転がるように
ティファは導師たちが潜む林の中へと駆けこんでいく。
「ティファさん、その傷は」
「話は後よ、今から私と一緒に来て!」
ティファは導師の手を引き、また砂漠に踏み出そうとするが、ますますひどくなった肩の痛みに、
へたり込んでしまう。
「とにかく治療を…肩の骨が折れてるから」
「私の傷なんていいからっ」
それでもティファは立ちあがろうとするが、導師が肩に手を触れただけでまたへたりこんでしまう。
「今はあなたの傷の方が重要!僕の手も振り解けないようではどうにもなんないよ、話は治療をしながら聞けるから
じっとしてて」
導師は有無を言わさず、ティファを草むらに寝かせて治療を始める。
数分後、上半身をがっちりテーピングされたティファの姿があった。
「いい!しばらくの間は絶対に安静にして動いちゃだめだよ、魔法も万能じゃないんだから」
「でも…それじゃ間に合わない、こうしている間にも、あの人死んじゃうかもしれない」
ティファの呟きに導師は悲しげに頭を下げる。
出来る事なら今すぐ自分だって神殿に行きたい、事情が事情だ。
だが、それでもあの殺人ロボットがいる限り、単独での突破は難しい…ミイラ取りがミイラになっては意味が無い。
そんな中、
デッシュは手に持ったメモ帳を何やら確認している。
そこにはこれまでのキラーマシーンの巡回の頻度と間隔が細かく書きこまれている。
「さっき見たんだが、あのロボット、駆動系に損傷があった、今なら腕輪を使えばなんとか
お前の足でも神殿まで行けるんじゃないのか?」
駆動系の話はティファにも思い当たることがあったようだ。
「そういえば行きも帰りも見つかったけど、余裕で振りきれたわね」
それを聞いて導師の顔が明るくなる。
「だったらっ!」、
そのまま飛び出しそうになった導師をデッシュが止める。
「出発はもう少し待ったほうがいい、奴がここから最も遠ざかる頃合を待つんだ」
さらにデッシュは背後の茂みから大きな金属板を導師に手渡す。
「それとこいつも持って行けよ、森で倒したあのロボットの装甲を使って作った盾だ、
違う違う、手に持つんじゃなくって、背負うんだ」
言われるままに導師は背中に盾を背負う、その姿はまるで亀のようだ。
時間が来た、導師はティファから腕輪を受け取ると、そのまままっしぐらに神殿に向かって走る。
中間地点まで来たところで耳障りな起動音、あいつか。
導師は背後から放たれる弓矢を避けるため、ジグザグに走る、下は砂地だ…転べば終わり。
慎重に足元に集中しながらも全力疾走する、それでも背中に何発か命中し装甲が渇いた音を立てる。
「そうか、だから背中に背負えって言ったんだ」
ともかく、そんな死ぬような思いをしながら、何とか導師は
神殿へと辿り着く。
神殿に辿り着いた時点で、キラーマシーンは反転し、また砂漠へと戻っていった。
どうやら神殿内部までは入ってこないらしい。
ようやく一息ついた導師は、中庭目指してまた走り出す、
遠くに何者かが切り結ぶ音を聞きながら。
一方の
ジタンは
ピエールの援護に向かうべく、渡り廊下を駆けていた。
廊下はあちこちが刀傷や矢が散乱し、凄まじい激闘を物語っている。
と、その時白いフードの少年が息を切らして、こちらに近づいてくる。
「中庭はどこですかっ!ティファさんに怪我人がいるって聞いて」
「中庭はここから反対だ…違う、そっちじゃない、ああもう俺が連れていってやる」
本来彼が向かわなければならないにはピエールの援護だが、こうして
フライヤを直接治療しに
やってきたものがいるのなら話は別だ。
ハーゴンの考えも今一つ理解し難いものがあるし、
ともかく、やはり見知らぬ魔物の騎士より、仲間の方が大切だ。
ともかく2人は中庭に安置してあるフライヤの元へと走った。
一方、ハーゴンはフライヤのズタズタの身体を水晶越しにひとめ見て、
「あの少年には悪いが、もはや無駄じゃな」
と思わず呟いてしまう、とそこに先程の手はずを破ってジタンが、白いフードの少年を伴って現れる。
少年はそのまま鼠女の傍らで治療を始める。暖かな光が周囲を満たして行くのが分かる。
「ほう…これは意外な収穫じゃわい…直接、力の程を確かめるとするか」
こうしてハーゴンは、
マゴットを起こさないようにそっと自分の部屋を出て、中庭へと向かった。
さて、導師であるが、彼は自分の持てる全力を使い、フライヤの治療を試みていた。
暖かな光が中庭を照らす、しばらくしてフライヤの顔にわずかながら生気のようなものが差してくる。
しかし。その光はそれからまもなく急速に小さく消えていった。
「駄目だ…肉体の損傷が酷過ぎて、出来る限りのことはしたけど、これが限界だよ」
その言葉にジタンは激昂し、導師の胸倉を掴んで揺さぶる。
「おい!ここまで来てそんなのありかよ!冗談は止せよ!」
「ごめん、僕の力では無理…それにこれ以上はむしろこの人を苦しめることになるんだよ!」
「お前までそんなこと言うのかよ!、頼む助けてくれよ…そしたら俺、何でもするからさ」
涙ながらに両手を床につき、土下座までして懇願するジタン。
それを見て導師もまた、床に手をつき頭を下げる。
「そんなこと言われたって無理なものは無理だよ!ごめん、僕にもっと力があれば!」
そしてそんな2人の様子を、中庭に辿り着いたハーゴンが神妙な表情で眺めていた。
(やはりこの癒し手、かなりの使い手のようじゃな……)
と、その時先程まで閉じられていた、フライヤの目が開き、その唇がたどたどしくも言葉を紡ぎ出した。
「ジタン、無理を…言うのは止すのじゃ…その少年の言う通り、私はもう、駄目じゃ」
「そんな、そんなことないって!」
ジタンの必死な声に、力無い微笑で応じるフライヤ。
「いや…わかる、ふふ、あいつが呼んでいる…早くそばへ行かせておくれ」
「駄目だ、いくな!…ああ
フラットレイ、頼むからフライヤを連れていかないでくれ!」
「ジタン…最後に言っておくことがある…よく聞くのじゃ、私がこうなったのは…私自身が招いたこと
これが私の天命じゃ、誰の責任でも…ない」
自分はもう助からない、だがこの目の前の少年が心配でならない、だから良く言って聞かせねば…
冥界にて見守ることは出来ても、もう2度とそばで支えてやることは叶わないのだから。
「だから誰も恨んではならぬ、憎んでもならぬ…心正しく…生きるのじゃぞ…さぁ
もはや助からぬ私のそばに居ても意味が無い……お前は…お前のすべき事を、するのじゃ」
それからフライヤはジタンの傍らに立っている導師にも、ねぎらいの言葉をかける。
「そこの少年、私に最後の時間を与えてくれて、感謝の言葉も無い…お主はよくやってくれた
己の非力を悔やむでないぞ」
ああ、この女性は死を目前にしてなお、他人を思いやれる心を持っている。
こんな気丈で高潔な人をこのまま見送る事しかできないなんて!
導師はただ、その場に跪き、嗚咽を漏らすことしか出来なかった。
そして、静かな微笑をたたえていたフライヤの表情に変化が訪れる、いよいよその時が訪れたのだ。
まだ言わなければ、伝えなければならぬことはたくさんあるというのに…
断末魔の苦痛がフライヤの全身を駆け巡る。血泡をごぼごぼと吐きながら彼女は懇願する。
「さすがに苦しくてたまらぬ…ジタン、とどめを、後生じゃ」
「いやだ!そんなこと言うな…なぁ、冗談だろ、嘘だって言ってくれよ、フライヤ!」
「うつけ者め……」
一方、ハーゴンであったが、彼はなにやら周囲を気にしている。
(集まってきおったか)
なかなか、感動的な見世物だったが、そろそろ閉幕の時間が迫っているようだ。
彼の目にはフライヤの断末魔を喰らおうと群がる悪霊の類がはっきりと見えていた。
「目を覚ませ!その女をお前の友人のようにしたいのか!」
(魂を喰われてしまう上、後始末が面倒じゃからのう)
ハーゴンの言葉で、ジタンの脳裏に生きながら物言わぬ
ゾンビとなって、朽ちていったビビの姿が甦る。
このままだと……フライヤも…
ジタンの身体ががたがたと震える、硬く握り締められた拳から血がぽたぽたと流れる。
どれくらいそうしていただろうか、ジタンの身体の震えが止まったその時。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
ジタンは凄まじいまでの叫び声を上げると、
仕込み杖を抜き、それをフライヤの胸に突きたてる、
心臓を貫くわずかな手応え。
そしてフライヤはもう1度だけ微笑を浮かべ、静かに目を閉じていった。
その様子を見ても、誰も声を発しようとはしない、導師もハーゴンですらも、
ただ、フライヤの亡骸にすがりつく、ジタンの泣き声だけが中庭に響いていた。
【導師 所持品:
天罰の杖 星降る腕輪、盾(キラーマシーンの装甲を利用)
第一行動方針:
エドガーに会う
基本行動方針:なるべく戦闘は避ける】
【ジタン 所持品:仕込み杖、
盗賊のナイフ、ギザールの笛、
グロック17
第一行動方針:???
第二行動方針:
サマンサとピサロの殺害
最終行動方針:ゲームから脱出】
【ハーゴン(あと二日で呪文使用不能、左手喪失)
所持品:
グレネード複数 ムーン王女の首
グレーテの首 首輪×2
裁きの杖
第一行動方針:見張り
第二行動方針:授業、マゴットの治療
第三行動方針:魂と首輪を集める
最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:神殿】
【ティファ(療養中) 所持品:ボムのかけら×5
第一行動方針:傷を癒す
第二行動方針:
クラウドたちを探す】
※夕方の放送時までには回復
【デッシュ 所持品:
ミネアの首輪
第一行動方針:マシーンの残骸の調査
第二行動方針:エドガーとの合流
第三行動方針:首輪の入手
最終行動方針:首輪の解除】
【現在位置:神殿近くの森(砂漠との境界線上)】
【フライヤ 死亡】
【残り 56人】
最終更新:2011年07月18日 06:31