血と薬品の混じった臭いのする部屋で導師は目覚めた。
明かりが消えていて天井が暗い空のように思えた。
全然思い出せない、思い出したくない記憶が無意識に表に出始めてくる。
最強の魔法をぶつけてまだ動きのとまらない機械を前に、
自分の死を予感して思考の一切を閉じたこと。
それが今こうして生きている。
がたんと何かが崩れる音がした。部屋のなかは何も変わっていない。汚くて、がらくたでひしめき合っていて。
いや、隣で人形が寝ていた、体をバラバラにして。この点は違っている。
導師はゆっくりと体を起こした。
命を狙っていた敵は死んだ、脅威は去った。誰かがやったんだ、それ以外にない。
意識がはっきりしてきた。大事な用があってこの医務室に来たことをおもいだした。
恐ろしい現実があると予感して、首が回らなくなった。
後をふり向けばそれが見える。厳然としてそこにあることがわかっている、
だから脳が振り向くのをやめろといっている。
見たくも無い、見たくなどなかったが、、やはり、見たくはなかった。
「え、り、あ、だ、よ、ね」
女の死体を抱き寄せた。もう冷たい。固くなりだしている。
唇に色はない。昔見た気味の悪い、色素がないカエルを思い出した。
導師は死体を突き放した。頭を打ち付けて死体がごつんと音を立てた。
「いやだ、こんなの」
慌てて、しどろもどろの足取りで医務室の出入り口に走った。
ドアを押すときしめきながら開いた。
思わず横目になってしまった。赤いシャーベットの上で、壁を背にしてうなだれていたのは
ティファだ。
二人目の死体を見た。
【導師(MP0)
所持品:
天罰の杖 首輪
第一行動方針:不明
第二行動方針:不明
最終行動方針:不明】
【現在位置:神殿一階医務室】
最終更新:2011年07月13日 21:41