そして――……?

そして――……

「やあああああー!」
喉も裂けよと絶叫を上げて、ティーダデスピサロに飛びかかった。
いかづちの杖を振り上げて。精一杯の勇気を振り絞って。
「ティーダ…!」
アルスは驚きの声を上げ、ティーダを静止するように右手を上げた。
ただ上げただけではない。ティーダを助けるため、彼は“力”を解き放つ。
「イオラ!」
アルスの声を聞いて、デスピサロは舌打ちしながら飛びずさる。直後、デスピサロの立っていた空間が破裂した!
爆風がボロボロになった城を更に危なっかしく揺さぶって、ティーダは驚きと衝撃に足を止めた。

アルスは鋼の剣を下段に構え、デスピサロに向かって走っていく。
デスピサロは、いい度胸だとでも言う風に唇を歪めて、今度はアルスに向かって飛ぶ。正義の算盤を右手で槍のように構えて。
お互いの武器が敵に向かって牙を剥き、煌めきが凶器…もしくは狂気となって突き出される。
しかし、その一撃が命を絶ち斬る事は、無かった。


ぼぉんっ…!

デスピサロの左手から何かが落ちたと思った瞬間、目の前が灰色に包まれた。
危険を感じたアルスは立ち止まり、ティーダはアルスの名を叫ぶ。
デスピサロは3回分の狼煙にまとめて呪文で火を付けて、即席の煙幕としたのだ。
デスピサロはまるでネコのような身軽さで、頭上の謁見の間に飛び上がると、転がるように旅の扉に飛び込んだ。

今の脆弱な身体では、どうやら二人同時に相手にするのは骨が折れる。進化の秘宝を手に入れてから、ゆっくりと…じっくりと、とどめを刺してやる。
ピサロは、ザックの中の本を意識した。その本の中の有る一節。
進化の秘宝の研究時にも何度か聞いた覚えのある名前…『光の玉』。

(人間ども…ゾーマとやら…心の準備をしておくといい。究極の進化を目の当たりにして、恐れおののき許しを請う準備をな…!そして……?そしてだと…)

光の渦の中、ピサロは…闇の帝王デスピサロは、笑った。
大声で、さもおかしそうに、嘲笑する。
脆弱な人間を。愚かな大魔王とやらを。そして何より、こんな状況下であってもロザリーの事を考えている事に気づいた自分自身を。

ティーダとアルスは、煙幕が晴れてもしばらく動かなかった。
あちこちの擦過傷が、律儀に痛みを伝えてきているのに今更ながら気づく。

「ごめん。」

ティーダは、それだけを言った。それだけしか言えなかった。
なけなしの勇気を総動員してしまったせいで、どうやらあの恐ろしい…と、肌で感じた…男を逃がしてしまった。
アルスは、生き残るためにアイツを殺すつもりだったのに。
彼が生きている事…無事に逃げた事に、『殺さずにすんだ』とほっとしている自分が、何だかよく分からない。
「……。」
アルスはしばらく沈黙していた。ティーダはその沈黙が続く時間が嫌だった。
だけど、その沈黙の中でティーダは自分の考えをゆっくりと…まとめ上げていた。

「……行こうか。」
ティーダの考えがまとまるのを待っていたかのように…実際、待っていたのだろう…アルスが、言った。笑顔で。
それに答えてティーダも笑う。ただ、力のない笑みだった。

二人はゆっくり立ち上がり、旅の扉へ歩を進めた。


【デスピサロ 所持品:正義のそろばん 『光の玉』について書かれた本
 基本行動方針:所持している本を手がかりに進化の秘法を求める
 最終行動方針:なんとしてでも生き残る】
【現在位置:新フィールドへ】

【アルス 所持品:小さなメダル 鋼の剣
 第一行動方針:仲間を集める
 基本行動方針:弱きを守り悪しきを裁く
 最終行動方針:何らかの方法でサバイバルを中止、ゾーマを倒す
【ティーダ(落ち込み気味)
 所持品:いかずちの杖
 基本行動方針:仲間を集め、何らかの方法でサバイバルを中止する
 最終行動方針:何らかの方法でサバイバルを中止、ゾーマを倒す
【現在位置:新フィールドへ】


←PREV INDEX NEXT→
←PREV ティーダ NEXT→
←PREV アルス NEXT→
←PREV デスピサロ NEXT→

最終更新:2011年07月17日 22:42
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。