感情

放送直前、ロンダルキア南東の森の中でサマンサは目を覚した。
昨夜からの激戦の疲れか、ピサロの腕に抱かれたまま眠ってしまったようだ。
その温かい腕の中を回想すると、サマンサの白い肌がほんのりと桜色に染まる。
(こ、この感情はなんだ・・・ありえない!)
未知の感情に戸惑い、ぶんぶんと頭を振ってそれを追い払った、サマンサの背後から
唐突にデスピサロが声をかける。

「気がついたか、やはり人は脆弱よな」
はっ、とサマンサは振り向くが、何故か無意識にデスピサロの顔から視線を逸らしてしまった。
そこに湖からの風が頬に触れる、未だに熱を持ったままの顔に心地よい。
風が幾分、火照った頭も冷やしてくれたようだ。今度はちゃんとデスピサロの顔を見据えて
サマンサは問いかける。

「ピサロ卿、もしよろしければまたあの島に渡りたいのですが、よろしいでしょうか?」
その言葉を聞き、デスピサロは意地悪く笑う。
「ほう・・・やはり気になるか?あの少年たちが」
「・・・・・お戯れを」
「まぁいい、私もあの島は気になっていたのだ。掴まれ」
そう言うなり、デスピサロはまたサマンサを強引に抱きかかえ、再び薄い氷の上を跳躍し
島へと向かう。
その腕の中ではぁはぁと息を荒くしているサマンサには気がつかないままで・・・・。

(どうやら命拾いをしたようですね、ですがどうやって?)
上陸後、ビビとジタンが無残な姿を晒していた周辺で佇むサマンサ、だがその瞳はどこか虚ろだった。
彼女の本来の仲間、アルスにしろマゴットにしろ、実力は彼女より上だったかもしれないが、
その能力以上の感情、すなわち友情なり愛情なりといったものをサマンサは持つ事は無かった、
だが・・・ピサロに関しては・・・・。

 まして彼は魔族、しっかりしろ・・・彼が私を利用するのではない、私が彼を利用するのだ」
そう自分に言い聞かせるサマンサだったが、その言葉に力は無かった。

一方のデスピサロは島の中心部で色々と調べ物をしている。
そこには古ぼけた社と祭壇、それから禍禍しい神を彫った石像が安置されている。
「なるほど・・・・ここはなにやら神事を行うための島のようだな」

だが、腑に落ちぬ点もある。
この島の海岸線は岩場ばかりで、船では上陸できない、この島が彼の睨んだとおり
祭事を行う場所ならば、信者たちはどうやってここまでやってくるのだ。

と、そこにサマンサの声が聞こえる。
「ピサロ卿、これを」
サマンサの示した場所には、いかにも不自然な岩盤が砂地に露出していた。
「そういう仕掛けか」

2人は岩の前で色々と呪文を試していたようだが、通常の魔法で開かないと見るや
今度は祭壇の石像に刻まれていた語句を岩の前で暗唱していく、と
かちりっ、と、乾いた音と同時に2人の目前で岩が開き、その下に通路が現れる。
「ふん・・・なるほどな」

トンネルの中は一本道ではなく、いくつか分岐があるようだ、どうやらこのトンネルは
ロンダルキアの地下全体に網の目のように張り巡らされているらしい。

「サマンサよ、どうする・・行くか」
「ピサロ卿の望むままに」
デスピサロの言葉に、出来るだけ平然と事務的な口調で応じるサマンサ
その冷たい瞳の奥底には、少しだけ温もりのような光が宿っているかのように見えた。

【デスピサロ 所持品:正義のそろばん 『光の玉』について書かれた本
 第一行動方針:腕輪を探す
 基本行動方針:所持している本を手がかりに進化の秘法を求める
 最終行動方針:勝利者となる】
【サマンサ 所持品:勲章
 第一行動方針:セフィロスと戦う
 基本行動方針:デスピサロを手伝う
 最終行動方針:生き残る】
【現在位置:ロンダルキア南の湖の小島→トンネルへ】


←PREV INDEX NEXT→
←PREV サマンサ NEXT→
←PREV デスピサロ NEXT→

最終更新:2011年07月17日 21:35
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。