「…なんにもないね、この家。」
「うむ。最初から無かったか、誰かが持ち去ったんでござろう。」
「でもなんだろ、この黒炭。宝箱ん中こればっか入ってるんだもんなぁ。」
「むう。部屋の所々にもそれがあったでござるしな。」
もちろんその黒炭はもともとなにかの
アイテムだった。―――見た目は。
一度触れると黒炭に戻ってしまうものだ。
「こんなんじゃあどこの部屋も同じだろうね。」
「…こうなったら先客と接触してみるしかないでござるな。」
「…やっぱりそいつ部屋から動いてないんでしょ?」
「うむ。なにかあったのかもしれないでござるし。」
「場所は?」
「二階の西よりの部屋でござる。」
エントランスの階段を上り、中央の廊下の西端。樫の木で作られ、流麗な彫刻を
施してある他より少し大きめの扉。おそらく寝室であろうそこに昼間からずっと
だれかがいるはずだった。ここまでわざと足音を立てて歩いてきたのだが、
反応らしい気配は感じられなかった。
「おかしいでござるな。やはりなにかあったんでござろう。」
「…なんだろ。なにかへんなかんじがする。」
「…カギがかかっているみたいでござるな。準備はいいで
ござるか?」
「うん。気をつけて。いやなカンジがする。」
『バキ!!』
渾身の力でドアを蹴破り、そのまま廊下の左右へ大きく跳んだ。不意打ちを警戒
したためだ。しかし反応は無い。―――そう。なにも無かったのだ。
おそるおそる中を覗く。そこには赤い鎧をきた女性が倒れていた。
「死んで……るみたい……」
ルーキーは彼女に近よっていろいろ調べている。外傷は特に見当たらないが…。
(なにか不自然でござる。この眼帯は死体にも反応するんでござろうか。
それにこの微妙な腐乱臭。数時間放置されたくらいで……!!!!)
「ルーキー殿!!」
「えっ?」
状況を理解できず
ライアンの方を向くルーキー。
ナイフを握った女性の腕がゆっくりとあがり……振り下ろされた。
避けられるはずも無いこの攻撃を、ルーキーは器用にも体の真ん中に穴をあけて
これを避ける。スライムだからできる芸当であろう。
「そんなっ!心臓はたしかに止まってたはず!!」
距離をとりながらルーキーは驚愕の叫びをあげた。
女性は無造作に突き刺さったナイフを抜き、ゆっくりとした動作で立ちあがった。
反対の手には一振りの剣と……彼女の装備には不釣合いのくすんだ紫色の指輪がしてあった。
「…くさった死体……でござるか?」
「…見た目はずいぶん綺麗だけどね。」
軽口をたたける余裕はまだ残っていた。唐突に雷光が部屋を照らす。
握った刃物がきらめき……しかしその目は生気を宿してはいなかった。
確かに死んではいなかった。しかし、生きてもいない
「…来るでござる……!」
彼女はゆっくりと体を傾け……俊敏な動きで二人に襲いかかった。
不死者にはふさわしくないスピードで繰り出された攻撃をライアンは両手に持った
フライパンを
巧みに操って受け流す。
アイラは動きを殺さぬまま反対の手にもったナイフを突いた。
ライアンは一歩下がり、紙一重でこれをかわす。そのまま間合をつめ、フライパンを
側頭部をめがけて振り下ろす。しかしアイラは不安定な体勢なのに大きく地面を蹴り
身をかわした。まったく無駄のない攻防がそこで繰り広げられていた。
そのあいだルーキーは何もしていなかったわけではない。できなかったのだ。
ルーキーのレベルは決して低くないのだが、それでもこの暗闇の中ではやっと二人の
動きを目で追える程度だった。援護などできるはずも無い。
打ち合う事数合、ライアンは大きく出口の側へ跳んだ。
「ルーキー殿!ココでは不利でござる。逃げるでござるよ!!」
「わかった!」
二人は踵を返し、エントランスに向かって廊下を走った。
「エントランスで戦うの?」
「うむ。ヤツは暗闇を苦にしてないようでござった。あそこなら照明があるはずでござる。」
「…でもどうしてあんななってるんだろう。」
「おそらく、呪いのアイテムでござろう。」
「見当はついてる?」
「たぶん、あの指輪でござろう。アレを破壊できれば・・・」
「じゃあ、ぼくが
ブーメランでやる。その眼帯があればできると思うし。」
「うむ。拙者が一階におびき寄せるでござる。ルーキー殿は二階から狙って欲しいでござる。」
「わかった。なんとか体勢を崩してね。」
―――そして、視界が開けた。
【ライアン 所持品:フライパン×2
第一行動方針:指輪の破壊
第二行動方針:仲間をさがす】
基本行動方針:来る者は拒まず、去るものは追わず。】
【ルーキー 所持品:
スナイパーアイ、ブーメラン
第一行動方針:指輪の破壊
第二行動方針:仲間、武器をさがす】
【現在位置:ツェンの屋敷】
最終更新:2011年07月18日 07:27