あのターバンの男は無事だっただろうか?
ベアトリクスは、いざないの洞窟の近くに座り込んだままそんな事を考えた。
今は物言わぬ屍でしかない
ガーネットを胸に抱いて。
ベアトリクスは見ていた。真っ赤に染まった剣を持った少年が、いざないの洞窟に入っていくのを。
あの中には、ターバンの男が居たはずだ。まあ、とっくに
次の舞台へ移動したとおもうが。
「っ…!」
何気なく身をよじった拍子に、つぶれた左腕がずきりと痛む。
ふふ、と、ベアトリクスの眼帯に隠されていない方が笑みの形を作った。
もう少しの辛抱だ。もう少し痛みに耐えれば、ガーネット様の元に…。
気がつけば、視界がぶれていた。震えている?いや、地面が揺れている。地震だ。
同時に、首輪がうぉんうぉんとうなり声を上げ出す。
ベアトリクスには、それが福音に聞こえた。天使が自分をガーネットの下に連れて行ってくれると、思った。
ふと海の向こうを見れば、海が崩れ去っていた。
まるで鏡を割るかのように、穏やかな海面をたたえたまま、ばらばらになって無限の闇に落下していく。
それを確認した瞬間、首輪は唸る事を止めた。
(ガーネット様…!)
目を瞑り、ガーネットを強く抱きしめる。
ぼん、と、どこか遠くで音がした。同時に抱いたガーネットの感覚が消失し、頬が風を切る感触がそれに変わる。
だが、それも一瞬の事。どんっと言う衝撃を頭に喰らって、ベアトリクスは目を開けた。と言うよりは、衝撃で勝手に開いた。
首のない自分が、ガーネットを抱いている…。
その光景を網膜に焼き付けたまま、吹き飛んだベアトリクスの首はその一切の思考と生体機能を停止した。
崩壊は、あっさりとしていた。
空高くから見れば、それは大陸を映しだした鏡が割れていく様に見えただろう。
至極あっさりと、数々の死を貪欲に飲み込んだ大陸は消えた。
【ベアトリクス 死亡】
【残り 80人】
【アリアハン大陸 消滅】
最終更新:2011年07月17日 18:51