俺はもう駄目だ

「で、歌姫さらってそれからどうなったんだよ」
「あせるな・・・こういう話は落ちついて聞くもんだぞ」

アリアハン城王の間でにらみ合っていたはずのハッサンセッツァー
しかし今はそんなことを微塵も感じさせない和やかムードで酒を酌み交わしている
何故か?それにはしばらく時間をさかのぼる必要がある。


玉座を境に対峙する2人
まずは先に動いたのはハッサン
雄たけびと共に渾身の正拳突きをセッツァーへと放つ
しかしセッツァーもまたそれを大きく後ろに跳び退って避けると
その勢いで床を蹴り、ハッサンの顔面めがけ蹴りを放つ
鋭いが直線的な、その蹴りに対してハッサンは簡単に防御の構えを取る。

(かかった!!)
この蹴りはフェイクだ・・・・セッツァーは薄笑いを浮かべると
腰に差したままだったクリスタルソードを抜き、ハッサンが蹴りを受けとめるのと同時に斬りかかる
「防げまい!!」

が・・・次に驚くのはセッツァーの番だった
なんとハッサンはガードの体勢のまま、助走も無しでそのまま空中へとジャンプしたのである
これを受けて逆にセッツァーの体勢が大きく崩れる
そこへハッサンのもう一つの得意技、飛び膝蹴りが襲いかかる
この体勢で完全に避けるのは不可能、セッツァーは脇腹に蹴りを受けそのまま壁へとたたきつけられた。

「おいおい・・・お前みたいなデカブツはとっととやられるのがスジってもんだろ?」
とっさに剣を手放し自ら壁へと飛んだ分ダメージは最小限だったが
それでも脇腹がじくじくと痛む
だが、この不敵なギャンブラーはますます楽しげに笑顔を浮かべると
再び地を這うように鋭いダッシュでハッサンへと迫る。

それを追うように再びハッサンの正拳突き
今度はセッツァーは避けない、その代わり伸びきったハッサンの腕を掴み関節を極めようとする
それを察知したハッサンは素早く腕をひっこめる・・が
その瞬間、セッツァーの手から放たれたコインがハッサンの胸板へとめりこむ
「ぐっ・・・・」
一瞬ぐらりと体勢を崩すハッサンだったが、すぐに立てなおすと再び間合いを取る。

そしてまた炎の出るようなにらみ合い------どれほどの時間が流れただろうか?
今度はセッツァーが先に口を開く
「やめよう、このまま続ければ待っているのは共倒れだけだ、俺は無駄な勝負は好きじゃない」
それを受けてハッサンもやや表情を緩める。

「お互い考えていたことは同じだったようだな、で・・・これからなんとする?」
ハッサンの問いかけにセッツァーはいまさら何を、と言わんばかりに苦笑する
「男同士、拳を交えた後にやることといえば決まっているだろ?」
セッツァーは何処から取り出したのか酒瓶とグラスをハッサンへと差し出す
「いいぜ・・・俺もそういうのは嫌いじゃない」
そしてハッサンもニヤリと笑ってグラスを受け取り------こうして冒頭のシーンへと続くのであった。



「ちょっと俺トイレ行ってくるわ」
「場所分かるのか?」
「いいっての!大丈夫、こういう城のトイレはだいたい決まった場所にあるもんなんだよ」
ハッサンは階段を降りていく
やや不安げなセッツァーだったがここは黙って見送る。

さてハッサンだが案の定迷子になってしまったようだ
さっき降りた階段は?ドアは何処?って感じで城内をさまようハッサンの目にとまったのは
1本の剣
「おおっ、なかなかの業物じゃねーか」
ハッサンは無造作に近づくと薄暗い通路に放置されていた長剣を掴んだ
その時!!周囲の壁が不気味な唸りを上げて一斉にハッサンへと迫っていった。

その頃あんまり帰りが遅いハッサンを心配してセッツァーもまた城内を歩き回っていたが
そこで思いも寄らない人物と再会する。
「セッツァー!、無事だったのね?」
ティナ、お前こそ無事だったか」
仲間との再会を喜びあう2人だったが、やがて本来の目的を思い出す。

パイナップルに似た髪形の男を見かけなかったか?
地下牢に続く通路は危険よ、あそこにはモンスターが・・・・

そう言いかけた2人の言葉をさえぎるようにその地下牢の方角から叫び声が聞こえる
慌てて一階に降りた2人が見たものは、すでに下半身を押しつぶされながらも両手の拳で
壁相手に必死で抵抗を続けるハッサンの姿だった。

だが、ハッサンの拳をもってしても壁はひび一つ入らない
それどころか逆に拳の方が血に染まっていくそして・・・・耳障りな音と共に
ハッサンの両手は砕けてしまった。

無残にひしゃげた自分の手を見て、ハッサンは泣き笑いの表情でセッツァーに告げる。

「セッツァー・・・俺はもう駄目だ・・・でもあんたは必ず・・・生き残れよな
 あんたの言っていた・・・・・マッシュって奴と・・・・・戦ってみたかったな・・・・・」
それだけを言い残すとハッサンはまだ自由に動く両手の親指を自らの首輪にやって強引に外そうとする。
それを受けて首輪が不気味に輝く。
「化け物め・・・・・てめぇも道連れだ!!」

しかしデモンズウォールは狡猾だった、ハッサンの動きを察知すると素早くその戒めを解き
彼の身体を中空へと放り投げたのだった。

そして爆発
凄まじい光と轟音と煙・・・しかしそれらが晴れたとき2人が見たものは
相変わらず不気味な唸りを上げて脈動を続けるデモンズウォールの姿だった

「そんな・・・・・」
「畜生っ!!」
落ちていたエンハンスソードを手に持ち、なおも戦おうとするセッツァーをティナが必死で止める。

「落ちついて!今の戦力じゃ私たちに勝ち目は無いわ」
「行かせてくれ!!たとえ1度でも共に杯を交わした以上、アイツは俺の友だ!!
 その友の死を犬死にするわけにはいかないんだ!!」


その言葉にティナも一瞬心が動く、きっとセッツァーのような男にとって杯を酌み交わすというのも、
友という言葉も他人が考える以上に特別な意味があるのだろう・・・だが・・・それでも・・・・
「だったら尚更よ!あの人の言葉が聞こえなかったの!?」

セッツァーの動きが止まる、ティナはさらに言葉を続ける

「あれを倒すにはもっと多くの仲間が必要よ、探しに行きましょう
 きっと協力してくれる人がいるはず、仇を取るのはそれからでも遅くはないわ」

「ハッサン・・・・・・きっと仇は取ってやるぞ」
唇をかみ締めうなだれるセッツァー、ティナはそんな彼の手を引き
とりあえずこの場は脱出した。

負傷したデモンズウォールはそれでもなお、二人に襲い掛からんとしていた。
セッツァーとティナはこの場は逃げようと走り出していた。
デモンズウォールは追撃しようと身構えた。
しかし、それをやめた。
…城の外…さほど遠くはない。
とにかく城の外から竪琴の音色が聞こえていた。
甘い蜜のような音色に、まるで麻薬中毒者のようにふらふらと吸い寄せられていった。

逃げ出した二人にそのことを知る由はない。


【セッツァー 所持品:プラチナソード、エンハンスソード
 第一行動方針:仲間を探す】
【ティナ 所持品:不明 
 第一行動方針:仲間を探す】
【現在位置:アリアハン城→街へ】

【デモンズウォール(負傷)
 第一行動方針:銀の竪琴に吸い寄せられる】
【現在位置:アリアハン城→城外へ】

【ハッサン 死亡】
【残り 96人】


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最終更新:2011年07月17日 13:04
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