ザビロニア帝国の守りの要にして、最大の難関【ゼダンの要塞】。ブリティス軍を率いた皇騎士ガンダムは、この強固な要塞に挑むのだった。 |
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ラナール地方をザピロニア帝国から解放した 皇騎士ガンダムの元には、多くの正義の士が駆けつけ、 やがて彼らは「ブリティス軍」と呼ばれるようになった。 ブリティス王家の血を継ぐ皇騎士ガンダムの決起を、 見過ごすザピロニア帝国ではない。 多くの名のある騎士やモンスターが、 皇騎士ガンダムたちに挑んだ。 しかし、皇騎士ガンダム率いるブリティス軍は破竹の 勢いで勝利を重ね、 ザピロニア帝国の要所を次々と落としていった。 熾烈な戦いは若者たちを騎士に、 若き皇子を王へと成長させていったのだ。 もはや、皇騎士ガンダムに幼い皇子の面影はなく…… その双眸は前だけを見据えていた。 決起の地から、かつてのブリティス城へと 一本の道が伸びていく。大衆の熱狂的な支持を受け、 着々と勢力を増すブリティス軍を阻む者は、 もはや、どこにもいなかった。 ここ、ゼダンの要塞に臨むまでは。 皇騎士ガンダムの故郷、ブリティス王国王都へ 向かうためには避けて通れない、 ザピロニアが誇る最大の軍事拠点だ。 ここを越えれば、今やザピロニアの本拠と化している ブリティス城は目の前。 はやる気持ちを抑え、皇騎士ガンダム一行は、 要塞を眼前に臨むソドンの町で夜を待つ。 闇に乗じて、ゼダンの要塞に侵攻するのが 彼らの作戦だった。 戦勝に継ぐ戦勝にも、浮かれる者は誰もいない。 彼らを待ち受けている戦いが、これまでで最大のもの になることは、ブリティス軍の全員が理解していた。 ゼダンの要塞は真の魔境、挑めば死体すら帰らない……。 町でまことしやかにささやかれる噂は、 皇騎士ガンダムら歴戦の勇士をして怯ませるものだった。 祖国解放に向けたブリティス軍の戦いは、 重要な局面を迎えようとしていた。 ![]() |
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夜の帳が下り、ゼダンの要塞を闇が包む頃……マントに身を包んだ四人の影が、粛々とソドンの町を後にした。 「うへっ、酷い砂嵐だ……おいらの鎧が錆びちまうよ」 「今しばらくの辛抱ですよ、勇剣士プラス殿」 大軍を率いて攻めれば奇襲は奇襲の意味をなさない。 失敗を許されないこの戦いに、皇騎士ガンダムは勇剣士プラス、鎧騎士ガンダムF90、白金卿の三人だけを供に選んだ。 「おいらたちがいきなり現れたら、連中、飛び上がるぜ!」 意気上がる勇剣士プラスが、意気揚々と皇騎士ガンダムたちを先導する。 皇騎士ガンダムが後に続こうとしたその時、手をかけていたヴァトラスの剣の柄が、不意に強い光を放っていた。 「待て、勇剣士プラス……」 「うひゃあああああああああぁぁっ!?」 皇騎士ガンダムの制止は遅かった。突然、巻き上がった砂塵に、勇剣士プラスは瞬く間に飲み込まれていた。 砂漠に住むモンスター、サテライトギャザーの大群だ。 「やはり、楽には通してくれそうもありませぬな。切り抜けましょう。」 白金卿の言葉に頷き合って、騎士たちが剣を抜き放つ。 |
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皇騎士ガンダムたちの剣光が疾るたびに、一匹、また一匹と、サテライトギャザーは数を減らしていく。 やがて、サテライトギャザーは砂漠の奥深くに逃げ、砂漠には静寂が戻った。 その後はモンスターの襲撃はなく、皇騎士ガンダムたち一行はようやく砂漠を抜けた。 「不気味なところに出たな。見ろよ、岩がまるで角みたいだぜ」 「ゼダンの角岩だ。この地には不思議な力が宿っていると聞いたことがある」 「不思議な? また、地面からモンスターでも現れるっていうのかよ」 先ほどの経験が教訓になったのだろう。剣に手をかけ、勇剣士プラスが周囲を警戒する。 「興味がある。鎧騎士ガンダムF90、この地に宿る力とは一体どのようなものなんだ」 「はい、町の者が言うには、この地には魔物が棲むと」 「この地の調査に当たったザビロニア軍の兵は、ひとりとして帰らない……眉唾ですが」 と、白金卿が鎧騎士ガンダムF90の後を受ける。 「ザビロニアの? 被害を受けているのはザビロニアの兵だけな……」 「そこにいるのは誰だっ!」 会話を遮る勇剣士プラスの声に、すぐさま気を引き締めて、場の全員が剣を抜く。 「この地のどこかの戦士が潜んでいると聞いて調査に来てみれば、驚いたな。ブリティス軍がここまで迫っていたとは」 闇の中から現れたのは、ザビロニアの紋章を身につけたひとりの兵士だった。 「これ以上、お前たちの好きにはさせん! ゼダンの要塞がお前たちの小癪な野望を阻むのだ」 「逃がすな!」 斥候エビル・Sが逃走をはかっていることに気付いて、皇騎士ガンダムが叫ぶ。 「仰せのままに、皇子」 その声に応えたのは、皇騎士ガンダムたちの遥か頭上からの声だった。 月光を背に、せり出した丘の上に立っていたのは三人の戦士だった。 「面影がある。お前は風騎士ガンダムマークⅡ、そうだろう?」 一団の中でもひと際目立つ、純白の鎧に身を包んだ騎士を認めた鎧騎士ガンダムF90が驚愕する。 「今日の日を幾度、夢見たことか。皇子……なんと、ご立派になられて」 目を潤ませる、その騎士の正体には、皇騎士ガンダムもすぐに行き当たり、彼らが信頼に足りる味方であることを確信した。 |
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風騎士ガンダムマークⅡの槍が斥候エビル・Sを捉えるまで、さほどの時間はかからなかった。 深々と胸を貫かれた斥候エビル・Sが、断末魔さえ残すことなく倒れる。 「なんという見事な連携。よほど、技を磨いてきたようだな」 「もったいないお言葉でございます、皇子」 まずは風騎士ガンダムマークⅡが。そして、両脇の戦士もまた、皇騎士ガンダムの前に膝をつく。 「お初にお目にかかります、皇子。この麗騎士レッドウォーリア、大義の元に馳せ参じました」 「俺は重戦士ヘビィガンダム。これからは、あんたが俺たちの大将だ。よろしくな」 重戦士ヘビィガンダム、風騎士ガンダムマークⅡ、そして麗騎士レッドウォーリア。 ザビロニア帝国の兵を震え上がらせた、『ゼダンの角岩に潜む化け物』の正体は、風騎士ガンダムマークⅡが決起の日に向けて募った、志を同じくする戦士たちだった。 「命尽きるまでザビロニアと戦った父のため、父の愛した祖国のため……これよりは皇子の下で戦わせてください」 皇騎士ガンダムは千人の味方を得た思いで、戦士たちの申し出を受ける。 「三人の申し出は嬉しく思う。しかし……」 ぼくを「皇子」とは呼ばないで欲しい。すっかり恒例となった言葉に、勇剣士プラスや鎧騎士ガンダムF90は、ひと時、戦いを忘れて笑い声をもらした。 再会を喜ぶ間もなく、新たな仲間を得た皇騎士ガンダムたちはゼダンの要塞を目指す。 「みんな、見えてきたぞ。ゼダンの要塞だ」 皇騎士ガンダムが迫っているという報せは、ゼダンの要塞にまだ届いていない。 そのためか、要塞には点々と光がともっているだけで、それほどの警戒は感じなかった。 「おい、門の前を見ろよ。不細工なモンスターがいるぜ? あれが門番かな」 重戦士ヘビィガンダムが指し示した門の前には、鳥型モンスター、ビグロフォンがくちばしで羽をつくろっていた。 「よし、あのモンスターを誰が一番に倒すか競争しようぜ!」 制止する暇もなかった。言うなりで、勇剣士プラスと重戦士ヘビィガンダムが得物を抜いて駆け出してしまう。 自らに迫る敵を認識したビグロフォンが、甲高く鳴いて、その翼を拡げた。 |
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ビグロフォンを打ち倒しはしたものの、騎士たちの表情は冴えなかった。 この激しい戦いで、皇騎士ガンダムたちの攻撃は要塞中にも知れ渡ってしまったことだろう。奇襲は失敗したのだ。 「悪かった。合流したばかりだから、てっとり早く手柄を立てたかったんだ」 「おいらも負けられないと思って」 素直に頭を下げるふたりに毒気を抜かれて、誰もが文句を言う気をなくしてしまった。 「ひとりの功は皆の功だ、これからの敵は強大だ。仲間と共に戦い、仲間を守ることを何よりも考えて欲しい」 少しずつ貫禄を身につけ、かつての王の姿に近づきつつある皇騎士ガンダムの姿に、鎧騎士ガンダムF90が目を細める。 こうして、ゼダンの要塞に入った皇騎士ガンダムたちを待ち受けていたのは、このゼダンの要塞が誇る大迷宮だった。 「おかしい……これだけ歩いたというのに、敵も現れないじゃないか」 「まるで、同じところを回っているようだ」 風騎士ガンダムマークⅡの言葉を、皇騎士ガンダムが肯定する。 「迷いの魔法でもかけられているということか? ふむ……」 「だったら、こうしてみたらどうだ?」 言って、重戦士ヘビィガンダムが壁を斬りつける。 「なるほど、そうして目印を作っておけば……」 そこで全員がハタと口をつぐんで、不意にガタガタと揺れ始めた壁から飛びのいた。 「おのれ、疲れ果てたところを倒してやるつもりが……どうやって俺に気付いた!」 たった今、重戦士ヘビィガンダムが斬りつけた壁が内側から爆ぜるようにして、そこから戦士デナン・ゾンが現われる。 「そ、そうとも、この俺の目から逃れられると思うなよ」 一瞬、皆が目を見張り……それから、しらけた目を重戦士ヘビィガンダムに集めた。 「あの敵を締め上げれば、この要塞のからくりがわかるかもしれませんな」 「多勢に無勢は騎士の流儀ではないが」 ある意味では怪我の功名だ。ようやく出会えた敵に、騎士たちは一斉に剣を向けた。 |
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「バカめ、このゼダンの要塞は出口なき迷宮。死ぬまでさまようがいい……!」 呪いの声を残して、戦士デナン・ゾンは倒れた。 「出口なき迷宮だと。やはり……では、私たちはこの要塞に捕らわれてしまったのか」 「騎士たる者がとりみだすな! 我らは誇り高き、ブリティスの騎士だ」 誰からともなく上がった弱音の声を、皇騎士ガンダムは激しく叱咤する。 「我らが受けた屈辱を、そして……悲願を、どうか思い出してくれ」 「我らの弱気をお赦しください、皇騎士ガンダム様。我ら……目の覚める思いです」 風騎士ガンダムマークⅡを始め、騎士たちがその場に跪く。 そこにいたのは、かつての偉大な王にも劣らない、威厳ある『王を継ぐ者』だった。 それから、さらに……時間の感覚もなくなるほどの長い時間、皇騎士ガンダム一行は要塞の迷宮をさまよった。 「ここは無限の迷宮などではない。諦めなければ必ず道は拓ける!」 まるで、自らに言い聞かせるような皇騎士ガンダムの言葉。 その揺るぎない信念が、天に届いたかのようだった。 「見てください、皇騎士ガンダム様。あのロウソクの揺らめきを……どこからか風が吹き込んでいる証拠です」 鎧騎士ガンダムF90が語った風は、その瞬間、皆が肌で感じたものでもあった。 「行ってみましょう!」 今、ようやく手繰り寄せた希望に騎士たちは歓喜する。 しかし、我先にと駆け出した彼らが目にしたものは、迷宮からの出口などではなかった。 「皇騎士ガンダム様! ご覧ください。あれは……」 先頭を走っていた麗騎士が警戒を呼びかけて、その足を止める。 皇騎士ガンダムたちの行く先では戦いが繰り広げられていた。 「ぬお……っ、我が大願も果たさぬまま、倒れるわけにはいかぬのじゃ」 正しくは戦いなどではない。モンスター オーガハンマの一方的な攻撃を、ローブ姿の老人は紙一重でかわすのが精一杯。 「あのご老人も、要塞の迷宮に迷い込んだのかもしれません」 考えるより早く、騎士たちはモンスターに飛びかかっていた。 |
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「グオオオオオオオォォォォォォッ!」 仰向けに倒れたオーガハンマの体重で、迷宮の床に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。 床に走った大きな揺れに、疲れ果てた騎士たちはよろめく。 「オーガハンマを討つとは、見事! 貴殿こそは我らが悲願を託すにふさわしい方と、改めてこの目で見極めましたぞ」 皇騎士ガンダムに向いて、ローブに身を包んだ老人が膝をつく。 「わしは僧侶ガンタンクR、皇騎士ガンダム様にこれをお届けするために、後を追ってきたのじゃ」 そうして、顔を上げた僧侶ガンタンクRは、懐から幻惑的な光を放つ円盤を取り出した。 「これは銀の円盤。ゼダンの要塞にかけられた、迷いの魔法を晴らすためのアイテムじゃ」 「そんなものをどうして、貴殿は……」 僧侶ガンタンクRは、答えずに銀の円盤を皇騎士ガンダムたちに向けて放った。 「なんだ、円盤が光……うわぁ!?」 円盤からほとばしった光はブリティス軍の騎士たちを飲み込み、その光が晴れた時、その姿は消えていた。 「皇騎士ガンダム様がザビロニアと戦い続けるのなら、再び、お目にかかることもあるでしょう。いずれまた」 ひとりごちて、僧侶ガンタンクRの姿もまた、闇に溶けたように消える。 その直後、城主ドズルの間に弾けた虹色の光の中から、ブリティス軍の騎士たちが次々に転げ出た。 「貴様らは、ブリティス軍! どうやって迷宮を抜けてきた」 雷のような胴間声に振り返った皇騎士ガンダムは、玉座に城主ドズルの姿を認めた。 「控えろ、忌々しい反逆者共め! この邪騎士ゲルベグの剣の錆にしてくれるわ」 そこへ真紅の騎士が飛び出して、皇騎士ガンダムたちを阻む。 「我らは全ての地で民の支持を受けて戦ってきた。そうでなければ、強大なザビロニアを相手に、今日まで戦い続けることはできなかっただろう」 皇騎士ガンダムは邪騎士ゲルベグの侮蔑に対し、静かに問い返す。 「民はザビロニア帝国の支配を望んでいない。民を守れぬ国など、国であるものか」 「我らにひと太刀、浴びせることもできずに尻尾を巻いて逃げ出した皇子が、よくも吠えるものだ」 「ぼくはもう、無力な皇子じゃない!」 その通りだ、皇騎士ガンダムの下へ集った若き騎士たちは競うように剣を抜く。 「ゆくぞ、みんな! 我らが祖国を取り戻すんだ」 |
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「もうよい、下がれ! くだらぬ見せ物に成り下がったわ」 城主ドズルの一喝に、邪騎士ゲルベグは屈辱に顔を歪めながらも剣を引く。 「残るはお前ひとりだ、城主ドズルよ。素直に投降するならよし……さもなくば」 「投降? 投降だと、このオレがブリティスのクズ共に」 玉座から立ち上がった城主ドズルがマントを払い、身の丈ほどもある大剣を抜いた。 「笑わせるな! このドズル、お飾りの城主などではないぞ」 「お前の騎士は倒れたんだぞ? たったひとりで、俺たちと戦うつもりか」 「ハハッ! お前ら虫けらが寄り集まったところで、このオレに傷ひとつつけられるか」 言い放つドズルの懐に、やすやすと飛び込む影がひとつ。 「城主ドズル、貴殿の傲慢……目に余る」 風騎士ガンダムマークⅡの一撃だ。稲妻のような長槍の一撃が、城主ドズルの胸甲を撃ち抜く。 撃ち抜いた、と……誰の目にも見えたが、皇騎士ガンダムの耳に届いたのは、余裕に満ちた城主ドズルの嘲笑だった。 「ククク……オレの鎧を砕いたか。ここまでたどり着いただけのことはある」 城主ドズルの鎧がひび割れて、砕ける。 「しかし、言ったはずだ。鎧は砕けてもこのオレの肌を斬り裂くことはできぬとな」 風騎士ガンダムマークⅡの一撃ではなく、内から膨張した筋肉の圧力によって。 「これぞ、我がザビロニアの魔法の力だ!」 「ヴァトラスの剣よ……!」 強い輝きを放つ、ヴァトラスの剣を前にしても、城主ドズルの口元には余裕の笑みがはりついたままだった。 「これまで何人もの騎士がこのオレの前に立ったが、ひとりとして命を持ち帰った者はいなかった」 岩の肌を持つ魔人と化した城主ドズルが、剣を捨てる。 皇騎士ガンダムたちを倒すことなど、握り固めた拳で充分ということだろう。 「やらせはせん! ブリティスのクズなどに、このゼダンを落とさせるものか!!」 |
騎士たちが一斉に狙った足首が音を立てて砕け、 城主ドズルは初めて苦悶の表情を浮かべた。 「こ、このオレの身体が・・・・・・こんなクズ共に、オレが!?」 「城主ドズル! お前の敗因は自らの力に溺れ、 我らを侮ったことだ」 飛びかかる皇騎士ガンダムの手の中で、 ヴァトラスの剣が日輪の輝きを放つ。 「これが我らの、団結の力だ!」 皇騎士ガンダムの剣が吸い込まれるように 城主ドズルの胸に突き刺さり、 騎士たちの得物が一斉にそこを射抜く。 「やらせは・・・せん・・・・・・」 胸部の大穴をうがたれ、崩れ落ちる城主ドズルの、 これが最後の言葉だった。。 難攻不落と言われたゼダンの要塞は、ついに落ちたのだ。 「これで終わりではない。みんな、あれを見てくれ」 過酷な戦いに勝利しながらも、 皇騎士ガンダムは傷ついたその身を引きずるようにして バルコニーへ急ぐ。 戦いの間に夜は明け、差し込む朝日が教えてくれたものだった。 そこに拡がる景色の中心には、 皇騎士ガンダムたちが目指すブリティス王国の 王城が見えていたのだ。 「その通りです、皇騎士ガンダム様。我らが悲願はあの地に・・・」 遠くブリティス王国を臨んだ騎士たちが言葉を失い、 神妙な空気が場を満たす。 「懐かしき我が祖国。こうして、再びこの目にすることを どれほど夢見たことか」 「おいおい、風騎士ガンダムマークⅡ。観光じゃないんだぜ?」 重騎士ヘヴィガンダムが、明るく言って戦友の肩を叩く。 「今やブリティス王国は、ザビロニアの本拠地。 ぼくらは戦いに行くんだ」 「我が祖国に、かつての光を取り戻すために」 白金卿の言葉を受けて、皇騎士ガンダムが彼ら・・・・・・ 皇騎士ガンダムの元に集った、 新たな円卓の騎士たちを見回す。 「一刻も早く向かいましょう、我らがブリティスへ」 恭しく頭を下げる麗騎士レッドウォーリア。 かつて騎士も新参もなく、この戦いは騎士団を 結束させたことが、彼らの言葉からも窺えた。 「それは構わねーんだけど、町に戻ってメシだけでも 食わないか?おいら、おなかと背中がくっつきそうだ」 「ふ、腹が減っては戦はできぬと言うからな」 勇騎士プラスの言葉に皆が笑う。 「帰ろう。ソドンの町のみんなにも、ゼダンの要塞が 落ちたことを報せねば」 こうして皇騎士ガンダムたちは、 きたる決戦を前に英気を養うため、 ソドンの町へと帰っていくのだった。 ジークジオンの言葉により、ネオブラックドラゴンの 心は大きく揺れていた。 隙だらけとなったネオブラックドラゴンだったが、 バーサル騎士ガンダムもまだジークジオンの言葉に 驚きは隠せないでいた。 「貴様たちは何も覚えていないようだな。くっくっく、 ならば真実など知る必要は無い。2人一緒に葬ってくれる」 その言葉と同時に、雷がバーサル騎士ガンダムと ネオブラックドラゴンを襲った。 雷が止んだ黄金の間には2人の姿は消えていた。 ジークジオンの魔力により、ティターンの魔塔の頂上へと 転移させられていたのだ。 戦いは、ジークジオンが待ち受ける頂上へと 舞台を変える・・・・・・。 光の騎士 2週目へと続く。。。 ![]() |
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「何……っ!?」 とどめを狙った、必殺の剣が空を斬ったことに皇騎士ガンダムは驚愕する。 「待て、好きにはさせんぞ。皇騎士ガンダム!」 現われた魔術士ゲルググキャノンがかざした杖が、邪騎士ゲルベグをドーム状の光で包み、皇騎士ガンダムの剣から守ったのだ。 「あいつは……げっ!? 見ろ、あのモンスターは」 魔術士ゲルググキャノンの後ろから現われたのは、迷宮で倒したはずのオーガハンマだった。 傷ついたその身体もまた、邪騎士ゲルベグと同じように光に包まれる。 「オォ、魔術士ゲルググキャノン! あれをやる気か」 「ザビロニアの恐ろしさをその身をもって知るがいい。降臨せよ、幻夢界」 幻惑的なその光は爆発的に膨れ上がり、ドズルの間を押し包む。 「なんだ、これは……世界が崩れる!?」 床も、壁も、世界を構成する全てが歪み……皇騎士ガンダムたちを喪失感が蝕む。 まばたきひとつの間に世界は一変、不思議な闇の世界に捕らわれたブリティス軍の騎士たちは、身を寄せあうことさえできなかった。 「幻夢界と言ったか? ここは一体」 「ハッハッハッ、幻夢界は魂の牢獄。一度、捕らわれれば何者も脱出することは叶わぬ」 「魔術士ゲルググキャノンの声……ヤツだ、ヤツを捜せ」 「あいつを討てば、この世界から出られるんだな」 幻夢界……閉ざされた世界に、魔術士ゲルググキャノンの哄笑が響く。 いや、笑い声の主は魔術士ゲルググキャノンの声をした、まるで別の存在だった。 「魔術士ゲルググキャノンなどは、もう存在しない。ここにいるのはゼダンのモンスターの命を糧にした、狂える獣騎士ただひとりよ」 獣騎士ベルガ・ダラス。魔術士ゲルググキャノンの魔法で、邪騎士ゲルベグとモンスター オーガハンマなど、ゼダンのモンスターの力を結集して産み出された、最強にして最狂の騎士が、皇騎士ガンダムたちの前に立ちはだかる。 「幻夢界と我はひとつ。我が胎内に迷い込んだ貴様たちを待つのは、死の運命だけと知れ」 「敵がどんなに強大であろうとも、ぼくは引かない! ヴァトラスの剣よ……幻夢界の闇を切り払え」 皇騎士ガンダムの誇り高い意志を糧に、ヴァトラスの剣が強い輝きを放つ。 |
獣騎士ベルガ・ダラスの圧倒的な力の前に、 ブリティス軍の騎士たちは、ひとり、 またひとりと崩れ落ちる。 「正義の無力さを呪え、その絶望を! 怨念を糧に幻夢界は成長を続ける。やがては・・・・・・」 絶対的優位を確信していた獣騎士ベルガ・ダラスが その時、初めて異変に気付く。 「どういうことだ、皇騎士ガンダムがいない!?」 「こっちだ、獣騎士ベルガ・ダラス!」 声は、獣騎士ベルガ・ダラスにとってまったく 予想外の方向からだった。 「あそこだ、皇騎士ガンダムがあんなところに」 闇のヴェールが晴れ、ヴァトラスの剣を構えた 皇騎士ガンダムの姿が遥か頭上に現れる。 「グハッ!? バカな、貴様・・・どうやってこの俺の居場所を」 皇騎士ガンダムのヴァトラスの剣が貫いた場所・・・・・・ 空間そのものに、獣騎士ベルガ・ダラスの顔が浮かび上がる。 「この銀の円盤が教えてくれたんだ! さぁ、銀の円盤よ。ぼくたちの意志を導け」 放たれた銀の円盤が急速に回転、そこから注がれた光は 道となって、皇騎士ガンダムと騎士たちを繋ぐ。 「みんな、あの光に向かって切り込め!」 臆することなく光に飛び込んでいく勇敢な騎士たちの存在、 そのものが光の矢となって疾る。 「ギャアアアアアアアァァァァ!」 獣騎士ベルガ・ダラスの断末魔の声をきっかけに、 幻夢界が再び崩壊を始める。 「やった、獣騎士ベルガ・ダラスを倒したんだ!」 銀の円盤が再び光を放ち、勝利に沸く騎士たちを包み込む。。 その光が晴れた時、 皇騎士ガンダムたちは遥か遠くにゼダンの要塞を 見下ろしていた。 銀の円盤は次の戦いに導こうとするように、 ゼダンの要塞を越えた山の頂に皇帝騎士ガンダム たちを下ろしたのだ。 「見ろ、みんな! ゼダンの要塞が」 黒煙を上げるゼダンの要塞を見下ろして、 騎士たちが驚きの声を上げる。 「ゼダンの要塞を守る魔の力が失われたからだ。 ああなっては、かつての難攻不落の要塞も見る影もないな」 「ゼダンの要塞が落ちたことは、 すぐにソドンの町にも伝わるだろう」 皇騎士ガンダムだけは背中を顧みることなく、 その眼差しは既に前を見据えていた。 もはや、眼前に迫ったかつての王都を。 「おそらくは、ザビロニアの本国にも 報せは届いているでしょう」 「それこそ、ぼくの望みだ。行こう・・・・・・決戦の地へ」 頷きあって、颯爽と歩き出す皇騎士ガンダムの 背中に騎士たちが続く。 「逞しくなられましたな、皇子、いや、皇騎士ガンダム様」 ひとりごちで、鎧騎士ガンダムF90がそっと目尻を拭う。 激しい戦いを乗り越えてなお、 決戦の地へ向かう騎士たちの足取りには いささかの淀みもなかった。 キングガンダムへ続く・・・ ![]() |