ハーゴンのために

「少し様子を見るぞ…」
私とハーゴンが移動を開始したその時、ほんの僅かに小屋の扉が開き、女の方が顔を出した。
「!」
 凄い火傷…それに足にも大きな傷…、次の瞬間私は立ち上がって呪文を唱えていた、この人は深く
傷付いている、だけどまだ死ぬ程の負傷ではない筈、一度傷を治してから話を聞いてみよう、そし
てもう一度、もっとまともな脱出方法を三人で相談しよう、きっと何か別の方法が…
「ベホィ…」
ウォォォン!!
 彼女が振り上げた杖に導かれ、風が唸りを上げて私に襲いかかる、えっ……私の呪文は間に合わな
い、必死で精神を集中してダメージを…
「!」
 脇腹を裂かれた、呪文の集中が途切れてしまう、崩れる私の喉に真空の刃が…そんな…私、ただ…
「マァゴォォォット!」
 間一髪、私はハーゴンに突き飛ばされていた。

ウォォォォン!
「ぬうう……」
 再び振るわれる真空の刃、私を庇ってそれを背中で受けるハーゴン…さん。
「馬鹿者……」
 私の事ですか?
「弱き者は容易に恐怖に心を喰われる、あの状態の相手に不用意に呪文など使うからこうなる。」
ウォォォォン!
 ハーゴンさんの緑の血が私の服を斑に染めていく、はやく治療を…
「その前にけりを付けろ、魔力は…無限……では…」
 私の手に『それ』を押し付け力を失っていくハーゴンさんの身体、再び振るわれようとする真空の刃。
させない!
「メラゾーマ!」
 私の造り出した火球は女に向かって突き進み女は素早く扉の影に隠れた、確かにメラ系の呪文は単体
にしか効果が無い上に対象が見えていなければ効果がない、だから私の火球は正確に扉の脇の壁を吹き
飛ばす、女は……姿が見えない、それでもいい。私は更にハーゴンさんに渡された『それ』、グレネー
ドと首輪を小屋の中に放り込む、そして…
轟轟轟ゥゥゥゥゥン!!
 爆発するグレネード、その爆風に歪められる事で爆発する首輪、その二つの爆発に耐えられなかった
小屋は崩壊した。

 それから5分ほど後、私は瓦礫の山で彼女に再会していた、更に酷くなった火傷、折れ曲がった手で
しっかりと握り締められた杖、もう何処へ行ったのかわからない両足……余程爆発が近くないと首輪は
反応しないのだろう、辛うじて生きているものの既に彼女を助ける術は私には…無い。
「ヒュゥヒュゥ」
 彼女は何か喋っている様だが私にはただの呼吸音にしか聞こえない…ひょっとしたらさっきの勝負の
途中でも何か言っていたのかもしれないが、風のせいで聞こえなかった。でも彼女の意思はわかる、そ
の瞳が語りかけてくる、まだ生きていたいと。
「………。」
 私は鎌を振り上げる、もうこれ以上余計な逡巡は許されない、皆の為に、ハーゴンさんの為に。
「ヒュゥヒュゥ」
 恐怖に彩られた瞳、戦慄く唇、私の心の奥から湧き上る恐れ、その全てを振り払い。
 鎌を振り下ろす事で私は彼女と過去の私に別れを告げた……

「ふむ、これで良し。良くやってくれたな。」
「…………」
 わしはマゴットの持ち帰った首に印を書き込みつつ労いの言葉をかける。
 やっとマゴットも完成したといって良いだろう、少々身体を張ったのは予定外だが、最初からベホマ
の期待できるマゴットと組んでいるのだからあの程度ならリスクでも何でもない。
 今後は次の協力者を育てるべきなのだろうが…いや、時間的にその余裕はないと思って良いだろう、
後は脱出メンバーの選定と首輪の解析と触媒集めと……
「………」
「む、そうであったな。」
先の事より今の事、またも目立ってしまったわしらは戦利品をしまうとこの森を後にした。

【ハーゴン(負傷) 所持品:グロック17 グレネード複数 ムーン王女の首 グレーテの首 首輪×3
 第一行動方針:魂と首輪を集める
 最終行動方針:ゲームから脱出】
【マゴット(呪文連発によりMP減少気味)
 所持品:死神の鎌、裁きの杖
 第一行動方針:仲間と合流
 最終行動方針:ゲームから脱出】
【現在位置:ツェン付近の森から北に移動】
※ツェン近郊のチョコボ小屋が崩壊しました

【グレーテ 死亡】
【残り 74人】


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最終更新:2011年07月17日 20:25
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