第15章 決戦への一本道
クムトは一人で研究室に籠っていた。NKの調整をしているようだ。「何がいけない!この通りに調整すれば記憶も感情も戻るはずなのに!!どこに不備があるというんだ!」そこにノックの音がした。「ゾビリーダだ。入ってもいいか?」クムトはNKを収納してドアのロックを解除した「今ドアを開けた。」ゾビリーダは入って来るや否や「ゾビマジーラが全員に伝えたいことがあるらしい。集合してくれないか。」

こうしてエンペゾビラーの間にゾビマジーラを中心に幹部が勢ぞろいした。ゾビホウが言う。「珍しいですね、四天王のあなたが集合をかけるとは…」ゾビマジーラは言った「ふっふ〜んすっごいことがわかっちゃってねぇ〜…こんな軽いノリで報告できることならどれほど良かったか。」ゾビアーチャが急かす。「とっとと本題に入って頂きたい。」そう言われたゾビマジーラは少し黙り込んでそれから口を開いた。「ゾビッポン帝国、いやこの世界そのものに大きな危機が訪れているようだ…」ゾビマジーラは杖で空間に映像を照射した。「これを見てくれ。」そこには惑星レベルの巨大隕石が映し出されていた。「ある時宇宙に突然この星が発生し、そして軌道を我らのこの星に向けているのだ!」ゾビソルダが言う「突然このレベルの星が発生!?一体どうやって…」赤いゾビッポンが言った「もしかしたら…次元の歪みかもしれねえな。俺がディメンションホールを通してこの世界で力を得たように、どこかの別次元からディメンションホールで星ごと運ばれてきたんだろう。」ゾビマッチョが「そんなのぶっ壊しちまおうぜ!」と威勢よく叫ぶが、冷静にゾビマジーラは答えた「計算してみたが、ゾビッポン帝国全てのエネルギーを凝縮してやっと互角、もしくはまだあちらの方が上かもしれないレベル。軌道をずらせれば御の字、まして破壊など…!」エンペゾビラーは「衝突はいつ頃になるのだ?」重々しい声で言った。「一週間程度、といったところでしょうか。断言はできませんが、なにしろこの星の周期は非常に不安定で…」クムトが声を上げた「その時までにどうにかできるような発明をしなければならないな。少しでも検討を勧めたいのでここらで自分は失礼する。」エンペゾビラーの「頼んだぞ、我が友よ。」の声を合図にクムトは退出した。だが、ドアの前で立ち止まり「そういえば、AZAのやつらの兵器の理論上の最大エネルギー数値は小規模な星なら破壊しうるものだったな。流石AZAだな…自分も一人では限界か…」と独り言を行って部屋を出た。ゾビリーダの顔が険しくなる。(あいつらのマシンにそこまでの出力があったとは、やはり真っ向勝負ではやつらには…)

AZAはまだその惑星に気づいた様子はない。もっともゆびが時折見る予知夢で何かしらの危機こそ察知しているが。何より彼らにはそれよりも眼前の重大な事項があった。「前のクムトさんが帝国に帰る時のあのデータを解析した。そしてゾビッポン帝国へ乗り込むためのゲートを作る技術が分かった。」桃ぽよが報告。ゆび「おー、じゃあいよいよゾビッポン帝国に乗り込んで…」「それはできない」桃ぽよは即座に否定した。「ゾビッポンの使うあの赤い液体、あれに含まれるZエネルギーがないとゲートを開けないんだ。」デビが言う「じゃあやつらがまたこっちに攻め込むのを待つしかないのか。」「そうでもないぞ。」すしが言った。「自分の使う米や刺身のユニットのメンテナンス時に表面にこびりついたゾビッポン液を採って研究室に預けてあるんだ。もしかしたら残っているかもしれない。確認してくる。」

ミキは自室で何かを書き留めていた。「ゾビッポンと人間の共存…か。」ゾビッポンに滅ぼされながらもパラレルの自分、タクミとゾビッポンとの友情も知っている彼はそれが不可能ではないと感じるようになっていた。本当に排除しか道はないのだろうか、そんなことを考えていた矢先サイレンが鳴り響く。

基地のスクリーンが映し出した光景はまさに地獄絵図。街中の箒が突然暴走して人々を襲っている。「床を、人の心を綺麗にするための箒でこんなことをするなんて…たっぷり叩き込んでやる!」自らも箒を能力として持つゆびは対抗心を露にしていた。

AZAが街に着くと箒たちは一点に集まってきたその中心には「俺はブルーミングゾッポン。ゾビッポン帝国に邪魔なものは全て掃除する!行けブルーミングドッグ!」その掛け声に合わせて箒が姿を変えていく。足が生え、掃くための部分が牙に変化した。それが一斉に襲い掛かってくる。単体の力はそこまででもないがまるで野生の狼などのような見事な連携でAZAの一瞬の隙を突いてくる。加えて「上ががら空きだぞ?やっちまえダストパンバード!」ちりとりに翼が生えた生物がゴミを投下してくる。すし「こいつら、ふざけた見た目の割になかなかやりやがるな!」ゆびが言った「こうなったらあれを使ってやる!」も箒を取り出して指笛を鳴らすとこちらの箒もブルーミングドッグのように変化した。「そんな隠し玉が!?」皆が驚く間に敵のブルーミングドッグはゆびの従える箒に吸収されていく。

ブルーミングゾッポンは箒型の巨大メカを発進させた。「いくぞ!ジャイアントホウキー!」AZAマシンも対抗するように発進。そこにもう一台のマシンが現れた。操縦しているのは、クムトだ。「そのデータ観察させてもらう。」ジャイアントホウキーとAZAマシンが空中戦を繰り広げている間、地上で避難誘導に当たっていたミキの元にはNKが現れていた。無言でペンを動かし、空に描いた杖を操って攻撃してくる。龍の戦士となったミキがNKと交戦。上でも下でも激しい戦闘が続く。そんな中きねからミキに連絡が入った「できればいい!NKを連れ帰ってくれないか!?前にも言った通りその素体は人間だ。」ミキは加減しながらチャンスをうかがっていた。

ジャイアントホウキーは箒の掃く部分1本1本がミサイルであり、その数は凄まじいものがあった。細長いため撃墜も難しく、しかも速い。追尾機能までついていて回避で精一杯だ。しかし、デビが何かを思いついた「逃げながら上手く回り込めば…」ブルーミングゾッポンは「ハハハ!無駄だ!そのミサイルはどこまでもお前らを追いかける。」デビの動きを見て他の3人も察して操縦した。そして4人が一点に集まった時、ジャイアントホウキーの目の前に迫っていた。直前で上下左右に分かれミサイルだけがジャイアントホウキーに激突、そのまま爆散した。

それを見たNKはペンで描いた壁でミキを押しのけて退散しようとした。ミキは声をかける「NK、いやなかきいくん。なかきいくんは本当にこんなことがしたいの?!」NKは一瞬動きを止めたが、すぐに消えてしまった。街は沈黙に覆われている。その沈黙の中で5人は帰還した。

帰った5人にきねが声をかけた。「待っていたよ。5人とも。すしの保存していたゾビッポン液で、十分なゲートを開けそうだ。」ゆび「ということは遂にいよいよ…」「うん、乗り込むよ。ゾビッポン帝国に。ただしそれには準備がいる。皆も準備をしておいてくれ、しっかり体を休めてね。」

メンバーが自室に戻る中きねは「思ったより早くゾビッポン帝国に乗り込む準備ができた。例の日も遠くない。あとはそっちでしくじらなければ…どうとでもなる。頼んだよ、ぞびぽん。」ぞびぽん…クムトとの連絡を続けていた。

〜15章完〜

次回予告! 「ここがゾビッポン帝国!」「四天王の力見せる時!」「ついに始まったようだな…」 次回!「潜入!ゾビッポン帝国×
最終更新:2021年08月12日 17:15