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流血少女エピソード-一三九六-


SS「桜の園」

季節は春。花咲く季節。
夜も更けて風紀委員の友人や後輩たちも自室へ戻り、部屋には私一人。
今日も窓の外の庭園には美しい桜が満開。
桜は私一三九六(にのまえ・さくら)を象徴する花。
そういえばあの日も桜が咲いていましたね。

あれはまだ私が今より幼かった頃のこと。
あの日私は、日本舞踊の稽古から帰宅途中でした。
駅前の商店街の大通りに咲き誇る満開の桜並木の中、浴衣姿の私のそばをただすれ違っただけの少年。
貴方が私に何か特別なことをしたわけではなく、きっと貴方は私のことを認識することさえなかったでしょう。
貴方はただ私のそばを通り過ぎただけ。
なのに貴方を見たとき私の心に稲妻が走りました。
名も知らぬ見知らぬ相手にどうしてこんな気持ちを抱いたのか自分でもわかりませんでした。

それは届くことのない一方的な恋心。
再会することさえ恐らくは叶わない。
でも、それだけでその時私には十分でした。

その後私が魔人に目覚め、そして、貴方が兄だと知った時、これは偶然ではなく運命なのだと感じたのです。
私と貴方は結ばれるべき存在なのだと。
そして同時に私の心によぎった不安。

兄さん。私は貴方に嫌われること。それ以外は何も怖くはないのです。
ただそれだけが恐ろしいのです。
貴方以外にはどう思われてもいい。
貴方に嫌われてしまったら、私は絶望するしかないでしょう。

だから、あの日私は決めたのです。
妃芽薗で貴方に相応しい女性になるのだと
そしてここを卒業するまで貴方に会わないと。

だから、私は皆が美しいと思う女性を目指したのです。
だから、私は皆が尊敬に値する風紀委員を目指したのです。
皆が私に憧れ、賞賛するようなそんな存在を。

そして事実皆は私を褒めてくれます。
でも今の私は本当にそれに相応しい存在なのでしょうか?
あなたにふさわしい存在なのでしょうか?
わからない。不安で仕方がない。
不安で、不安で…

もっと…私はいまよりもっと理想に近づかなければ。
誰もが憧れる気高く美しい女性に。今よりももっと…

―――窓の外に咲き誇るあの櫻のように