ニケちゃんの純白の翼が、ミロビちゃんの胸を貫通し、赤く染まり背中から飛び出ていた。
「げほっ」
翼が引き抜かれる。ミロビちゃんが血の塊を吐き出し崩れ落ちる。彼女には腕がないため、身体を庇うこともできず、床に額を強かに打ちつけた。
何をするのにおいても、その器用さと柔軟性で全く不自由を感じていなかった彼女が、無様に倒れるのは悪夢の光景だった。
「ごめんね、ごめんね、殺して、お願い」
ニケちゃんがミロビちゃんの胸に手を当てて血を止めようとする。滅茶苦茶だ。
「しまった、おい、お前……!」
顔を青くして弓を手にし、ミロビちゃんに駆け寄ろうとするアーチャーを、ミロビちゃんは足で制する。
ミロビちゃんの表情は落ち着いていた。致命傷を負ったのが嘘のように。
そして彼女はニケちゃんに語りかける。
「そんなにやばい奴なの。そのサーヴァントは」
「うん……うん」
「でも私のマスターは最強なのよ。アーチャーもいるし、そんな奴なんて一捻りだから」
ニケちゃんは嗚咽を上げる。
「だから私は必要ないの。じゃあ、帰りましょうか」
「うん……ありがとう……」
第二宝具を使う気だ。
アーチャーと目配せを交わし、背中を向けて走って退避する。
距離をとらないとまずい。僕たちまで巻き込まれてしまう。
「マスター、アーチャー。今聞いた通りだから。後を頼むわ。頑張ってね」
走る僕たちに声がかけられる。
わかった。僕とアーチャーでなんとかするから、先に戻っておいてくれ。
ミロビちゃんの身体が白い光を集めていく。
彼女の第二宝具は、第一宝具に対応する。
第一宝具『終わりなき想像の不完全さ』は「彼女は無限の可能性を持つ」という性質の宝具だった。第二宝具はその無限の可能性を一つに絞り、エネルギーの圧縮を行う。
代償として、彼女の身体は大ダメージを負い、消滅する。
「その美しさは無限の可能性によるもの」というのが彼女のコンセプトだ。それを切り捨てる真似を行うのは、自身の存在意義の否定にも等しい。故に自爆宝具。
心臓を既に貫かれているミロビちゃんにはあんまり関係ないことかもしれないが。
十分な距離をとって振り返る。宝具は既に始まっている。
どのような宝具なのか、説明を受けてはいたが、実際に使用するのを目にするのは初めてだ。
際限なく発光するミロビちゃん。既に目を開けていられないほど眩しい。思わず手で光を遮る。
影のように、無数の腕がちらついて見える。多くの手が束ねられ、収束していく。
「あなたを抱く」
あれは樹形図だ。平行世界の広がりのように、可能性もまた広がりをもつはずなんだ。樹形図が折り畳まれ、重なり、腕は巨大な一つになり、ミロビちゃんとニケちゃんを包む。
「『終わる決定の完全さ』」
デッドリー・デッド・デフィニション。
光が爆発する。風圧が僕の身体を押す。
それは数秒ほど続き、夢から覚めるように、ふっと終わる。
そこには、ミロビちゃんも、ニケちゃんも、フォーリナーの首も、何も残らなかった。
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現状見取り図 |
| マスター |
藤丸立香 |
不在 |
| 芸術のアーチャー |
エロイカ |
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| 芸術のキャスター |
ミロのヴィーナス |
脱落 |
| セイバーの芸術幻霊 |
ID藤丸立花 |
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| アーチャーの芸術幻霊 |
九相図眼球譚 |
脱落 |
| ランサーの芸術幻霊 |
塔&青騎士 |
撃破 |
| ライダーの芸術幻霊 |
サモトラケのニケ |
撃破 |
| キャスターの芸術幻霊 |
ロゼッタ・ガイド |
撃破 |
| アサシンの芸術幻霊 |
ブレイクタンゴ |
脱落 |
| バーサーカーの芸術幻霊 |
キュビズム・フォーヴィズム |
撃破 |
| 芸術のフォーリナー |
プロメテウス |
撃破 |
| 芸術のアサシン |
ベルフェゴール |
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最終更新:2018年09月07日 00:08