誰かのために死ねるなら

ぽとり....ぽとり.....
セフィロスの肩に地下水の雫が落ちる。
ロンダルキアから下界に向かう洞窟の入り口付近で、セフィロスは何をするでもなく佇んでいた。
その表情にはわずかながらも苛立ちのようなものが見える。
デスピサロ.....そしてアモス、自分こそ最強を信じて疑わなかったセフィロスにとって、
昨夜からの一連の戦いは不快きわまりない苦い思い出として胸の中にくすぶり続けている。
これを払拭するにはやはり戦いしかない。

セフィロスに生き残りたいという欲求は正直乏しい、とりあえずはルールにしたがっているのみに過ぎない。
だがそれでも最強の座についた者こそ、生き残るべきだとも思っているし、
それが自分であると信じて疑ってもいないことも事実だ。
そんなことを考えているセフィロスだったが、やがてこちらに向かう何者かの足音と気配を察知すると、
わずかに唇を笑みの形に歪ませ、背中の正宗へと手を伸ばした。

「ありがとよ、お前さんのおかげで楽に抜け出す事が出来そうだぜ」
「いえ、そんなことありませんよ」
無限回廊を突破したラグナの感謝の言葉に、アーサーは少し照れたようなそぶりを見せる。
出口が近くなってきた安心感もあるのだろう、3人の表情に少しだけ余裕が浮かんでくる。
余裕が出来れば口も軽くなる、誰からとも無く雑談が始まる。
もちろん1番かしましいのは1番後ろを行くマリベルだ、ぺちゃくちゃと口が止まらない。

「それにしてもあのギルガメッシュって男は情けなかったわよぇ、なーにがセフィロスに出会ったら逃げろ、よ
そのセフィロスって奴がどれほどの者だってのよ、箱に隠れて振るえていた奴が言っていても説得力ないんだっての」
マランダの街で自分が犯した大失態を棚に上げて、マリベルは強がっている。
つられてラグナも笑うが、アーサーは笑う気持ちにはなれなかった、同じ事をクラウドにも言われていたからだ。

「大体、こんなビジュアル先行の男が見かけ通り強かった試しがないわよ、
ホントは顔の1/10の実力も 無いんじゃないの?」
と、相変わらず軽口を叩くマリベルだったが、先頭のラグナが突然立ち止まったためにその背中に
鼻をぶつけてしまう。
「ちょ、いきなり」
「おい....そのビジュアル男がいるぜ」
そう、確かにラグナの指差した先にはマリベル言うところのビジュアル先行の男、
すなわちセフィロスが出口の光を背負って立っているのであった。

セフィロスは待ち構えていた相手がようやく現れたのを見て、正宗を抜き放ち3人へと襲いかかる。
「ベギラマ!」
マリベルとアーサーの声が同時に洞窟に響く、先に発見した分彼らの方が迎撃が早い。
だが、セフィロスの踏みこみは彼らの予想を遥かに超えていた、
ベギラマによる炎の壁が出来たのはセフィロスの遥か背後だった。
「こっちだっ!」
洞窟の奥へと退避しながらラグナがマリベルから借りていた、エルフィンボウを発射する、
セフィロスがそれを防ごうと正宗を構えた時、マリベルが同時にいかづちの杖を振りかざし、
また再びアーサーがベギラマを唱える。
2重にとどろく閃光、だがしかしそれでもセフィロスはとっさに上に向かって飛ぶと、
天井に正宗を突きたてて、呪文も弓矢も回避する、まさに凄まじいまでの戦闘能力だった。
天井に張りついたまま、セフィロスはマリベルへと尋ねる。

「どうだ?、これでもセフィロスはビジュアル先行の男か?」
聞こえていたらしい、頭上の声にマリベルは思わす口を押さえてしまう、自分が勝気な分、
マリベルは敵を楽観視する傾向があるが、今回は見事にそれが裏目に出た。
(いまさらあやまっても許してくれないわよね.....どうしようか)
悩んでいる間にセフィロスが動く、一旦正宗を引きぬくとそのまま空中で天井めがけて何度も
斬撃を繰り返す、まさに一瞬の早業、そして地上に着地するとそのまま出口へとバックステップで退いてゆく。

「?」
その行動の意図が掴めず、困惑する3人だったが天井から落ちる砂と水滴を見て、はっと気がついたように、
ラグナが叫ぶ
「崩れるぞ!」

もともと造られてかなりの歳月が経過していたのだろう、その上この周り一帯は地下水脈が通っている様だ。
そのため、水を含んだ天井は、わずかな衝撃にも絶えられぬほど脆くなっていたのである。
しかし恐るべきは、それを見抜いたセフィロスである。
自分めがけて崩れ落ちる岩盤を見て、立ちすくむマリベル、それを、
「あぶねぇ!」
ラグナがマリベルを抱きかかえ洞窟の奥へと飛び退さる、そして土煙と轟音
それが収まったとき、洞窟は岩盤で完全に塞がれてしまっていた。

そしてその場に残っているのはセフィロスとアーサーの2人だけになった。
出口側にいるセフィロスは正宗を青眼に構え、余裕の表情を見せている。

一方、アーサーはがくがくと笑い出しそうな膝を必死でこらえながら、呼吸を整えている。
「戦えるのは僕だけか......」
アーサーにはたった一つだけ策があった、これを実行すれば間違い無くセフィロスを倒せる、
だが、それは同時にアーサーの死をも意味していた。

その脳裏に魔法の師の声が聞こえる。
『よいか、この呪文は成功・不成功に関わらず術者は必ず死ぬ、術者の生命が発動の触媒なのだ』
(死にたくない......死にたくないよ.....でも.....)
アーサーは、これまで出会った数々の人々の顔を思い出す......
(誰かの為に死ねるのなら、この命が無駄にならないのなら......)
幸い、ここには自分とセフィロスの2人しかいないし、後ろは分厚い岩盤で塞がれている、
使っても誰も巻き添えにはならない。

そして、アーサーもまたゆっくりとひのきの棒を構え、セフィロスへと叫んだ、
精一杯の勇気と覚悟を込めて.......。
「行くぞ!」

【マリベル
 所持品:エルフィンボウ いかづちの杖 エドガーのメモ
 基本行動方針:非好戦的、自衛はする
 最終行動方針:首輪を外してゲームを抜ける】
【ラグナ 所持品:参加者リスト
 第一行動方針:????
 第二行動方針:スコールの捜索
 最終行動方針:首輪を外してゲームを抜ける】
【現在位置:ロンダルキアの洞窟6階出口手前、ただし岩で遮断されている】

【アーサー 所持品:ひのきの棒
 第一行動方針:何とかしてセフィロスを倒す
 最終行動方針:首輪を外してゲームを抜ける】
【現在位置:ロンダルキアの洞窟6階出口手前・洞窟側】

【セフィロス 所持品:正宗
 基本行動方針:全員殺す
 最終行動方針:勝ち残る】
【現在位置:ロンダルキアの洞窟6階出口手前・洞窟側】


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最終更新:2011年07月17日 17:28
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