「?」
リノアは首を傾げた。
鉛色に変わった空、その一角が赤い光に照らされている。
……そう、ちょうど自分が向かっている、アルブルクの街がある辺り。
(赤い……炎……まさか、火事?)
胸騒ぎがした。とてつもなく、不吉な。
だけど、行かなくてはならないような気がした。
何が起こったのか、この目で確かめなくてはいけない――そう思ったときには、彼女は既に走り出していた。
熱風が辺りを包み込んでいる。
その家は、最早原形がわからないぐらいに燃えていた。
だが、そんなことはどうでもよかった。
リノアの目を引いたのは、近くの地面にこぼれている、血の跡の方だ。
大量の血溜まりから、何かを引き摺ったように、火事の家へと続いている赤黒いライン。
そして街外れの方向に、点々と続く同じ色の跡。
(何があったんだろ……)
恐怖を感じつつも、リノアは街外れへと続いている血を辿ることにした。
こんもりと盛られた土。その上に、自分と同年代らしい青年が十字に組み合わせた木を立てていた。
その傍ら、年端もいかない少女が、小さな花を置いている。
「あの、誰か……亡くなった…んですか?」
リノアは思わず話しかけた。
二人は、彼女の存在に驚いたように目を見張る。
「あ……ごめん。悪気はないの。ただ、ちょっと気になって……って、不謹慎だよね。本当、ごめん」
「あ、いや、そういうわけではないのですが」
頭を下げるリノアに、青年は慌てて首を振る。そして、少し視線を逸らしながら、口を開いた。
「もしかして……あなた、リノアって名前、だったりしませんか?」
「え?」
名前を言った記憶はないし、会ったこともない。
それなのに、何故この青年は自分の名前を知っているのだ?
困惑するリノアに、少女が言った。
「ゼルって人から聞いた……っていうより、聞かれたの。あなたのこと」
「ゼル?!」
ゼル・ディン。バラムガーデンのSeed。大切な仲間。
彼の名前を、こんなところで聞けるとは思ってもいなかった。
「どこで会ったの!? もしかして、一緒にいるの? ねえ!」
いてもいられず、リノアは二人に詰め寄る。
だが、二人は何も答えずに、視線を逸らした。
その視線の先は………
「………え?」
十字架。花束。作られたばかりの、小さな墓。
「……冗談、だよね? まさか、そんなことって」
リノアは助けを求めるように、青年を見つめた。それから、急いで土を掘り返し始めた。
二人は、何も言わなかった。青年は俯いたままで。少女は、哀しげな視線をリノアに向けていた。
「……何、これ」
出てきたのは、顔のない、腕もない。胸から下だけの、ところどころが焼け焦げた身体。
しかしそれは、この間まで一緒にいたゼルの姿を、断ちがたく留めていた。
「全身は、見つからなかったんだ。……あの火事に、巻き込まれたんだと思う」
青年の言葉も聞こえなかった。
リノアは、ゼルの前で泣き崩れていた。
【
ピピン 所持品:大鋏
第一行動方針:ゼルの埋葬
第二行動方針:
ジタンを探す、できれば他の仲間にも会う】
【
エーコ 所持品:なし
第一行動方針:ゼルの埋葬
第二行動方針:ジタンを探す、できれば他の仲間にも会う】
【現在位置:アルブルクの街外れ】
【リノア(放心状態) 所持品:
妖精のロッド 月の扇 ドロー:アルテマ×1
基本行動方針:
スコールに会う】
【現在位置:アルブルクの街外れ】
最終更新:2011年07月17日 17:37