「ファイラッ!」
ティナが、叫びながら両腕をかざした。
余儀魔力で発生した烈風がエメラルドの色をした髪を、優しく撫でた。
しかし、直後に生まれた炎はとても優しいと表現できるモノではなかった。
ごがんっ!っという
爆発音を発しながら立ち上がる炎柱。
爆炎が一本の樹を丸ごと消し炭に変えて、その後ろの者までもを消し去ろうとする。
しかし、業火の中から一つの影が飛び出した。今はもう、その名を呼ばれない
謎の剣士。
謎の剣士は血にまみれた
グレートソードを振りかざして、ティナに向かって急接近していく。その速度はもはや、直接目でとらえられるモノではないだろう。
ティナは支給武器のチキン
ナイフを投げつけると、弾かれるようにその場を離れた。
エンハンスソードを構え、魔力を練る。
怒りに燃えるティナの心に、怯えを力とするチキンナイフが萎縮する。それはあっさりと、謎の剣士が受け止められた。
「許さない…。」
ティナが小さく叫んだ。
「私の仲間を殺めた、貴方は絶対許さない!」
叫びと同時に、小規模な雷撃が2、3本まとめて謎の剣士を襲った。
…きっかけは、小さな事だったのだ。
井戸から這い出した
テリーが、城の様子を見にたった一人で歩いていった事。きっかけはそれだけだった。
エドガーが移動した後、謎の剣士は城に移動すべくテリーと一緒に外に出た。残り1時間、そろそろ人が少なくなる時間帯だ。
謎の剣士は周囲を油断することなく見つめ続けていた。敵はいるのか?と。
…周囲に気を配っていて、足下のテリーに意識が及ばなかった。それが剣士のミス。
やっとこさ井戸から這い出したテリーは、辺りをにらみつける剣士の横を通り過ぎて城へと向かっていた。
いつか聞いたあの悲鳴、ひょっとしたらあの声を出した人がまだ生きてて、くるしんでるかも…。
幼いが故に、まだ正しく人の死を認識できないテリーは、その思いを胸に城へと向かおうとしていた。
「…!テリー!」
謎の剣士は絶叫を上げた。
怒られる?!その、あまりに鋭い声を上げた剣士に向かってテリーは振り返ろうとして…見た。
近くの建物の影から、銀髪で傷だらけの男と、緑色の髪の少女が出てきた事に。そして、男の手には白金の輝きを持つ剣。
男…
セッツァーが、一瞬剣を動かした。ほぼ無意識の内に。目の前の人間に反応して。それがセッツァーのミス。
その直後には、剣士の投げつけたグレート・ソードがセッツァーの胸板を刺し貫いていた。
「っあ゛…!」
突然胸から生えてきたグレートソードを見て、セッツァーは驚きと同時、事態を把握した。
(ダリル…
ハッサン…どうやらお前らのとこに行く事になりそうだな。こいつは。)
「セッツァ…!」
驚きのあまり声も出ないティナの方に、セッツァーは振り向いた。
大量に血を吐きながら、ニヤリといつもの不敵な笑みを浮かべて。自分が勝つに違いないと確信しているような笑みを浮かべて。
「どうも…駄目だな。しょうがないから、俺は観客に徹する事にするか。」
「セッツァー、何を…。」
「俺の命、そっくりチップにして…オマエが生き残る方に賭けて…」
最後まで言えなかった。セッツァーはぐらりと蹌踉けて、倒れた。…死んだ。
「……!」
ティナの精神が燃え上がる。もう魔法で癒せない。死んだ。
ざっ、と音を立てて、ティナは剣の飛んできた方を振り返った。剣士が一人、立っている。アイツが…殺した。
瞬時、荒々しい幻獣の血が吠える。魔法を唱えると同時にティナは飛び出していた。剣士に向かって。
剣士は舌打ちしながら、家々の隙間を縫うように走っていった。強い…!
少女…ティナが一つ声を上げるごとに、一つの家が半壊する。どんどん隠れ場所が無くなっていく…!
剣士は走りながらテリーの姿を探した。出来れば、逃げていて欲しいが…。
居た。目に映った。自分の真後ろ。ティナは最大級の呪文を練っている…!
「ファイガ!」
どばんっ!と言う破裂音。一瞬動きを止めた剣士は、紅蓮に焼き尽くされて吹っ飛んだ。
飛ぶ。身体が、武器が、意識が…。
空中で絶命した剣士は、そのままアリアハン城の堀に落下した。グレートソードと共に。
ティナは、ファイガを撃ちはなった姿勢のまま硬直した。
アイツの後ろに、子供…?あぁ、そうだったんだ。この子のために…。
どんっ、と、ティナに何かがぶつかった。あの子供…テリー。
「よっ…よく…よくもぉっ!」
テリーは何度もティナに体当たりしてすっころんで…ようやく、足下のチキンナイフに気がついた。
「よくもぉっ!」
チキンナイフを拾い上げて、テリーはティナと向き合った。
怯えで、チキンナイフの刃は鋭く煌めいていた。
「…それは、あげるわ。」
ティナがぽつりと呟いた言葉に、テリーが一瞬ならず驚く。
ティナは、セッツァーの死体の方に向き直ると、歩き出しながら続ける。
「私を殺したいなら…いいのよ?」
そう、いいのだ。あの子は私と同じ気持ちなのだ。抵抗する必要が…何処にあるのだ?何処にあるというのだ?
テリーは、セッツァーの墓を作ろうとしているティナを睨め付け続けていた。
アイツは兄ちゃんを殺したんだ。だからボクが…!
そうこうしている内に、ティナは立ち上がった。足下には、粗末な墓。
ティナはゆっくりと歩き出した。城に向かって。
アリアハン城
旅の扉前に、ティナは立っていた。
あの子に殺されるというなら…いいだろう。自分はそれだけの事はした。
ただ、それ以外の人に殺されるわけには行かない。
ティナは、この向こうに仲間が居る事を願って扉に飛び込んだ。そして、それと同時にテリーが追うように飛び込んでくる。
旅の扉の異空間で、テリーは叫んだ。ティナはそれを聞いた。
「オマエは…ボクが、殺してやる!」
【ティナ 所持品:エンハンスソード、
プラチナソード
第一行動方針:仲間を探す
備考:テリーに殺されるのならばかまわない】
【現在位置:新フィールドへ】
【テリー:生存 所持武器:チキンナイフ
第一行動方針:謎の剣士の敵を取る】
【現在位置:新フィールドへ】
【セッツァー 死亡】
【謎の剣士 死亡】
【残り 81人】
最終更新:2011年07月18日 07:51