生きて…

――――強い。
スコールは素直にそれを認めた。僅かだが……相手の方が技量は上。
――――だが、勝てない相手ではない。
100回戦えば、51対49で自分は負けるだろう、だが真剣勝負は一度のみ。最初の1回勝てば勝利だ。
リノアも待っている、これ以上長引かせるわけにはいかない。

「……来るか」
半身で構えたスコールに、ザックスバスターソードを握りなおす。
奴は捨て身で来る。凌ぎきれば自分の勝ち。出来なければ、負けて死ぬ。

そして、スコールは突進した。
疾風の如く駆け抜けたスコールは勢いを剣にのせてザックスに切りつける。
ズガン!ギィン!ガァン!
水平、袈裟斬り、斬り上げの三連撃。それをザックスはバスターソードの背で逸らす。
ガンブレードを受ける度に、勢い以上の衝撃が伝わって、ザックスは顔を顰めた。
だが、まだまだスコールの斬撃は止まらない。流れるような剣閃が、絶え間なくザックスを襲う。

止まらない――――!さすがにザックスも焦った。
勢いはますます増しつつある。受け流すだけでも剣が流れ、手が痺れる。
このまま、ただ受けているだけでは殺られてしまう。
だが同時に落ち着け、とも思う。ヘタに手を出したところで奴の剣に飲まれるだけだ。
奴も人間だ。どんなに腕が立とうと、限界は来る!

スコールは必死だった。これで決まらなければ、自分の負けだとわかっていた。
流れる動きとともにガンブレードを連続で叩き込む『連続剣』は奥の手である。
もう後がないときだけ使うワザで、これが通用しなかったらもう終わりということだ。
だから、止めるわけにはいかない。何発、何十発だろうと撃ってみせる…!

そして、スコールの放った何発目かが、ザックスの剣を大きく弾いた。
いまだ、と間合いを離そうとしたザックスに詰め寄るスコール。
舌打ちしながら、剣を構えなおそうとするザックス。

下段に構えた剣を振り上げ、飛び掛るスコール――――

迎え撃つザックス――――



――――結末は、
意外な場所から現われた。



ザックスの目の前にいきなり飛び込んできたのは、美しい女性の顔。
呆気に取られて、剣を切り上げる動作が鈍り、敵の剣を見失った。
スコールの目の前にいきなり飛び込んできたのは、艶やかな黒髪。
止めようと音もなく絶叫する、しかし振り下ろした剣は止まらず。

スコールの。
ガンブレードは。
ザックスを。
切り裂いた。







リノア、もろとも。



自分を抱きしめられているらしい。
急激に失われていく意識が、現実をあやふやにしていた。
けれど今、彼女の心は喜びに満ち溢れていた。

「……どうして」
愛しい人の声。数日だけのはずなのに、随分と聞いてなかった気がする。
けれど、それは確かにその人の声。自分を、包み込んでくれる――――
もう一度、再開できた。例え一時でも、それは喜びだった。

もうほとんどない感覚の中で、ただ一つ感じるのは頬の温もり。
ぽたり、ぽたりと、彼の黒い瞳から落ちる涙の雫が頬に落ちて。
それが暖かくて、とても優しくて。彼女は、精一杯の微笑を浮かべた。
微笑んだだろうか?綺麗に笑えただろうか?この人に、ブスな顔を見られたくない。

途切れていく視界。ただ、何かを入っている彼の姿のみ映っている。
ああ、これで終わりなんだ。そう思ったから、何かを言おうと思った。

ありがとう?ごめんなさい?愛してます?……どれも言いたい。伝えたい。

けれど、一言しか言えそうになかったから。とびっきりの言葉を、彼に送った。
ちゃんと伝わっただろうか?私の言葉。






――――生きて。





負けた、か。ザックスはぼんやりと無機質の天井を見上げた。
結構苦しいもんだ、しかしソルジャーなんてやってきた自分の最後らしいと思う。
……可愛い女の子に気を取られて、ってのもな。
自嘲の呟きは声にならず、代わりに血が溢れて視界を赤くする。

これまで、か。
すまない、クラウド。1stなんて粋がってたくせにこのザマだったよ。

ザックスの手からバスターソードが零れ落ちた。
そして二度と本来の主の手に、帰ることはなかった。


【スコール 所持品:ガンブレード 真実のオーブ
 最終行動方針:???】
【現在位置:五番街スラム】

【リノア 死亡】
【ザックス 死亡】
【残り 27人】


←PREV INDEX NEXT→
←PREV ザックス NEXT→死亡
←PREV スコール NEXT→
←PREV リノア NEXT→死亡


最終更新:2011年07月17日 16:27
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。