絶頂

―――身を刺す冷気と屋根をたたく雨の音に、オルテガは目を覚ました。
空が見えないため今の時間はわからなかったが、おそらくだいぶ経っているだろう。

…日没時の放送を聞いてからまったく記憶がなかった。働かない頭を無理に動かし
状況を確認しようとする。確か、日没前にあの妙な鳥を小屋に入れてから小屋の中で
放送を聞いていたはずだ。その後二階へ登り、そして………
だめだ。そこから思い出せない。今居る場所は、小屋の二階みたいだが。
ゆっくりと身を起こす。そこでやっと自分がびしょびしょに濡れている事にきがついた。

今着ているモノはマントとパンツのみ。戸惑いながらもテーブルの上に置いてあった
ランプに火を灯す。部屋のそこら中に自分の服が脱ぎ散らされていた。剣は……
あった。すぐ側に落ちていた。ふと後を振り向き……、窓が開け放たれており、その前に
側にあの覆面が落ちていた。ふらふらとそこまで歩いていき、覆面を拾い上げる。
覆面の内側は虚ろな闇を抱いており、なぜかそこをみていると記憶が甦りそうになってくる。
そしてオルテガは、震える手で覆面をかぶった。

――――記憶が溢れ出した。

(よかった。アルスの名前は無い。)
安堵のため息をついて二階へのはしごを上った。外は既に雨が降り出している。
今日はここで夜を明かす事になるだろう。昼間の労働に疲労した体をひきずって、
部屋の入る。なかなか広い部屋で、あまり飾り気の無い部屋だった。とりあえず
奥のベッドまだ歩み寄り……部屋の真ん中で立ち止まった。彼の目は部屋の壁、
そこにかかっている鏡を見つめていた。

そこには見慣れない姿が映っていた。うすく汚れた覆面をかぶっている自分の姿。
なんでこんなモノをかぶっているんだ。…そうだ。この小屋に入った時、臭いが
きつかったからだ。こんなのは自分の姿ではない。

こころの奥底で何かが鎌首をもたげはじめる。

自分の姿?本当の自分とはどういう姿だ?これがオレの姿ではないのか?
本当はコレを望んでいたんじゃないのか?

オルテガは苦しそうに片手で覆面を抑え、体を支えていることができず跪いても
なお、その目は鏡の中の自分を見つめ続けていた。

目も前が真っ赤に染まる。心の中の何かが、激しく暴れまくっている。
頭の中でいくつものタガがはずれる音を聞いたような気がした。

「オレは……。オレは…………!!!!!!」

―――――そして、絶頂が訪れた。

「フォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」
いままで抑えていたもの全てが爆発した。全身の筋肉が膨張し、白目に怪しい光をたたえ、
雄叫びをあげた。体の奥はたまらなく熱い。耐え切れずオルテガは高く跳躍し、服を
脱ぎ散らかした。
「クロスッッ!! アゥッッッ!!!! (脱衣)」
覆面とマント、それにパンツ以外全て脱ぎ捨て、オルテガは見事に着地した。
「…コレが……オレの姿……。」
新しい自分に小一時間酔いしれた後、唐突にあさっての方を振り向き、(その延長上
にはマランダの町があるのだが)呟いた。
「ムッ!悪の臭い。」
オルテガは剣を手に取り、窓を開け夜の闇に身を躍らせた。
そして申し合わせたかのように鞍を着け、着地地点に走りこんできたチョコボに飛び乗った。
オルテガは真っ直ぐマランダに向かっていた。悪を滅ぼすために。

【オルテガ 所持品:水鉄砲 グレートソード 覆面
 現行動方針:マランダの町へ
 正常行動方針:アルスの存在を確認し、合流する】
【現在位置:マランダのチョコボ屋】

※最初の方は夜更け、後半は日の出直後ってことでヨロシク。


←PREV INDEX NEXT→
←PREV オルテガ NEXT→

最終更新:2011年07月17日 21:07
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。