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悲劇の山で

(…おかしい。外に出てからもう何時間も経つわ。)
モニカは迷っていた。ホフマンが外へ様子を見に行ってからだいぶ経つ。
大丈夫だから。そう言っていた。本当に大丈夫なのだろうか。
となりにいる三人、アーロンメルビン、ガウは死んだように眠っている。
起こした方がいいんじゃないか。しかし、彼らの事を考えると、どうしても踏ん切りがつかない。
自分で探しにいこうか。しかし、闇はまだ深く、雨はまだ冷たかった。
探しに行こうと思う心のどこかで、あの青年がひょっこり帰ってくるだろうという期待があった。
とりあえず、今まで着ていたホフマンの上着を脱ぎ、乾かしておいた自分の服を着た。
御礼もまだ言っていない。今はただ、早くあの青年に帰ってきて欲しかった。
夜明けの放送の、ほんの数分前の事だった。

「メルビンさん!メルビンさん!起きてください!!」
モニカは激しくメルビンの体を揺すった。落ち着いてなんか居られなかった。
「…むう。…ああ、えーと…。」
(この娘は…確か…雨の中で…!!!)
「あの男はどうなったんでござるか!?」
しかし、モニカはメルビンの質問など聞いていなかった。
「ホフマンさんが…。ホフマンさんが……!!」
メルビンは理解した。まず、アーロンが助かったという事。
そして、ホフマンの身になにかが起こったという事。
メルビンはモニカの目をしっかり見つめて言った。
「落ち着いてほしいでござる。…状況を説明してくれるでござるな?」
モニカは力なくうなずき、たどたどしく状況を説明した。

「ふむ、モニカ殿。ワシとガウ殿でホフマン殿を探してくるでござる。」
「いいえ、私も行きます。」
「時間が無いんでござる。荷物をまとめ、ここでまっていてほしいでござる。」
「…わかりました。」
「すぐに戻ってくるでござるから。…ガウ殿。」
「ガウ。」
「ホフマン殿が死んだでござる。」
「!!!!」
「探しに…いくでござるよ。」
メルビンは目の奥に、ガウは全身に落胆の色を見せ、洞窟の外へ出ていった。

洞窟からほど近い茂みの中で、首を矢で射抜かれ絶命したホフマンを発見した。
銃を持っていっていたはずだが、周りに落ちていなかった。
メルビンは近くに穴を掘り、ホフマンの遺体を丁寧に埋葬した。
ガウは身動きせず、ホフマンを見つめていた。両手は握り締められ、震えている。
頬には涙が流れていた。少年にとって、この事実は重過ぎた。
埋葬が終わり、メルビンは静かに十字を切った。
「…ガウ殿。ホフマン殿を殺した奴はわかるでござるか?」
穏やかな言葉。しかし、そこには激しい怒りが見え隠れしていた。
ガウの心も同じだっただろう。荒野で生きてきた彼の心は強かった。
そしてガウはちから強くうなずいた。

「…ここは……。」
メルビン達が出ていって程なくして、アーロンが目を覚ました。
どうやら、洞窟の中のようだ。入り口から漏れる光が夜明けだという事をしめしていた。
記憶がはっきりしない。最後に見た映像は、眼前に迫りくる土砂崩れ。その前に確か……
頭が急速に覚醒した。反射的に腹部を触る。のこぎりの様な足で貫かれたはずだ。
…おそらく、リュックに。しかし、傷は見当たらなかった。誰かが治療してくれたのだろうか。
「ああ、アーロンさん。目を覚ましたんですね。」
歓喜の笑みを浮かべ、モニカが駆け寄ってきた。ここまで来てやっと、
自分が土砂の中でかばっていたのがモニカだった事に気がついた。
アーロンはモニカの目をしっかりみつめて言った。
「悪いが、状況を説明してくれないか?」
モニカの顔が一転して暗くなり、ぽつりぽつりと今までの事を説明した。

モニカが全てを説明し終えた時、ちょうどメルビン達が帰ってきた。
「アーロン殿、目を覚ましたんでござるか。傷は大丈夫でござるか?」
「ああ、あんたがメルビンだな。助かった、礼を言う。」
「礼ならこちらのガウ殿に言ってほしいでござる。ワシはナニもできなかったでござるから。」
「ああ。…それと、…ホフマンの事だが……。」
「気にしないでほしいでござる。おぬしはナニも悪くないんでござるから。」
「……すまない。」
「……これからの事でござるが、モニカ殿、ここから最も近い旅の扉
 『大陸西部砂漠』で間違いないでござるな?」
「はい。でも、マランダに比べて少し近いといったぐらいですし。」
「うむ。しかし、残り時間があと一時間と30分ぐらいでござる。
 どちらも距離的にだいぶ厳しいでござるから、少しでも近いほうが…。」
「俺なら大丈夫だ。気にするな。」
「うむ。それでは出発するでござる。」
「…メルビンさん。ひとつ、御願いがあります。」
「…なんでござるか?」
「少しの時間でいいから、ホフマンさんの御墓に寄らしてください。」

『ホフマンの仇を追わなくていいの?』
ホフマンの墓の前にいる二人の姿を見ながら、ガウはメルビンに問い掛けた。
「言ったでござろう?マランダには時間内にはつけないと。」
『でも……。わかったよ。』
「そやつの臭いは覚えているでござるな?」
『うん。絶対忘れない。絶対ホフマンの仇をとってやるんだ!』

「すまない。時間をかけたな。」
「いや、それじゃあ出発するでござる。」
「ガウ!」
そして四つの影は数多くの悲劇が起こった山脈を後にした。それぞれの心に傷を残して。

【モニカ 所持品:なし
 第一行動方針:旅の扉へ向かう】
【アーロン 所持品:鋼の剣
 第一行動方針:旅の扉へ向かう】
【メルビン 所持品:虎殺しの槍
 第一行動方針:旅の扉へ向かう
 第二行動方針:ホフマンの仇をうつ
 基本行動方針:仲間を集める。冗談を飛ばす。】
【ガウ 所持品:なし
 第一行動方針:旅の扉へ向かう
 第二行動方針:ホフマンの仇をうつ】
【現在位置:大陸西端の岩山北側→西の砂漠へ】


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最終更新:2011年07月17日 11:32
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