スタート地点から何かの足跡を辿ること1時間、森の少し開けた所に小屋が建ててあった。
小さな井戸と小屋の裏に畑があり、入り口の上には鳥の頭を描いた看板がついていた。
中に
誰かがいる気配はない。が、一応そこらへんの小石を屋根に投げ待つこと数分。
やはり誰もいないみたいだ。そして幾分警戒しながらもその小屋の扉をくぐった。
中は割と広かった。出入り口は家畜用と人間用と共通らしく扉は大きくとってあり、
床は藁で敷き詰めてあった。壁際には螺旋階段がついている。外から見た時には
わからなかったが二階建てのようだ。おそらく人間用の部屋は二階にあるようだ。
しかしここに入って一番印象に残ったのはこの強烈な臭いだった。獣のようで獣では
無く、鳥のようで鳥でもないこの形容しがたい獣臭さは生きとし生ける物全てを拒絶
しているようだった。ここから出ようと思ったが足が少しも動かない。意識が朦朧としてくる。
さすがに生命の危機を感じた彼は活路を見出そうと部屋を見渡す。しかし無情にも役に立つ
物は見当たらない。不意に足元の感覚が失われ、たまらず地面に倒れた。床も、壁も、天井も
ぐるぐる回っている。手足の感覚も無くなってきた。最後の力を振り絞り何かないかと
手持ちの袋を開ける。この中にも何も役に立つ物は無かったはずだが……。
あった。それはすっかり存在を忘れていた因縁の
アイテム。
覆 面
ほとんど麻痺しかけた頭でなんとかソレを引っ張り出し、かぶった。
すると今までの不快感が朝霜のように消え去り体の隅々まで感覚も戻った。
なぜか先程まで感じていた臭いも消え去っていた。意識はまだはっきりしないが
小屋の奥に何かいることくらいはわかった。おそらくあの臭いの原因だろう。
オルテガはしっかりした足取りで小屋の奥に向かって歩き出した。
奥には長い間手入をしてなかった様に荒んだ飼育場所があった。
水飲み桶は乾き、寝藁は汚れてぼろぼろ。そしてそこに大きな生物一匹横たわっていた。
馬より一回り大きく、体全体に黄色い羽毛を持ち、その足はとても強靭にできていた。
しかし酷く痩せていて羽は汚れていた。生きたままここにずっと縛りつけられていたのだろう。
おそらく、ここの住人を消されたその時から。
もう死んでいるだろうと思い、近づいてその胸にふれる。しかしその肌はまだ暖かく
本当に小さいが心臓の鼓動も感じられた。くちばしの間から息が漏れていた。
袋から水袋を出し、くちばしの間から流し込む。ゆっくりのどが水を嚥下し、
水袋が空になる頃には首をもたげ、目を少しこちらに向け、か細く鳴いた。
「待っていろ。すぐ水を持ってきてやるからな。」
オルテガは桶を抱え、外の井戸に向かった。桶を洗い水を満たし、ついでに畑に生えていた
大根のような野菜を数本抜くと、それらを抱え小屋の中に戻った。
鳥はまだ立てないほど衰弱しており、頭の脇に置かれた桶になんとか首だけを
突っ込んで飲んでいた。オルテガは野菜をバラバラに砕き、少しずつ口の中にいれていった。
よほど乾き、飢えていたのだろう。すぐに全て食べきってしまった。
同じ事を4、5回繰り返すと、鳥はなんとか立ちあがり、羽を広げ大きくいなないた。
そしてオルテガを見つめ、彼の体を甘噛みした。そして外に出たそうに檻の仕切りを
くちばしで軽く叩いた。
仕切りを外すと鳥は目を輝かせ、軽い足取りで外に走っていった。
外に走っていく鳥を見送ったオルテガはまずこの小屋を掃除しようと決心した。
まず建物の窓を全て開け換気をし、寝藁を全て取り替えた。外を走っていた鳥を捕まえ
ブラシをかけ羽をキレイにした。井戸から水を汲み水飲み桶に水を満たし、畑から
野菜を引き抜き飼葉桶に混ぜて入れておいた。ふと気がつくともう日が落ちかかっていた。
小屋の中は入った時に比べ見違えるほどキレイになっていた。
心地よい疲労感と心を満たす充実感。夕暮れの中を駆ける鳥の姿を見て彼はふと思った。
農業ってイイ、と。
【オルテガ 所持品:
水鉄砲 グレートソード 覆面
現行動方針:目標喪失中
正常行動方針:
アルスの存在を確認し、合流する】
【現在位置:マランダのチョコボ屋】
最終更新:2011年07月17日 21:06