさいねぇ、まだ準備中なのよ――あらん」
 ダンジョンから解放され、いつもの生活を取り戻す為に店の準備をしていたバロネス夜渡は、店の扉を開けた意外な人物に目を丸くする。
 オカマバーには似つかわしくない着物を纏った男は、裸繰埜闇裂練道。世間には兼石次郎の名で通っている。
「裏社会に名だたるノックアウトマスターが、こんな場末のオカマバーに何の用なのかしら」
「バーなのだから、酒に決まっている」
「もぉう、オカマといちゃつくという発想もしてほしいわね!」
 開店準備中にやってきながら、当たり前のようにカウンターに座り酒を注文する次郎。
 だがバロネスもそんな傍若無人な男は嫌いではない。正確にはそれを押し通すことができる力を持つ男、だ。
 彼が名だけでなく真の強者であることは、実際に手を合わせたバロネスもよく理解していた。
 苦笑しつつバロネスは注文された酒を出す。
「それにしても、まさかあんたが二度も負けるなんてねぇ。……2回目のはちょっと敗北とは違うかもしれないけど」
「いや、敗北は敗北として認める」
 何も真正面にぶつかり合うだけが戦いではない。裏社会に生きているからこそ、練道はそのことをよく理解していた。
 どちらの戦いも、相手は勝つ為に策を練り準備をした。それもまた――力だ。
「……その力ごと粉砕できなかった俺が、未熟だっただけだ」
「あんたで未熟なら、達人って呼ばれてるやつの何割が未熟になるのかしら」
 半ば呆れながらバロネスはウィスキーをグラスに注いでいく。自分で飲む為のロックだ。
「勇者にヒーロー、か」
「あん? 何よ似合わないワードねぇ」
「……少し、あの試合を思い出してな」
 裏準決勝第一試合。ヒーロー世界の影響を強く受けた練道は『どんなに小さく弱い正義でも、最後には悪を打ち倒すほど強くなる』という考えのもとに行動していた。
 試合が終わった直後は何を馬鹿なと即座に切り捨てた思考だが、こうして落ち着いて考えてみれば、勇者にヒーロー――どちらも貧弱な小娘なのに自分を打ち倒しているではないか。
「――面白い」
 ただただ襲ってくる敵を倒すだけの日々にはもう飽きた。そんな退屈しのぎとして参加したトーナメントだったが、終わってみれば収穫はあったのかもしれない。
 強敵を求めるなら、正義に立ち向かう悪になればいいのか。それとも正義として、悪相手に楽しめる戦いを求めればいいのか。
「なんだ。世界とは意外に……退屈ではないのだな」
「そりゃそうよ。中でもオカマの世界はとびっきりよん♪」
 裸繰埜闇裂練道は気紛れである。
 正義だの悪だのといった考えは明日にでも忘れてるかもしれない。
 だが、楽しめるというのでなれば少しは覚えておこう――そう検討しながら酒を呷るのであった。


 希望崎学園、ヒーロー部部室。
 部員以外どこにあるか知らない秘密基地にて、部員である天超希人と虎斑永守の2人がゲームをしていた。
 携帯ゲームの画面に集中しながら、希人は机の反対側に座る永守に声をかける。
「おい、どうやらお客さんのようだぞ」
「みたいだね」
 部室に設置されたモニターが外の様子を映し出していた。カメラはカフェテリアに設置されている。
 ヒーロー部に用があると思わしき人間が来たら、迎えにいくという寸法だった。
「迎えにいかねぇのか」
「君が行ったらどうだい? 僕は先輩だぜ」
「学年は一緒じゃねぇか」
 ――尤も、年代を厳密に考えると面倒なことになりそうなのだが。細かいことは気にしないようにしよう。
「僕は部がヒ研の頃から在籍してるんだ。そういう意味で先輩と言ってるんだよ」
「あぁくそ、めんどくせぇな」
 なんだかんだで人のいい希人が折れて、客を迎えに行く。
 その客とは――矢塚一夜だ。
「ったく、客を待たせすぎやで」
「へーへー、悪かったな。んで、何の用だよ?」
「あぁ。意志乃にこれを渡すよう頼まれてな」
 一夜が懐から何かを取り出し、放り投げる。希人がキャッチしたそれは、ボールペンだ。
「あん? こりゃ意志乃のクーゲルシュライバー……?」
「正確には今のあいつの持ちもんやないけどな」
「――?」
 一夜の言葉はいまいち要領を得ない。それに、数少ない武器をわざわざ渡してどうするのかという鞘に対しての疑問もある。
 何より、一番気にかかっていることは――
「……何がなんだかわかんねぇけど。まさか、あんたがこういう手伝いをするとはな」
「は? 何言うてんねん。貰うもんは貰うに決まってるやろ。ほら、あんたんとこにいる虎斑永守? なんや家の経理握ってるらしいやないか」
「あー――」
 金で解決できる、というのは面倒がないのかそれとも逆か。
 そんな事を考えながら、永守を呼びに部室へと戻るのであった。


 結昨日司は、女神様に最後の確認をしていた。
「はい、それでは聞きますが……参加者の方に何かされていませんね?」
「だ、大丈夫ですよう。私ももう子どもじゃないんです!」
「……それはツッコミ待ちですか?」
「あらやだ。映さん聞いた? 司さんってば、女神様につっこむそうよ」
「聞きましたわよ窒素さん。本当、油断なりませんよね!」
「無視しますからね!」
 常識人イコール苦労人。今更ながら、何故こんな胃の痛くなるイベントを開催したのかと司はお腹を抑える。
「ようやく決勝まで無事進めることができたんです。不動様の時のようなトンデモイベントはなるべく回避したいと考えるのは当然でしょう」
「……その台詞自体がフラグな気がしますけどね」
「言わないでくださいよ沃素さん!?」
 大会運営のお仕事も、もう少しで終わりだ。


 白王みずきと渡葉美土は最後の試合に向けて、精神集中の為に深呼吸をする。
 決勝戦の幕はもうすぐ上がろうとしていた。


「What is this?(『これはなんですか?』という意味の英語)」
「This is a pen.(『これはペンです。』という意味の英語)」
 単純極まりない英文。一般的な日本人が中学生になった時に習うだろう例文。
 つまり英語の基礎中の基礎ともいえるやり取り。
 だがそれでも英検の有段者から発せられたものであれば、空間を震わせるには十分すぎる。
 いや、むしろ――基礎中の基礎だからこそ、英検の使い手はこれを重視するのかもしれない。
 英会話をしていた2人のうち、片割れの少年……日谷創面が額に汗を浮かべて膝を折る。
「くっ、さすがに基礎力がもろに反映されるな、これは……!」
「いや(e-yat:『いや』という意味の英語)」
 創面はよくやっている。それは英検四十段を誇る池松叢雲の素直な評価だった。
 何せ創面が英語の世界に本格的に足を踏み入れたのはここ最近のことだ。それを鑑みれば、驚異的な成長速度ともいえる。
 ――だが、それぐらいやってもらわなければ。
 創面が倒すべき敵は大きく、強い。いつ敵の魔の手が伸びてもおかしくないことを考えれば、Lessonはできる時にした方がいい。
「……けどさ」
 ようやく呼吸が落ち着いてきたのか。創面は額の汗を手で拭いながら立ち上がる。
「何も今やらなくてもいいんじゃないか? ……試合、このあとすぐなんだろ?」
「気にするな(key-knee-through-now:『気にするな』という意味の英語)」
 英会話。それは池松にとっても重要な意味を持っているからだ。
 いまいちど基礎を振り返り、身に染み込ませる。四十段とはいえ……いや、四十段だからこそ決して怠ってはいけない儀式。
 改めて世界に満ちている英語を実感し、池松はテンションを高めていく。
「英語は世界であり――世界は英語だ」


 裏トーナメント決勝戦を前に臨む意志乃鞘の控え室。
「……で、何で私がこんなところにいるんだ」
「最終決戦前にライバルが激励に来るのはお約束だろ?」
「激励するつもりもないし、勝手にライバルにするな」
 壁にもたれかかった糺礼は苛立ちを隠そうともせずに、パイポを強く噛んで揺らす。
 しかし、部屋の主である鞘は気にすることなくいつものペースだ。冷蔵庫から缶ジュースを取り出すと、それを礼へと放り投げた。
「まぁ、それでも飲んで落ち着いたらどうだ」
「炭酸飲料を投げ渡すとか、わざとやってるのか?」
 今にも銃を抜きかねない礼を落ち着かせようと、部屋にいる第3の人物が両手を挙げながら2人の間に入る。
「ここは冷静にいこうぜ、オッケー?」
 灰堂四空。ホストクラブの用心棒をしているせいか、こういう荒事の仲裁にも慣れているようだ。
 それで気を少し削がれたのか。礼は少し浮かせた腰を再び壁に預ける。ただし、右手に持った炭酸飲料は上下に振りながらだ。
「……というか、君ね。なんで意志乃のお使いなんてしてるの?」
 礼が鞘の部屋に訪れることになった経緯として、四空が鞘の使いとして礼に声をかけたのだ。
「俺にもよく分からねぇんだけど。ヒーロー部に入ったからには、部長の頼みは聞いておくべきかな、と」
「入ったのか……」
「あぁ、入っちまったんだよ」
 礼の声には幾分か同情が含まれていた。四空と激戦を繰り広げ、その上荒唐無稽な鞘に巻き込まれた身としては憐れみを禁じえないのだろう。
 ――いや、巻き込まれた件についてはものすごく忘れたいんだが……!
 準決勝のことをつい思い出してしまい、頭を抱える礼。いくら世界の影響を受けてたとはいえ、魔法少女なんて醜態を見せてしまったのだ。そうなるのも仕方ない。
 しかも説明によると心のどこかで魔法少女になりたいという願いがあったから、あんなことなってしまったらしい。それが真実なら自殺ものだ。
 何より、裏トーナメントの試合映像を職場の同僚である公安もチェックしてるはずだ。終わった後にどんな顔で会えばいいというのか。
 1人悶え始めた礼を見て、このままじゃ話が進まないと判断した四空が代わりに質問する。
「で、結局なんで呼んだんだ?」
「ん? あぁ、大した意味は無いよ。なんとなく君達とダラダラと話したかっただけだから」
「ふっざけんなバーカ!?」
 特に理由がないという理由を聞いて、ついに礼の堪忍袋の尾が切れたのか。
 彼女は十分に振った炭酸飲料の封を開けた――鞘に向けて。
 振られたことで爆発寸前だったジュースは、当然鞘へと勢いよく降りかかる。噴射が治まる頃には、鞘はびしょ濡れになっていた。
「ほぉ――やってくれたな」
 ぶっかけられた鞘は、しかし怒るどころか……笑っていた。
 笑みを浮かべたまま冷蔵庫を開け、新たに500mlペットボトルを取り出す。中に入っているのはサイダーだ。
「ちょ、待っ――」
 四空が止める間も無く、彼女はそれを思いっきり振ってからキャップを捻った。
「うわぷ!?」
「んなぁ!?」
 礼への仕返し。尤も、それだけでなく四空も巻き添えになっているのだが。
「くっ、ふ……ふふふ……!」
 サイダーまみれになった礼は顔を伏せ静かに暗く笑い声を上げる。目はまったく笑っていないのだが。
 どや顔の鞘に視線を向けることなく、彼女もまた冷蔵庫に手を突っ込むと――2リットルペットボトルを取り出した。
「覚悟しろよ意志乃ぉー!」
「ふふ、来るがいい礼君――!!」
「あんたら何やってんのー!?」
 コーラが爆発した。
 礼が反撃すると、更に鞘が反撃。それにまた反撃――と部屋はどんどん酷いことになっていた。
「ちょ、わぷ、オッケーじゃねぇぞ!?」
「いいから君は買出しにいけ! そうだな、次はビールだ!」
「警官が何言ってんだあんた!? っていうかビールかけは勝った時にやれよ!?」
「口答えするな!」
「くっそぅ、オッケー!」
 そんなこんなで、緊張感も何もなく試合時間が刻一刻と迫るのであった。

 ――あぁ、やっぱりこうやって笑える絆が結べるのは……ありがたいことだな。



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最終更新:2011年11月20日 22:41