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流血少女エピソード-小暮ロコ子-






草木もねむる丑三つ時。
をちょっと過ぎた午前3時前。
妃芽薗学園中等部校舎2階の踊り場。
そこに据えられた鏡の前に少女が一人。
彼女の名前は小暮ロコ子。高等部の1年生だ。



ロコ子はポケットからソーイングセットを出すと、
針を1本選び出し右手の人差し指のさきを突いた。
プクリと玉のように染み出した血を見てひとつ頷いたロコ子は、
おもむろにその血で鏡に五十音表を書きはじめた。
針で軽く突いたぐらいの出血では思うようにはいかないが、
なんとか書き終えたロコ子は指先に絆創膏を貼りながら鏡を眺める。



そうしてしばらく眺めていたが軽く首をかしげると、
「うーん、やっぱりこれじゃ可愛くないっ」
と不満げに呟いて、
置いてあった鞄からガラス装飾用のジェルジェムをどっさり取り出し、
鏡の空いている部分をデコレーションしていく。



ひととおり貼り付け、一歩はなれて眺め回したあげくようやく頷くと、
今度は犬耳のカチューシャを取り出して装着し、
次に狐耳のカチューシャを取り出して、前になる側を自分に向けて持つ。



こんな夜中にロコ子は何をしようというのだろうか?
もちろん賢明な読者にはお分かりだろう。
「踊り場のおまじない」とか「鏡の呪い」とか呼ばれるあれである。



ここ妃芽薗から始まり全国に広がったそれは、
各地でローカライズされ発祥の地である妃芽薗でも、
学年やクラス、仲良しグループ単位で微妙な違いがあるが、
ロコ子の行っているこれはかなり変化しているようだ。
いやさっきの台詞からすると鏡を飾りたてたのはロコ子の個人的な趣味か?
だが血の五十音表や犬耳/狐耳のカチューシャは何なのだろう。



ロコ子の所属する仲良しグループに広まる噂に曰く、
「呼び出したまどか様に狐の霊を宿らせて、
 自分に宿らせた犬の霊力で従えるんだって。
 それから質問すると五十音表を使って何でも答えてくれるって」
とのことである。なにやらコックリさん辺りが混ざっているようだ。
因みに噂の出所はロコ子であり、改変に根拠は無い。



思春期の女子がオカルトに興味津々なのは今さら言うまでも無いが、
そこでは新たな知識を持ち込めば賞賛を得られるため、
適当なことを吹かすのもよくあることである。



時計の針が0時をまたぐ前の昨日。放課後。
何の気なしにでっち上げたロコ子は、
「わーロコ子ちゃんすごーい」「物知りだね」
などとおだてられる内に気付けば今夜実行するハメになっていた。



付き添いがいるわけでもないので、やった振りでも良かったのだが、
こっそり見られているかもしれないのでちゃんと実行することにしたのだ。
女ってそういう怖いところがあるのである(超偏見)



話は戻る。
狐耳カチューシャを自分に向けて持ったロコ子は鏡に向かい3時を待ち、
「まどか様、まどか様、おいでください」
とこれは噂の基本通りの台詞を3回唱えた。
だが何も起こらない。
やっぱり適当にでっち上げたやり方じゃ無理?それとも噂自体が嘘かしら?
などとロコ子が考えた時、
鏡に白いフードを被った少女の姿が浮かびあがる。
慌てて狐耳カチューシャを鏡の中の頭のあたりに押し付けると、
カチューシャが手の中からスゥッと消えて、
鏡に映る少女のフードの一部、
ちょうどカチューシャをはめれば狐耳が当たる辺りがピョコリと膨らんだ。



「キャー」
ロコ子の口から悲鳴がもれる。
「フードの中の耳もイイ。それはそれであり!
 でも折角だからめくって。フードめくって!」
その願いに、でっち上げの儀式の強制力ゆえか、あるいは別の理由か。
鏡の中の少女がフードに手を掛け、めくっていく。
夜の暗さとフードの影ではっきり見えなかった少女の目があらわになり、
期待に見開かれたロコ子の目と視線が絡みあう。
そして。
フードの中から狐耳が現れようとしたその瞬間。



ロコ子の姿はその場から消えていた。