「タ、タイム……」
「あぁッ!? 自分の得物ぶん投げて手放したのはテメェだろうが!」
「わ、我を……僕を誰だと……フランスの……」
「フランスだァ? んな国、俺が知るか!」
乱入者はセイバー(仮)に立ちコブラツイストを掛けられていた。
完全に技が極まってる。
肋骨の軋む音が聞こえてきている。
「ギブ? ギブ?」
「ギ、ギブアップ……」
「おっしゃらァッ!!」
技を解いて、右腕を大きく突き上げるセイバー(仮)。
その傍らで咳き込みながらもぶっ倒れている乱入者。
あと数秒ギブ宣言が遅れていたら確実に折れていた。
「あのう……セイバー(仮)、何か戦って思い出したことは?」
「ねぇよ、手応えがなさすぎて……まるで近所のガキと遊んでるようだったわ」
巴の問いにセイバー(仮)は即答した。
それはあまりにも見事なコブラツイストだった。
「ゲホッ……ゲホッ……」
「大丈夫ですか?」
「……あ、肋骨が折れたかもしれない……」
「折ってねぇよ、折れてたら普通喋れねぇだろうが……」
藤丸は「確かに」と突っ込みたくなったが。
それよりも何故、彼がこの巴とセイバー(仮)の模擬戦に乱入してきたのか?
そちらのほうが気になっていた。
「あのう、ランサー?」
「……どうした?」
「何故二人の戦いを止めようとしたんですか?」
「……今はサーヴァント同士て争っている場合ではないからだ!
奴らの進撃を抑えなければこの島は……否、世界は崩壊する!!」
「な、なんだってー!」
「だから、我が原因であるあの【要塞城】を攻略せねばならぬ!!
それがこの地に召喚された我の使命だからだ!!
そのために今この場に残ったサーヴァントを集めている!!」
「【要塞城】……? それがあの城の名前……?」
「いや、ぼ……我が見て、そう名付けた!!」
「そう……」
あっ、このサーヴァント無理して偉そうにしてる。
戦闘力もあまりないようにも見える。
しかし、やる気だけは十分にある。
そう、『やる気』だけは。
その時である。
地面が揺れ、なにやら轟音が近づいていることに気付いた。
それは集団で来た。
「この音は?」
「や、奴らだ!! この島を占領した奴らの尖兵団だ!!!
あいつらに我の仲間だったアサシンもセイバーもやられたんだ!!」
「尖兵団だって?」
数は明らかに多い。
こちらの数倍、数十倍はいる。
全員が銃を装備している。
集団の統一も完全に出来ている。
それは……
「ノブ―!」
デフォルメされたあいつらだ。
「ちびノブじゃないですかー!」
「マスター、なんですかあの可愛らしい集団は!?」
⇒「つまり、ここは……」
「ぐだぐだ時空だーっ!」
その数、約150体くらい。
ちびノブ、銀のちびノブ、金のちびノブ。
でかノブ、銀のでかノブ、金のでかノブ。
グレートメカノッブ、ゴッドメカノッブ、ノッブUFO。
……と種類も色々といる。
「ああ、わけがわからん連中だが……つまり、アレだ、全員殴ったり斬ってもいい連中か?」
「やっちゃってください、セイバー(仮)さん!!」
「お、おう……そういうことなら、それとその巴……さんだっけか?」
「なんでしょうか?」
「ここは一つ勝負と洒落こもうじゃねぇの?」
「……なるほど、どちらが多くを取れるかの巴と武者勝負というわけですね!」
「決まりだな……そこのお前は、やるか?」
「いいえ……私はマスターを守らねばならないので」
「ええい、我も守れってください!!」
「……ええーっ……」
ランサーは見事なまでビビりであった。
セイバー(仮)は地面を蹴り、トップスピードまで一気に加速する。
ちびノブたちを容赦なく踏み、跳躍。
そして、一刀で金のでかノブをぶった斬りは飛び。
UFOノブの頭上からさらに叩き斬り、落とす。
「はっ、さっきのガキよかぁ手応えがあるが……俺を倒すにはまだまだ足りねぇな!」
150以上いるうちの5分の1くらいをあっという間に倒したセイバー(仮)。
あまりにも迅速かつ着実に沈めて行っている。
一方の巴御前。
ちびノブをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。
でかノブをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。
メカノッブをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。
UFOノブを紅蓮の矢で撃ち落としと……完全にパターンに入ってた。
乱戦の戦い方は心得ている。
「アンタ、やっぱ見込んだ通り武者じゃねぇの!」
「……残り半分と言ったところですね」
「残りは全部俺がぶった斬るわ。テメェの分はねぇだろうな」
「……そんな無駄口を叩いている間にも巴はまた射貫きましたが?」
「へっ! 面白れぇ!!」
今のところ撃破数はほぼ同じくらい。
両者どちらも一歩も引かない。
「うおぅらぁあああああああああッッ!!!! これで73体目ッ!!」
「巴は75体を倒しましたが?」
「ああ、クッソ、負けた! 次は負けねぇからな!」
「次も負けませんがね」
「いやぁ、両者ともまるで鬼神が如き武者ぶりであったな!」
「あァッ!? 誰が鬼だって……?」
「ひぃ……ご、ごめんなさい……」
セイバー(仮)に完全にランサーはビビっている。
それはもう蛇に睨まれたカエルのようであった。
しかし、ちびノブ軍団をたった二人で退けた。
「で、テメェの仲間の他のサーヴァントは残り何人だ?」
「……ひ、一人……です」
「たった一人か?」
「セイバー(仮)さん、すみませんがここは穏便に」
「俺はいつだって穏便だぞ!?」
◇ ◇ ◇
「この金山に仲間のサーヴァントのアルフ博士がいます」
「アルフ博士?」
しばらく歩いて辿り着いた山。
ランサーのナポレオン3世君曰く『金山』らしい。
警戒は怠らなかったが、沖田さんは血を吐き続けた。
その時である。
『やっと繋がった……先輩無事ですか!?』
「その声はマシュ!? ってことは!」
『いやぁ、手こずったよ』
「よかった……本当に」
カルデアと通信が【急に】繋がった。
藤丸は安堵の声を洩れた。
安心した。
一先ず、現状報告をしようとする。
その時であった。
変な匂いが周囲に漂い始めた。
藤丸たちは一気に警戒レベルを引き上げる。
「あっ、アルフ博士! 今帰ったぞ!」
「お帰り皇帝さん」
現れたのは異常なまでに血と火薬の匂いがする男。
白衣を着て見るからに博士っぽい。
「アルフ博士、相変わらず臭いな!」
「俺ちゃん、無辜の怪物EXだからな~~この匂いとかこびりついて取れねぇんだわ~~
で、成果は……それだけか?」
「そうだ!」
アルフ博士と呼ばれた男は藤丸達の顔を見回す。
まるで研究者のようなポージングで。
「サーヴァント三騎に一般魔術師一人か……
まっ、俺ちゃんのことは気軽にアルフ博士とでも……」
『アルフ博士……もしや君はアルフレッドというのがファーストネームかい?』
「そうだ、で、クラスはバーサーカーだ、よくわかったな。
というよりも、どこか遠くにいるな、その声の主のお嬢ちゃんは~~」
『ふっふーん、私は天才ダ・ヴィンチちゃんだからね』
「はぁ、ダ・ヴィンチだって~~?
おいおい、お嬢さんがあの万能の天才『レオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチ』だって?
冗談も休み休みにしときな~~!! ……いや、それは本当かな?」
『本当だよ』
「マジか~~~~」
『マジだよ、というよりもよく私の本名を言えたね』
「俺ちゃん、こう見えても頭はいい部類だからな。ま、専攻は工学系なんだけどな!」
突っ込みたいところはいくつもあった。
一人称が俺ちゃんって……ダ・ヴィンチちゃんの本名をいきなり言えるって。
自称バーサーカーなのに全然バーサクしてないとか、明らかにキャスターっぽいとか色々と。
「俺ちゃんはアルフレッド・ベルンハルド・ノーベルだ! よろしくな~~~~!!!」
「ノーベル……?」
藤丸でも聞いたことがあった。
頭を整理しようとして数秒くらいフリーズした。
そして、思ったことをそのまま口にした。
⇒「ノーベルってあのノーベル賞の!? ノーベル!?」
「貴方のようなバーサーカーがいるか!!!!」
「おっ、流石俺ちゃん~~後世まで語られる伊達男にして黄金率EXの男!」
最終更新:2017年11月19日 22:23