「
クーパー!
アニー!絶対に離れるなよ!」
破壊的なうねりの中、クーパーとアニーを小脇に抱いたまま
バッツは叫んだ。
あの魔道士をまいて、
旅の扉に飛び込んだとたんこれだ。
外からの魔力が旅の扉に影響し、まるで嵐の中に放り込まれたようだ。
嘔吐感を堪えつつ、バッツは目を見開く。
自分の手元も見えない蒼の奔流の中、遠くに紅い光が見えた。
(出口…?)
そう思った瞬間には、乱暴に旅の扉の異空間から乱暴にはき出された。
「どわっ!」
乱暴に固い地面に放り出されて、バッツはそれでも何とか受け身を取って立ち上がって…。
「うわっ!」「ぐぇっ!」
そのとたん、後ろの空間からクーパーがはき出されてきて、バッツは地面にものすごい勢いでキスをした。
「きゃあ!」「ごぶっ!」「どあ゛っ!」
悪い事は重なる物。続けてはき出されたアニーのおしりをまともに喰らって、クーパーとバッツは情けない悲鳴を上げた。
「ご、ごめんなさい…。」
顔を赤らめながら、アニーがそそくさとクーパーの上から退く。
クーパーも同じように立ち上がり、地面と熱い抱擁を交わしていたバッツもようやく立ち上がった。
「二人とも…怪我無いか?」
少々痛む頭を押さえながら、バッツは双子に聞いた。双子は揃って首を横に振る。
やれやれ、あれだけやって3人とも怪我がないとは、よほど悪運が強いと見える…。
(…3人?)
自分たちはたしか、自分とクーパーとアニーと…。
「…
パパスおじさまが、いない…。」
アニーが小さく呟いた。そうだ、あの、頼りになる男がいない。
そう口に出したとたん、アニーは青くなって震えだした。クーパーも、びくっとなって辺りを見回す。
バッツも、一瞬戸惑った。心の中で。
だけどすぐに、頭の隅の方の冷静な部分が囁いてくる。
こんな時、パパスならどうした?あるいは、父ドルガンであったなら…。
「…大丈夫だ。」
しばしの沈黙の後、バッツは確信を込めてそう言った。
「パパスさんが死ぬはず無い。最後まで行けば逢える。パパスさんとも。二人の親とも。」
レナと
ファリスとも…逢える。最後まで、
ゾーマの前まで行けば。その過程で、絶対に。
双子が、未だ不安げにこちらを見返してくる。バッツは、力強く頷いた。
「うん…そうだよね!」
「パパスおじさまも…お父様もお母様も…生きてるよね…。きっと。」
クーパーは得意の空元気を発揮して、アニーはバッツの言葉と気持ちを冷静に判断して、頷いた。
もう、不必要なまでに怯えては居なかった。
「さて…ここは何処かな?」
何となく気恥ずかしくなって、バッツは頭をかきながら辺りを見渡した。
狭い部屋だった。3メートル四方くらいの空間に、槍やら剣やらの武器が散らばっている。武器庫のようだが。
「いい所に飛ばされたかもな…。」
そう呟きながら、バッツは壁に掛かった盾に手を伸ばした。
ポロッ…。
バッツが手を触れたとたん、立派なこしらえの盾は真っ黒な炭の塊になって砕け散った。
「…。」
今度は横にある鎧に手を伸ばしてみた。同じく炭のようになってボロボロと崩れていく。
「…こんな出来損ない、飾っとくなよ…。」
ぼやきながら、今度は壁にある槍と剣を見て…
ボロボロボロボロッ…。
今度は、手を伸ばそうとする直前に崩れ落ちる。
…何となく、あのゾーマとか言うヤツにからかわれている気がする。
「…つまり、これは全部使えないってわけだ。」
いわば、背景なのだろう。この武器の山は。
バッツは舌打ちしながら、部屋の隅のドアの方に向かった。こんな張りぼてだらけの部屋に用はない…。
「あったー!バッツ兄ちゃん!使える武器があったよ!」
その、クーパーの明るい声にバッツが振り返った。見れば、クーパーの幼い手に大量生産品のロングソードが握られている。
バッツはそれを見ながら壁に掛かった剣に手を伸ばしてみた。やはり触れる前にボロボロに崩れ、炭の塊に変わる。
「やっぱりからかってやがるな…。」
ゾーマへの対抗意識をもう一段階ランクアップさせながら、バッツは扉を押し開いた。なるべく慎重に。
【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法) 所持品:
ブレイブブレイド
第一行動方針:レナとファリスを探す
基本行動方針:非好戦的だが、自衛はする
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【クーパー 所持品:
天空の盾とマンゴーシュ(王女の支給品)
第一行動方針:両親さがし】
【アニー 所持品:なし
第一行動方針:両親さがし】
【現在位置:封魔壁監視所武器庫】
最終更新:2011年07月16日 21:12