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ロスファンTOP/ストーリー/3 - (2011/03/07 (月) 19:12:41) の編集履歴(バックアップ)



ストーリーモードに書かれているストーリーをまとめたページです。
ネタバレ含みますので、純粋に攻略を愉しみたい人は見ないほうがいいです。




Episode 3

プロローグ

オルメカ帝国がロン公国への攻撃を開始する172時間前――
晴天の空の下、大海原を数隻の遠征船が渡っていた。
「島が見えてきたぞーっ!」
見張り台から船員が大声で叫ぶ。
バッカス
「よし、帆を畳め!
ロンギヌス騎士団、ソル魔導団の各員は
上陸の準備を開始しろ!」
アベル
「あれがコルバ島か…。
外観だけ見ると、とても何百人の命を飲み込んだ
危険な場所には見えないな…。」
ネシェル
「あれは同胞達だけでなく、
皇太子殿下の命までもを奪った魔の島だ。
気を抜いているとお前も飲み込まれるぞ。」
12年前に突如としてその姿を現した島――コルバ島
過去3度に渡り、遠征隊の派遣が行われたが、いずれも壊滅。
唯一生還したのは3度目の遠征に参加した
ロン公国現大公のレジムのみである。
そのレジムも、島での出来事については口を閉ざし、
以降、コルバ島に関わろうとはせず、
オルメカ帝国からの遠征隊への参加要請も
断り続けていた。
業を煮やしたオルメカ帝国の新皇帝は遂に帝国単独での遠征を決行。
こうして今回、おおよそ6年ぶりとなるコルバ島への遠征が行われた。
アベル
(魔の島か…。
唯一の生き残りである大公が口を閉ざした今、
自分達で調査を行う他ないな…。
しかし、何だって陛下はこの島に
そこまで拘るんだろう…?)
やがて島は目前へと迫り、甲板は一層賑やかさを増していく。
聖杯と天空の少女を巡る物語はここから動き出す。

1人目 クラーケン

【第一話 クラーケン】

島への上陸に備え各自待機する団員達。
目指す島まではあと僅かの距離となった。

アベル「ネシェル、アンタ確か島についての資料読んでたよな? 何だって陛下はそこまであの島に拘るんだ?」
アベルはネシェルへと疑問を投げかけた。

ネシェル「馬鹿者、自分が調査を行う場所の資料くらい読んでおけ」
呆れ顔で叱責するネシェル。しかし直ぐに諦めた様に溜息をつくと説明を始めた。
ネシェル「仕方ない、説明してやる」

500年前カダラという機械大国が一夜にして唐突に滅びた。
唯一の目撃者の証言によると、空から巨大な何かが飛来し一瞬にして国を焼き尽くしたとのことだが、あまりの恐怖のため心神喪失状態になっており、証言の信憑性は疑わしいものだった。
また、その時期カダラは内戦を繰り返していた為、周囲からは新兵器開発による事故ではないかとの見方がされた。しかし、事態は一変する。
カダラ滅亡から後、各地で空を飛ぶ"何か"の姿が頻繁に目撃されるようになったのだ。
その"何か"は、突然飛来しては辺りを燃やしまた飛び去って行くを繰り返した。
何時しか人々はその姿をはっきりと認識するようになる。その姿こそ――

ネシェル「竜――以後数百年我々はその存在に悩まされ続ける事となる。現にオルメカが他国との交戦を行った際、襲撃を受けた事もある」
アベル「おい、それくらい俺だって知ってるさ、俺が聞いてるのは…」
質問の内容とは全く関わりのなさそうな説明にアベルが横槍を入れる。が、直ぐにネシェルの制止が入る。
ネシェル「黙って聞け。今まで我々は奴が何処から現れ何処へ帰るのか特定できぬままだった。しかしそんな折、海上警備隊から興味深い報告を受ける。魔の島から竜が飛び去ったという報告だ」
アベル「なるほど、今回の遠征は島が奴の住み処かどうか確かめるのが目的って訳だ」
ネシェル「表向きには未開地の調査となっているが真の目的はそれだと思っている」

その時、突然船が大きく傾いた。
アベル「うおっ、なんだっ!?」
ネシェル「アベル、見ろ! あそこだ!」
ネシェルが指差す方、見れば巨大なタコが海面から顔を覗かせ、長い触手を船へと巻き付けていた。

バッカス「敵襲だ! 各自応戦しろ! 後方の船にも停止の合図を送れ!」
バッカスの指示を合図に、クラーケンとの戦闘が開始された。

2人目 セイレーン

【第二話 セイレーン】

騎士達は船体に取り付いた触手を外そうと斬りかかるが、ぬるついた表面は剣を滑らせなかなか致命傷を与える事が出来ずにいた。
アベル「剣に手応えがないな…」
ネシェル「くそっ、このままでは沈められるのも時間の問題だ」
焦る騎士団員。触手の絡まった船は今にも折れそうなほどの軋みを上げている。

と、突然空中に無数の炎の矢が出現し、それらが一斉にクラーケンへと向かっていった。
矢はクラーケンの体に深く突き刺さるとそれぞれが炎を吹き上げ瞬く間に全身を熱で包み込んでいく。
苦しみにのたうつクラーケンは、やがてその動きを止めゆっくりと船から離れていった。

ユーイン「流石だね、騎士様方は。軟体動物一匹にこれだけ手こずれるなんて、僕らとは出来が違う。」
状況を見守る騎士達の背後から声がした。振り返ればそこには今まで室内に居たであろうソル魔導兵団の魔導士達がいた。
ネシェル「貴様ら…今頃出てきて、」
バッカス「よせ! …魔導士諸君、感謝する」
掴み掛からんとするネシェルを制し、バッカスが謝辞を述べる。
ユーイン「ああ、存分にして欲しいね。僕らがいなかったら間抜けな騎士様方は今頃タコの腹の中で溶け掛かっていただろうからね」
その言い草に騎士達は怒りの表情をあらわにする。

一触即発の雰囲気の中、何処からか歌声が響いてきた。その声を耳にした途端船の上に居る者達は皆こぞって頭を抱え苦しみだす。
アベル「なん…だ、頭が…」

女性「愚かな人間共は自らの窮地においても同族同士争いを行うか」
海面に浮かんだクラーケンの死骸の上、下半身に魚の尾ひれを持つ女性が一人座っていた。
女性「彼の地をけがれた血で汚す前にここで沈むがいい」
そう告げると女性は続きを歌おうと口を開く。その刹那、
女性「うぁ…ぐ」
突如女性がうめき声を上げた。

ユーイン「どうだい? 僕の作品」
甲板の上、球状の物体を手にするユーインの姿があった。
球体からは真っ黒い触手が何本も生え、その内の1本が女性の首を締め上げている。
女性「きっさまぁ…」
ユーイン「良い機会だ、たっぷりと試させて貰うよ。人間相手に使うと人権がどうだこうだと煩く言われるんでね」
セイレーン「黙れ、下等生物!」
ユーイン「黙れ、魚類。この僕の研究の糧となれる事に感謝しながら大人しく食われろ」

3人目 オーク

【第三話 オーク】

魔物襲撃は退けたものの、その被害は極めて深刻であり、それ以上の探索は不可能と見た一同は一旦、皇帝への報告も兼ねてオルメカへと帰還する事にした。


帰還後、報告を終えたバッカスは今回の遠征に参加した者達を宮廷の大広間へと集め、後の動向について説明を行った。
バッカス「議会での判断が下されるまで次回の遠征は未定だ。通達があるまで各自上官の指示に従い通常の任務を行う事。話は以上だ」
解散後、アポストロ隊隊長ライナーと共に大広間に残り、今後についての話し合いをするバッカスのもとへ、メルが数人の部下を引き連れ近づいてきた。
メル「バッカス殿、この度は私の部下達が世話になったな」
今回メルは有事に備えて遠征には参加せず、オルメカにて国の防衛にあたっていた。
その為、遠征に参加する魔導兵団の団員達の指揮は全てバッカスに預けられる事となった。
バッカス「いいや、こちらこそ彼らには窮地を救ってもらい感謝している」
メル「そうか…そう言って頂けると助かる。私の部下達はどうにも曲者揃いでな」
ユーイン「メル様、彼ら海の上では本当に役立たずでしたよ」
ユーインが横から口を挟む。
メル「おやおや、それはそれは。やはり騎士団長殿には国の守りをお任せして私が同行した方がよろしかったかな?」
バッカス「次の機会には是非そう願いたい」

メルの小馬鹿にしたような口調に動じる様子も無く、冷静に受け流すバッカス。
そのやり取りに、すぐ側で聞いていたネシェル達は歯噛みをする。
ネシェル「くっ…手品師ども」
アベル「好き勝手言われてるなぁ」

その時、突然街の方から轟音が響いてきた。
バッカス「何事だ!?」
ライナー「街の方角…何かあったか」
メル「あの音…どこぞの国でも仕掛けてきたか」
ネシェル「まさか…!」
メルの言葉にネシェルが素早く反応を示す。
アベル「騒がしくなってきたぞ。敵襲の線が濃そうだな」


一同はすぐさま街へと移動した。街は既に幾つかの建物が破壊され、混乱した人々が兵士によって避難誘導されている最中であった。
バッカス「敵は何者だ!」
近くに居る兵士を捕まえ素早く状況を聞きだすバッカス。
兵士「はいっ、今確認されている敵はオークと巨人族です! 奴らどうやら東門から侵入した模様です」
メル「魔物か…フッ、お前達、どうやらとんだ土産物を持ち帰ってきたようだな」

4人目 マンティコア

【第四話 マンティコア】

統率力を武器に戦う帝国軍にとって、統制もとれておらず本能のままに暴れ回るオーク達を相手にする事など容易い事であった。
次々に各個撃破していき、残る敵は巨人族のみかと思われた。

ライナー「アベル!!」
突然ライナーがアベルを突き飛ばした。

アベル「隊長!?」
勢いのまま前のめりに地面へと膝を付くライナー。
アベル達が駆け寄るとライナーは額に脂汗を浮かべ右腕を押さえていた。
アベル「俺を庇って…!?」
ライナー「馬鹿…油断しすぎだ」
答えるライナーの顔は苦痛に歪み、食い縛った歯の間から荒い息が漏れる。

カーメラ「どいて!」
側で見ていた魔導兵団のカーメラがアベル達を押し退けライナーの横にしゃがみ込んだ。
腕の部分の生地を裂き、直に手を触れ状態を確認するカーメラ。その顔が徐々に険しくなっていく。
カーメラ「毒針を撃たれたわね…まだ中に針が残ってる」
見ればその部分は鬱血した様に赤紫色に変色していた。
カーメラ「このままだと毒が回るわ。誰か! 救護室まで運んで」
数人の兵士が駆け付け脇を支える。

ライナー「悪いなバッカス…一足先に退場だ」
バッカス「気にするな、さっさと行け」
アベル「隊長…」
ライナーは、はーと息を吐くと沈痛な面持ちで項垂れたアベルの額を人差し指で弾いた。
驚いて顔を上げるアベル。ライナーは口の端を上げ軽く笑ってみせてから、その場を後にした。

ネシェル「針はどこから飛ばされたんだ? 周囲に敵らしい者はおらんが…」
バッカス「我々はまだ敵の全容を把握してはいない。未確認の敵がいるかもしれん」

慎重に辺りを見渡すアベル。すると視界の隅を何かが一瞬横切った。
アベル「何だ? 何か…」
そう告げようとした瞬間、倒壊した建物の陰から何かが物凄い速度で躍り出て、アベル目掛けて飛び掛かった。

ネシェル「アベル!!」
アベル「あっ…ぶねぇ」
迫りくる何かが体に被さる間際、アベルは横に飛び込み回避する。
素早く体勢を立て直し元いた場所に目を向けると、そこは深い爪あとでえぐられ土埃が立っていた。
そしてその直ぐ側には爪痕の主――肉食獣の身体にコウモリの翼とサソリの尾を持つ魔物の姿があった。

メル「ほう、何とも奇異な姿をしているな。連れて帰って色々と実験をしてみたい」
カーメラ「あの尾…気を付けて! こいつ尾から毒針を飛ばすわよ!」

5人目 コルバの巨人

【第五話 コルバの巨人】

兵士「敵の増援だー!!」
マンティコアとの戦いの最中、敵増援を告げる兵の声が聞こえてきた。

バッカス「増援だと!? 門は全て閉じたはずだろう!」
ユーイン「扉には退魔措置も施してあるから簡単には破れないはずだけどね」
メル「フフ、これは雲行きが怪しいな」

カーメラが杖の先で地面を叩くと、マンティコアの足元から一瞬にして花が開花する様に、先のとがった岩が無数に飛び出す。
鋭い岩に下から貫かれ、動けずに怒りの咆哮を上げるマンティコア。直後、アベルの剣がその首をはねた。
バッカス「よし! 増援部隊の現れた方角…北門へ向かうぞ」


北門を目指し駆ける一同。門前広場へと差し掛かった時、行く手を巨大な影が遮った。
ユーイン「あーあ、厄介なのと遭遇しちゃったよ」
メル「ユーイン、そう言うな。これはこれは巨人族のお方、我が国に何の御用かな? 先代皇帝により土地を追われた恨みでも晴らしに来られたか?」
顔を上げ天に向かって問いかけるメル。
見上げる程の巨大な体躯。彼らの目の前には巨人族の男が立ちはだかっていた。
巨人「お前達の国の事は知らぬ。わしらは島で生まれ島で死ぬ、魔女の友」
静かな口調で答える巨人。

ネシェル「島? やはりコルバ島の魔物なのか」
メル「成る程、確かに他の巨人共とは雰囲気が違うな。して、魔の島の巨人殿、今日はこのオルメカにどの様な用件で来られたか?」
巨人「わしらの島を侵す者は決して許さぬ」
巨人はそう言うと手にした棍棒を頭上へと振り上げ、アベル達目掛けて振り下ろした。

ずうううぅぅぅんっ

轟音と共に道路の煉瓦が叩き割られ下の土が姿を見せた。
振動が収まる頃、巨人は棍棒の下の潰れた屍を確認する為、ゆっくりと腕を持ち上げる。しかし、そこにアベル達の姿は無い。

ネシェル「そう簡単にパイ生地になどなってやれるか、馬鹿め」
突然、足元から声がしたかと思うと、焼ける様な痛みが巨人の足を襲う。

ネシェル「体がデカイだけで動きはまるでナメクジだな」
巨人の足元にはレイピアを抜いたネシェルの姿があった。
ネシェル「しかし硬い皮膚だ。たいして効いていないだろう」
巨人「いいや…小娘。中々効いたぞ」
その言葉にネシェルは腕をびっと伸ばしレイピアの先で巨人を指しながら叫ぶ。

ネシェル「ネシェル・ダルガ! 貴様を葬る者の名、覚えておけ!!」

6人目 魔に添う騎士オズワルド

【第六話 魔に添う騎士オズワルド】

巨人を打ち倒した一同は北門へと向かった。

アベル「門が開いてる」
閉じられていたはずの北門は開放され、その側には門番兵の死骸が横たわっていた。
メル「やはり内通者がいたか」
メルの言葉に一同の顔が強張る。緊張感の走る中アベルが前方の空を見上げ指差した。
アベル「何だあれ? 何か飛んで…」

メル「あれは…竜か!?」
指の示す先、そこには低空を泳ぐ竜の姿があった。
竜は街の上空を弓なりに宮廷のある方角へと向かっていく。
バッカス「陛下…!! 追うぞ!!」
後を追って駆け出そうとするバッカスにメルが制止の声をあげる。
メル「待て! 内通者を野放しにしておくつもりか? 他もやられるかもしれんぞ」
バッカス「くっ…」
メル「我々が追おう。貴公らの方が内通者に近しいかもしれんしな」
そう言い残し歩きだそうとするメル。その背にネシェルが食って掛かる。

ネシェル「貴様…どういう意味だ!!」
メル「ああいう意味だ」
振り向いたメルがネシェルの背後を指差す。そこには男が一人佇んでいた。

アベル「オズワルド! アンタどうしたんだ、その格好」
オズワルド――ロンギヌス騎士団に所属する騎士である。
知った顔に声を掛けるアベル。が、オズワルドは答えない。
明らかに騎士団の鎧とは異なる禍々しい装飾の施された漆黒の鎧を身にまとい、こちらも禍々しい悪魔の顔を模った仮面で半分覆われた顔を真っ直ぐにアベル達の方へと向けている。
瞬時に不穏な空気を察したバッカスは、アベルを制し代わりに問い掛けを行う。
バッカス「これをやったのはお前か?」

その問い掛けにオズワルドは初めて反応を見せた。口元を歪め笑って見せた。
アベル「オズワルド…どういう事だよ」
オズワルド「オズワルドさんだろぉ、アベルゥ、お前年下の癖に礼儀がなってないんだよ」
バッカスはメル達に向かって、先に行けと目で合図を送る。

オズワルド「年下の癖にアポストロ隊になんか入りやがって…。俺は誰よりも強くなって国を守るって決めたんだ。なのに…何でお前らがいるんだよ! お前らがいたら一番になれないだろおぉぉっ!!」
感情の昂りに呼応するかの様に、手にした剣から黒く靄が立ち上る。
オズワルド「特に団長、あんたは気にいらねぇ」
バッカス「ならば、斬ってみろ。闇に堕ちてまで手にしたその力で!」

最終決戦! 愚者を焼くもの炎竜

【第七話 愚者を焼くもの炎竜】

アベル「オズワルド…アンタには悪いけど縛らせてもらうよ」
オズワルドはもう抵抗を示さなかった。只黙ってうつむきされるがままに拘束されていた。
オズワルドを兵へと引き渡した後一向は急ぎ、先に宮廷へと向かったメル達の後を追う。


宮廷庭園に到着した一向は、空中に浮かぶ竜と対峙する魔導兵団の姿を目にした。
バッカス「メル殿、遅くなってすまない」
メル「気にするな。そちらも大変であったろうに…フフ」

各自が武器を構え空を睨む。その先には彼らを見下ろす竜の姿がある。
両者の間を埋める空気は張り詰め、手の先にはじっとりとした汗が浮かぶ。

そんな中アベルがポツリと口を開いた。
アベル「居ない…」
ネシェル「居ないとは何だ? 何が居ないんだ?」
緊迫感に水を差され苛立たしげにネシェルが尋ねる。
アベル「こいつの上に乗ってた奴が居るはずだ…。けど、何処にも見当たらない」
周囲を見渡しアベルは答える。

バッカス「それは確かか?」
正面から射る様な瞳でバッカスに問われアベルは一瞬戸惑う。が、
アベル「確かに人が乗っていた…俺は見ました!」
即座に真っ直ぐに見つめ返し強い口調で断言する。

メル「ふむ、それならば宮殿内に侵入された恐れがあるな。バッカス殿、貴公らには侵入者の追跡をお願いしたい」
バッカス「しかし…」
メル「地に根をはった騎士が空を飛び回る相手にどう対抗する? ここは我ら魔導兵にお任せ願いたい。それに…」
メルは左手の指三本でバッカスの肺周辺を押した。
バッカス「っうぐぁっ」
メル「魂食いの剣…先程のアイツが手にしていたな。あれは使う者の魂のみならず、相対する者の生気をも喰らう。懸命に平静を装っていた様だが、野犬の様に荒い息遣いが漏れ聞こえていたぞ」

メルはしばし、肺を押さえ咽るバッカスを見下ろし笑っていたが、ふと真面目な表情にかえりバッカスの肩に手を添えた。
メル「適材適所。それが我ら軍人の望むべき姿であろう?」
バッカス「…わかった、ここは任せる」
メルの諭す様な口調に渋々了承をしたバッカス。騎士達は宮廷入り口へと駆け出す。

メル「貴様の相手は私だろう? 浮気はいかんな」
その背に向かい炎を吐こうと口を開いた竜の右目を光の矢が貫く。
目を射られた竜は大地を震わせる様な雄叫びを上げ、空中でもがき苦しむ。

メル「第一陣放てー!」

エピローグ (1周目)

メル
「第二陣、一斉に放てー!」
メルの掛け声と共に第一陣の後方に控えていた魔導士達が
一斉に空へと手をかざす。
直後、その手の平から光が放たれ、
()を描きながらドラゴンへと向かっていった。
ドラゴン
「ビギャァァアアアア!!!」
全身に光球を浴びたドラゴンはたまらず後ずさる。
メル
「ふん、そろそろ沈め。
しつこい(オス)は嫌われるぞ、
人間でも竜でもな」
そう言うとメルはパチンと指を鳴らす。
直後、ドラゴンの足下から巨大な火柱が立ち昇り、
(またた)く間にその身を包み込んだ。
ドラゴン
「グァガァァアアアア!!!!」
火のドラゴンをも焼き焦がす摂氏(せっし)4000度の炎に全身を包まれ、
ドラゴンは狂ったような叫びを上げる。
メル
「おっと、失礼。もしかして(メス)だったか?
まぁ、そこまで焼いてしまえば
(オス)でも(メス)でも大差無いだろう」
メルが再度指を鳴らすと
火柱は渦の中心に向かい収縮していき、
やがては一本の糸の様に細くなり姿を消した。
火柱が消滅すると同時にドラゴンの体が煙を上げながら落下する。
その身は地面へと叩きつけられ、
凄まじい音と共に瓦礫(がれき)の破片が舞い上がった。
メル
「こちらは片付いたが…
さて、わが帝国騎士殿達の方はどのようなあんばいかな」
メルは宮殿の方角へと向き直り、片手を上げて兵に指示を与える。
メル
「各員、これより宮殿にて交戦中の騎士共の援護に向かう!
誤って誇り高き騎士殿の亡骸(なきがら)を踏んだりせぬよう
細心の注意を払えよ!」
指示に従い宮殿へと移動を開始する魔導兵達。
メル
「しくじってくれるなよ、騎士殿。
2度も王を亡くされては
大帝国としての面目が立たないからな、フフフ…」
その列を眺めながら
メルは不敵な笑みを浮かべ独りごちていた。
2周目へ続く

最終決戦! 魔女の第四指スーリオ

【第八話 魔女の第四指スーリオ】

アベル「やっぱり…様子が変だ」
不自然な程に静まり返った宮廷内を駆け抜け、皇帝の間の扉前へと辿り着いたアベル達。
通常開け放たれている正面扉は敵襲の為、硬く閉ざされていた。
通用口の方に回り、扉に手を掛け注意深く様子を窺うと中からは人の気配がした。

ネシェル「開けるぞ」
扉を開け室内へと踏み込む3人。直後、目の前に広がった光景に息を呑む。
そこには、重なる様にして倒れる大勢の兵士の姿と、全身に傷を負い床に這いつくばるガーター隊隊長イネスの姿、そしてその首に槍の切っ先を突きつける女騎士の姿と、それを玉座から冷静な瞳で見つめる皇帝ベルティーユの姿があった。
ネシェル「隊長!!」
ネシェルは剣の柄に手を掛ける。が、その腕をバッカスが素早く引き止めた。

女騎士「ふん、皇帝の御前だというのに騒がしい奴等だ。少しはお前達の王を見習うが良い」
女騎士はそう言い、あごで皇帝の方を指す。
女騎士「部下が目の前で次々と倒されていくにも拘わらず、眉ひとつ動かさず微動だにせん」
イネス「貴様ぁ! 陛下を愚弄する気か!?」
刃の下からイネスが吼える。女騎士はその喉下へ更に切っ先を押し当て黙らせる。
女騎士「誤解するな。役割を背負う者はこうであるべきだと褒めているのだ」

バッカス「貴様は何者だ? 何を目的とする?」
その問いに女騎士は静かに答える。
女騎士「我が名はスーリオ。魔女の使者として警告をしに来た」
アベル「警告?」
スーリオは玉座をちらと一瞥する。
スーリオ「今まさに皇帝に話をしていた所だ。我らの島へは近づかぬこと…そして、聖杯と天空の血を手にするロン公国には注意をする事」
ネシェル「まさか! あの田舎国にそんな物が!?」
バッカス「…」
スーリオ「信じるも信じまいもお前達の自由。私は警告をしたまで。しかし…」

スーリオはおもむろにイネスの髪を鷲掴みあごを上げさせる。
スーリオ「民や下っ端兵如きの命では警告にはならんな…戒めの意味を込めてこの女の首でも頂こうか…」

アベル「やめろ!!」
イネスの首筋に横向きの刃があてられた瞬間、アベルは咄嗟に剣を抜きスーリオへと斬りかかった。
しかし、その剣は直後素早く突き出された槍の柄によって叩き落される。
アベル「っ…、何て素早さだよ!」
スーリオ「お前が首を差し出すか? いいだろう…来い!」

エピローグ (2周目)

アベルに向かい断続的に刺突(しとつ)を繰り出すスーリオ。
しかし、その太刀筋(たちすじ)からは先程までの鋭さが失われていた。
スーリオ
「はぁっ、はっ…ぅくっ…
少し大陸から離れすぎたか……」
アベル
(攻撃速度が落ちた?)
ネシェル
「アベル! 相手は疲労しているぞ!
もう太刀筋(たちすじ)は見えているだろう、しとめろ!!」
ネシェルの声に応えるように、
アベルは突きの放たれる
タイミングをじっと計り見る。
アベル
(ここだ!!)
アベル
「はぁ…はぁっ…勝負あったな」
スーリオ
「ちぃっ…熱くなりすぎたか…
いいだろう、お前の勝ちだ」
顔の横、(ほほ)の皮一枚(はさ)んだ先に
刀身の冷たさを感じ、
スーリオは敗北を宣言する。
スーリオ
「元々今日は警告をしに来ただけだしな」
そう言うが早いか、スーリオは指笛を鳴らす。
ドラゴン
「ビギャァァァ」
突如、鳴き声と共に宮廷内の窓という窓が割れ、
ガラスが一斉に降り注いだ。
アベル
「なんだっ!?」
アベルが目を離した一瞬の隙をついて、
スーリオは後方へと高く飛び上がった。
天井付近の窓枠に着地するスーリオ。
窓の外には所々皮膚(ひふ)のこげたドラゴンが顔をのぞかせていた。
スーリオ
「ずいぶんとひどくやられたな、
イイ女が台無しだぞ」
ドラゴン
「グゥゥゥグルルル」
スーリオ
「オルメカの新皇帝よ!
先程警告したとおりだ。
聖杯と天空の血を引きし者、
この二つを手中に収めし者は神の力を得る。
いくら大帝国といえども滅ぼすのはたやすいぞ」
皇帝はスーリオの言葉をただ黙って聞いていた。
スーリオ
「対する相手を見誤るな」
ベルティーユ
「……ひとつ聞こう」
突然、
それまで黙って耳を傾けていた皇帝が
口を開いた。
ベルティーユ
「何故それを私に知らせる?」
スーリオ
「それも先程告げたとおりだ…
我らはただ静かに暮らしたいだけ。
お前達の脅威(きょうい)は我らではない。
もう我らの土地へは踏み入るな」
スーリオは窓から跳躍(ちょうやく)し、
竜の鼻先へと飛び移る。
主の帰還(きかん)を確認した竜は
翼をひるがえし遥か上空へと飛び去っていった。
バッカス
「陛下、お怪我はございませんか?」
ベルティーユ
「……ああ、大事は無い」
竜の飛び去った方角を見つめ、
そう答えた皇帝の瞳には
冷たい色が浮かんでいた。
こうして、オルメカ帝国のロン公国強襲が始まった。
エピソード4へ続く…

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