海洋温度差発電は文字通り海の温度差を利用して発電する、環境影響が極めて少ないクリーンエネルギー。広大な海の無尽蔵なエネルギーを取り出せるので1兆KWの発電が可能と言われている。
海洋温度差発電はもう80年も前から研究されているが、上原春男教授(現・海洋温度差発電推進機構理事長)によって温度差の少ない場所でも高い効率で発電できる、ウエハラサイクルの開発があり、実際にインド洋上において1MWの発電プラントが稼動したことから急激に脚光を浴びるようになった。
このウエハラサイクルでは、タービンを回す触媒に水とアンモニアを使用する。ボイラー内の空気圧を下げてサイクル内の沸点を下げることで低温度でもアンモニアの蒸発が起こり、低い温度差(15℃あれば良い)での発電を可能としている。
深海の水と表層の水は15℃~20℃くらいの温度差があり、その温度差であれば十分発電することができる。 日本近海は深い海溝が多くあるが、海表の温度が低めのため、季節によって温度差が十分ではない。 効率を良くするには水温の常に高い赤道上の海の温度差が望ましく、日本よりは、東南アジア、アフリカなど、赤道上の国に適していると言える。
海洋温度差発電が可能な地域(数値は温度差)
副産物としてレアメタルであるリチウムや、蒸留水が採れるので、船舶や渇水地帯での用途にも優れており、実際に開発も進められている。
温泉の温度差や工業水の温度差を利用した発電にも利用が進められているが、こちらは触媒にベンダン(沸点36℃)を用いたバイナリー発電が先行している。
温度差の熱源となるものには、他にも太陽熱や地熱、ヒートポンプの排水、ゴミ焼却場、バイオマスエネルギーの廃熱など、様々な研究余地がある。日本ではこちらの方が活用方法が多くありそうである。
まだ実績が少ない事が足かせとなっているが、これからこの日本でこそ積極的な開発を進めて欲しいプロジェクトである。
インド洋での1MW海洋温度差発電 水中OTECプラント (イメージ図)
ゼネシスHPより引用
●海洋温度差発電の特徴
海洋温度差発電は、以下のような特徴を有しています。
1 クリーンで再生可能なエネルギー
海洋温度差発電は、クリーンで再生可能な海水のみをエネルギー源としています。
2 多量なエネルギー
海洋温度差発電の建設可能な国は98カ国に及び、1兆KWの発電が可能であると見込まれています。
3 安定したエネルギー
海洋温度差発電は、年間を通じて安定した電力供給が可能になります。
これは、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーを利用した発電では
天候に左右されて連続運転が困難であることに比べ、際立った特長です。
4 地球環境問題に貢献
海洋温度差発電は、CO2の排出が他に比べ極めて少ない発電方式です
(CO2排出源単位:0.014Kg-CO2/kWh)。
また、海洋温度差発電で用いた深層海水は、サンゴや海藻類を増殖するので、
CO2を固定化することができます。
インド洋での蒸発プラント
ウエハラサイクルについて (HPより)
1970年代のOTECプラントではランキンサイクルと呼ばれる、媒体に純アンモニアを用いた発電方式で行なわれていました。しかし当時は熱交換器の性能が悪く、当時の技術では経済性を満足するまでには至りませんでした。 近年になり佐賀大学上原グループがアンモニア/水の混合媒体を冷媒に用いた「ウエハラサイクル」を発明、それによってランキンサイクルに比べて 50~70%サイクル熱効率が上がり、かつ熱交換器の性能の飛躍的な向上とあいまって、実用的なレベルの効率を持つ発電プラントが実現可能となりました。