「生徒会SS4」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

生徒会SS4 - (2012/09/09 (日) 21:25:17) の編集履歴(バックアップ)


生徒会SS4

累積点数 点



~~~~ごくそつ!~~~~



「自我はありません」
「自我はありません」

「人間の感情はありません」
「人間の感情はありません」

ゴクソツ猟用機構・イの15号乙とTEX2-コ89。
生徒会室には、二体のメカが面と向かって座している。
テーブルの上にはやや大きめのグラスが二つ並べてあり、
透明な緑の液体が注がれている。
オイルかなにかであろうか。
グラスには、それぞれ赤と青のストローが挿してある。

「自我はありません」
「自我はありません」

二体はストローを噛み、ちうちうと液体を啜る。

「人間の感情はありません」
「人間の感情は……あっ」

TEX2-コ89。
その巨大すぎるフレアスカートがテーブルを揺らす。
衝撃により、TEX2-コ89のグラスが倒れ、液体が零れてしまったのだ。

「あっ……」

広がる液体と、広がる感情。
あわあわとTEX2-コ89の視線が泳ぐ。

と、

「自我はありません」

ゴクソツはテーブルに広がる液体を淡々と拭きはじめ、
TEX2-コ89のストローを自身のグラスに挿し直す。


一つのグラスに二本のストロー。
二体のメカは、再び面と向かって座している。

「自我はありません」
「……自我は……ありません」

「人間の感情はありません」
「……人間の感情は……ありません//」


『ハルマゲドン前日』


 ハルマゲドン前日。
普段とはどこか違う、濁んだ空気が充満していることを白金七光は感じ取っていた。
知っている。
この感覚は、十分に知っている。
かつての友と、かつての恩師と、そしてかつての恋人と――――
数多の人物と殺しあう、日常とは異質な空間。
ざらり、と舌に感じる不快感を飲み込み、ゆっくりと生徒会室の扉を開いた。


「何が……起こっているんだ……」
地獄。
瞬間、言葉、浮かぶ。
床に広がる液体と、傍らに倒れ伏す一人の女性。
口から吐瀉物を撒く生徒もいる。
テーブルは部屋の端に追いやられ、床にはビニールシートが敷かれて?
むせ返る熱気と黄色い声?
ほんのりと朱を帯びた頬。女生徒達は恋話で盛り上がり?

「も、もしやこれは……」

女子会!





 くらり、と崩れそうになる膝を無理やり正し、思考を纏めはじめる。
(すでに大半の生徒が出来上がっている。女子会が始まってからすでに2時間程度は経過しているだろうか……。問題は、どこからこのアルコー ひゃんっ!?)
胸元に感じる鋭敏な感覚により、思考は霧散される。
プチ プチ プチ
背後から回された手は、そんなことはお構いなしと言わんばかりに、
ワイシャツのボタンを外し始めるのだが。
「……加藤さん。何をしているんですか?」
「いや、ワイシャツのボタンを外しているんだが」
そう言いながら、加藤はくいっ、と手にしたコップを一気に空にする。
(この酔っ払いめ……)
「ああ、これはただの水だよ」
「シラフかよ!」


「それで……一体何があったんですか?」
ワイシャツのボタンをかけなおし、加藤に問う。
ボタンを再び外し、白金の胸元にメガネ差し込みながら、加藤はくい、と親指で示した。
示す先には――――
「ウ”ォェッ エ”レエ”レエ”レ」
――――予想通り、取飲苦さば子の姿があった。
「まぁまぁ、とりあえずその刀を収めなさいよ」



落ち着いて周囲を見渡してみる。
ゴクソツは無感情に料理を運んでおり、
遠めからその姿を眺めるTEX2-コ89。
夜桜心は舞踊を舞い、それに併せ二科 ぴあがピアニカを奏でる。
内人 王里はとろんとした瞳でゴクソツを見つめており、
その傍らでさば子は嗚咽を漏らす。
ピーちゃんの姿が見えないが……食材になったのだろうか。
佐々木 沙々良は黙々と飲んでいるが、その肩に寄り添い眠そうにしているアイリス。
岡崎さんはゴクソツを睨みつけ、その瞳に驚愕する雨竜院 血雨。
ロリエルはみのりに陽気に話しかけ、夕日 千景は釜飯の準備に勤しんでいる。
神尾 まほろは口舌院 単語の髪型を弄んでいるが、単語もまんざらでは無さそうだ。
アキカンは飲んでいるのか飲まれているのか分からない体勢になっている。
何だこの光景。
永遠なるLOVE子 は艶やかな視線でゴクソツを見つめており、
真野彼方は古谷 銅に闘いを挑んでいるが、古谷 銅はその手でグラスを握りつぶし、鋭い目つきでゴクソツを視界に捉えている。
……あれ?ゴクソツに凄いフラグ立ってね?

「そ、そうだ! 先生は!? 蛭神先生は!?」

二杯目の水を飲み干しながら、加藤は視線で合図する。

(す、すでに潰れてやがる……)

そう、生徒会室で最初に目にした、倒れ付した女性こそ蛭神先生だったのだ。

「まぁまぁ。 みんな不安なんだよ」
「加藤……さん」
「明日、学園は凄惨な戦場になる。 この中の何人が生き残れるか分からないだろう。 だったら……こうやってみんなで盛り上がるのも……悪くないんじゃないかな」
「そう……ですね!」

そうだ。
加藤さんの言うとおりだ。
あの子も、この子も。
そして私も。
皆、死んでしまうかもしれない。
そんな不安に押しつぶされないように。
この、最高の生徒会メンバーに出会えたことに。

「乾杯!!」

私は、グラスを持って女子会に飛び込んでいった。


――――――――ハルマゲドン当日――――――――

「頭……痛い……」
「すみません……投了します……」

「あいつら……」
「まぁまぁ、とりあえずその刀を収めなさいよ」