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氷の感情

「ビビ・・・・しっかりしろよ」
力無くジタンはビビに呼びかけるが、ビビはわずかに首を揺らすのみで答えようともしない
扉をくぐる瞬間、ジタンたちはセシルの放った火炎瓶によって炎に包まれてしまった
フライヤともはぐれてしまった上、ジタン自身も腕にひどい火傷を負っている。
しかし親友の無残な姿に比べれば可愛いものだ。

「ビビ・・待ってろよ、今助けを探しに・・・・」
と言いながら茂みを抜けたジタンは目の前の光景を見て絶句し、慌てて地図を見てまた絶句する。
そう、ジタンたちのいる場所はロンダルキアの南に位置する湖に、
何故かぽつりと浮かんでいる小島だったのだ。

ジタンが絶望に沈んでいたころ
「参りましたね・・・」
サマンサは薄く氷の張った湖面を見つめながら溜息をつく
扉から出る瞬間、ピサロから手を離してしまった。
この近くにいるといいが・・・・・

どうやらここは太陽の位置などから推察するに、南の湖に浮かぶ孤島らしい
ここから岸まではざっとみて数百メートルはある。
(1人で向こうに行くのは骨が折れそうですね)
と、思いながら茂みを掻き分け、とりあえず内地の調査を・・と思ってると
突然目の前に少年が現れる。

「!」
とっさに呪文を唱えようとしたサマンサを手で制するとジタンは頭を下げて懇願する
「俺の友達が死にそうなんです!お願いです、力を貸してください!」
しかし・・・私は治癒呪文は・・・と言いかけてサマンサは言葉を飲みこむ、興味の方が勝ったのだ
「分かりました、お役に立てるかはわかりませんが・・・・」

「これはひどい」
サマンサはビビを一目見て、思わず口走ってしまう。
今まで様々なケガ人、死体を見てきたがここまでひどいのは久しぶりだった。
意識はあるようだが、全身の皮膚が黒焦げになっている上に、炭化した皮膚がズル剥けになって、
そこからどす赤い肉が見えており、もはや健康だった頃の面影が想像できない、
それほどまでに無残な状態だ。

吐き気をこらえながら口の中を見ると、喉の奥までも焦げているのがわかる。
つまり内臓までもがぼろぼろに焼け爛れているのだ。
これは治癒呪文では手の施し様がない、復活呪文の範疇だ。
少なくとも、自分の知る限りでは・・・・。

サマンサはしばらく考えていたようだが、やがて無言で指先に火花を散らすと、
それをビビの心臓へと押し当てようとする。
が、その手は寸前でジタンに掴まれてしまう。
「お前、何をしようとしているんだ!!、ううっ!」
火花を掴んでしまったために、軽い痺れを覚え、ジタンはよろめく
「残念ながら、彼を助ける手段は存在いたしません。したがって苦痛を長引かせるよりはと思い
 安楽死させようと思っただけです」
ジタンの問いにサマンサは表情を変えることなく淡々と答える。

「そんなことを頼んだ覚えは無い!俺はビビを助けてくれって頼んだんだ!」
「ですから私は彼を救おうとしたのです、このままだとまだ数時間もの間、ビビ君は地獄の苦しみを
 味わいつづける事になるのですよ」
悪びれる風もなく、ぬけぬけと言い放つサマンサを見てジタンの顔が怒りで紅潮していく。

「だからといって簡単にあきらめたりなんかできるかよ!奇跡だって起こるかもしれないだろ!
 人の命をなんだと思っているんだ!!」
(ふふ・・・アルスもきっと同じことを言うでしょうね)
サマンサはふとジタンの姿にアルスを重ねていた、そういえばアルスに出会ったのは・・・・

魔法学校を首席で卒業したのはいいが、人間関係に問題があった彼女は何処にも仕える事が出来ず
適当な雇われ仕事をたまに請け負いながら、流れ流れてルイーダの酒場で書物を読みふける暮らしを続けていた
そんな頃、そこにアルスがやってきたのだ。
『腕のいい魔法使いがいるって聞いてやってきたんです、僕と来ていただけませんか』

そう言って手を差し出した姿をみて、大いに興味を感じた、勇者の血統にあるというこの少年が、
どこまでやれるのか見届けたくなったのだ。
それ以外に、別に世界の平和を守ろうとかそういう殊勝な考えを持っていたわけではない。
事実、自分にとってより魅力的な何かを与えてくれるのであれば、彼女はバラモスの元へ仕えたかもしれない。

こうして旅の仲間となったサマンサだったが
戦闘時以外はなるべく目立たないようにし、いつも書物を開いて難しい顔をする事にしていた。
こうしておけば滅多に声をかけられることはなかった。
全ては自分の本性・・・冷酷で自己中心的(少なくともサマンサはそう思っている)を隠すためだった。

もっともアルスには他に優れた仲間がいたので、サマンサはただ時折、
参加料程度の意見を言うだけで済んでいたのだが。
もし他の仲間たちがもっと無能で、サマンサが前面に出ていかざるを得なくなっていれば
アルスとサマンサは間違い無く衝突していただろう。

サマンサがそんな事を考えていると、ジタンは何時の間にか仕込み杖を抜き放っている。
「信じられない・・・・お前のような人間がいるなんて」
(ふふ・・・やっぱり似ている)
そんな一触即発の状態になってもサマンサは余裕だった、何故なら・・・・
「貴方の相手は私ではありませんよ、バイキルト!!」
サマンサの呪文と同時に背後の気配に振り向くジタンだったが、遅い、
その時にはすでに黒い炎を纏わせたデスピサロの拳がジタンの背中にめり込んでいた。

デスピサロは何時の間にかジタンの背後へと忍び寄っていたのだった。
腕のいい盗賊であるジタンなら当然気がつくべきだろう、しかし熱くなりすぎていたのか察知できなかった。
ジタンの骨がきしむ音をBGMに2人は淡々と会話を交わす。

「ピサロ卿、やはりここでしたか」
「おおサマンサ、近くにいるだろうとは思っていたがな」
デスピサロはジタンを無造作に投げ飛ばし、さらに話を続けようとした、その時であった
ジタンの身体から何やらオーラのようなものが立ち上っている。
「お前らの・・・お前らのような奴らがいるから・・・」
と、次の瞬間、彼は信じられないような速度で、デスピサロへと襲いかかったのであった。

その速度はデスピサロですらついていくのがやっとだった、いやデスピサロだからこそついていけるのだ
事実、サマンサには2人の動きをかろうじて目で追うのがやっとだった。
(魔法攻撃では的が絞れない・・・・と、なると)
「モシャス」
呪文の完成と同時にサマンサの姿がデスピサロの姿へと変わって行く、
この呪文は効果はきわめて短いが、変身した相手の能力をほぼ再現することが出来る。

(ふふ、この姿なら見えます)
デスピサロの姿のサマンサはやはり拳に黒い炎を宿すと、ジタンのみぞおちへとその拳を叩きこむ。
そこにさらに今度は本物のデスピサロの拳がジタンの顎を捉える。

『く』の字に折れ曲がった状態でジタンは吹っ飛び、凍りついた湖面にゴムマリのように叩きつけられる
しかしそれでもジタンは立ちあがろうとするが、その瞬間、湖面に張った氷が割れ
ジタンの身体が水中へと没していく。
そこをすかさず彼女本来の姿に戻ったばかりのサマンサの呪文が飛ぶ。
「マヒャド」

超低温の刃が水面へと殺到し、もうもうと煙がたつ、それが晴れたとき、
ジタンは、水面に片手をわずかに覗かせたまま完全に凍り付いてしまっていた。
急速冷凍のためか未だに心臓は動いてはいたが、このまま放っておけばやはり凍死するだろう。

「止めは差さぬのか?」
デスピサロはサマンサへと問う。
「どうせ2人とも、長くもって正午過ぎまでの命でしょう」
サマンサは思い出したように、ビビの身体に威力を弱めてヒャドを唱える、
これで命が延びるわけではないが苦痛は和らぐだろう。
(奇跡が起きるかも・・・ですか)
「そうか・・・サマンサよ、お前は自分で思っているほど冷たい人間ではなさそうだな」
デスピサロのその言葉にサマンサは不思議そうな顔をする。

「ともかくここから出るか、捕まってろ」
デスピサロはサマンサを抱きかかえると、まるで無重力のような身軽さで湖へと飛び出していく
そのつま先が湖面に触れる寸前、
「ヒャド」
足場を瞬間的に魔法で固め、着地するとまた宙を舞う、それを何回か繰り返し、
2人は陸へとたどり着いた。

デスピサロはサマンサを下ろすと、また何事も無かったかのように先へと進む。
それを追うサマンサの頬は、やや桜色に染まっているようにも見えた。

【デスピサロ 所持品:正義のそろばん 『光の玉』について書かれた本
 第一行動方針:腕輪を探す
 基本行動方針:所持している本を手がかりに進化の秘法を求める
 最終行動方針:なんとしてでも生き残る】
【サマンサ 所持品:勲章
 第一行動方針:セフィロスと戦う
 基本行動方針:デスピサロを手伝う】
【現在位置:ロンダルキア南の湖】

【ビビ(瀕死) 所持品:ギサールの笛 爆弾石×10
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:非好戦的、自衛はする】
【ジタン(瀕死) 所持品:仕込み杖、盗賊のナイフ 
 第一行動方針:不明】
【現在位置:ロンダルキア南の湖】
※2人とも、正午過ぎまでに処置されなければ死亡


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最終更新:2011年07月17日 21:34
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