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命を賭けた試練に打ち勝ち、神の遺した力を手に入れたジャン。 神の力の化身であるオーヴェは、ジャンに恐るべき事実を告げた。 |
12年前、突如海上に姿を現した、魔女と竜騎士の棲まう魔の島 ━━━━コルバ島こそ、人間を守るために 神が創りあげた『聖櫃』そのものなのだ、と。 |
ロン公国・大公レジム 「聖杯と聖櫃のふたつの神の遺産を用いて、 魔女はこの大地を『浄化』しようとしている…」 |
ボルス連邦・大統領フラビオ 「カダラを滅ぼした災厄よりも、 大きな災厄がこの大陸に迫っているというのだな」 |
オルメカ帝国・皇帝ベルティーユ 「たとえ神に等しき者が相手でも… そのようなことを許すわけにはいかぬ」 |
聖杯による世界の滅亡を阻止するため。 ロン公国・ボルス連邦・オルメカ帝国の三国の協力の元、第四次コルバ島遠征隊が編成されることとなった。 |
オルメカ帝国より、 聖ロンギヌス騎士団団長バッカスを筆頭として、 ライナー率いる一番アポストロ隊、 イネス率いる四番ガーター隊の精鋭騎士、 ソル魔導団の魔導士数名。 |
ボルス連邦より、 ジゼラを指揮官とする魔導兵クローチェ隊と、 ティターノ本隊から若干名の魔導機械兵。 |
今回の遠征の中心となるのは、 ロン公国より指揮官として選ばれた近衛師団長テレーズ、 副師団長フェリクス以下近衛師団の面々、 枢機卿からユーグ、グレース、モニク、カミーユ、クレール、 アンリの6名。 |
そして魔の島からの生還者であるローランと、 リベルテ騎士団より遠征隊に参加することとなった、ジャン。 |
魔の島に連れ去られたアリシアを取り戻すため。 聖杯の力により、大地に生きる者達が滅ぼされるのを防ぐため。 |
恐るべき竜騎士と竜の棲む魔の島へ、 第四次遠征隊を乗せた船団が出帆した。 |
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【第一話 海原の守護者白鯨】 第四次コルバ島遠征隊の船団が、大海原を走る。 甲板で水平線を睨むジャンの元へ、近衛師団長テレーズと副師団長フェリクスが現れた。 フェリクス 「よっ。気合い入ってるな! いつもそうやって真面目な顔してりゃ、お前もそこそこイケてんのにな」 ジャン 「…あんたにゃ言われたかねぇんだけど!」 緊迫した状況にも関わらず、寝癖の残った頭でいつもと変わらぬ調子のフェリクスに、溜息をつくジャン。 第二次遠征ではローラン、第三次遠征では大公レジムのただふたりを除いて、魔の島へ向かった遠征隊は壊滅した。 だが、今回は決して失敗は許されない。それはそのまま、世界の滅亡を意味する。 テレーズ 「こんな状況だからこそ、気を張りすぎてはいけませんよ。あなたは、一人ではないのですから」 ジャン 「…テレーズさん」 テレーズ 「正直に言いましょう。今回の遠征は、あなたが頼りです。魔の島に唯一足を踏み入れて生きて戻ったローラン殿、そして竜騎士や竜と単身互角に渡り合えるのは、ジャン…おそらくあなただけでしょう。ですが、私はそんな無謀な戦いをするつもりはありません」 ジャン 「わかってるよ。…オレが背負ってるものが、オレひとりのものじゃねぇってことぐらいは」 神の遺した力を手に入れることが出来たのは、父の助言や、アージェにウーゴ…仲間達の助力と信頼があったからだ。 力を手に入れさえすれば自分だけで何とか出来ると考えるほど、思いあがってはいない。 テレーズ 「ほんのしばらくの間に、あなたもずいぶん大人になったのですね」 微笑するテレーズにジャンが口を開くより先に、甲板に鋭く声が響き渡った。 見張り 「右舷前方より巨大生物接近…!」 ジャン 「巨大生物?」 ローラン 「魔の島の海域を守る番人だ。船に近付づくのを許せば沈められるぞ」 舳先へ駆け出すローランを追い、ジャンも走る。 ジャン 「なんだありゃ…クジラか!?」 船首付近では、モニクたち枢機卿が迎え撃つ魔導の準備を整えていた。 モニク 「悪いけど、こんなところで船を傷つけられるわけにはいかないね。さっさと退場願おうか!」 |
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【第二話 小さな妖精メルル】 一方、竜騎士イェールに連れ去られたアリシアはコルバ島の一角に客人として迎えられていた。 アリシア 「こんなところに連れてきて、なんのつもりなのよ! さっさと帰しなさいよ!」 メルル 「わっかんないなぁ~。イェール様は、オソロシイ外の国から、アナタを救いだしてくれたんじゃない。なんでそんなこと言うの?」 アリシア 「冗談じゃないわよ! 頼んでないし!」 メルル 「アナタも、ヴェロニカ様とおなじで神の血をひいているんでしょ? なんで人間なんかかばうのさ」 アリシア 「…ヴェロニカ?」 魔女の名前だろうか。訊き返すアリシアの前で、誇らしげにメルルが胸を張る。 メルル 「とっても綺麗で優しいんだから! ヴェロニカ様がいれば、なんにも心配いらないよ。外は怖いところでしょ。いつも人間が争っていて、大地に沢山血が流れて、空も海もみんな泣いてるよ」 アリシア 「そんなことない! 確かに戦いだってあるけど、人間だって争いを望んでいるわけじゃないわ!」 メルル 「嘘だよ。耳を澄まして聴いてみなよ。神の血をひいているなら、アナタにだってちゃんと聴こえるはずだよ。この島のみんながどれだけ優しいか、人間の大陸にどれだけ涙が流れているのか」 確かにこの島では、今まで感じたこともないほど澄んだ風が優しく自分を包んでいるのを気づいていた。恐ろしい竜と魔女が棲むはずの『魔の島』なのに、何故こんなにも空気が清らかで、懐かしささえも感じるのだろうか。 (懐かしいのは当たり前だ。この島を創り出したのは、お前の血に連なる者なのだから) アリシア 「…誰?」 問い返しながら、アリシアはそれが大地から発せられる言葉にならない声だと気づいた。 (お前は既にすべてを知っている。この大地にこれまで起きてきたこと…そして、これから起きようとしていること) 不意に、溢れる想いが泉のように自分の中から湧き出すのをアリシアは感じた。 神々のこと。聖なる遺産のこと。魔女と竜騎士のこと。アリシアはすべてを悟った。…今この島に向かっている、大事な人たちのこと。 アリシア 「わたし…行かなきゃ…!」 メルル 「何処へ行くつもりなの? ダメだよ、そっちへ行ったら怒られちゃう!」 |
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【第三話 巨人の長ドルトス】 海原を守る巨大な鯨を退け、ジャン達はコルバ島へと船を接岸させた。 アンリ 「あれが、コルバ島…」 クレール 「魔の島という呼称にはあまり相応しくない様相だな」 足を踏み入れた者は命を落とすという魔の島。人をよせつけないその荘厳な外観は、禍々しさよりもむしろ神聖さを感じさせた。 ローラン 「この島に暮らすものの多くは戦いを望まない。むやみに傷つければ竜と魔女の怒りをかう」 テレーズ 「私たちは、この島を制圧しに来たのではなく、聖杯を止め、アリシアを連れ戻すために来たのです。そのことを忘れないように」 フェリクス 「相手が人智を越える連中である以上力を分散させるのは得策じゃないが、ひとまず退路を確保する部隊は船に待機、残りは一気に上陸するぞ」 テレーズ 「ジャン、アンリ。貴方がたは竜騎士たちとまみえている。彼らに話を通すには、やはり貴方がたに先陣に立ってもらうのがよいでしょう」 ジャン 「ああ、最初からそのつもりだぜ」 同時刻、オルメカ帝国の船上。 バッカス 「我々は、今回ロン公国のサポートに徹する。相手はカダラを一夜にして滅ぼした竜と竜騎士だ。気をひきしめてかかれ。アベル、ネシェル」 アベル&ネシェル 「はい」 バッカス 「竜騎士と二度相対して生き残ったお前達だ。頼りにしているぞ」 アベル&ネシェル 「はい!」 同、ボルス連邦の船上。 ジゼラ 「ここまで来たら、余計なことは一切言わないわ。なすべきことは、充分に理解してるわね」 力強く頷くクローチェ隊員。 ジゼラ 「クローチェ隊、これより魔の島へ上陸する!」 それぞれの決意を胸に、魔の島へ上陸したジャン達の前に、山のような巨体が立ちはだかった。 ドルトス 「愚かな人間たちよ。この聖なる島へは一歩たりとも足を踏み入れることを赦さん」 ネシェル 「出たな! 巨人め」 レイピアを抜くネシェルを制し、ジャンが前に進み出る。 ジャン 「お前らはそうやっていつもオレたちを見下すよな。けど、ここがお前らにとって聖なる島であるように、オレたちの国だって何にも代えがたい大事な場所なんだ。オレも、お前も何も変わりゃしねぇだろ。だから、オレは絶対にひかねぇ!」 |
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【第四話 緑の化身ローゼ】 メルルの制止を振り切り、アリシアは走った。 言葉にならない声に耳を傾けることで、アリシアは今まで知ることのなかった自分自身の血にまつわる秘密と、この島に隠されたすべてを知った。 かつて、互いに同じ志を持ちながら袂をわかったふたりの神々。この島こそが、人を守るために神が創り出した巨大な箱舟であること。 何故この島に連れて来られたのか。それは、大地に住む人間たちを聖杯の力で滅ぼすため。聖杯の恐るべき力から唯一身を守ることのできるこの島に、神の子孫である自分を匿い、そして神の血を持つ自分に聖杯の力を発現させるため。 アリシア 「ちょっと待って。おかしいわ。神の子孫というなら、魔女にだって聖杯を扱えるんじゃないの…?」 ふと浮かんだ疑問を口にするアリシア。その問いかけに対する答の代わりに、前方より声が投げかけられた。 ローゼ 「何処へ行くつもりなのかしら?」 声の主は、人に似た容姿ではあるが、体の一部が木の枝と化した魔の島の住人だった。 アリシア 「あなたに答える義理はないでしょ」 ローゼ 「そう。…まぁ、何処へ行くつもりだとしても、私は貴方を通さないけれど」 アリシア 「悪いけど、力づくでも通してもらうわよ!」 拳を構えるアリシアを、冷やかな目で見つめるローゼ。 ローゼ 「神の子孫と言いながら、すぐに力に訴える野蛮なところは人の血が混じっているせいなのかしら。ヴェロニカ様とは大違いだわ」 アリシア 「偉そうなこと言うけど、力づくで無理やりわたしを連れて来たのはあなたたちでしょ! そこをどいて。みんなのところへ帰るんだから!」 |
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【第五話 魔女の第五指フィネ】 ジャンの剣の前に、ドルトスはメイスを振り下ろすことなく退けられた。 ウーゴ 「あれが神の遺した力か」 アベル 「すごい…俺たちも、負けていられないな」 ドルトス 「何故トドメを刺さん」 ジャン 「オレは、人間じゃないからって滅ぼしたりなんかしねぇ。これ以上戦う意志がねぇなら、命を奪う理由なんかねーだろ。ここは通してもらうからな」 島の奥へと進むジャン達の前に、聞き慣れた声が響く。 アリシア 「ジャン!」 ジャン 「アリシア! 無事だったのか!」 思わず駆け寄るジャン達。だが、突然放たれた魔導の力がその足を止めた。 フィネ 「この島に足を踏み入れた以上、あなたたちの命は保障出来ない」 ジョゼ 「…子供?」 ローラン 「幼く見えるが竜騎士だ。我々よりずっと長く生きている」 フィネ 「どうしてこの島に来たの。大人しく自分たちの国にいれば、世界が滅びるその時までは、平穏に暮らすことが出来たのに」 ネシェル 「勝手な言い草もいいところだな。お前たちが決めた運命を受け入れて、我々に大人しく滅びろというのか?」 フィネ 「どうせすぐに醜く老いて死んでしまうくせに。弱くて短いあなたたちの命に、いったいどんな意味があるというの?」 前に進み出たのはアージェだった。 アージェ 「強きものに生まれたお前たちにはわからないだろう。人は弱くて、ひとりでは生きられない。…だからこそ、命の価値を知っている」 ウーゴ 「…生きることに意味なんて要らない。生きているだけで価値があるんだ!」 フィネ 「わからないわ。わたしたちは、ただあの方を支えるためだけにある。世界は、あの方にとってのみ価値のあるもの」 フィネは首を横に振った。 フィネ 「わからない…何故、この世界に人間がいるの? 何故、あなたたちを滅ぼしてはいけないの? …わからなくても構わない。これ以上、あの方を苦しませるのは許さない。わたしはあの方のためだけに戦う!」 ジャン 「口で言ってもわからねぇから、戦うしかなくなるんだろ! オレたちだって、譲れないものを背負ってるんだ!」 |
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【第六話 魔女の第一指ヘルムート】 ローラン 「これ以上の戦いは無意味だ。我々は、彼女に危害を加えるために来たのではない」 フィネ 「......」 竜騎士フィネは沈黙したまま、翼を広げて島の奥へと飛び去った。 それを見送り、駆け寄るアリシアとジャンたち。 アンリ 「アリシア。よかった...無事だったんだね」 アリシア 「それより大変なの!彼らは、聖杯で世界を滅ぼすつもりなのよ!」 ジャン 「わかってる。オレたちはそれを止めるためにここまで来たんだ」 再会を喜ぶ間もなく、冷やかな声が飛ぶ。 ヘルムート 「我らの邪魔はさせん」 声の主は黄金の鎧に身を包んだ竜騎士だった。 ヘルムート 「まさか人間が、ここまでやってくるとは、そうか少年。お前は、神の力を手に入れたのか」 ジャン 「だったらどうだってんだ」 ヘルムート 「人の身でありながら、神の力を継承したことには敬意払おう。だが、これ以上人間の好きにはさせん。聖なる島に足を踏み入れた罪はお前達の命で償うがいい」 槍を構えるヘルムート。全員に緊張が走る。 ジャン 「どうしてお前らはそうなんだよ!」 ヘルムート 「なに?」 ジャン 「人間が醜く自分勝手に大地を汚す生き物だと言いながら、お前らのやってることだって変わらねーじゃねぇか。自分たちの都合で国を滅ぼしたり、命を殺したり。それで大地が傷つかねぇとでも思ってんのか!?」 ヘルムート 「小僧...我らを愚弄するか」 ジャン 「そんなつもりはねぇけどな。これだけは言える。お前らは絶対に間違ってる!」 ヘルムート 「我らが主の命は絶対...。それを妨げる貴様をこのまま見逃すわけにはいかん!」 言いざま、翼を広げて空に舞い上がるヘルムート。 アベル 「ジャン!こいつ...今まで会ったどの竜騎士よりも手強いぞ!」 ライナー「アベル、先走るな。全員、援護しろ!」 アージェ 「ウーゴ、ルカ。相手の動きをよく見るんだ。俺達も出るぞ」 ルカ 「了解」 ウーゴ「...ああ。ジャン、無茶するな!」 ジャン 「どんな奴が相手だって、もうオレは絶対に負けるわけにはいかねぇんだ!」 |
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【第七話 マスタードラゴン】 ヘルムートの熾烈を極める攻撃に、ジャンたちは耐え抜いた。息もつけぬほどの激しい攻防。状況は膠着していた。 バッカス 「このままでは埒があかんな」 イネス 「この島には、まだ竜騎士と竜がいるというのに、こんなところで足止めとは...」 テレーズ 「この力、そしてあの振る舞い...あの竜騎士は、おそらくすべての竜騎士を束ねるものでしょう」 フェリクス 「竜騎士の力が尽きるのが先か、ジャンがへたばるのが先か...ぞっとしねぇ話だな」 ユーグ 「いえ。わずかにですが、こちらが押しているようです」 ユーグの言葉のとおり、わずかとはいえ、ヘルムートの攻撃に翳りが見え始めていた。 アージェ 「ジゼラ。そろそろ、頃合いだ」 ジゼラ 「そのようね。クローチェ、前へ!」 クローチェ隊が一気にヘルムートを包囲する。 ヘルムート 「なに!?」 ニノ 「はぁい。そこから動かないで!ここからのあなたのお相手は、アタシたちよ♪」 ラウラ 「全力でお相手いたしますわ」 グラウコ 「......」 アリシア 「ちょ、ちょっとあなたたち...」 ウーゴ 「なにをしている。さっさと行け。...ここは、俺たちが引き受ける」 ジャン 「ウーゴ!」 ウーゴ 「俺たちはなんのためにこの島に来たんだ? こんなところでぐずぐずしている暇はないはずだ」 ティーナ 「大丈夫!怪我してもティーナが治すもん!」 テレーズ 「クローチェの皆さん、感謝します。ジャン、バッカス殿、行きましょう」 クローチェ隊を残し、島の奥へと走り始めたジャン達。 ヘルムート 「主の元へ行かせはせぬ...!」 ヘルムートが鋭い口笛を吹くと、激しい地響きが島全体を震わせた。 ジャン 「なんだ!?地面が揺れてるぞ!」 ローラン 「来るぞ!地上最強の生き物が」 大きく盛り上がった地面から、巨大なドラゴンが姿を現した。 マスタードラゴン 「グオォォォォ!!」 アベル 「ドラゴン!?なんて大きさなんだよ...」 ネシェル 「以前見たものとは比べ物にならんな...」 バッカス 「各自、散開して迎え撃て!」 ライナー 「了解!全員、充分な距離をとり、くれぐれも無理はするな!」 ローラン 「彼奴とまともに戦ってはいけない。ジャン!」 ジャン 「わかってる!とりあえず、少し大人しくさせなきゃな。援護を頼むぜ!」 |
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【第八話 魔女ヴェロニカ】 魔の島の奥、神殿のような建物。 静かにひとりの少女が佇んでいた。その傍らに、4人の竜騎士。 ジャン 「お前が魔女か!」 スーリオ 「無礼者め。偉大な神の血をひく我らが主だ」 イェール 「そちらのお嬢さんも来てくれたってことは、ついに聖杯で人間を滅ぼす気になったのかな」 アリシア 「そんなわけないじゃない! わたしは、こんなことをやめさせるために来たのよ!」 ジャン 「そもそも聖杯はもうぶっ壊れちまってるだろ」 ヴォルク 「神の真の遺産は空の彼方にあり、この器は起動装置に過ぎぬ。修復は容易だ」 ヴォルクの手から掲げられた聖杯が、光を放ちながら部屋の中心へと浮かび上がる。 アンリ 「アリシア、気をつけて!」 アリシア 「大丈夫。もう、迂闊に聖杯を起動させたりしない。全部わかってるから。…ヴェロニカ、あなたの寿命は尽きかけてるのね。だから、わたしの力が必要なんだわ」 ヴェロニカは、遠い過去を思い出すように瞳を閉じた。 ヴェロニカ 「長かった…。私はただ、人を滅ぼす使命を果たすためだけに生きてきた」 ジャン 「使命ってなんだよ。そんなに人間が憎いのか?」 ヴェロニカ 「醜く愚かで、自分の欲のために平気で他者を踏みにじり、世界を汚す人間。…滅ぼして当然」 ジャン 「そんなことを訊いてんじゃねぇだろ! あんた自身に恨みでもあんのかって訊いてんだ!」 ヴェロニカ 「不思議なことを訊くのね。そんなこと、どうでもいいこと。本当に貴方は不思議。初めてこの島に来た時も、驚かされてばかりだった…それが、貴方の血なのかしら」 ジャン 「なんの話だよ?」 アンリ 「兄さま。この人が言っているのは、きっと父さまの…」 ヴェロニカ 「いいわ。貴方にチャンスを与えましょう。人間の滅亡を止めたければ、私を倒しなさい」 フィネ 「ヴェロニカ様!」 ヴェロニカ 「イェール、ヴォルク、スーリオ、フィネ。どちらが勝っても、絶対に手出しをしないように。これは命令です」 下がる竜騎士。ヴェロニカが前に進み出る。 ジャン 「なんだよそれ…。意味ねぇだろ! 共存する道だってあるはずだ!」 ヴェロニカ 「私が貴方たちを滅ぼす使命を持つ以上、共存はできない。さあ、これが最後の機会。私にとっても、貴方にとっても…!」 |
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